まったりと行く。   作:hayawo_penname

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 「ぼくの精神には一筋の白髪もないし、
  年寄りにありがちな優しさもない!
  声の力で世界を完膚なきまでに破壊して、
  ぼくは進む、美男子で
  二十二歳。」

  -ウラジーミル・マヤコフスキー
   「ズボンをはいた雲」

 初志貫徹


始まり、始まり?

 

 

 

 おい、これは青いレッスンじゃない!

 

 君、話を聞いてるか?

 

 ちがう、ちがう!お前じゃない!

 

 そう、君だ!

 

 毎朝したくもない早起きをして、家畜のように詰め込まれ、心臓に白髪を生やして倒れ込む。

 

 違うかもしれんがね。

 

 まあとにかく、君が今、灰色のビーチでサマーヴァケーションを楽しんでいることに変わりはない。

 

 君は、まさしく太陽のように熱く輝くロマンチックな奴というわけではないのだから、少しは人の話を聞いた方がいいと思うがね…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あなたは、死んだ。

 

 家に帰る途中、交通事故に遭って命を落とした。

 

 よくある出来事だった、死者が出たこと以外は。

 

 痛みはなかった。

 

 救急隊員は懸命に救助活動をしてくれたが、無駄だった。

 

 あなたの体はバラバラになっていたから、逆にそれでよかったと思う。

 

 そして、私に会った。

 

 「うぅっ、一体何が起こった?」

 

 「ここはどこだ?」

 

 あなたは、死んだのです。

 

 私は冷静に答えた。言葉を飾ることに、意味はない。

 

 「確か......あー.........そうだ、トラックだ...トラックが......スリップしたんだ......そして......」

 

 あなたは頭を手でさすりながら、深刻そうな顔でしどろもどろに言う。

 

 その通り。

 

 「俺は......し、死んだんですか?」

 

 ええ。

 

 そう、気を落とさないで。誰だって死ぬものです。

 

 あなたは辺りを見渡す。

 

 何もなかった。完全な、虚無だ。

 

 ただ、あなたと私だけ。

 

 「ここは、どこですか?」

 

 「死後の世界ですか?」

 

 まあ、そんなところです。

 

 「あなたは...神ですか?」

 

 そうですよ。

 

 「俺の、私の家族は......」

 

 彼女らがどうしたのですか?

 

 「無事でしょうか......?」

 

 気になりますか。私は言った。

 

 死んだばかりなのに、一番気になるのは家族のこと。

 

 とても良い心がけです。

 

 あなたは興味深そうに私を見る。

 

 あなたには、私は神のようには見えなかった。

 

 どこかの男性か女性のように見えた。

 

 曖昧な姿かたちに感じられた。

 

 気にしないで。家族なら大丈夫です。

 

 子どもたちは、ずっとあなたを忘れることはありませんし、

 

 あなたを軽蔑する気持ちを持つことなどないでしょう。

 

 あなたの妻は泣くこともあるでしょうが、

 

 本当は密かにホッとしています。

 

 実を言うと、あなたたちの関係は崩れかけていたから.........

 

 慰めになるかは分かりませんが、

 

 奥さんはあなたがいなくなって安心していることに、後ろめたさを感じているでしょう。

 

 「そうですか......」

 

 「じゃあ、これからどうなるんですか?」

 

 「天国か、地獄へ行かされるんですか?」

 

 いいえ、あなたは転生するのです。

 

 「ああ!」

 

 「じゃあ、ヒンドゥー教が正しかったんですね」

 

 すべての宗教が、それぞれに正しいのですよ。

 

 少し歩きましょう。

 

 あなたは虚無の中を共に歩いていく。

 

 「どこへ向かっているんですか?」

 

 どこへも向かっていませんよ。

 

 散歩しながら話すのは楽しいですから。

 

 「これからどうなるんですか?」

 

 「生まれ変わったら、一からやり直しですよね」

 

 「赤ちゃんから......」

 

 「これまでの経験や起きたことは、全て無駄だったんですか?」

 

 そうではありません。

 

 前世の記憶は、すべてあなたの中にあります。

 

 思い出すことができないだけなのです。

 

 足を止め、あなたの肩に手を置いた。

 

 あなたの魂は、あなたが思うよりずっと美しく、高尚で、巨大なものなのです。

 

 人間の体には、そのごく一部しか収まりません。

 

 水が熱いか冷たいかを知るため指を入れるように、

 

 あなた自身のごく一部を、人間という器の中に入れているに過ぎないのです。

 

 その器から抜け出せば、今までのすべての経験はあなたに帰ります。

 

 何年もの間、人間として生きてきましたから、膨大な意識に触れる機会がなかっただけなのですよ。

 

 しばらくここに居れば、全てを思い出すでしょう。

 

 しかしすべての人生において、前世を思い出す必要などないのです。

 

 「一体、私は何度生まれ変わったんですか?」

 

 何度も、何度も、何度も、ですよ。

 

 数え切れないほどの命を生きました。

 

 これからは、西暦540年を生きる中国の女性百姓として生まれ変わります。

 

 「ちょっと待って、過去へ送るんですか?」

 

 まあ、そうなりますね。

 

 時間というのは、あなたの宇宙にしか存在しないものなので。

 

 私が元々いた場所では、あまり馴染みがありませんが。

 

 「じゃあ、あなたはどこから来たんですか?」

 

 私は、どこか別の場所から来たのです。

 

 そこには私のような存在が他にもいて...

