TS従魔のダンジョン攻略記!   作:おにっく

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修行開始

 ソラによる鍛錬が始まって一日目。

 イリオスは、与えられた課題をこなすべく森を歩いていた。

 

「ギャアアアアアアアアア!?」

「っ、サン!?」

 

 なぜ歩いて()()なのかというと、サンの悲鳴を聞き急いで走り出したからである。

 

「サン!! 大丈夫か!?」

 

 今この瞬間に、ウェイラがダンジョンの壁をぶち破りながら登場してもおかしくないのだ。サンを守らなければならない。

 一種の義務感から自らの師をホラー映画の殺人鬼のように扱っていることに、彼は気づかなかった。

 

「だーかーら!! あんなんで飛べるようになるわけねェだろ!! あれやったら普通人は死ぬの!!」

「現に死んでおらぬじゃろうが!! 竜人の体は頑丈じゃ!! 信じて飛べぃ!!」

「いてーもんはいてーの!! 見ろこれを!! 鼻血が出てきた!!」

「鼻血くらいなんじゃ!! せめて大動脈から血ィ吹き出してから文句は言え!!」

「……えぇと」

 

───とりあえず、骨折り損のくたびれ儲けってことかな?

 

 目の前で大喧嘩をするドラゴン娘二人を目の当たりにして、イリオスは深くため息をつく。

 

 イリオスとて、サンの手前おくびも出さないが、相応に焦燥と不安は感じている。

 そんな中だというのに、あまり胃に負担を与えないでほしい。ただでさえ自分の胃腸は弱いのだから。

 

「あ、ご主人!! 聞いてくれよというか助けてくれ!! この英雄は頭がおかしい!!」

「あァ!?」

 

 と、代弁するならそんな感じのことを考えていたイリオスの元へ駆け寄って、サンは糾弾するようにソラを指差した。

 

「こらこら、せっかく善意で稽古をつけてくれてるのに。何があったの?」

 

 そっと指を折りたたんで腕を下ろさせながら、彼は姿勢を低くしてサンと目を合わせる。

 明らかに子供扱いされている状況だが、サンはそれどころではなかった。

 

「ソラのやつ!! 最初の修行だとか言って俺を崖下までぶん投げたんだ!! しかも一回や二回じゃない!! もう六回目だ!!」

「え、えぇ……そっか、その傷はそれで……」

 

 サンの鼻血を水魔法で濡らした布で拭き取りながら、イリオスはソラの方を見つめた。

 正直修行をつけてもらっている立場でわがままは言えないが、これは少々やりすぎでは? という目である。

 

 少々過保護気味であるが、それも致し方のないことだ。

 なんだかんだと言っても、イリオスにとってサンはまだ子供。三つ下の十四歳なのだから。

 

「竜は我が子を大瀑布に突き落とすと言う。なぜだかわかるか?」

「バカだから」

「違う!」

 

 ズビシィっとサンに軽めのチョップをかまして、ソラは貧相な胸の前で腕を組んで語り始める。大事なことなのでもう一度伝えるが、その胸は貧相であった。

 

「生まれた我が子に空を飛ばせるためじゃ。それができずに死ぬならば、それまでというわけじゃのぉ。じゃがサン、貴様には何度でもやり直せるチャンスがある」

「ああ言って俺のことを何回も投げてくんの。ひどくない?」

「……まあ、うん」

 

 確かに酷いが、なるほど意図は読めた。

 ソラはサンに飛行能力を身につけさせたいのだ。それも、できれば今日で。

 

「言っておくが、ちんたらやってる暇はないぞ? 妾たちには時間がない。今日中にでもヌシには飛べるようになってもらわねばのぉ」

「んなこと言ったってさぁ」

 

 けれども、あまりにもサンが傷つくのはいただけない。

 すでに少しボロボロのサンを見て、イリオスは頭を悩ませた。

 

「それとも、危機感が足りぬか? 一度本気で死にかけてみれば、ヌシは飛べるのか?」

「っ……!」

 

 そして、サンがソラから隠れるように後ろに回り込んできたあたりで、ポンと手を叩いて。

 

「ソラさん、少し」

「……なんじゃ? もしやヌシまで甘ったれたことを言うつもりではあるまいのぉ……?」

「違います。その……」

 

 サンはあれで意外と、理屈も重んじるタイプだ。

 意外とと言ったら失礼だが、イリオスはサンのことをそう分析していた。

 

 魔法について教える時もそうだった。なぜ魔力、エネルギーが水に変わる? 土に変わる? 風が威力を伴う?

