まだ彼が二十歳の時だから若いですね。
それでは第二十一話です。
―五年前。
「本日付でこちらに配属となりました城嶋裕輔三等捜査官です!よろしくお願いします!」
アカデミーを卒業して間もなく、僕は捜査官として新たな一歩を踏みだしていた。
ここはCCG本部。
今現在数人の先輩捜査官の前で自己紹介をしている。
その中にはあの【不屈の篠原】と呼ばれる特等捜査官の姿もあり、アカデミーと違った雰囲気に緊張が解けない。
「君が城嶋君か。話は聞いているよ。アカデミーを首席で卒業した有望株だって?」
「いえ、そんな大それたものでは……」
砕けた感じで話しかけてくれる篠原特等のおかげで、僕が感じていた場の雰囲気が少しだけ和らいだ。
他にも色々な人と二言三言話した後、一人の女性捜査官を紹介された。
「彼女が君のパートナーになる子だ」
「な、七瀬雪菜上等捜査官です。他の先輩捜査官と比べたら頼りないかもしれないけど頑張るから、その、よろしくね」
「あ、はい。よろしくお願いします」
女性捜査官もいるにはいる。現にアカデミーでも何人かいた。
でも決して数は多いわけではない。
しかもこんなふわふわした感じの人なんて……
「ま、後の事は七瀬に聞いてくれ。何せパートナーだからな」
「……はい」
そう言って僕と七瀬上等以外の捜査官達は部屋を後にしていった。
何とも言えない気まずい空気が流れる。
「えと、それじゃあ施設内と仕事について簡単に説明していくね」
それからというもの、本当に淡々と簡単に説明されていく。
覚えられない量と内容ではないのでその点に関しては大丈夫だが、この人が心配だ。
自分の事を頼りないかもしれないとか言っていたけど、本当にちょっと頼りない。
こんなふわふわしてる頼りない人が上等捜査官なんて信じられない。
この程度で上等捜査官まで行けるならあっという間に上等捜査官になってあの【赤い布の喰種】に近付けるかもしれない。
「何か、質問とかはあるかな?」
「いえ。特にはないです」
「そ、そっか。それじゃあ早速仕事していこっか」
そう言って案内されたのはオフィスで、他の捜査官もちらほら見える。
席、荷物の数と見比べると本来の半分も出払っているのだろう。
「実は今【Mr.J】と呼ばれてる喰種を捜査してるの」
「【Mr.J】?」
僕の問いにこくりと首を縦に頷き、話を続ける。
「その喰種の情報は男だということと尾赫を持つということだけなの。名付けもその喰種のマジシャンみたいな恰好が由来だし」
つまりほとんど情報がない、ということか。
こうしている間にも喰種による犠牲者が増えているというのに、捜査が全然進んでいないなんて……
「すぐに調べましょう。時間が惜しいです」
「あ、うん。えと……じゃあ取り敢えず現場から当たってみようか」
「はい」
方針が決まり局を出る。
そのまま交通機関などを使って行くのかと思ったのだが、ついていった先にあったのは車だった。
「車、ですか?」
「うん。こっちの方が捜査しやすいし。裕輔君も車あった方がいいよ」
「はぁ、そうですか。……って名前呼びですか」
「え?あ、あの折角パートナーになったんだから親しみを込めて呼んでみたんだけど……嫌、かな?」
「いえ、別に嫌なわけではないですが」
「じゃあ、裕輔君って呼ぶね?裕輔君も私の事雪菜でいいよ」
「……じゃあ、雪菜さん」
「うん……!」
嬉しそうな笑みを漏らして車を運転する雪菜さん。
その姿も、先程の自己紹介から今に至るまで、この人の全てが普通の女性にしか見えない。
この人と捜査して事件を解決することが、喰種を処分することができるのかという不安を胸に抱きながら、ただ黙って現場に向かっていった。
本当に捜査官なりたての城嶋さん。
ちょっとだけ口が悪いというか雰囲気が固いというか……
若さゆえ、ですかね?笑
次回も続きます。