疲れた。ほんっとうに疲れた。
まさか丸一週間もかかると思わないじゃん。寝床が柔らかくなっただけ良かったけどさ。
「ご主人、こっち見んなよ」
「はいはい」
とりあえず風呂には軽く泥を落としてから入ろうと、寝床で体を拭いていた。
ご主人とソラも同じ場所で寝ている。流石に距離は離してるけど。
「本当に大変だったなぁ」
「な……俺さ、ここ一週間の記憶ない……」
「はは……僕もだ」
なんというか、起きた出来事のキーワードを聞けば思い出すんだけど……自分では思い出せない。
脳が起こった出来事を思い出すのを拒否してる。
「これ、まだ修行の途中なんだよな?」
「……あ。そっか。そうだったね」
「忘れてんな!」
「ごめんってば。それより、互いに見ないんじゃなかったかな?」
「あ」
振り向いた音に気づいたご主人が指摘してくる。
いやでも、これについては目的を忘れてたご主人が悪い。俺は悪くない。
確かに達成感というか、やっとひと段落ついた感じはあるけど。
……でも、やっぱりまだ……何一つだって、解決してないんだ。
「よし、と。ご主人、先行ってるな」
「うん、どうぞ」
ご主人をおいて、一度外へ。そこでは、ソラが待っていた。
「おォ、準備はできたか?」
「ご主人はもう少しかかりそう」
「そうか。まぁよい、どうせ共には入れんからの。我らが先に風呂をいただくとしよう」
「……ワレラ?」
妾、あるいは俺ではなくて? 俺たち?
「いっ……しょに、入れるかぁ!?」
「む? 嫌だったか?」
「いや、嫌というかその……何回も言ってるけどさ!! 俺!! 男なの!!」
「ならばイリオスと共に入るか?」
「それも違う!!」
今の体じゃ男湯も女湯も無理だわ! もっとこう、なんか……そういうあらゆる枠組みを超えた別のナニカだ!
「大体ご主人だってあれで変態かもしれないんだからな! ああいうやつこそ実は年下にバブみを感じてるタイプの」
「僕がどうかした?」
「あい! なんでもございません!」
危ない。ご主人ってああ見えて年下にバブみ感じてるタイプの可能性もあるよって目の前で言うところだった。
「それがの。サンがどちらと風呂に入るべきかという話をしていて」
「どっちかと入ることは確定なの!?」
「当たり前じゃろ。いつ襲われるかわからぬのだし」
「あ……」
そっか。そういえばそうじゃん。まだ命を狙われてることに変わりはないんだった。ご主人に言っといて俺が忘れてた。
……ああ、クソ。忘れたままでいたかったな。
「んー……そうだな」
どうする? いや、普通に考えてソラと入るのはまずい。
だって俺の同い年くらいの女の子に見えるし。見た目だけなら。見た目だけならね。
でも、じゃあご主人と……? 男同士だし問題ない気もする、けど……えぇと……?
なんかもうよくわかんなくなってきた……!
「おやおや、何かお困りのようですね」
首を捻っていると、聞き覚えのある胡散臭い声が一人。
「あ! アニス!」
「ええ! わたくし、参上でございますよ!」
「……やはり、気配が探れんのぉ」
アニスはいつも通りニヤニヤしていた。あの仮面は口元が動かないから、常にニヤけづらに見える。
「それよりサン殿、何かお困りですか?」
「え、うん……つか、今出てきたんだから絶対わかってんだろ」
こいつ、風呂とかトイレも覗いてるんじゃないんだろうな。
……覗いてないよな?
「おやおや、ノリが悪いですね……お疲れの影響でしょうか。こちらをどうぞ。疲労回復効果がある素晴らしい一品でございます」
「おお! 魔道具?」
「いえ、クエン酸などを主成分とした」
「ただの栄養ドリンクかい」
まあ美味しいからいいけど。
「それで、誰と共にお風呂に入るべきか、でございましたね? でしたらわたくし、素晴らしいものを持ち合わせておりますよ!」
「おお! どんなやつ?」
姿を隠す魔道具? それとも視界をおかしくしたり……まさか、性別を逆にする薬とか?