 そんな疑問に、「魔法というのはそういう法則だ」と答えると、彼女は納得して熱心に取り組んだ。実践と失敗、その繰り返し。

 

 つまりサンは、理屈だけでも体を動かすだけでも能力が身につかないタイプだ、と。

 

「なるほど、の」

 

 それを伝えると、ソラは納得したように顎に指を当てた。

 

「サン! 少しこちらへ来い!」

「い、や、だ! また落とされたくねーし!」

「肉やるからこっちに来い!」

「わーい」

 

───チョロすぎはしないかのぉ。

 

 サンに干し肉を与えながら、ソラは彼女の将来を案じた。

 サンが肉を噛んでいるうちに、その両脇に腕を通して。

 

「わ、ちょ、だま、騙したな!!」

「あーもう騙してないわ!! いいから行くぞ!!」

 

 そして、魔力を翼に通す。

 魔法は使えないが、竜人の行う飛行は魔法ではない。元来魔力量の多い彼女なら、あの刃を受けて弱体化した体でも十分に空を飛ぶことはできた。

 

「しばらくこのまま飛ぶぞ。上までのぉ」

「え、ちょ」

 

 ビュン。サンの耳には、そんな音が残る。

 ここはダンジョンの地下。だというのに、日差しは燦爛と輝いていて。

 

「おお……」

 

 風を切る感触が、やけに心地よかった。

 

「良いか。妾たちが翼で行う飛行は魔法ではない。ただ、妾たち竜人に本来備わった機能じゃ」

「そうなの?」

「うむ。当たり前のようにできるつもりでいけ。それでもダメなら、妾が何度でも付き合ってやるよ」

 

 そのまま、徐々に高度を上げた。なぜだか、涼しくなってきたように感じた。

 

「ダンジョンの中って、なんで空があるんだ?」

「空間が捻じ曲がっておるからのぉ。ダンジョン自体に魔道具のような超事象が起こっておる」

「へぇー」

 

 先程まですくんでいた足も、とっくに震えは止まっていた。

 

「良い景色じゃろう?」

「うん」

「それでいい。焦るな。恐れるな。この美しさを目に焼き付けろ。己が思い描いた空を飛ぶのじゃ」

 

───確かに、このやり方の方がこやつ向きだのぉ。

 

 イリオスから受けた、「一度サンを空に連れて行ってみれば」という提案。

 なるほど、なかなかどうして、彼はサンについて理解しているようだった。

 

「翼には魔力を通せ。動かすだけでは足りぬ。自ずと体が軽くなり、重力に逆らうように体は浮き上がり始める。翼はそうなるようにできている」

「重力に……」

「うむ。風を受けるのではない。己自身を、この世界の理から外せ。自分だけの世界に塗り変えろ。このダンジョンのように、の」

 

 彼女の呼吸は徐々に安定していき、心拍は平常。汗一つなく、冷静に俯瞰していた。

 

「離すぞ」

「うん」

 

 そうして、ソラの手から離れて。

 

「お、おぉ……」

「……うむ! なんとか、第一段階はクリアだのぉ!」

 

 まだおぼつかないながらも、彼女はなんとか宙を舞ったのだった。

 

 

 

 

 少し経って、昼。

 

「飯の時間にするぞ!」

「……」

 

 サンは目を輝かせ、イリオスは萎びていた。

 

「なんじゃ、その反応は」

「いえ、その……個人的に、少し嫌な思い出が……」

「ふむ」

 

 イリオスはかつて。それこそ、彼が彼自身の師と出会うよりも前。かなり無茶な攻略をしていた。

 金もなく、目的もなく、その日の飯代を稼ぐためだけにダンジョンに挑む日々。

 

