超絶選り好み最強奥手サキュバス   作:麦村

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退魔シスター少年ノナ

 聖刻退魔部所属シスター。

 それがノナの肩書きだった。

 幼い頃から憧れていた退魔シスターの正装に身を包み、馬に乗って辺境、エトロの地へ向かう。

 ここがシスターになって初めての配属先だ。物寂しげな雰囲気の中、物珍しげな視線を向けられながら現地の教会へ辿り着いた。

 小さな教会の外壁は蔦が這っており、白かったであろうそれも雨風で劣化している。しかし、中からは何者かの気配がした。

 

「失礼しまーす……」

 

 そっと扉を開けて中を覗く。細身のシスターが教会の床を掃いていた。

 中は外とは違い、年季は感じられるが小綺麗に整っていた。

 

「あら……」

 

 シスターがノナの方に振り向く。ベールの下で長い黒髪が揺れた。

 ノナと同じか少し年上に見える少女だった。その赤い瞳とノナの視線が合う。

 

「あなたが……ノナさん、ですね? 話は聞いています。私はライラ。よろしくお願いします」

 

 ライラは穏やかに微笑みながら、静かに頭を下げた。

 なんというか、シスターらしいシスターだと思った。見るからに淑やかそうな少女で、自分とは大違いである。

 

「あっ、こ、こちらこそ、よろしくお願いします!」

 

 慌ててノナも頭を下げる。その様子をライラは微笑みながら見つめていた。

 ともあれ、明日からノナの退魔シスターとしての活動が始まる。ライラは見たところ、戦う力の無い、ただの少女に見える。魔力も少ないし、全体的に華奢だ。

 となれば、自分が守らなければならない。ノナは気を引き締めて自室の確認に向かった。

 

 ◆◆◆

 

 ある日のことである。

 その日、私ことライエントゥーラはいつものように「男の娘シスターとかいねーかなー」と各地を回っていた。

 純粋無垢な男の娘シスターというのは素晴らしいものである。ぜひ結婚してお婿さんにしたい。

 そういう欲望を持つのは決しておかしなことではないだろう。

 いくら世界から神父という概念を消し去って、男女どちらでもシスターになるようにしたとはいえ、そもそも男の娘自体が貴重なのである。ここ数十年適当に見回っているが、全く理想の男の娘シスターには出会えない。

 まあ数十年程度では無理か、と若干諦めながら田舎の神学校の上空をふよふよと浮いていると、一人の少年が目に入った。

 

「そんなことでは立派な退魔シスターにはなれませんよ。ノナくん」

「ぐぅ……!」

 

 何やら武術の訓練をしているようで、老シスター(男)とシスター見習いらしい小さな少年が向かい合っていた。

 少年。しかし見た目はほとんど少女だ。お肌は怪我をしているとはいえすべすべだし、目もぱっちりしている。髪は長めで低めの位置でリボンでまとめているのがかわいい。あれは自分でやっているのだろうか。どっちにしろかわいい。

 とにかく、見た目はかなり好みだ。かわいい。

 いやいや。このぐらいならそこそこ見たことがある。それに年齢的に、あのぐらいの少年ならそういう容姿をしている時もある。

 問題は成長後だ。ああいう少年は大体イケメンになる。身長高くて細マッチョのやつだ。そういうのは良くないと思う。かわいいままでいてくれ。

 

 まあいい。あのぐらいかわいいならば一時の無聊を慰めるのにいいだろう。

 そんなわけで私はひっそりと彼の成長を見守ることにしたのだった。

 

 ◆◆◆

 

 おはようからおやすみまで姿を隠しつつ、ノナを観察する。

 

「んー……。おはようございまーす……。ふぁ……」

 

 朝はなんかぽやぽやしている。かわいい。髪に寝癖がついているのがキュート。

 これがイケメンだったら間抜けだな……と思っていたところだが、男の娘なら許される。

 まだ眠たいのかうとうとしながら顔を洗っている。まだ日が昇ってすぐ、というところなのでそれもしょうがないだろう。

 水が冷たいのか眉根を寄せているのも表情豊かでかわいい。

 

「ふー……」

 

