超絶選り好み最強奥手サキュバス   作:麦村

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ノ|壁|ナ

「ノナさん、大丈夫ですか!?」

 

 ユニコーンの首を適度に絞めつつ、なんとか言うことを聞かせて村に帰ることに成功した。

 全く、私よりも遅いくせに無駄に抵抗しやがって。度々振り落とそうとしてくるし。

 

 それはともかく、今は目の前のこれである。

 私が数日掛けて綺麗にした教会の外壁。そこから何者かの下半身が生えていた。

 白いスカートとブーツを履いたそれは少女のものに見えるだろう。

 だが……男だ。

 というか、ノナの下半身である。

 服にはノナと私以外が触った痕跡は無い。ひとまずは無事そうで良かった。

 一体何だってこんな壁尻状態になっているのかは分からないが、今は少し堪能させてもらおう。

 

「……こちら側に来てもらうことはできますか?」

「できますが……」

 

 おお、これは良い尻だ。程よく薄い感じで男の子っぽいっていうか……。でも女の子っぽい丸みも若干あるというか……。究極のハイブリッドである。

 薄手の白い布地を凝視すれば、私のスーパー淫魔アイならばこの下をも透視することができるだろう。とても気になるが、それはノナが自主的に見せてくれる時まで取っておく。……そんな時が来ると良いなあ。

 そして、見えるのは尻だけではない。壁に埋まったノナが脚を動かすといつもは見えない膝の裏の窪みが見える。ひかがみとか言うやつだ。

 その窪みがつるっとしていて触りたくなると言うか、そういう魅力がある。

 もうしばらく見つめていたいが、あまり長く見ていても怪しまれてしまうだろう。

 ……このまま後ろから引き抜くことにしたら、ノナの細い腰とか触れないだろうか。すごく触りたい。

 

「早く……」

「はい……」

 

 しかし、ノナは何やら私のことを少し怪しんでいるようだ。

 邪なことを考えているのがバレたのだろうか。今はまだ半信半疑といったところのようだが……。

 いきり立つユニコーンを無理やり引っ張り、ノナの上半身の側へとやって来る。そうすれば、なぜかノナは全く落ち着いていないユニコーンを見て安心したようだった。

 

「よかった……。ライラさん、ユニコーンに乗れたんですね」

「はい……?」

「ええっと、ともかく、今はこの村に淫魔がいて、犠牲者もかなり出ています。危険なので、ライラさんはユニコーンと一緒にいてください」

「……はい?」

 

 むしろ、私にとってどちらかと言えば危険なのはユニコーンの方なんだよな。

 淫魔は弱いので魅了が効いている間に殴れる。そもそも同族なので敵対する理由も薄い。

 だが、ユニコーンは悪魔への嫌悪感のせいなのか、魅了が若干効きにくいし、殺意マシマシで蹴ってくる。全く効かないが、それでも気には障る。

 

「あの、ノナさん。なぜそのように壁に埋まって……?」

「ついさっき言った淫魔の仕業です。裏庭に居たので倒そうとしたところ、壁に穴を開けて逃げられました。追いかけて穴に入ったところでこんなふうに埋められて……」

「……なるほど」

「ライラさんは……壁に穴を開ける魔法を使えますか? それか、崩れないようにする魔法を……」

「……少しお待ちください」

 

 この壁の様子からすると、淫魔に人気のあの魔法ではないだろうか。噂によれば、服に使って変な穴を開ける奴らもいるらしい。自分の力ですればいいのに……。

 しかし、普通の穴開け魔法とは違い解除がしにくいだとか、対となる呪文で中に入っているものを傷付けずに穴をいい具合に埋めることもできるだとか、そういう特徴がある。

 普通にやれば、その魔法以外での解除はできないだろう。

 

「……穴開け(ホール)

「あっ、抜けられそうです」

「良かった」

 

