喰種捜査官 城嶋裕輔   作:夏目 朝陽

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冬休みの終わりが近づいてくるのです……

第十四話です。


#014

真戸さんが死んだ。

それを耳にしたのは瑠梨君を監禁していた喰種に刺されてから二日後、病室で目が覚めてすぐの事だった。

 

【ラビット】、【フエグチ】にやられたらしく、亜門曰く亜門本人を襲った【眼帯の喰種】も関係があるのではと考えているようだ。

なんでもその【眼帯の喰種】はクインケを真っ二つにするほど強力な赫子を持っているらしい。よく生きて帰ってこれたものだ。

 

あれから三週間。ようやく退院の許可が出た僕は早速病院を後にした。

入院中は色々な人が見舞いに来てくれた。

最近とある喰種集団が現れたらしくその対処で忙しいはずなのに、雨宮、高間、亜門、あとそういえば見舞いに来た篠原特等と一緒に来た鈴屋三等とやらを紹介された。

何でも最近本局の方から二十区に配属されたという。

 

「あっれー退院したんだおめでとーいやーマジでよかったよかった」

 

「……なんでここにいるんだ、慶明」

 

「え、反応が露骨すぎて傷つくよ」

 

タクシーを拾おうと病院のエントランスを抜けると、会いたくない人物に会ってしまった。

こいつの名前は中須慶明。不本意ながら高校時代の同期で、以前【大喰い】の調査中に起きた鉄骨事故を僕に教えた男だ。

正直鬱陶しいことこの上ない奴だが、こと情報に関してはずば抜けたものを持っている。

 

と、それはさておき何故こいつがここにいるのかが今は問題だ。

基本的にこいつと一緒にいて不快に感じない時の方が珍しい。

実際こいつも僕の事が好きというわけでもないだろうに、何故かあるごとに僕の前へ現れる。軽くホラーだ。

 

「まぁそんな嫌そうな顔するなって。今日は退院祝いに面白い情報を教えてあげようと思ったのにー」

 

鬱陶しい話し方だがこう言う時は本当に良い情報を持ってくる。

事実過去に二度、こいつの情報のおかげで解決した喰種事件もあるのだ。

 

「あの鉄骨事故起きた時にさ、あそこら辺で【大喰い】とか呼ばれてる喰種による大量捕食事件あったじゃん?」

 

「どうして捜査機密である【大喰い】を知っているかはこの際置いておくが、それがどうしたんだよ」

 

「実は鉄骨事故と【大喰い】、関係があるかもしれないって話」

 

「……っ!?詳しく話してくれ」

 

「ま、いいけど場所変えよっかー」

 

確かに病院前でこんな話をするのも他の人の迷惑になるし、何より誰に聞かれているか分かったものじゃない。

慶明に促されるままに、ロータリーに止めてあった彼の車に乗った。

そのまま慶明の運転で病院を離れ、車を走らせながら話を続ける。

 

「被害に遭ったのは大学生の男女二人組って話、覚えてるよね?」

 

「男の方が金木研で、女の方が確か……」

 

「神代利世、だよ」

 

どや顔でこちらを見てくる慶明に若干の苛立ちを覚えつつも何とか堪える。

今思い出せばそうだった。金木研に関してはすんなり情報が出てきたのに神代利世に関しては驚くほどに情報が出てこなかった。

 

正直この時点で彼女が喰種である可能性も視野に入れたが、時すでに遅く彼女は遺体として処理されていることだろう。

 

「で、その神代利世が件の喰種、【大喰い】かもしれないって話は知ってる?いや知らないか!俺としたことがうっかり!」

 

「神代利世が、【大喰い】……」

 

「ああ、そうそう。その事故で危険な状態であった金木研に、死亡した神代利世の臓器が移植されたことは?」

 

「それは知ってる。ニュースでも会見やるくらい酷く取り上げられていたからね」

 

「だね。さて、ではここで問題です。これらの事実を繋げると驚くべき可能性が浮かび上がります!それはなんでしょーか!いやー簡単だね!」

 

「だからさっきからなんなんだよそのテンション」

 

こいつのうざさは元からだしこの際気にしないことにしよう。

驚くべきは神代利世という女性が僕と雨宮が捜査していた【大喰い】という喰種であるかもしれないということ。

これは正直かなりでかい情報だ。

 

にしてもこれらを繋げてって……。

 

……ん?待てよ。

神代利世の臓器を金木研に移殖した。

それはつまるところ、喰種の臓器を人間に移殖したということ?

 

それって……

 

「あ、気付いた?まぁ俺が名付けるとしたら差し詰め、【人工食種】。といったところかな」

 

「【人工食種】……」

 

いったいどうなるのだろうか。

いや、それ以前に僕らは彼をどう判断したらいい?人間?喰種?

 

金木君は優しそうで、穏やかで。間違ってもこちら側の世界に来るような人間ではないのに。

 

「直接会って確かめるしかない、か」

 

「んじゃ、ここまででいいっしょ?お疲れさーん」

 

「……ああ、助かる」

 

その言葉を最後に僕は車を降りる。

降りた場所は……

 

―あんていく

 

こいつはどこまで知っているのか。

それなりに長い付き合いだが、僕はたまにこの事が不気味で仕方がない。

 

走り去っていく車を見えなくなるまで見送り、意を決して僕は喫茶店の中に入っていった。

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