 顔を拭いたところで若干目が覚めたのか、部屋に戻って身支度を始める。

 ベッドを綺麗にした後、寝巻きを脱ぎ始めて肌着姿になる。

 毎日訓練を頑張っているはずなのに薄い身体が良い。特に背中から尻にかけてのラインは芸術的だと思う。足なんかはちゃんと男の子らしいのがね……。良い……。

 時を止めて肌着の上からの身体をじっくり観察して堪能する。

 お触りはNGである。勝手に他人の身体に触れて言い訳がないだろ。

 それでも冒険者の初めての冒険並みにわくわくする。勝手に笑顔になっちゃうな……。などと思いながら、でもこれセクハラじゃね? と正気に戻ったところでやめる。淫魔なのでセクハラも何も無いが、なんだか私は昔からそういう風に思いがちだ。

 衣擦れの音に耳をそばだてて、そっと空を見上げる。今日も快晴だ。

 これでも裸は見ない主義なのだ。想像の中が一番興奮する。

 音が止まったところで振り返る。そうすればシスター服に身を包んだノナがそこにいる。かわいい。退魔シスターの服とは違うシンプルな紺色のワンピースだが、素材の味が堪能できて良い。

 一時期クソダサキュロットにした上層部に丁寧に呪いを掛けた甲斐がある。やっぱり男も女もシスターはみんな紺色のワンピースを着るべきなんだよ。中にズボン履いてもいいから。

 それからノナはふんわりとした髪を手櫛で纏める。あのリボンはプレゼントらしく、随分とお気に入りのようだ。かわいいので私も何かプレゼントしたい。

 

「……よしっ!」

 

 そして出来を確かめると同時に笑顔になる。それを見ていると私も勝手に笑顔になっちゃって前が見えなくなる。ちょっと下瞼が上がりすぎるのだ。かわいすぎて。

 手櫛で整えたとはいえ、ちょっとアホ毛が残ってるのもかわいい。愛嬌がある。でも私が直してあげたい。ブラッシングから丁寧に髪型をセットしてあげたい。

 そんなことを考えていると準備が終わったノナが部屋を出ていく。姿を隠しながら真後ろで浮遊して着いていく。

 ノナが動くたびに左右に揺れる髪とちらちらと見えるうなじと生え際を見ているだけで笑顔になってしまう。

 ノナを観察していると大体笑顔になっている。多分これは世界平和に繋がると思う。いや、そうでもないか……。

 

 そのまま朝の清掃に移る。ここの神学校は住み込みで、朝の清掃から一日が始まるのだ。

 

「おはよー、ノナー」

「おはようー」

「今日も訓練、頑張ってね」

「うん!」

 

 なお、ここは男女共学である。ある程度の歳になったら他の所に移るらしいが、ノナはここの老シスター(男)に師事しているとかで、女の子だらけの所にまだ残っている。

 羨ましい。なんでノナに話しかけられるんだ? 私なんか未だにそういうふうに話したことがないのに。夢の中ではちょっとだけ話しているけど。

 やっぱり悪魔に爽やかな朝とかストレスにしかならないよな、などと思いながらノナが掃除をする様子を眺める。すると心が穏やかになっていく。ノナがいなければ私は破壊の限りを尽くしていたかもしれない……。

 

「ふぅ……。よし!」

 

 隅々まで担当箇所を綺麗にしたノナが次に向かったのは食堂だった。不真面目なシスター見習いの女子どもが既に食卓についている。ノナは真面目なので後日、おまえらが担当した不完全な場所を掃除することになるんだぞ、とちょっと恨みがましい目を向けてやる。子供なので全然そんなことは考えていないと思うが。それでも真面目なノナはかわいいので良いと思う。

 全員が揃ったところで朝の祈りと食前の祈りをし、朝食が始まる。裏の畑で採れた野菜と黒パン、と実に質素な食事だ。ノナは成長期なんだから肉を食べさせてやれ、と密かに心の内で抗議する。

 もっと美味しいご飯を食べさせてあげたい。そうは思いつつも、ノナ自身は割と美味しそうに食べているので何も言えない。ぱくぱくと食べていくのがかわいい。

 物足りないのか、大体昼には腹を鳴らしているが。

 食後の祈りの後には訓練である。他のシスター見習いは座学の時間だが、ノナはとっくに終えているのであの老シスター(男)と戦闘訓練をしている。

 どうやらノナは退魔シスターになりたいらしく、そのために毎日傷だらけになりながら訓練をしているのだ。せっかくの綺麗なお肌が傷付いたら大変だろ、と私は密かに傷が残らないようにものすごく手加減した治療魔法を掛けている。

