日本国海軍 第一艦隊 ハイスクールフリート世界へ転移セリ 作:X2
2020年 1月6日 20:00 太平洋 南硫黄島近海
第一艦隊 旗艦大和 艦橋
太平洋の青い海を鋼鉄の城が引き裂く様に航行していた。さらに後ろには平らな甲板を持ち、甲板上に鉄の鳥を載せた船が2隻、随伴していた。その正体は日本国海軍最強にして世界最強の艦隊である、第一艦隊であった。
なぜ太平洋に姿を見せたのか。それは第一艦隊が2020年度太平洋演習をに参加していたからである。今はその帰投の途中、南硫黄島近海に停泊しているところだ。
「やっと演習が終わったな〜」
「ですね〜」
大和艦橋で会話するのは大和艦長、
「艦隊は?」
「今は駆逐艦、雪風が燃料補給中です。あと1分で完了すると。」
「よし。雪風の燃料補給が終わり次第、全艦抜錨。進路を横須賀に。」
「了解しました、艦長。」
航海長が答える。
1分後、雪風の燃料補給が終了。艦隊は出港準備を進めた。
「艦長。各部署出港準備完了。」
「了解。出港用意!」
「出港用意!吹けぇ!」
パパラパーパパラパーパパラパッパパッパパー
「出港用意!」
艦内にラッパとともに出港用意の号令が響く。
「前部員錨鎖半詰め方!錨を上げぇ!」
艦長の号令とともに前部員が錨を詰める。半分詰めるのは日本海軍の伝統である。
「両舷前進微速!赤黒なし!」
「両舷前進微速!赤黒なし。」
「艦長操艦に移行。」
航海長は虎蔵に舵輪を渡す。
「いただいた。航海長。」
「艦隊全艦、出港完了。」
「陣形を組み直せ。」
艦隊はものの5分で輪形陣に移行する。真ん中には瑞鶴と神龍が戦艦や駆逐艦達に守られる様に鎮座していた。
▽▽▽▽
出港してから数分。虎蔵の姿は艦長室にあった。
「副長。」
「はい?なんでしょう?」
「飲むか?」
虎蔵の手には自分のお気に入りの酒、「四十代」が握られていた。
「は〜。艦長。また飲もうとしてるんですか?職務中ですよ?」
そう、何を隠そう虎蔵は大の酒豪であり、過去には艦長をしていた駆逐艦の酒保の酒を全部飲み干した前科がある。
「冗談だよ。たばこ吸ってくる。」
「はいはい。いってらっしゃいませ〜。」
虎蔵は机の上に置いてあるメビウスと金属製のライターを持って艦舷側のデッキに向かう。
「やっぱり海は広いな〜。」
「艦長。たばこですか?」
「あぁ。」
虎蔵に話しかけたのは砲雷副長の
「火、つけましょうか?」
「いや、いい。」
虎蔵は慣れた手つきで箱からたばこを取り出し、火をつける。
「最近はどうなんだ?」
「まあまあですね〜。」
「そうか…。」
「……艦長。また思い出してるんですか…?」
「まぁな。忘れられないな…。」
虎蔵は下を向き、声のトーンが落ちる。
そして胸ポケットを強く握り締める。
「ありがとう。空崎。」
「いえいえ。こちらこそ。」
虎蔵はたばこを灰皿袋に落とし、デッキを後にした。
▽▽▽▽
虎蔵の姿はまた艦橋にあった。
「航海状況は?」
「航海状況に異常は見られず。しかし気になることが…。」
「なんだ?」
「数海里先に巨大な雨雲が…。まぁ航路的には問題はありません。」
「そうか。」
しかしその雨雲は徐々に膨張しだした。
「艦長!雨雲の体積が膨張しています!」
「なんだと?!今すぐ全員を起こせ!警戒態勢だ!」
「了解!」
すぐに大和から艦隊に警戒態勢の旨が伝えられる。
「艦隊、警戒態勢に移行完了。」
「わかった!航海長!このまま行くとどうなる?」
虎蔵の質問に航海長は答える。
「このまま行くと雨雲に突っ込みます!」
「艦長!進路どうしますか!?」
「………そのまま突っ込む!総員衝撃に備え!」
艦隊は雨雲の中へと突き進む。
雨雲の中は大雨と強風が互いに暴れ、雷鳴も至るところで鳴り響く。
「艦長!これ大丈夫なんですか!?」
「大丈夫だ。多分……。」
「艦長!今、多分って言いましたよね!?絶対!」
「だぁ〜も〜!なんでもいいから突っ切れ!」
「艦長!電子機器が!」
そこにはあるモニターには何も映っておらず砂嵐が流れるだけになってしまっていた。
「艦長!艦、正面から高エネルギー反応!」
レーダー員が叫んだ瞬間、艦隊は光に包まれた。
その光は影を生むことなく、艦内も光で包まれる。
その後、光を浴びた者は皆、意識を失った。
2020年 1月6日 20:32 第一艦隊、太平洋南硫黄島近海より消失。