後方支援者面で行けない0084   作:乾燥海藻類

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第06話 「星の屑」

茨の園がもぬけの殻であることを確認した俺たちは、補修と補給のためにコンペイトウへ向かった。

わずかな休息の時間中に、俺はココノエ艦長から呼び出しを受けた。

ブリッジに行くと、妙に緊張した雰囲気だった。

 

「少佐、これを見てくれ」

 

艦長から数枚の書類を受け取る。

……ふむ。星の屑作戦の全貌か。サイド3への核攻撃。そしてコロニー落とし。首魁はやはりデラーズか。

タイムスケジュールが曖昧なので、そこは何とかするしかないな。

 

「いくつもの中継を挟んで、高度に暗号化されていたのでね。何事かと思ったが、それも頷ける内容でしょう?」

「そうですね」

 

流したのがシーマとはかぎらないが、なんでグリーン・ワイアット大将じゃなくてゴップ先生なんだ? 0083に彼は出てこなかったはずだが。

まあ今は0084年だし、色々と違っているか。

 

「内容は理解しました。すぐに出られますか?」

 

そう言って書類を返す。そういえば何か足りないと思っていたんだが、デラーズの演説がないんだ。まあ演説も良し悪しだけどな。各地に散らばった残党を集められるというメリットはあるが、連邦軍や共和国軍の警戒を強めてしまうというデメリットもある。

原作では核の糾弾をやっていたが、この世界ではマ・クベが撃っているのでそこをツッコむこともできない。

それに地球圏全域に放送するには、通信網の要所要所に内通者を置く必要がある。それが上手くいかなかったのかもしれない。

 

「艦の補修には、あと2日かかる。もう手を加え始めているようでね。途中で切り上げるにしても、丸1日はかかる」

「では先行させていただきます。コンペイトウ(ここ)なら外付けのブースターくらいあるでしょう」

「それは……」

 

艦長は言葉に詰まった。他の艦を出すにも手続きやら何やらで時間がかかる。管轄が違うなどと言われる可能性もある。

面倒な派閥争いに現場の人間を巻き込まないで欲しいが、その恩恵を受けている以上文句も言えない。

ブースターくらいなら、余り物が転がっているはずだ。

 

「ちょうど、と言っていいかわかりませんが、妻と義妹が(くだん)のコロニーに関わっていましてね。補修の間に様子を見に行ってきますよ」

 

ブリッジを出る。制止の声はなかった。メカニックにはかなりの無理を言わなければならんな。お詫びに全員にビールでもおごってやろう。

あと、セイラさんにも警告しておかないとな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ブースターユニットを装着したアリエスが宇宙を駆ける。

星の屑作戦。その計画はあまりに杜撰だ。

まず、コロニー落とし。落とすだけならまだしも、狙った場所に落とすならば、高度な軌道計算が必要になる。尚且つ、邪魔が入らないというのが絶対条件だ。

残党軍が総出で死守するとしても、確率は五分(ごぶ)か、それ以下。

 

サイド3への核攻撃にしてもそうだ。直撃すれば首都島(マザー・バンチ)は崩壊するだろう。

ダイクン派の主力は一掃できるだろうが、共和国を排して公国を取り戻すというのはかなり厳しい。

 

自国に核を撃ち込んだ者たちに、市民は協力などしないだろうし、恐怖政治は長続きしない。さらにそんな混乱したサイド3を、連邦が放置するとは思えない。残党軍を一掃して、連邦の息のかかった者を統治者に据えるだろう。

そう考えると、連邦軍の仕掛けた壮大なマッチポンプのように思えてきた。デラーズは踊らされているだけではないのか?

 

「あなたは黒幕が連邦政府だと考えているのか?」

 

隣りを飛ぶジェミニから通信が入った。

 

「どうだろうな。今のところ、連邦政府の都合の良いように動いていると思えなくもないが……」

 

連邦の派閥争いは加速している。ガンダムを奪われた派閥の失態。コロニー落としを実行する残党軍(スペースノイド)。それを阻止した派閥の功績。様々な思惑が入り乱れて混沌を生み出している。

さすがに考えすぎだとは思うがな。いくらなんでも原作と乖離し過ぎている。

 

「……(はかりごと)帷幄(いあく)の中に(めぐ)らし、勝ちを千里の外に決す」

「なに?」

「旧世紀の、とある国の軍師を称賛した言葉だ」

 

相変わらずポンポンと知識が出てくるヤツだな。まあ、そういう教育を受けてきたんだろうが。

 

「つまり、そんなにわかりやすい話ではないと?」

「真の黒幕は決して表舞台には立たず、影で人々を操り策を結実させる」

「で、その真の黒幕は誰だ?」

「さて、そこまではな。私はパイロットであって、名探偵ではない」

 

からかうように、シロウズは小さく笑った。

 

「ついでに言えば、政治家にも向いていないらしい」

 

あっ、こいつ結構根に持ってやがるな。

 

「だが経営者には向いていたようだな」

「ふっ、そうかもしれん。退屈ではあるが、人々に感謝されるというのは、存外気分が良い」

 

まあ基本的に軍人って市民に感謝されることがないからなぁ。防衛とか復興支援とか、そのくらいか?

コロニーを増設して、地球の人々を宇宙に上げるというのは、こいつの考えとも一致している。気の長い話ではあるが、経済圏の中心を宇宙に移すというのは、こいつも興味を示していた。

簡単に言うと宇宙を盛り上げようぜ、という話だ。サイド共栄圏に似ているようで、ちょっと違う。

とそこで、コロニー移送作業に従事しているララァから通信(テレパシー)が来た。

 

(どうしたララァ、なにかあったか?)

(海賊に襲われそうなの。助けてくださる?)

 

やはりララァのニュータイプ能力は、俺たちとは一線を画しているような気がする。育児休暇中だというのに、今回の護衛に志願したのは、コロニーが襲われるという予感があったからだと言った。

 

予感というよりは予知に近いだろう。まあなんでもかんでも見通せるというわけではなさそうだが。

俺としては主婦に専念してもらいたいのだが、ララァに言わせれば旧時代的な考えらしい。

確かに俺は古い地球人だけれども。

 

(すぐに行く。無理はするなよ。そのザクレロもどきでは、大した戦力にもなるまい)

(あら、かなり改良してあるんですよ)

 

なんであんな道化みたいな見た目が気に入ったのかわからん。もっと良いのがあっただろうに。とはいえ、コロニー公社に払い下げられるMSなんてザクとジムくらいだが。

 

(では、なるべく早くお願いしますね)

(ああ、本当に無理はするなよ。ヤバくなったら逃げろ)

(それは先ほど聞きましたよ)

 

笑いながら、ララァは通信を切った。まあアルマもいるし、俺たちが着くまでは持つだろう。もうかなり近づいているしな。

 

 

 

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