 まあ私ならば、普通の魔法で上書きできるが。魔力が強いので。

 いちいち淫魔用の穴開け呪文とかいう微妙な機能の多いやつを使うよりも、普通の穴開け呪文の方が燃費も良い。

 ……この魔法、詠唱したの何年振りだろう。そもそも使わないもんな……。いつも殴って穴開けるし……。

 

充填(フィル)

「助かりました……。ありがとうございます」

 

 もぞもぞと壁から這い出てきたノナは真っ白なワンピースを纏っていた。

 その背中は露出しており、艶かしい肩甲骨が丸見えである。

 こんなものが見えていいのか。いいのだ。とても良いものなので。

 私は瞬間的にカメラを取り出し、肩甲骨とポニーテールを写真に収めた。これで見放題だ。

 ノナ、ポニーテール似合ってるね。健康的でかわいいよ。すごく。うなじのところにちょっとだけ纏まりきらなかった髪が垂れているのがコケティッシュ。

 ところで、なぜこの前渡したばかりの装備を着ているのだろうか。

 

「ノナさん、その格好は……?」

「あっ、こ、これは……その。服の替えが無かったので……」

「……そうですか」

 

 あくまであの服はみっちゃんのために作られた服なのだが、ノナにもよく似合っている。

 シスター服以外で女装している姿を見るのは初めてだが、これは良いものだ。

 もしも、ノナ専用に新しい服を仕立て直したならば、その時はどんなに似合っているのだろうか。

 今は少し落ち着かない様子で、服の全体を見たり、裾を気にしたりしているようだ。かわいい。

 

「へ、変ですよね? 装備なのでしょうがないとは思いますが、なんというか……その。女装、しているように見えますよね……」

「変ではありません」

「そ、そうですか? でも……」

「変ではないです」

「ライラさんがそう言うなら……そう、なのかもしれません」

「そうです」

 

 とてもよく似合っていると思うが、そうやって褒めてもノナには響かないかもしれない。

 本当はかわいいとか、プリティーだとか、めんこいだとか言ってしまいたいが、決してそれを言ったからといってノナが喜ぶとは限らないのだ。

 むしろ、それにショックを受けてしまうかもしれない。

 そこのところはよく考えて発言しなくては。

 

『……かわいー』

「すみません、聞き取れなかったので、もう一度言ってもらっても良いですか?」

「すみません。気にしないでください」

「そうですか……」

 

 危ない危ない。うっかり呟いてしまったが、悪魔語だったおかげで命拾いした。

 今時、悪魔語なんて使う奴はよっぽど歳を取った悪魔か、それしか知らない種族ぐらいだもんな。

 いやあ、人間には分からなくて助かった。

 とはいえ、ノナがどこかで悪魔語について知ってしまったら私も悪魔だとバレてしまうだろう。使わないように用心しなければ。

 

「……これから僕は村に淫魔について伝えて来るので、ライラさんはユニコーンと教会に居てください」

「……分かりました。お気を付けて」

「はい」

 

 それだけ言うとノナは急いで教会を出て行ってしまった。ポニーテールがぴょこぴょこと左右に揺れるのがかわいらしい。

 ……さて、その例の淫魔とやらは随分と危機察知能力が高いようだ。少なくとも、私の視界には全く入らなかった。

 だが、ここには魔法を使った痕跡がある。優れた悪魔というものは、わざと魔法を使わずに魔法を使えない人間や動物の仕業だと錯覚させることがあるのだが、その淫魔はそういった経験は無いようだ。

 それに、普通の淫魔ならば魅了を使うと思うのだが、こうしてわざわざ魔法を使ったあたり、そちらに自信がありそうに思える。変な自信を持った淫魔か、見た目が淫魔っぽい悪魔なのではないだろうか。

