後方支援者面で行けない0084   作:乾燥海藻類

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第01話 「コロニーの地で」

「久しぶりですね。ウィリー・ケンプ大尉殿」

 

片手を上げ、カイ・シデンは陽気に挨拶を送ってきた。

 

「今の俺はウィリー・ケンプでも大尉でもないよ」

「そうでしたね。ウィリー・ケンプ少佐は、今ごろジャブローで仕事中でしたね」

 

肩をすくめてカイは言った。ゴップ将軍が言うには、テロ対策らしい。

俺は軍を辞める際に新たな戸籍を与えられた。どうやら俺がウィリー・ケンプではないことは、かなり初期の頃からバレていたようだ。要するに、すべて上層部の掌の上だったわけだ。

 

戦後もガンダムに乗ってテロリストを相手にしているのだからテロ対策もないと思うが、終戦頃にはガンダムパイロットは100人近くいたらしい。ほとんどが量産型のガンダムで、特機であるRX-78シリーズよりも性能は劣るが、見た目はほとんど変わらない。中には顔だけガンダムのなんちゃってガンダムもいたらしいが。

とにかく、その中でもウィリー・ケンプはかなりの有名人だったようなので、それなりに効果はあるのだろう、たぶん。

 

「そういうことだ。それにしても、ブライト艦長の結婚式以来か?」

「そうですね。あれは、盛大な式でした」

 

その後に俺とララァが結婚したのだが、小さな教会でひっそりと結婚式を挙げるにとどめた。その頃にはもう新しい戸籍になっていたので、みんなを集めると色々と不都合だったのだ。

カツ・レツ・キッカは俺が引き取っても良かったんだが、フラウとの話し合いで彼女が引き取ることになった。

その頃にはもうアムロと結婚することが決まっていたらしい。まあアムロも稼いでるし、テム博士の援助もある。経済的には問題ないだろう。そういえば、アムロの母親はどうなったんだろうな。一緒に暮らしてるって話は聞かなかったが。

 

「それにしても、ずいぶんと喋り方がお上品になったな」

「一応は、ジャーナリストなものでして」

 

戦後、しばらくしてカイは軍を辞めた。原作通りにジャーナリストになったようだ。

 

「今回は取材ではなく、プライベートということでいいのか?」

「そうですね。レオンさんに会いに来たんですよ」

 

レオン・ミュラー。

ゴップ将軍が用意してくれた俺の新しい名前だ。一応、借りを作ったことになるのだろう。ウィリー・ケンプの軍籍が残っている以上、たぶん何かあったらそっちに戻ることになると思うが。

軍人を(かた)ったという弱みを握られているので逆らえないのだ。

それからしばらくは、他愛のない世間話をした。そして、カイは影を落としたような口調で訊いてきた。

 

「レオンさんは、一年戦争で何人殺したか、覚えてますか?」

「確実なのは、72人だな」

「そんなわけは……いや、それはMSの撃墜数ですか?」

「そうだ。まあ実際は、1000や2000じゃきかないだろうな」

 

落とした戦艦は1隻や2隻じゃない。全員が助かるなんて奇跡はそうないだろう。

 

「しかし、なぜそんなことを訊く?」

「……連邦軍(おれたち)は勝ってよかったのか。最近の連邦政府を見ていると、そんなことを思うんですよ」

 

正確に言えば勝ったわけじゃないんだが、まあ今はいいか。

 

「組織ってのは、落ち着くと派閥争いを始めるものさ。だがそれは、ジオンだって同じことだ。ジオンが勝ったとしても、たぶん似たようなことになったんじゃないかな」

「でも、ジオンはスペースノイドの独立を掲げていた。ジオンが勝っていたら、宇宙はもっと住みやすくなってたんじゃないんですか?」

 

緒戦で散々宇宙を荒らしたジオン(ザビ家)が、本気でスペースノイド全体のことを考えていたのかは疑問だがな。まあほとんどのコロニーが連邦についたという事情もあるのだろうが。

 

「さて、どうかな。ザビ家の仲の悪さはおまえも知っているだろう?」

 

グラナダが攻められても、ギレンは援軍を送らなかった。たぶんギレンは、キシリアが死んでもいいと思っていたのだろう。もしかしたら死んでくれた方がいいと思っていたのかもしれない。

グラナダは要衝ではあるが、ソロモンやア・バオア・クーに比べれば、その重要度は一段下がる。

 

「ギレンだけが生き残ってジオンが勝利したのならば、宇宙は変わったのかもしれん」

「ギレンは独裁者じゃなかったのかい?」

「独裁が悪いというわけではないさ。民主主義が万能ではないようにな」

 

絶対民主主義の地球連邦政府が腐敗しているからな。

それにギレンって、いうほど独裁者でもなかった気がするんだよな。キシリアやドズルにも権限を与えてたし、首相もいたし議会もあった。デギンが健在だったという理由もあったと思うが。

ただ、前回(まえ)のギレンは、戦後どうにも覇気がなかった。キシリアを警戒して動けなかったのか、それとも燃え尽き症候群だったのかはわからないが、戦中に比べて精彩を欠いていた。

 

「まあ、すべてはもし(if)の話だ。だが、カイの懸念もわかるよ。派閥争いが加速すれば、武力衝突にまで発展する可能性はある」

 

そういえばデラーズ紛争は起きるのだろうか。核運用を想定したガンダムだけは造らんといてくださいよ、とは言ってあるが、テム博士だけがガンダムを造っているわけではないからな。

アナハイムがやらかす、という可能性は十分にある。

 

「……レオンさん。俺はね、連邦政府の真意を知りたいんだ」

「そんなもの、決まってるだろう。権益と保身さ」

「そんな俗物的な……」

「人の上に立つ者がみな清廉というわけではないさ。組織というのは、全体に奉仕するためのシステムとして生まれるが、組織が巨大になると人間はその組織に依存し、組織の保守と存続に奉仕するという逆転現象が起こる。絶対民主制をやっている以上、腐敗はどうしたって生まれるさ」

「……ずいぶんと悲観的な考えですね」

 

言いながら、カイは肩をすくめた。残念ながら組織ってのはそういうモンなんだよ。

それにジオンが勝つよりはまだ連邦が勝つ方がマシな気がする。ジオンというか、問題はザビ家なんだけどな。イオマグヌッソとかヤベー兵器作ったりするし。

宇宙戦国時代とかは、さすがに責任もてんよ。

 

 

 





プロローグ的なものなのでまだ0082くらいです。
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