期待していいのかな。俺の俺がついに復活……!
「こちらでございます。伸縮性と速乾性に富んでおり、また体型も」
「ただの水着かい」
なんだこいつ。今日はなんというか、夢がないな。置いてきちゃったのかもしれない。
「では、わたくしはこれで。料金はイリオス殿からいただいておきました」
「え、は、おい待て!!」
「ご主人、財布!」
ご主人が財布を確認すると、きっかり三人分の水着代が消えていた。
ああいうの、押し売りって言うんじゃなかったっけ?
「ほぉ、これが水着か。今時のものは破廉恥じゃのぉ」
「痴女服怪人どすけべおべべがなんか言ってら」
「な、おま、今何つった貴様!? なんか最近妾の扱い雑じゃないか!? と言うか貴様もどすけべおべべじゃろうが!!」
だってソラが雑な扱いを望んでそうなんだもの。
実際、ソラは少しいじられている時の方が嬉しそうだ。英雄という立場上、こういう付き合いは少ないのだろう。
ただ、未婚と年齢については地雷なので触れてはいけない。訓練時間が伸びる。
「えぇと……じゃあ、僕はもう少し休んでいるので、二人は先に」
「ハァ? 別に一緒に入ればいいじゃろ」
「俺も水着なら別にいいや」
「いいんだ……」
ご主人は少し躊躇ったあと、疲れが限界だったのか観念したように水着を受け取った。
お風呂……あったかいお湯……久しぶりだ。
「設備は妾が整えておいた。着替えたら先に」
「行ってきまーす!」
「早いわぁ! ……ったく、のぉ」
走りながら、温泉の方へ。
翼に魔力を込めて、柵を乗り超え、そのまま風呂へとドボンした。
「あっ……たけぇえええええ……!」
全身がお湯に包まれてる。心地いい。
風呂に入れるだけでこんなに幸せだなんて、おもわなかった。
「わ……星空……」
そういや、ダンジョンでは時間は変化するんだっけ。
綺麗だ。……けど、やっぱり。
「あぁ、サン。先に入っていたんだね」
「おヌシ、飛び込んだな。湯が飛び散っておるわ」
「あ、ご主人! ソラも!」
入り口の方を見ると、水着に着替えたソラとご主人、が……?
「……」
ご主人、意外と筋肉あるな。それに、覚えのない大きな傷跡。
普段肌までぴっちり覆ってるから、何だかいけないものを見ている気分になってくる。
……いや、それよりも何というか……怖いな。よくわかんないけど怖い。
「サン?」
「わ、と、お……早く入れ」
「わっ」
「かかかっ! 若い若い! 初心だのぉ!!」
ご主人の手を引っ張って、無理やりお湯の中に引き摺り込んでやった。
これで体が見えない。
「この傷、いつの?」
「……随分、昔のさ。もう痛くないから大丈夫だよ」
「撫でんな」
ソラはゆっくりと湯船に浸かっていた。心地良さそうに目を閉じている。
ああやってみると、本当に老人だ。
「おぉ、貴様今何を考えた?」
「なにも……」
何で心読めるんだよ。怖いわ。
「ふぅ……あー、傷口に滲みる……」
「出た後、きちんと洗い流さないとね」
「うへぇ……」
少し前から、ソラは俺たちに回復魔法をかけるのをやめた。
自分たちで練習しろ、とのことだ。訓練に余裕が出てきたのがバレていた。
「ソラぁ」
「ダメじゃ。甘えるな。妾の魔力も無限ではない。……ま、おかげで少しずつ回復しておるがのぉ」
「そうなんですか?」
そんなことあるんだ。ご主人曰く、自然回復を封じるって言ってたけど。
「徐々に呪いが解けてきておる。時間経過での弱体化だのぉ。妾が強すぎたか」
「うっわ、傲慢」
「元々、時間経過で解ける制約もあったのだろう。あるいは、そうなるよう改造を施したか。完全回復は遥か遠い。一ヶ月後には間に合わんのぉ……せめてもう一、二ヶ月欲しいところじゃ」