 そんな折、彼はふと気づいた。ダンジョンにいれば入れ食いでは? と。

 

「脱水症状と栄養失調で死にかけました」

 

 結論から言ってその判断は間違いであった。彼は料理の腕があれど、ハンターではなかったのである。

 

「まあ安心しろ。今から作るメニューは全て妾が実際に食ったことのあるものじゃ」

「し、信じますからね……」

「うむ。ヌシらも手伝え。働かざる者食うべからず、じゃ」

 

 そう言って、ソラはテキパキと下処理の指示を出していく。

 まずは先程落とした鳥の魔物、血抜きの済んだそれを湯掻いて羽をむしる。

 

「待ってくださいソラさん。サンに火を扱わせないで」

「む?」

「だぁもう!! まだ言ってんのかよそれ!!」

 

 しかしその最中、イリオスからストップが入る。

 

「なんじゃなんじゃ、過保護じゃのぉ。心配せずともサンだってそのくらい」

「お茶を淹れるだけで火事になるのを見たことがありますか?」

「なんて? おちゃでか、なんて?」

 

 すっかり本来の口調も忘れて疑問を呈するソラ。

 冗談かとも思ったがイリオスの表情は神妙で、サンは何も言わない。つまり、事実なのだ。

 

「何をどうしたらそうなるんじゃ……」

「いや、そのさ……茶葉、ぶちまけちゃって……そしたら火力が高かったのか、火が燃え移って……」

「おヌシ、何か別の呪いもかけられているんじゃなかろうな……?」

 

 サンの料理センスは致命的だ。

 前世で炒飯を作る際に軽い爆発が起きた、というのは本人の言だが、実際にはもっと色々やらかしている。

 料理で暗殺を測るタイプの必殺仕事人と言われた時は、彼も項垂れたものだ。

 

「わかった、わかった。とりあえず野草を切っておくれ」

「あい……」

 

 サンに火は厳禁。そっと心にしまったソラの頬を、ナイフが掠める。

 

「……サン。包丁はしっかり握れ。それと、腕を上げる必要はあらぬ。手だけを動かすのじゃ」

「あ、あい」

 

 今度こそ。

 ドカドカ、メシャァン、ギャリリリィ、ボンッ! 後ろから聞こえてくる音は、こんな感じ。

 

「サン」

「あい」

「退場」

 

 サンは調理スペースを出禁になった。

 

 諸々のトラブル、主にサンによって引き起こされたトラブルはありつつ、調理は無事終了。

 

 メニューはロックバードの構想炒めと野草のおひたし。それから、ジャガイモのスープ。

 調味料はソラが常に魔道具に入れて持ち歩いていたため、かろうじてなんとかなった。

 

「そういや、ご主人の方は修行どんな感じなの?」

 

 木を削って作ったスプーンを喰みながら、サンがイリオスに持ちかける。

 

「ああ、えぇとね、僕は……うぅん。とりあえず、今は温泉を探している」

「何が何?」

 

 突然ダンジョン攻略でなく温泉開発に目覚めたのかと問い詰めてやりたかったが、どうも違うらしい。

 説明に困っているイリオスに代わって、ソラが口を開く。

 

「このヒョロガリは筋肉が足りんからのぉ。それと、魔法の精度はまだまだ上がる余地がある。水脈を探す魔法を教え、そのまま掘削させるのよ」

「なんでわざわざそんな魔法を……」

「風呂に入りたくないのか?」

「入りたい」

 

 即答するサン。彼女とて、体がベトついたままは嫌なのだ。

 彼女にとっての優先順位は、大差をつけて食、その後住と続いて衣。しっかりとした住居を望む気持ちも、人並み程度にはあった。

 

「ついでに重りを手足につけさせてるから、歩くだけで筋肉は成長するからのぉ!」

「え、まじ?」

「うん。ほら」

「うわぁ……重い?」

「とても」

 

 少し赤くなった彼の手首を見て、サンは少し申し訳なさそうにそこをさすった。

 イリオスにしろソラにしろ、今必死になっているのは自分を殺させないため。生かすためだ。

 

「……」

 