 教会の魔物避けや、ノナに持たせた悪魔除けのアミュレットを物ともしていないあたり、それなりに強力な悪魔なのだろう。

 何にせよ、私の愛しのノナを壁尻状態にし、それを堪能した罪は重い。私にノナの壁尻を見せたことをさっ引いても、かなりの重罪である。

 これから、この魔力を辿って殴りに行こうじゃないか。きっと、アグロッペヌヂョルなら大抵の同族のことは知っているだろうし、ついでに聞いておこう。

 なお、ユニコーンは邪魔なので外の杭に繋いでおいた。

 

『おいアグロッペヌヂョル』

『何?』

『ここにいたのはどいつだ?』

 

 淫魔だとは言っても、こいつの悪ふざけではないことは確かだ。

 変身ができる程度の魔力は取り戻しているようだし、魔力の偽装も簡単だろう。しかし、わざわざ見られるようなことはしないし、魔法よりも魅了を使うに決まっている。

 この犯人は随分と高度な魔法を使えるやつらしいな、と時間停止の痕跡を拭う。時間停止が使える淫魔ならば、それなりには有名なはずだ。

 

『……あんたが手を出さないって約束するなら、教えてあげても良いわよ』

『ふん……そいつは無理な相談だ』

『なら、殺さないっていうのは?』

『……考えといてやる』

『そ。なら良いわ。教えてあげる』

 

 随分と珍しくあっさりと教えてくれるものだ。いつもなら、もうちょっと渋って殴り合いになるのに。

 ひとまず、アグロッペヌヂョルが犯人を知って放置していたことは確定した。あとで干しておこう。

 だが、こんなのでも悪魔の端くれだ。たとえ、契約悪魔ではないとしても、こういう普通の約束は守るだろう。情報は正しいはずだ。

 もちろん、私も口約束だとしても、殺さない程度は守る。……ノナに変に手を出さなければ。

 

『ここに来たのはルテアリンゼって言う、まあ……淫魔ね』

『淫魔以外の何かがあるって言うのか』

『いや、あの子鈍臭いというか……。性格なんかは最近の淫魔っぽい子なんだけど、ちょっとねー……』

『ちょっとねー……じゃないんだよ。もうちょっと詳細に教えてもらわないと』

『いやあ、うーん……あの子、最初に会った時は私が経営する娼館の前でぶっ倒れてたのよ』

『はぁ? あんな搾りカスしかいないようなところに? わざわざ来たってわけ?』

『そうそう。なんでも、娼館ならお腹いっぱい食べられると思ったんだってさ』

 

 なんだかもう……残念な淫魔である。

 まあ、分かるよ。娼館に入れなかった奴だとか、満足し切れていない奴が近くにいるんじゃないか、と考えるのは。それか雇ってもらいたかったのか。

 だが、アグロのやつはこれでも契約悪魔に並ぶほどの経営者(娼館限定)で、こいつが直に運営する娼館ともなれば、どこの馬の骨とも分からないような淫魔は雇わない。雇うのは本当にエリート中のエリートだけだ。

 それに、客だって娼館目当てだし、近くには契約悪魔の金貸し屋もある。そりゃ全員娼館で満足すると言うものである。

 

『それで? 会いたいってことで良いの?』

『もちろん。穴を開けてノナを埋めた罪がどれだけ重いのか、思い知らせないと』

『……殺すのは無しでね』

『……』

 

 どうせ同族なのだ。殺さないぐらいはしてやってもいい。

 アグロのやつは何をしても魔神様が生き返らせるから殺しているだけで、普通の悪魔はそんなぽんぽん復活できない。そのあたりの配慮ぐらいはできる。

 

『じゃ、呼ぶから』

『呼ぶ? それで来るっていうのか?』

『リンゼー。ちょっとこっち来てー』

『……』

 

 アグロのやつがテレパシーで呼びかけてから数分。のろのろとターゲットの魔力反応が近づいてきた。

 さらに数分。暇だったので茶を入れていると、教会の扉が開いた。

 

「アンテグロスヌート様! ルテアリンゼ、ただいま駆けつけました!」

 