呪いが時間経過で解ける、か。
改造できるなんていうのは初めて知ったけど、そうだよな。
そうしないと、ウェイラもずっと魔法が使えないままだし。
「俺のは弱まっていかないの?」
「可能性は高いの。じゃが、妾のこれは妾自身の強さと、元来の魔道具の性質に依るものじゃ。おヌシの呪いは……今の所、変化なしじゃな」
「なんなんだよぉ……」
何でウェイラの持ってたやつより強い魔道具をあいつが持ってるんだ。意味わかんねぇ。
「恐らく、サン自身の魔力を喰らって長らえておるのじゃろう。それは魂に直接作用するタイプの呪いだからの」
「うげ……きもちわりい……」
「ま、今は難しいことを考えるな。頭も休ませておけ」
「あい……」
確かに、最近俺にしては頭を使いすぎてたな。
もっとバカになるべきだ。俺は俺らしく行こう。
「ご主人。おっぱいがでかいと両肘が目の前でくっつかないらしいぜ。俺はできるから、絶対ソラもできるよな」
「消す」
「それを言って、僕にどうして欲しかったの……?」
ソラの打撃で、お湯と共に上へ打ち上げられた。
◇
風呂も堪能したし、夕飯も食った。仕込みの確認に移るとしよう。
「うん……うん、よし。できてる」
うちのお嬢様方は、二人揃ってグルメだ。けれど、これならきっと気に入ってくれるはず。
妹も、よく美味しいと言ってくれた。
「ソラさん。それに、サン。今日はデザートを用意してるんですが、いかがですか?」
「デザート!」
「ほぉ。気が利く男じゃのぉ」
火元に置いていた木のトレーから果物を取り出して、冷却魔法をかける。
一週間の修行で、魔法の精度も上がった。ソラさんにコツを聞いたのもあるかもしれない。師匠はその辺雑だったし。
そのおかげで、冷気魔法も殺傷力を持った。少なくとも、果物を凍らせるくらいわけない。ほどよく、ほどよく。
「牛乳……は、ないから」
あらかじめ作ってあった豆乳を使うとしよう。
これを凍らせた果物と合わせて、撹拌して……少し、ちょっとだけ塩。それより多めくらいに、砂糖も。
「うん……よし!」
味見をして、もう一度冷却魔法。
「完成!」
アイスクリーム風シャーベット。って、ところかな。
「熱った体にはこいつだよ、やっぱり。サン! ソラさーん! できましたよ!」
「はーい! お、甘そうな匂い!」
「ふむ、果物か! よく見つけたのぉ!」
サンとソラさんにスプーンとアイスを渡して、俺も着席。
「いただきまーす!」
……うん、甘い。もう少しさっぱりした方が、俺は好みだ。
風呂上がりだから、あいつに作っていたものより味は薄めだけど……どれ、反応は。
「うっ……! んまい!」
「良いのぉ、良いのぉ! 今度スノウにも同じものを作ってやりたいわ!」
よし、上々。
いつの世も、女子は甘味が好きなものだ。師匠? あれは女子というより、女傑だからね。
「っ……」
あれ、おかしいな。寒気がした。アイスのせいかな。はは。
「こんな甘くなるもんなんだな! 砂糖の量大丈夫?」
「それが、あまり使っていないんだ。一度凍らせて、溶かす。そうすると細胞壁が破壊されて甘さが広がる。それに、水分量も減るから味が濃縮されるんだよ」
「へぇー」
「隠し味に塩を入れてるから、余計甘さを感じやすいでしょ?」
「うん! あとフルーツの食感がいい感じ」
よかった。果肉を別で取っておいたのは正解らしい。
あまり甘いものは好きではないけど、こうして二人揃って尻尾を振っているのを見ると……うん、作ってよかったな。
「以前から思っていたが、ヌシは料理がうまいのぉ! どれ、このレシピはヌシにやろう!」
「え。いいんですか?」
