それでは第九話です。
閉じきったカーテンの隙間から光が差し込む。
それがかろうじて今が朝か夜かを分からせてくれる。
部屋は全体的に埃っぽく、普段から使われていない事が窺える。
誰もいない薄暗い部屋の中で、僕は手足を鎖で繋がれていた。
もう何日も食事を摂っていないし、入浴もしていない。
トイレには行かせてもらえるけど足の鎖が外されるだけ。
こんな監禁生活が始まってからどれだけの時間が経ったかも、もうわからない。
朦朧とした意識の中、古い扉が軋みながら開いた。
「さてさて、今日は何して遊びましょうか。私の可愛いお人形ちゃん」
腰よりも長い髪を乱れさせて入ってきた女は僕を見てそう言った。
この女は喰種。僕はこの女に人形として扱われている。
数えきれない期間こんな環境の中にいて、いつしか僕の心はこの状況に慣れてしまっていた。
「そうだ。今日は楽器で遊びましょう!」
そう言って女は僕の指に手をかける。
「じゃあまずは右手から奏でましょう」
ああ……また今日も、終わりのない日々が始まる。
× × ×
「……寝てたのか」
気が付くと僕は自室にいた。
どうやら昨日帰ってからすぐに寝てしまったようだ。
両手を上に体を伸ばす。
寝起きの余韻に少し浸ってからすぐに局へ行く準備をする。
現在は真戸さんと亜門のペアとともに、【ラビット】を追っている。
捜査官の一人が殺されて局内が騒がしくなってからすぐに僕らは真戸さん達と合流した。
【ラビット】の情報はウサギのお面を被っていたことと、華奢な体つきから女性ではないかという予想がされている。
その情報を元に調べているが、中々捜査は進まない。
例の【フエグチ】には娘がいるようで、あの日逃げられてしまったらしい。
【ラビット】がその娘の代わりに復讐として捜査官を殺したのならば、二人は繋がっていることになる。
【ラビット】よりは【フエグチ】の娘の方が情報量が多いため、そちらの方から調べたら【ラビット】まで辿り着けると考え貼り紙をしている。
まぁそれでも今のところ情報提供者はゼロなのだが……。
「あれ?どうしたんですか真戸さん。こんなところで」
局へ着くとエントランスで真戸さんが立ち止まっていた。
「城嶋君か。いやなに、情報提供をしてきた学生の二人組がいてね。ふむ、私の勘も鈍ったかな?」
「?はぁ、そうですか」
よくわからないけど情報提供してきた学生か。
それはいいことを聞いたな。
「おおそうだ。実は【フエグチ】の娘をおびき出す作戦を思いついたのだが聞いてくれるかい?」
「え、是非聞かせてください!」
流石真戸さんだ。クインケ好きがなかったら今頃特等になっていてもおかしくはない人。
やはり僕とは違う。
聞いた真戸さんの案は、決して人道的なものではなかった。それでも可能性があるのならこれにかけるしかない。
そして、その時はやってきた。