先生がいままでの事件の黒幕として認識されているキヴォトス 作:サカソラ
あらすじを読んでからお読みください。
プロローグ
ある日先生が心臓に違和感を覚え、激痛が体を走っていたため病院に行こうと決意する
突然周りの反応が変わったストレスなのか、ただの人間である先生が濃い神秘に晒され続け、大人のカードの効力を行使していった結果その体には確かにダメージが蓄積していた。
しかし、今までは生徒への想い、生徒からの想いによって神秘への悪影響はシッテムの箱の補完機能により直接先生の体が蝕まれることはなかったのである。
今回の事件により「生徒からの想い」が失われた今、アロナとプラナだけの想いでは神秘の侵蝕を止めることはできなかった。
心臓の違和感は神秘による変質。周りのものを結晶化しその結晶が心臓を包み込む時にその生命の生命活動を止める神秘の病。
神秘に耐性のあるもの、神秘のある環境で生まれるものにはそもそも起こり得ない病気。
また、多少の神秘を身に受けただけでは発症すらしない。その為症例もキヴォトスの病院でもなく。唯一郊外、遙か過去キヴォトスに外から赴いた医師を先祖に持つ病院のカルテに1例のみ同様の症状が発見されていた。
先 「じゃあアロナ、プラナ。しばらく、といっても数日だとは思うけどシャーレをよろしくね」
元々キヴォトスでの業務の為に与えられたシッテムの箱。郊外に持ち出すことは生徒会からも承認が得られず置いていくことになる。
生徒会と各学校に向けて、しばらく留守にするというメッセージを残し先生は再び砂漠を越えてキヴォトスを出ていった。
先生がキヴォトスを出た瞬間、ゲマトリアの洗脳装置が切れる。
その装置は先生という存在を軸に動かしていた為、神秘の及ばない郊外までは効果を及ぼせなかった。
診断の結果、極めて珍しい症例の神秘病だと告げられる。治す方法どころか、進行を抑える方法すら発見されていない奇病。そもそも郊外では神秘の研究ができない、かつキヴォトス無いで普通に神秘に触れる分には発症すらしない為研究する地盤がなかった。
念の為と後世のため、先生は全身のCTと血液、心臓内部の結晶のサンプル摘出を行い、数日の入院の後キヴォトスへと戻ることになった。
もう誰も自分のことを必要としていないのでは、と思うこともあったが、先生として生徒をあんな状態で置いておくなんて出来ない。
郊外のキヴォトス研究所からここ最近でのキヴォトスでの特殊な観察結果を聞くと、丁度皆んなの私への態度が変わった時期になんらかの波を検知したらしい。あまりにも一瞬で機器の誤作動や巨大ビナーによる影響かと一応記録には残した程度のものだった。しかし、先生がキヴォトスを、出た日同じ波が検知された。
その波を増幅し解析したところ、ゲマトリアの事件が起こっている時に似たような波が検知されていた。どれも微弱なもので、他の影響と言われてしまえば、そうかもと思ってしまうような差ではあったが、キヴォトスで起こる大きな事件の影には必ず彼らの思惑があった。
検査入院を含めて5日後、先生は再びキヴォトスへと足を向けた。医師からは「少しでも生きたいなら安静に、神秘から遠ざかったほうがいい」と散々言われたが、私は彼女達の先生だ。
彼女たちの身に何かが起こっているなら、放っておくことは出来ない。
たとえどれほど嫌われても、気味悪がられても、キヴォトスの平和の為に生徒たちの為に、最善を尽くす。
気休めの鎮痛剤を手に、再びシャーレへと出勤する。
〜キヴォトスから先生が去った同時刻〜
街全体を奇妙な感覚が襲う。
いや、実際は何も起きていないし何かが変わったわけでも無い。
それに最初に気づいたのは生塩ノアだった。
ふと体を巡った違和感。夢を見ていたような感覚にキヴォトスの、生徒が耽っている中、ノアら自らの記憶を探る。
そこで観るのは街全体の悪として、嫌悪の対象として存在している「先生」の存在。
それがつい「数秒前の私」の認識。過去の記憶を観れば、先生と仲良くしている、むしろ好かれようとしている自分もいる。しかしそれも悪意の真意に迫るため、そう思っていた。いや思わされていた?なぜ自分がそんな認識をするのかがわからない。記憶と認識がこんがらがる。
ユウカ 「ノア?難しい顔してどうしたの?」
隣で資料を運んでいたユウカがノアを心配そうに覗き込む。
ノア 「ユウカちゃん…いえ少し考え事をしてしまって。」
ユウカ 「最近も色々あったもんねー。あれもこれも先生が…んー? まあ一人で考えても難しそうなら先生を頼ればいいのよ、そのための先生なんだから!」
ユウカも自身の発言に違和感を覚えるが、言い間違えか何かのように、「いつも通り」先生の話をする
ユウカ 「さっさと片付けてシャーレで寛ぎましょう」
そう、いつも通り先生に会うために仕事を片付けてシャーレに向かう
ノア 「(おかしい……記憶に残っているここ2ヶ月の言動と思いが一致しない。……周りから見れば何もおかしくは無いのかもしれない。けれど何かそもそもの認識を書き換えられたような違和感)」
今の自分の状態に違和感を感じないからこそ感じる数分前の自分との違和感。
数分前の自分と今の自分は明らかに違った。確かに生塩ノアであることに間違いはない。2ヶ月間の行動も、さらに過去の行動と比べても変なところはない。
ただ、何かが違う。何かが。
ユウカとノアの二人はシャーレの前に着くと、シャーレの建物に電気がついてないことに気づく。
ユウカ 「あれ?先生出かけてるのかな?昨日あんなことがあったから、今日は仕事忙しいと思ったのだけど。」
ノア 「……閉まってますね。モモトークで起きているか聞いてみましょう。」
モモトークを開き、先生に呼びかけるが既読はつかない。
先ほどの違和感もあり少し嫌な感じがした。
ノア 「入ってみましょう、ユウカちゃん」
そう言いノアはシャーレのドアをこじ開ける。
みしっと音を立ててガラスアルミ製のフレームが捻じ曲がりドアが割れた、
ユウカ 「ええ?!いきなりどうしたのノア?!」
ノアの強引な行動に驚くユウカを傍目にノアはシャーレへと入る。
先ほどを違和感がただの気のせいであって欲しいと、心に言い聞かせて執務室の扉を開いた。
ユウカ 「ノア……はあはあ……待って……」
執務室は閑散としている。いつも通りよく整頓されており、先生の机にはシッテムの箱がある。
……?いつも先生が持ち歩いてる物のはずが、今ここに置いてあるのか。
ノアは先生の机に近づき机の上に目を向けた
そこには生徒会への書き置きと思われるメモが置いてある。
「急な事で書き置きという形になり申し訳ありません。郊外の家族から呼び出しがあったので、数日キヴォトスを離れます。シッテムの箱は七神リンさんが臨時起動できるようにしてあるので、もし何かあれば対応をよろしくお願いします。ーー」
妙に丁寧な書き置きには先生の不在の理由が記されている。
先ほどの違和感と、先生がいない事に嫌な繋がりを感じるが、今の自分ではそれがなんなのか理解できなかった。
気味が悪い5日間が始まる。