「うむ! 内容は覚えておるし……何より、おヌシにアレンジさせた方がうまくなりそうじゃ! 明日より料理は任せるぞ!」
「はは……」
しまった、藪蛇だったか。
……でもまあ、人に料理を振る舞うのは嫌いじゃない。別にいいか。
「……」
完食の後、ふとサンを見ると、彼女はうつらうつらと船を漕いでいた。
「サン、眠い?」
「……ん。あ、うん……なんか眠い……」
「今日はもう寝るといい。明日から、また頑張ろう」
「うむ、そうするといい」
「あい……」
その場で眠るというボケをかましたサンを背負って、寝床まで。
……出会った頃より、少し重くなったかな。まだ軽いけれど。健康的で何よりだ。
「おやすみ、サン」
「うん……」
まだ僅かに意識はあったのか、軽く返事が返ってくる。
……今晩は、よく眠れそうでよかった。
「あ、ソラさん。いいですよ、洗い物は僕がやります」
「良い良い。うまい飯の礼じゃ」
「……それじゃあ、お言葉に甘えて」
ソラさんの横で洗い物を手伝うと、あまり時間を置かずに終わった。
ソラさんからレシピを受け取って、気になるところをいくつか聞いた。彼女は、楽しげに話してくれた。
「さて……そろそろ、妾からも質問していいかの?」
「はい?」
「なぜサンが狙われるのか。理由を知っておるのじゃろう?」
だからそんな質問は、本当に寝耳に水で。
「なんで……」
「うむ、当たっておったか」
「っ、カマをかけたんですか……」
こんな古典的な手段にかかってしまったのも。まあ、仕方ないかと許して欲しかった。
「おヌシはわかりにくいのぉ。この妾を前に、真実を一週間も隠し通すとは」
「……まさかバレるなんて」
「かかかっ! 英雄の目には全てがお見通しじゃ!」
本当にお見通しだ。ノーヒントで辿りつくなんて。
「……さぁ、話せ。言っておくが、妾は嘘を見抜けるからのぉ」
その神秘的な金色の瞳で見つめられると、全てを見透された気がしてくる。
そういえば、この国で最初に出会った時もそうだった。嘘が通じない気がした。
「……」
でも、これを伝えるわけには。
「安心しろ」
ソラさんは、ふっと笑った。子供を見るような、温かい目だった。
「今更何を聞いても心変わりはせぬ。……サンとおヌシは守り通すと決めたからのぉ」
「……でも」
「わかった、当ててやろう。未来予知に関係しているな?」
「っ……!」
なんでそう、何もかも。
「そうも話づらそうにしていれば察しはつくわ。ほれ、妾が全てを当てる前に話せ」
「……わかり、ました」
この人に、隠し事は無意味だな。
どうせそのうち、真実に辿り着いてしまう。……だったら、今のうちに。
「でも、サンには絶対教えないでください。いえ、他の誰にも。それが条件です」
「誓おう。英雄の名にかけて」
「……実は」
俺は話した。
師匠が、サンを化け物と呼んだこと。世界を滅ぼすと言ったこと。師匠の予知は、行動を起こさない限り変わらないこと。
……きっと師匠は、サンを殺すまで止まらないこと。
「なるほど、の……」
話していくにつれて、スッと心が軽くなっていくのを感じた。
結局、この真実は。俺一人で抱えるには、荷が重すぎたらしい。
「馬鹿馬鹿しい。妾と出会った時点で、そんなことさせんわ」
「はは……」
ソラは苛立っていた。単なる憶測に近いもので、サンを殺されかけたのが気に食わなかったのだろう。
「でも、師匠の予知は絶対です」
「じゃがその未来は、すでに変わっているだろう? すでに、サンが世界を滅ぼすかどうかなどわからん」
「……あ」
それもそうか。俺とサンの未来は、師匠と出会った時点で変わっているはず。
