上手くかけたかわからないですが……
それでは第五話です。
曇天模様の空。これはどうやら一雨来そうだ。
そんなことを考えながら次の現場へと向かう。
あいにくと晴れる気配がない空は、僕を憂鬱にさせる。
現在向かっているのは雨宮が統計して予測してくれた【蝙蝠】出現ポイントの最後の場所。
これで見付からなかったら、また明日改めて同じポイントをいくつか捜査することになる。
犠牲者を出したくない以上、ここで決めなければならない。
「ここみたいだな」
道脇に車を止めて一帯を眺める。
そこは倉庫が並ぶ港付近。ここでの捕食回数はそこまで多くはないが、【蝙蝠】が人間社会に馴染んでいない喰種ならば身を隠す場所としては条件がいい。
より一層警戒を強めながら倉庫の中へと入っていく。
中は色々と物が混在していたが、ただでさえ広いのだからあまり気にはならない。
雨宮に後方を任せてどんどん先へと進んでいく。
「……いませんね」
「うん。これはまた明日捜査のしなおしかな」
奥まで進んだが満足した結果は得られず、一先ず局へ戻ることにした。
しばらく歩き出入り口に差し掛かったところで、後ろから空を切りこちらに向かう何かの音が微かに聞こえた。
”ナツムラ”を展開し、雨宮を押しのけ一閃でその全てを弾く。
弾かれたものは全て羽赫の赫子。
帰ろうとして気を抜いた状態で背を向けたところを仕留めるつもりだったんだろう。
だが残念ながら気なんて抜いていない。
こういう可能性も視野に入れていたからな。
赫子の発信源を見るとそこには全身を黒で包み、精巧に作られた蝙蝠のマスクを被る者がいた。
―間違いなく【蝙蝠】だ。情報にあった特徴と一致するし、こんな分かりやすい恰好をしているのだから断言できる。
”ナツムラ”を構えて【蝙蝠】に向き合う。
”ナツムラ”は鱗赫のクインケで形状は太刀。
このクインケは【夏村】という喰種の赫子から作ったクインケで、一つちょっとした仕掛けがある。それを切り出すタイミングはミスれない。
「雨宮は銃での後方支援を頼む。あと奴は早いらしい。十分に気をつけろ。決して気を抜くな」
「はい。了解しました」
僕の後ろに下がり銃を構える雨宮。
さて、これでこちらに準備は万端だ。いつでも行ける。
「白鳩か。これはまた厄介な。まぁでも……」
【蝙蝠】の羽赫が大きく広がる。
「―ぶっ殺して喰い尽くしてやるよっ!!」
動き出すとともに一気に赫子を飛ばしてくる【蝙蝠】。
躱し弾きながら【蝙蝠】との間合いを測る。
雨宮が銃で牽制してくれていることもあり、中々【蝙蝠】はこちらに踏み込んでこない。
だがずっと赫子を飛ばしてくるため、こちらも攻めに出れない状態だ。
このままだと持久戦になってしまう。あまりリスクを負うようなことはしたくない。
「雨宮、銃からクインケの使用に移行。二人で一気に切り込むよ」
「了解です」
そう返事すると雨宮は銃をホルスターにしまい、すぐさまクインケを起動する。
―”ダルク23”。甲赫のクインケで、形状は長剣。以前僕が一等捜査官の時に使用していたもので、”ナツムラ”を使うようになった際、雨宮に譲ったのだ。
知的な文学少女なイメージがある雨宮だが、意外にも見た目からは想像できない馬鹿力と素早さを併せ持つ超近接タイプ。
ほとんど隙間なく飛んでくる赫子を全て躱し、一気に【蝙蝠】に詰め寄る。
僕もそれに合わせて素早く回り込み、挟み合うような形で【蝙蝠】との距離を詰める。
基本的に羽赫の喰種は瞬発系の攻撃を行う短期決戦タイプだ。
稀に近接が得意と言うのもいるが、大体は赫子を飛ばして戦う遠距離型が多い。
【蝙蝠】も今までの資料から遠距離型だと思われる。
ならば詰めて接近戦に持ち込めば一気に勝率が上がるのだ。
ほぼ同時に斬りかかったがジャンプ一つで躱される。
その直後に頭上から大量の赫子が降り注ぎ、横に転がり何とか回避。
雨宮は着地のタイミングを狙って”ダルク23”を下から上へと振り上げるが、赫子で思いっきり叩き飛ばされる。
流石にレートSともなると一筋縄ではいかない。
「ふっ!」
勢いよく息を吐き出しいくつもの剣撃を繰り出す。
【蝙蝠】も負けじと赫子で応戦してくるため、打ち合いが続く。
たまに赫子を飛ばしてくることもあり、一瞬の油断すら許されない。
もし”ナツムラ”のギミックを使うとしたらチャンスは一度きり。
外してしまえば警戒され二度目はないだろう。
ギミックを打ち込む僅かな隙を作るためにひたすら”ナツムラ”で斬りつける。
羽赫はエネルギー消費が激しい。
だからここまで長引いてしまえばもう赫子を飛ばす可能性も低くなるし、何より疲れが見える。
ここぞとばかりにさらに素早い剣撃を浴びせる。
そしてついに、【蝙蝠】に一瞬の隙が生まれた。
「(ここだ!!)」
その隙を見逃すことなく、僕は迷わず”ナツムラ”のギミックを起動させた。