先程まで鳴り響いていた戦いの音も徐々に聞こえなくなり、このアジトにいる【アオギリの樹】の殲滅が終わりを迎えていた。
辺りには喰種や捜査官の亡骸が見える。
どの場所も激しい戦闘が行われた跡があり、一歩進むたびにその光景に胃から込み上げてくるものがある。
捜査官になって三年も経つのに、いまだにこの光景には慣れない。
先輩と別れてしまってから数名の捜査官とともに私は行動している。
先輩、無事だといいのだけれど……
「雨宮二等。本作戦終了に向けて一度他の班と合流するそうです」
「わかりました。すぐに合流しましょう」
一緒の班にいた捜査官の一人に報告を受け、即座に行動に移す。
しばらく歩いたところで、前の通路から走ってきた他の班の捜査官が背筋が凍る言葉を言い放った。
「ほ、報告です!館内に【梟】が出現!現在篠原特等らを始めとする捜査官が交戦中!至急後方支援に回れとの事です!」
―【梟】。過去に二度、交戦記録があるSSSレートの喰種。
【赫者】と呼ばれる共食いによる進化を遂げた喰種でもあり、レートの通り他の喰種とは一線を画す力を持った喰種だ。
あの有馬特等でさえ討伐できなかった喰種がどうして今ここに?
まさか奴も【アオギリの樹】の……
考えていても仕方がない。
もしかしたら先輩もすでにそちらにいるかもしれない。
私は班の皆とともにその場所へと向かった。
× × ×
「ふっ……!!」
「っ……!!」
何度目か分からない【ナツムラ】と赫子を交わらせ、勢いを殺さずそのまま何撃も互いに放つ。
だがそれらはことごとく相打ちとなり、互いに後ろへと身を退く。
戦況は変わらず探り合いながらの闘いが続いている。
元々人間だったのにここまで強いなんて……
それに赫子は四本あるしスピードも平均的な喰種より遥かに速い。
この強さは明らかにSレートはあるだろう。
「強いね、金木君」
「城嶋さんも強いですね。……でも、そろそろ終わりにします」
「っ!?」
急に真っ直ぐと加速してきた金木君に合わせて【ナツムラ】を振り下ろす。
だがそれは呆気なく赫子に弾かれた。
「(……まぁ想定内だけどね)」
金木君はクインケを狙って攻撃してきている。
おそらくクインケを壊すことで僕の無力化を図っているのだろう。
でも残念ながらそれさえ分かればこちらのものだ。
特に、ギミックがある分クインケを狙う金木君に対しては僕の方が有利だ。
「(少し痛いだろうけど、我慢してくれ)」
【ナツムラ】を狙って一気に赫子を突き立てた金木君に向かてギミックを発動させる。
「なっ……!?」
無数に飛び出す棘の内、数本は確かに金木君に当たった。
―そう、数本は。
「これでもう、戦えませんね」
「……ああ、そうだね」
結果を言うならば【ナツムラ】は数本のギミックを残し、真っ二つにされた。
これではもう使うことは出来ないだろう。
【ナツムラ】はこれでもSレート喰種の鱗赫から作り出したクインケ。
強度にはこの【ナツムラ】の開発者である地行博士のお墨付きだ。
その【ナツムラ】を真っ二つにするほどの強さを持つ赫子……。
やはり移殖された喰種の臓器は【大喰い】のもので間違いない。
だとすればもう彼女は……
「……君の淹れてくれたコーヒー。好きだったんだけどな」
「ありがとうございます。でも、もうそんな機会はないと思いますよ」
「そう、だろうね」
その会話を最後に、金木君は僕の横を通り過ぎて去っていく。
「……僕も行こう」
しばらくして、【ナツムラ】の残骸を拾った僕は丸手特等がいる建物の外にある仮対策本部へと向かう。
流石にクインケのない状態で【梟】なんて大物とやるという馬鹿なことはしない。
邪魔になるだけだし、何より目的を果たすまで僕は死ねない。
僕から全てを奪ったあの赤い布の喰種を思い出し、無意識に唇を強く噛み締める。
亡骸が散乱している暗い、闇のような通路を、僕はただただ進んでいった。
【人物紹介】
城嶋裕輔(きじま ゆうすけ)
四月二十一日生まれ おひつじ座
喰種捜査官養成学校卒業(主席)
CCG二十区支部所属 上等捜査官
A型
size 174cm 63kg F 27.0cm
like コーヒー 車 食べ歩き
Respect 有馬貴将
Quinque ナツムラ:鱗赫
Sレート喰種【夏村】の赫子から作られたクインケで、その形状は太刀で一定の範囲内に向けて無数の棘を放つギミック(刀身からは分離しない)が備えてある。