喰種捜査官 城嶋裕輔   作:夏目 朝陽

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第十六話です。


#016

「すみません遅れまし……」

 

「遅ぇぞ城嶋!呼ばれたら秒で来い!」

 

「無理言わないでくださいよ丸手特等」

 

この人は本局勤務の丸手斎特等捜査官。

なんでも今回『十一区特別対策班』の指揮官に任命されたらしい。

 

丸手特等とは何度か話したことはあるが、正直苦手な人だ。

 

「これで全員揃ったな。今回の件は”俺史上”最もデカいヤマだ。ヘマは出来ねぇ。……優秀なコマが要る」

 

丸手特等はそこで一旦言葉を区切り、全員の顔を見渡してから言い放った。

 

「つーわけでお前ら、ちょっと『十一区特別対策班』に手ぇ貸せ。ちなみにこれは命令なんで拒否権は無ぇ」

 

「えぇ……」

 

気の抜けた僕の心からの呟きが、やけに大きく聞こえた気がした。

 

 

× × ×

 

 

話が終わり、僕と雨宮は局の廊下を歩いていた。

これから瑠梨君の所に行く予定だ。

 

瑠梨君は両親がいないみたいで、喰種被害者ということもあってかCCGでその身柄を保護する形に落ち着いた。

 

監禁や拷問による影響なのか、当初と比べれば良くなったもののまだ感情が鈍いところがある。

担当医の話によればこれは時間が解決していく問題で、そうすぐには改善されるものではないと言われた。

 

ともあれ、直接保護した立場としては出来る限りしっかりとメンタルケアはしていきたい。

 

「先輩。何かあったんですか?」

 

「え、何で?」

 

お互い無言で廊下を歩いている途中、雨宮が急に話を切り出してきた。

 

「最近単独で何かを調べているようだったので。少し気になります」

 

驚いた。結構内密に調べているつもりだったけど、雨宮は気付いていたのか。

まぁ元々勘の良い子だからな彼女は。

 

……でも、うん。そうだ。僕達はもう三年もパートナーとしてやってきているんだ。

今さら隠し事なんてするべきではないな。

 

話そう。僕が知っている、辿り着いた全てを。

 

「話すよ。でもそれは瑠梨君の所に行った後でいいかな?」

 

「……はい」

 

そうこうしているうちに瑠梨君がいる部屋に到着。

ノックをすると、数秒してから扉が開いた。

 

「あ、お姉さんお兄さん。来てくれたんだ」

 

「ん、約束だったからね。入ってもいいかな?」

 

僕の言葉にこくんと首を縦に頷いて了承してくれた瑠梨君は、僕と雨宮の手を引いて部屋の中へと案内してくれた。

瑠梨君の年齢は十五歳。こういうところは少し子供っぽいが、ここに来る前のあの環境を考えると精神的に幼くても仕方がないのだろう。

 

初めて入る瑠梨君の部屋は、ローテーブル、ソファ、ベッドなど大人っぽくてシンプルな部屋だった。

そのローテーブルにはノートや教科書が置いてある。

どうやら僕らが来るまで勉強をしていたようだ。

 

「お兄さん。怪我、もう大丈夫なの……?」

 

「ああ、この通り元気だよ!」

 

その言葉に安心した様子の瑠梨君。

 

するとしばらくしてから顔を上げて、真っ直ぐと僕の目を見る瑠梨君は何か決意したような顔だった。

 

そして僕はこの先、この時の瑠梨君の言葉を忘れることはないだろう。

 

「僕、僕ね。いっぱい勉強して、いっぱい体を鍛えて強くなって、そしていつか絶対に―」




次回、ついに『アオギリ戦』開幕。
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