 流石にノナ自身の意思を曲げるようなことはするべきではないし、退魔シスターの前に堂々と悪魔が出て行ったら戦う以外無いのだ。

 別にノナになら槍を向けられてもいいが、この実力差ではうっかり殺しかねないのでそういうことにならないようにしている。

 

「ノナくん。昨日教えたことは忘れたのですか?」

「い、いえ……!」

 

 老シスター(男)は案外スパルタで、かわいいノナを傷だらけにする。でも頑張っているノナが見られるので許している。決して理不尽な教え方ではなく、ちょっと厳しいだけでノナの実力も上がっていっているのが分かる。

 観察を始めた時に比べれば、少し前までよちよち歩きだった子供が二本足で走っているぐらいまで変わっている。良い指導者だ。魔法は下手くそだが。そこはどうにかしろ。悪魔の前でそんなその場しのぎみたいな雑な魔法が有効なわけないだろ。私の存在に気づかないくせに。まあ、悪魔と戦うのはベテランの退魔シスターぐらいだが……。

 

「もう一回、お願いします……!」

「どこからでもかかってきなさい」

 

 訓練風景を昼まで見続ける。ちょっとハラハラしつつもノナの成長が嬉しい。弱すぎると小突いただけで死んでしまいそうなので、強い方がずっと良い。私は最終的にはどれだけ絞っても大丈夫な人間が良いのだから。

 そんなわけで体術や棒術をみっちりと叩き込まれ、お腹を空かせたノナが食堂へ行く。

 昼は朝よりもお腹に溜まりそうなものが多い。これをノナはまたもやぱくぱくと平らげていく。残念ながら、ここには食が細いやつらだらけなので、成長期の男子の食欲が分かっていないようだが。

 

 昼過ぎは休憩時間である。ノナは学校の外に出ると、森へと入っていく。そして手当たり次第に木の実やきのこを集めていった。もちろん食べられるものだけだが。前、毒きのこに当たって三日三晩苦しんだのが余程堪えているらしい。

 そしてそれをこっそり魔法で焼いて食べる。

 いやあ、睡眠学習の甲斐があるというものだ。夢の中でこっそり魔法の個人指導をしたおかげでノナはあの老シスター(男)よりも魔法が上手い。記憶もほとんど残らないようにしているので、悪魔だとはバレない。完璧な作戦だ。

 

「はむ……うーん」

 

 学校では気にしている作法を今だけは忘れたように木の実を口いっぱいに詰め込んでいる。かわいい。

 いっぱい食べてほしいのでこっそり木の実やきのこを増やしているのは秘密だ。

 その後、ある程度腹が膨れたらしいノナは学校へ戻り、午後は魔法の授業を受ける。主に浄化や治療などの魔物との戦闘で有効な魔法だ。私が使うものとはまた違う系統なので、私も興味がある。というか浄化とか使ったことないし。悪魔に要るとお思いで?

 とはいえ、ノナには少し難しいところがあるようなので、そこを睡眠学習でみっちりと詰め込むのだ。ノナが強ければ強いほど私も我慢せずに済む。それは良いことだ。

 その後も他の授業なんかが日替わりであるのだが、聖歌の授業の時のノナは特に良い。小さな口を開いていっぱい歌っているところがかわいい。音程は若干外れることもあるが、楽しそうに歌うところが良い。

 そして夕食。祝い事の時なんかには肉が出るが、普段は質素な食事だ。

 それを食べた後は風呂である。

 数百年前までは無かったが、やっぱりシスターは清潔な方が良い、と低コストな風呂を広めたところ、ようやく田舎まで浸透してきた。良いことだ。おかげでほかほかになってご満悦なノナを見ることができる。まあ私の功績だが。なお、裸は見ないことにしているのは重々ご承知いただきたい。私はその辺の淫魔とは違うので。

 そして夜の祈りをした後に各々部屋に戻って就寝。ゆったりとした寝巻きのノナ。あどけない寝顔がかわいいのである。それを眺めたり、持ってきた恋愛小説を読んだりしていると朝になっている。

 

 それがその時期の私の生活サイクルだった。




サキュバスなので多分許される行為。
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