「見えた!」
正面モニターに映る赤い光点は60以上。つまり60機以上のMSが2基のコロニーに群がっているということだ。
やつら本気だな。本気でコロニーを奪い、地球に落とそうとしている。
『作戦は?』
「俺は母艦を叩く。おまえはコロニーの防衛を頼む」
『了解した』
2機のガンダムが左右に別れる。
MSの小隊がこちらに向かってきた。
先頭にいる機体の識別コードは強奪された"キャンサー"だ。
ビームライフルをかわしながら距離を詰める。すれ違い様にサーベルで右腕と頭部と斬り飛ばした。
……うん? ずいぶんとあっさりいったな。まあ、考えてみればそうだよな。機種転換には相応の時間がかかるものだ。MS乗りなら機種を変えてもある程度は動かせることはできるが、その機体の全性能を引き出すには、相応の訓練が必要になる。どんなベテランでも1ヵ月はかかるのが普通だ。
そう考えると、あの赤いのは相当おかしい部類に入るな。
あいつもガンダムと戦っている。
"ピスケス"は僚機と連携を取りながら、辛うじてジェミニに食らいついている。
ガンダムには高性能のコンピューターが積まれているため、素人が乗ってもある程度は動かすことができる。相手が旧世代のMSなら、スペックで押し切ることもできただろう。だが機体の性能差はなく、パイロットのレベルは比べるべくもなかった。コクピットを一突きされて、ピスケスは沈黙した。
こっちも仕事をしないとな。母艦は……チベ級が2隻、ムサイ級が6隻か。メガ粒子砲をかわし、ミサイル群をライフルで撃ち落とす。
チベに向けてブースターユニットを切り離し、ライフルで推進剤に点火する。ブースターユニットはチベを撒き込んで大爆発を起こした。
向かってくるMSをバルカンでけん制しながら、ムサイを落としていく。
敵MSは60機以上。こちらの射撃武器はビームライフルとハイパーバズーカが2丁ずつ。無駄撃ちはできない。
こちらが母艦狙いであることに気づいたのか、コロニー付近のMSがまとめてこちらに向かってきた。
当然だな。母艦の艦長は護衛命令を出すし、パイロットにしても母艦を落とされるわけにはいかない。
向かってくる敵を落とすのは、意外と簡単だ。向かってくるのがわかってるからな。機動が割と単純になるし、意識が攻撃に向いているので、比較的防御が薄くなる。
『ガンダム!! マレット様の仇!!』
半壊したキャンサーが後方からライフルを乱射しながら接近してきた。ゾディアックシリーズは全機全天周囲モニターが採用されているため、
とはいえ……まて、マレットだと?
まさかキシリアの護衛をしていたギャンか? いや、あの時親衛隊は全滅した。隊員が生き残っているのはおかしい。
「復讐は新たな復讐を生むだけだ。復讐で戦うのはやめろ!」
『うるさい! マレット様を奪った連邦も! ジオンの誇りを失った共和国も! みんな死んでしまえばいい!』
あー、そりゃあね。敵の説得くらいで思いとどまったりはしないわな。俺だって大事な人を殺されたら、そいつを憎むし、殺してやりたいとも思う。
けどマレットを殺したのは俺じゃないんだ、たぶん。
『もうやめろ! マレットを殺したのは俺だ! 憎むなら俺を憎め! おまえの憎しみは、俺がすべて受け止めてやる! だからこんなバカなことはもうやめるんだ!』
どちら様!? 識別コードは"カプリコルヌス"か。
いいタイミングで来て主人公みたいなセリフ吐きやがって。というかこの声は……あれ? もしかして本隊?
『うあぁぁっっっ!! キサマが! キサマがマレット様を! キサマがぁぁぁっ!!』
良いセリフだったけど、正気を失ってる相手に正論は通用しないぞ。
距離を詰め、サーベルで左腕を斬り飛ばす。ついでに両脚も斬り落としておこう。
ダルマになったキャンサーに組み付き、カプリコルヌスが語りかける。
『こんなことをしても、なにも戻りはしない! 過去に囚われて、未来まで失うな。マレットはきっと、おまえが幸せに生きることを望んでいたはずだ!』
いや、マレットってそんなキャラじゃなかった気がするけど。
だがキャンサーのパイロットの心には響いたようで、泣き崩れたような声が聞こえてきた。
『フォルド、あまり無茶するな』
『わりぃ、ルース。でもうまくいったぜ。見ろ、敵も投降を始めたみたいだ』
遅れてもう1機のガンダムがやってきた。
母艦を失えば、MSも投降するしかない。味方に拾ってもらえることを期待して逃げ出す者もいたが、どうだろうな。救難信号を発すれば、連邦にも所在が知られる。まあ、撤退時の合流地点くらいは決めてあるのだろうが。
『あんたにも助けられたな。礼を言うぜ』
『バ、バカ! 申し訳ありません少佐。こいつちょっとバカなんです』
『なんだよバカバカって……少佐?』
『ブリーフィングで寝てたのかよ! アリエスのパイロットはウィリー・ケンプ少佐だ』
『ゲッ! も、申し訳ありませんウィリー少佐!』
ゲッて言ったぞコイツ。
「いや、かまわんよ。礼と謝罪は受け取っておこう」
『か、感謝します。俺た……我々はこの後デラーズを追いますが、少佐はどうされますか?』
まさか追撃隊がアルビオンではなくサラブレッドとは。
いかんな、原作に引っ張られすぎていた。
「捕虜の移送と、コロニーの警護を続けるよ。また襲ってこないとも限らないのでな」
『了解しました。では、失礼いたします』
2機のガンダムは人間のように敬礼して去って行った。
確かにグワデンがいなかった。おそらくコロニー奪取後に合流予定だったのだろう。
まあそれは、本隊に任せるか。
あとはサイド3への核攻撃だが、国防隊でなんとかなるか?
軍縮はしているが、クランバトルでのゲルググを見るかぎりMSの改良はしているようだし、精鋭部隊はいると思うが……。
『ウィリー少佐』
思考を遮るように、シロウズから通信が入った。
『胸騒ぎがする。サイド3へ向かう許可がほしい』
「奇遇だな。俺もそう思っていたところだ」