 そこに居たのは一人の淫魔だった。小柄な少女のような姿をしているが、その胸部だけは異様な大きさをしていた。

 身長や体格に対してものすごいアンバランスさで、片方だけでも頭ぐらいのサイズがありそうだ。いや、流石にそこまではないか。

 しかし、確実にアグロのやつよりもデカい。実に邪魔そうだ。魔界闘技大会に出たら真っ先にもがれる対象だろう。

 そんなルテアリンゼとやらはピシッ、と敬礼をした後に鳥籠の中のアグロッペヌヂョルを見て目を見開いた。

 

「あ、あ、アンテグロスヌート様!? どうされたんですか!? そのようなお姿で!」

『まあまあリンゼ落ち着いて。ほら、お茶でも飲みなさいよ』

「この茶は私のだぞ。誰が飲ませるってんだ」

「な、なんですかこのシスター! 人間のくせにアンテグロスヌート様に失礼じゃないですか!」

「……なんか、残念だな」

『ね?』

「な、な……!」

 

 この数分で分かったが、確かにあまりにも残念すぎる。

 まず、ここに来るまでが遅い。時間停止が使えるならば、テレポートぐらいはできるだろう。それか、自分の時間だけを早くしてもいいし、それだけ高度な魔法が使えるのならば普通の加速魔法も使えるだろう。

 だが、それを使った素振りが全く無い。普通に飛んできただけのようだ。いや、普通に飛んだにしても遅いので歩いてきた可能性もある。

 ついでに、さっきまでアグロのやつがそこに居たことに気がついていなかったようだし、擬態している私のことを人間だと思っている。それなりの悪魔ならばどちらも分かるだろう。

 あとめちゃくちゃ弱い。普通に殴ったら死ぬ。それどころか、極限まで力を抜いて触らなければ死にそうだ。あまりにもか弱すぎる。羽虫か何かだろうか。

 ……そうか。触ったら死ぬからあんなに素直に呼んだのか。こいつを殴ることよりも、約束を守る方がよっぽど重要なので、少なくとも暴力でどうこうすることはできない。なんか、こう。やるせないな……。

 ひとまず、ここには悪魔しかいないし、その悪魔に人間だと思われているのは癪なので、ベールを外して角を出してみる。

 流石にこれで正体が分かったようで、途端にこちらに指を突きつけてきた。普通に失礼だな、こいつ。

 

「あ、ああ、悪魔!? シスターのくせに!?」

「……あれ、分かんない?」

『分かんないわよ。リンゼは』

「……昔はこれだけで良かったのになあ」

 

 左角が折れた女淫魔となると、かなり特徴的だとは思うのだがどうにも反応が薄い。ライエントゥーラの名も姿も、最近の悪魔は分からないということだろう。嘆かわしいことだ。大罪神官なのになあ……。

 しょうがないのでアグロッペヌヂョルを鳥籠から摘み出し、その辺の椅子に投げる。そうすれば瞬間的に変化を終えたアグロのやつが人間に近い姿で椅子に座った。

 あとはこいつが話せば良いだろう。

 

「久しぶりね、リンゼ」

「は、はい!」

「早速だけど……そこのライエントゥーラがあなたに話があるそうなの。聞いてくれる?」

「もちろんです! 一言一句、聞き逃しません!」

 

 ルテアリンゼ……ルゥリィとかでいいか。ルゥリィはアグロに向かってハキハキと返事をした。

 そしてそのすぐ後にこちらに向き直り、眉間に皺を寄せて叫んできた。

 

「この不敬な悪魔め! アンテグロスヌート様をあんな雑に扱って!!」

 

 不敬なのはどっちなんだか。

 アグロへの返事だけは良いやつめ。だが、あまりにも私を舐めていないか? 実力差というものを分かっていないのだろうか。それぐらい、外に繋いでいるユニコーンでも分かるぞ。

 ……さて。これからこいつをどうしてくれようか。殴ったら死ぬし、うっかり触っても死ぬ。それでも、実力差を分からせるぐらいはできるだろう。

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