 その事実に少し食欲が落ち、彼女はスープを口に運ぶペースを落とした。やめはしなかった。

 

「イリオスの方は基礎体力と魔力の向上じゃのぉ。ま、どちらもトレーニングで上がるわ。妾が回復魔法を使えば、成長も早いからのぉ」

「はは……」

 

 前日死ぬほど疲れていても、翌日にはまた同じことができるから安心しろ、と。つまりはそういうことを言っている。

 それに気づいたイリオスは、少し遠い目をした。何もわかっていないサンはイリオスの肉に目線を向けていた。

 

「それと、使える魔法も増やさなければな。その辺りは、妾が追々教えていくとしよう。次はサンじゃ」

「俺?」

 

 イリオスからもらった肉を食べながら、ふと自分のことかと指を刺して見せる。

 

「うむ。おヌシの方の修行は少し複雑でのぉ。まずは竜人の体……何より、その体を使いこなすことから始まる」

「つっても、午前中でクリアしちゃったけどな!」

「阿呆、翼だけが竜人の全てではないわ。例えば、そうじゃな……」

 

 ソラはスプーンを上に放り投げ、それを尻尾の先端でキャッチ。そのままスープを掬い、口元まで運んだ。

 

「これができるか?」

「無理」

「うむ。尾も竜人の武器の一つじゃ。第三の手として扱えるほどに使いこなせ。次らか食事は尾だけでしてもらうからのぉ」

「え」

 

 サンは深い暗闇の奥底に叩き落とされた。

 食事中も修行を強いられるということは、飯が食いにくくなるということである。喜びがない。

 

「殺されたくなければ、せいぜい励むことじゃのぉ」

「……押忍」

 

 さらには食欲が落ちるようなことを言われるのだから、これはもう絶望という他ないだろう。

 そんなサンの様子を見かねて、少しはやる気が出ることを話してやるか、と、一言。

 

「基礎作りが終わったら、必殺技の開発と習得に移るからのぉ」

「必殺技!? なにそれ!!」

「焦るな焦るな。時が来たら説明するから」

 

 サンのやる気を引き出すためだけの嘘……と、いうわけでもない。

 圧倒的な戦力差。ウェイラに勝つためには、必殺技の習得が必須。

 

「……」

 

 だが肝腎要のそれは、サンの才能頼りというのが正直なところ。

 彼女の秘めるポテンシャルをどれほど引き出せるか。これは、そういう戦いである。

 

「そうだのぉ。ウェイラとやらは、《零華》というオリジナルの魔法を必殺技にしていたのぉ」

「なにそれ!!」

 

 つまりは、もうちょっと話してやろう。

 半ば孫娘を見守るような気持ちで、ソラは話を引き延ばした。

 

「銃から弾丸のように、氷の種子が飛んできた。即座に花のように広がり……おそらく温度は、絶対零度に近かったのぉ」

「あ、あれを使ったんですね、師匠……」

「覚えがあったか?」

「半分くらい悪ノリで作った、絶対人に向けちゃいけない魔法だって……」

 

 しれっと人間の枠組みから外されたソラを気にせず、サンの興味は尽きなかった。

 

「その必殺技ってのは固有魔法? っていうのとは、違うの?」

「全然違うのぉ。必殺技、オリジナル魔法は、魔力と技術があれば万人に扱える代物じゃ」

 

 どれだけ威力が高くても、どれだけ習得難易度が高くても、所詮魔法は魔法。

 模倣さえできれば、誰にだって扱うことができる。

 

「ってことは俺も?」

「氷結魔法は難しいから、サンはまず火と雷だね」

「むぅ」

 

 火、水、土、雷、風、無属性の魔法は比較的習得が容易である。

 それは複雑な理論や難しい応用を必要としないからだ。

 

 唯一雷のみ、正確には扱えるのは電撃という亜流である。

 

「話を戻すぞ。つまり、じゃ。固有魔法というのは必ずしも誰にでも扱えるものではない、名の通り個々が有する魔法のことだのぉ」

「個々が有する……」

 

 この世に同じ固有魔法は存在しない……と、いうわけでもないが。使おうと思って使えるものではない。

 

