【架空コミュ】極月Pが白草四音をプロデュースする話 作:ミーティオル
――キャアアアアアアッ!
人々の騒がしい声。
絢爛でカラフルな建物が立ち並ぶ中、天から続く線路から降りてきた、二人の影――。
*「はぁ、はぁ……」
四音「初めてジェットコースターという物に乗りましたが……。
ふふふ、人々の情けない絶叫が聞けてなかなか楽しいものですね」
*「そ、それは……また特殊な楽しみ方ですね」
四音「ずいぶんと顔が青くなってますね。
……もしや、怖かった、とか?」
*「い、いえ」
四音「そうですか。では、今度はフリーフォールに行きましょう」
*「な、なんですか? その自由落下的な響きは……」
四音「大丈夫です。ただちょっと9.8m/s²で落ちるだけですから」
*「……では、僕はここで待っていますので。
四音さんお一人でどうぞ」
四音「何を言っているんですか。
今日はボクのお願いを聞いてくれるのでしょう?」
*「……一つだけ、だった気がするのですが」
四音「えぇ、プロデューサーと遊園地で楽しむ。
一つだけでしょう?」
*(……今後は四音さんのお願いも利用規約が必要かもしれない)
四音「ほら、こうしていたら待ち時間で終わってしまいますわ。
――あなたは約束は守るプロデューサーでしょう?」
*「そ、それは……えぇ。四音さんとの約束なら」
四音「なら、行かなくてはね? 『約束』ですもの」
*「……はい」
*「う、うわああああああぁぁぁ――ッ!!!」
場所は、遊園地内の屋外休憩所。
*(はぁ……はぁ……死ぬかと思った)
四音「ふふっ、あなたも苦手なものがあるんですね?」
*「……今度はお化け屋敷にでも行きましょうか?」
四音「構いませんよ。ホラーは好きですから」
*(遊園地適正が――遊園地適正が高い……!)
四音「……少し、時間が欲しかったんです。
『アイドルらしかぬ時間』が」
*「……そうですね。四音さんはアイドルとしてずっと走ってきましたから」
四音「思えば、あなたとももう長い付き合いになりますね。
よくもまぁ、ここまでといったところです。
――収録まで6日。そして、それが終われば、THE-MOON」
*「……怖い、ですか?」
四音「怖くない、と言うべきところですが。
そう言えば、それは嘘になる――でしょうね」
*「――四音さんは、どうしてアイドルの道に?」
四音「……何を言うかと思えば。
それは、あなたもご存知でしょう?」
*「いえ――四音さんがアイドルを続ける理由ではなく。
四音さんがアイドルの道に進んだ理由です」
四音(……ボクが、アイドルに進んだ理由)
四音「プロデューサーはボクが子役をやっていたことはご存知ですか?」
*「えぇ。たしか、白草姉妹として――名を馳せたと」
四音「……その呼び方は、実質は『アレ』だけを指していたものです。
ボクは決して主役にはなれなかった。
ミュージカルでは、『アレ』が常に主役だった」
*(白草月花が劇団に属していた時間は短いが――。
それでも、その短い時間で凄まじい頭角をすでに表していたと聞く)
四音「ボクがどれだけ練習しても、アレが喝采を奪っていく。
練習に練習を重ねる日々――そんな時、テレビをつけた時。
ある、アイドルのライブが映ったんです」
*「……あるアイドル」
四音「それは、961プロダクションのアイドルでした。
それまでボクはアイドルになんてこれっぽっちも興味はなかったけど。
――その歌に、初めて心が震えた。
歌で心が震えたことなんて、初めてだった。
ステージいっぱいに踊り、力強く歌う――。
その輝かしさに、目が離せなくなった」
*「それでアイドルに?」
四音「……ボクもそこでなら、主役になれると思った。
そういう計算もあります。
まぁ、それは――結局『アレ』が来て同じ事の繰り返しだったけど」
*「……もし、今役者としてトップスターになれるとしたら。
四音さんは、その道に進みますか?」
四音「そんな簡単になれるものではない――というのは野暮ですね。
けれど、そうですね――きっとそれは選ばない」
*「何故ですか?
『白草月花』に勝つとすれば、最も確実かもしれません」
四音「……それは」
四音(――それは、何故?)
四音(逃げたく、なかったから?)
四音(いや――違う。本当は、逃げたかった。
だって、ボクは実際に逃げたんだから。
でも……)
―――
四音「初めて、ステージから見るファンの輝きが美しいと感じました。
あの輝きは――美しかった」
四音(アイドルという生き方が。
ボクの思う以上に、心に絡みついている)
―――
四音「――アイドルが、好きだから」
四音「たとえ、恐怖があったとしても。
ボクは、『それでも』アイドルを目指すと思う」
四音「――!!!」
*「……改めて、僕は『白草四音』で良かった。
そう、思います」
四音(そうか――そう、なんだ)
*「僕は、前々から考えていたことがあるんです」
四音「……考えていたこと?」
*「――『白草四音とは、挑戦者の称号である』と」
四音「ど、どういうことです?」
*「誰もが、心に『白草四音』を秘めている、と。
勝ちたい気持ちと、悔しい気持ち。
……僕の心の中にも『白草四音』がいる」
四音「――勝ちたい気持ちと、悔しい気持ち」
四音(……そうか、皆同じなんだ)
*「四音さん」
四音「……なんです?」
*「『Aランクより上を目指しましょう』
ずっと、ずっとその上を」
四音「……なっ。まさか」
―――
*「――あなたがAランクより上のアイドルを目指しているからです」
―――
*「はい。四音さんは到底Sランクでは収まるアイドルではない。
僕はずっとそう考えてきました」
四音「本当に、あなたというプロデューサーは」
四音「――えぇ。いいでしょう。
あなたには一番近くで、ボクが天高く飛ぶその姿を見ていただきます」
*「はい、一緒に――『その先』を望みましょう」
そして、時間は過ぎ――。
四音「……もう、こんな時間ですか」
*「四音さんと一緒にいると、時間があっという間に過ぎる気がしますね」
四音「それは――あなたが慌ただしいことをさせるからでは?」
*「……否定はしません。
ですが――何より、僕は四音さんといる時間が楽しい。
だから、きっとあっという間に感じてしまうのだと」
四音「は、はぁ――!?」
*「……いつか、四音さんは世界に羽ばたく存在になる。
そうなれば、今日のような時間は今後はきっと取れなくなる」
四音「――ふふ。何を言うかと思えば」
四音「私が『世界の四音』になったとして。
あなたは『ボクのプロデューサー』。そうでしょう?」
*「えぇ、変わることなく。……ですが」
四音「ならば何も問題はありません。
だいたい、プロデューサーはボクが『諦めきれる』人間だと?」
*「……いえ。
血の代わりに泥を流してでも立ち上がる、それが白草四音だと」
四音「……よくそんなたとえが出ますね。
ですが、わかっているならよろしい」
四音がプロデューサーに柔らかく笑いかける。
四音「――また、行きましょう。一緒に」
四音(……ボクがきっと『その先』へ進んだ、その時に)