 

 どのような場所か説明したいのですが、おそらく理解できないでしょうね。

 

 「そうですか...」あなたは少し気を落とした。

 

 「でも、何度も別の時代に生まれ変わっていたら、いつか私自身に出会いませんか?」

 

 ええ、何度もありますよ。

 

 ただ、それぞれが自分のことしか知らないのですから、出会っても気づかないのです。

 

 「じゃあ、何のために生まれ変わるんですか?」

 

 私は目を見つめて言った。

 

 命の理由、ですか......

 

 この宇宙を創造したのは、あなたに成長してもらうためです。

 

 「人類の成長ということですよね?」

 

 いいえ、あなただけです。

 

 あなただけの為に、この全宇宙を創造したのです。

 

 それぞれの命の中で成長することで、より大きく偉大な知性を得るために。

 

 「私だけ?」

 

 「他の人たちは?」

 

 誰もいないのですよ。

 

 宇宙には、あなたと私だけ...

 

 あなたは、ぼうっと私を見つめた。

 

 「でも、地球上の全ての人たちは?」

 

 すべてあなたです。

 

 すべてあなたの生まれ変わりなのです。

 

 「私が、みんな......?」

 

 理解してきたようですね。

 

 「私は、これまで生きてきた全ての人間」

 

 ええ。そして、これから生きる人間。

 

 「つまり、エイブラハム・リンカーンも...?」

 

 ジョン・ウィルクス・ブースもです。

 

 「じゃあ、アドルフ・ヒトラーも!」あなたは愕然と言った。

 

 そして、彼によって殺された数百万の人たちも。

 

 「イエス・キリストも!?」

 

 彼を信じて仕えた人々でもあります。

 

 あなたは沈黙した。

 

 あなたが誰かに危害を加えるとき、あなたは自分自身を傷つけていたのです。

 

 誰かに優しくするときは、自分自身に優しくしていた。

 

 全人類が経験した喜びや悲しみは、全てあなたが経験したことなのです。

 

 あなたは長いこと考えていた。

 

 「なぜ......」

 

 「なぜ、こんなことを?」

 

 いつかあなたが、私のような存在になるためですよ。

 

 私と同じ......私の子どもなのです!

 

 「まさか!」あなたは疑うように言った。

 

 「ということは、私は神なんですか?」

 

 いいえ、まだです。

 

 あなたはまだ、胎児です。

 

 あなたは成長しています。

 

 成長し続けています。

 

 全時代の、全人類の命を生きたとき、やっとあなたは生まれてくるのです。

 

 「それじゃあ、全宇宙は......」

 

 「ただの.........」

 

 「卵...!」あなたは答えた。

 

 さあ、次の命に進むときです。

 

 途中まで連れていきましょう......。

 

 「ありがとう、さようなら!」

 

 そう言うと、あなたは光となり、星となり、ぐんぐん速度を上げて、音速を超え、光速を超え、虚空を突き抜けていき......

 

 そして、あなたは旅立った。

 

 ......また、寂しくなりますね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 西暦540年、中華の一国、梁にて

 

 『まだか?まだか?』

 

 『ご主人、少しは落ち着いてくださいよ!』

 

 『これがそわそわせずにはいられるか!』

 

 『あとちょっとだ、あともう少しで......』

 

 その時、麻の暖簾から産婆が飛び出してくる。

 

 『産まれました!産まれましたよ!』

 産婆が叫ぶ。

 

 ご主人と呼ばれた男は、何も言わずに暖簾の奥へと入っていく。

 

 そして......

 

 『あなた...無事に、産まれたわ......!』

 

 『おお、なんと......』

 

 『良かったですねえ、綺麗な女の子ですよ。』

 

 『ああ、なんとかわいいのだろう......』

 

 周囲の暖かい視線に見守られ、この世に一つの命が芽生えたのだった。

 

 

 

 

 




 新シリーズ、始まりました。やったね。シリアス少なめで行きたいです。ほっかほっかな心で行きたいからね。
 自分の憧れをぶんぶん出していきたい。

 主人公が光になるシーンは、ある小説を元にしてます。分かる人は、分かると思います。
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