そのせいで、このダンジョンに篭る羽目になって。そして、ソラさんに鍛えてもらえた。
「……あやつに悪意は感じぬ。妾はそれを信じるよ。未来など、決まったものではない。ウェイラが言っておったのじゃろう?」
「そ、れは……」
そうかも、しれないけれど。
「安心しろ」
ソラは、その小さな体で、小さな手で。俺の頭に、手を乗せた。
師匠がよくそうしてくれたのを、なんとなく思い出した。
「今よりそれは、妾も背負う。……妾が、あやつに世界など滅ぼさせんわ」
「ソラさん……」
「……もしあやつが、本当に世界を滅ぼそうとするならば。その時は」
ソラは、重々しく口を開いて。
「その時は、刺し違えてでも止めてやる。……だから、の。ヌシが気に病むようなことではないぞ?」
「……」
それは、俺に足りていない覚悟だった。
俺は、最悪だから。サンを殺すくらいなら、世界なんて滅んでしまえばいいと思っている。
「ありがとう、ございます。その時は……」
そんな俺言うには、過ぎたる願いかもしれない。
けれど、どうか。どうかその時は、僕のことも。
「必ず、僕がサンを止めて見せます。この命に変えても」
「うむ」
その先は、言葉にできなかった。
けれど、ソラさんがサンを守ると、そう誓ってくれたのが嬉しくて。
「気休め、だな」
それでも、心は随分と楽になった。
「……サン?」
寝床にいるはずのサンがいなくって。見つからなくなるまでは。
◇
……トイレ。に、行きたい。
「ねみぃけど、しゃーないよな……」
シャーベットのせいかな。
女の体、若干トイレを我慢しにくい気がする。体の構造の違いかな。
「ふぃー……」
用を足して、寝床に戻ろうとして。話し声。
「ソラと、ご主人?」
こんな夜遅くに、何話してるんだろう。
「おーい、ごしゅ」
「……サンは、世界を滅ぼす」
「じ、ん……?」
急いで、木の後ろに隠れた。
「師匠は、そう言っていました。そういう未来を見た。それが、サンを殺そうとする理由です」
「は……?」
世界を、滅ぼす? 誰が? 俺が。未来で。
それで、そんな理由で狙われてたのか? 俺がそんなこと、するはずないのに。
「……師匠はきっと、サンを殺すまで止まらない」
「っ……!」
そこから先は、周りの音が静かで、うるさかった。
聞いた内容が、耳に入ってこなかった。
「……」
気付かれないように、ゆっくり寝床に戻った。
けれども
「っ、はぁっ……! はぁっ……!」
気づくと、外に駆け出していた。
全部、理解してしまった。ずっと前からわかんなかった。なんでウェイラが、俺を殺そうとするのか。
でもさ、納得なんてできるわけないじゃん。俺がそんなことするはずないだろ。
「大丈夫……俺がそんなこと、するわけない……!」
でも、ウェイラはそんなこと信じない。俺を殺すまで止まらない。
「……!」
ウェイラの予知は外れない。行動しない限り、必ず現実になる。
「う、ぅうう……! う……!」
殺される。こんな世界で。家族にも友達にも会えないまま。
人を殺す。こんな世界で。ニィナやご主人や、ソラのことを。
「なんなんだよ……!」
なんで、こんな。
「なんなんだよ、一体!!」
ふざけんなよ。
「はぁっ……! はぁっ……!! うっ、ぐ……!」
痛い。転んだ。
いつもだったら気にならないのに。今日は、神様に嘲られている気がしてくる。
「わけわかんねぇよ……なんでこんな目に遭うんだよ……」
ずっと、ずっと。考えないようにしてたのに。
「しにたく、ない……」
……もう、限界だよ。
「元の世界に帰りたいよ……! 元の体に戻りたい……! 気持ち悪い……怖いよ……!」
どうすればいいんだよ。