では第十九話です。
先程、外にある仮対策本部から報告を受けた。
先輩が【眼帯の喰種】と交戦し、負けたと。
ただ先輩は無傷で被害を受けたのはクインケだけらしい。
先輩が無事であることが分かり、一つだけ荷が下りたがまだまだ気は抜けない。
現在私の目の前には多くの捜査官、前線で戦う篠原特等と黒磐特等。
そしてあのSSSレート、【梟】。
特等以外の捜査官は全員後方に下がっており、攻撃すらせずただ黙って特等二人と【梟】の戦闘を見ている。
それも無理はない。
あまりにもハイレベルな戦いすぎて手が出せないのだ。
特に目を引くのは特等二人の鎧になっているクインケ、【アラタ】。
このクインケは【骸拾い】と呼ばれる喰種の赫子から作り出したもので、まだ試作段階のものらしい。
ただこのクインケは他のクインケとかなり違う部分がある。
それは赫者の赫子から作ったクインケであるということ。
赫者は共食いのなれの果てとも言われており、その力は普通の赫子と比べ物にならないくらい強い。
形状も身に纏うタイプが多いらしく、事実この【アラタ】もそうである。
だが、そんな強力なクインケを使っているのにもかかわらず、一向に【梟】を倒すどころか傷を負わせる気配すら感じられない。
歴戦の捜査官が二人いようともここまでの強さを発揮する【梟】に、私は少しの震えが止まらなかった。
特等二人がやられてしまったら、それこそ私たちの命はそこまでだ。
そんな感想を抱く最中、ついに特等二人が【梟】に対して攻撃を決めにかかった。
「そんな……」
だがそれでもなお、倒すどころか傷一つついていない【梟】。
もう、私達が殺されてしまうことは目に見えていた。
そう思っていたのに、予想に反して【梟】は意味深な言葉を残してこの場を去って行ってしまった。
―誰かの命を奪っていい理由などないと。
―命を奪う行為は等しく悪だと。
【梟】が去った後もその言葉の真意を考えてしまう。
人の血肉を食らう存在である喰種が、人の命を奪うことが悪だと言う。
その言葉は私たちを惑わすためのものなのか、それとも……
思考の渦にのまれそうになった私の耳にそれが届いたのは【梟】が去って間もなくの事だった。
二十三区にある喰種収容所【コクリア】が、【アオギリの樹】の本隊に襲撃されたと。
つまりこの場にいた【アオギリの樹】の構成員達は皆、陽動だったということだ。
私は特等の指示に従い、一先ずは建物の外にある仮対策本部へと向かうことにした。
この時まだ私は気付いていなかった。
既に物語の歯車が、少しずつ少しずつずれていっているということに。
もう決して、後には戻れない。
× × ×
「へー。まんまと引っかかったてわけか。馬鹿だなー白鳩も」
二十三区の【コクリア】の屋上。三人の幹部を始めとした【アオギリの樹】の喰種がそこにいた。
『珍しく一緒だねタッキーさん』
「あはは、酷いなエトちゃん。これでも積極的に参加している方だよ。ね、タタラさん?」
「……俺に振るな」
「うわー相変わらず厳しいなー」
会話から楽しく談笑しているようにも聞き取れるが、辺りの景色は赫子による多大な傷痕を残している。
そこはもう、【アオギリの樹】に襲撃された後だった。
「にしてもまさかヤモリさんがやられるとは思わなかったなー。意外にやるねー【リゼ持ち】の隻眼君」
『そうだね。カネキ君、【アオギリの樹】に来てくれないかなー』
その会話を最後に、彼らはその場を離れる。
もうじきCCG最強と謳われる有馬貴将が来る。
彼と戦うのは多大な被害を出しかねないと判断しての事だった。
何より【アオギリの樹】には次なる目標が存在している。
こんなところで時間を食う暇などないのだ。
『それじゃあ次行こっか』
「ああ」
「オッケー。さっさと探しちゃおー」
次なる目標である嘉納明博を探すべくその場をあとにする【アオギリの樹】一同。
CCGと白鳩。そして金木研を中心に更に状況は急加速していく。
もう、坂を転がり始めた石を止めることは誰にもできない。
【人物紹介】
雨宮梨紗(あまみや りさ)
九月十日生まれ 乙女座
喰種捜査官養成学校卒業(次席)
CCG二十区支部所属 二等捜査官
AB型
size 156cm 45kg F 23.5cm
like 読書 音楽鑑賞
Respect 城嶋裕輔
Quinque ダルク23:甲赫
長剣型のクインケで、大きく重さもあるためその威力はかなり強力。元々は城嶋が一等捜査官の時に使っていたもので、城嶋が【ナツムラ】を使い始めてから譲り受けた。