「固有魔法は発現しない者がほとんど。生まれつき使える者や、魔法を極めた先にふと使えるようになった者、あるいは強いストレスで呼び起こされた者。きっかけも能力も、人によってそれぞれじゃ」

「へー! ファンタジー!」

「まあ、そうじゃの」

 

 固有魔法は未だ解明されていない分野。その由来から条件に至るまで、不明な点が多い。

 必ず一致する条件としては、詠唱と呼ばれる特定のキーワードを有すること。それは自然と頭に浮かんでくること。そのくらいだ。

 

 固有魔法の物真似で新しい魔法が生まれることもあり、超常が日常となることもある。

 人体の神秘の一つなのだ。

 

「妾の固有魔法は《デヴィジョン》。魔力を分けてあらゆる物質を作れる。ほれ、こんなふうにの」

「あ、俺が使ってた剣!」

「なんでも作れるぞ。生物とダンジョン産魔道具以外ならの」

 

 曲芸のようにサンを喜ばせながら、ソラは思い出す。ウェイラの固有魔法を。

 

「ウェイラの固有魔法は、未来予知。だの?」

「はい。……その、なんでわかったんですか? 師匠は、かなり隠しながら戦うタイプだったはず……」

「言葉端の違和感じゃのぉ」

 

 本来ウェイラが知るはずのない情報を知っている。

 例えば、「テメェは未婚だろうが」だとか。そうした発言も加味して、ソラはウェイラの固有魔法を見抜いたのだ

 

「あのガキ、絶対に許さん……! 貴様が三十の半ばを超える頃にもう一度会いに行ってやるぞ……!! 若々しい姿を見せてやろう……!!」

「……」

 

───師匠、一体ソラさんに何言ったんだろう。

 

 何かソラの地雷を踏んだのでは。イリオスは憂慮していたが、完全に私怨である。

 

 英雄、ソラ・シーカー。今年で……歳。竜人の結婚適齢期をとっくに過ぎている。

 民から慕われているが故に、逆に恋愛まで発展することはない。

 かつてレインから告白を受けるも断ったことをちょっと後悔している、哀しい英雄。ちなみに、レインからの最初の告白は六歳の頃だった。

 

「……ソラ、ほんとにおばさんなんだな」

「貴様おいこら少女この野郎」

 

 サンのこぼした発言に、ソラはブチギレた。

 

「よ、良いか!? 竜人の中には五百歳を超えて尚子を成した者がいる!! つまり、つまりじゃ!! 妾だってまだ産める!! 産めるもん!!」

「ちょ、子供の前……な、生々しい言い方しないでください!!」

「なんかごめんな、ソラ……そっか、ソラって五百歳くらいなんだ」

 

 何がごめんなのか。何もフォローにはなっていない。追い討ちである。

 

「あー? 違うが? 妾はまだぴちぴちなんじゃがー?」

「若かったらぴちぴちとか言わないだろ」

「キレそうじゃ。今の妾なら魔窟ぶっ壊せるかもしれん」

 

 その若さゆえ、未だ老いの恐ろしさを知らず。サンは親戚のおじさんに「白髪生えてるー」とか言っちゃうタイプだった。

 

「そ、そうだ! 師匠の未来予知について、もう少しお話ししますね!」

 

 一触即発の空気を感じて、イリオスは急いで話を逸らした。彼は年上に気が使えるタイプだった。主にウェイラによって鍛えられたものだ。

 

「おぉ、そうだの。とは言っても、妾は昨夜聞いたが……サン、ヌシも聞いておくといい」

「わかったのじゃ」

「おォ、次真似したらその喉掻っ切るからのぉ」

「あ、あい……」

 

 真に迫るソラの気迫を感じて、サンは黙った。彼女は本能に忠実だったので、ダイレクトに死の危険を感じていた。

 

「は、話して大丈夫ですかね!?」

 

 まあ要するに、このメンツの中だと一番割を食うのはイリオスだ、と。そのくらいの話だ。

 そんなことをなんとなく理解しながら、イリオスは師の固有魔法について語り始めた。

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