テロリストたちは拍子抜けするほどおとなしくなっていた。
まあ最大戦力であるガンダム2機があっという間に落とされ、母艦もすべて沈められればこうもなろう。
「早かったですね、あなた」
「ああ、実は途中まで来てたんでな」
「なるほど、そういうわけでしたか」
ララァは柔和な笑みを浮かべた。しかし、間近で見ると本当にキテレツな見た目だな、このザクレロもどきMSは。
「お
「おう、よくやったな、アルマ」
「はい!」
20歳を超えたってのに、妙に子どもっぽいんだよな。
それが人気なのか、結構モテているらしい。
だが独り立ちする様子はなさそうだ。
捕虜はコロニーのメインベイに集め、そのままサイド3へと運ぶことにした。
その後、俺たちは駆けつけて来たブランリヴァルに帰投した。
俺たちはパイロットの待機室で、ジェミニの補給を待つことにした。
「なあシロウズ、一年戦争の勝利者は誰だと思う?」
「どうした急に?」
「別に。ただの雑談だ。補給が終わるまで、もうしばらくかかるだろうからな」
「……ふむ」
俺の問いに、シロウズは顎に手を当てて考え始めた。
「引き分け、痛み分けと言いたいところだが、実質的な勝利者は連邦だろう。ジオンは自治権を手に入れはしたが、主権国家となって独立することはできなかった。だからこそテロリスト共に連邦の傀儡国などと呼ばれている」
「いや、真の勝利者はジオンだよ」
「……ほう。その心は?」
興味深そうに、シロウズは身を乗り出してきた。
「終戦直後、財政的に緊迫していた連邦は、莫大な戦時債務を抱えたジオン公国を再吸収することができなかった」
「併合すればジオンは連邦の一部となり、負債は連邦が抱えなければならない。財政破綻は目に見えていた」
さすがだな。そのくらいは読んでいたか。
「ジオンは復興資金を獲得するために、国家が保有するジオニックなど技術系企業の株式一斉売却に踏み切った。売却先は……」
「アナハイムか。確かにあのファンネルを使用した時の感覚は、ジオングのものと似ていた」
「基本的なシステムは同じのはずだ。有線が無線になったから、負担は増えたはずだがな」
「ああ。重さは多少増していた。しかしあそこまでの小型化に成功するとはな。さすがはアナハイムと言ったところか」
「ジオニックの基礎設計があればこそだと思うがね」
多少で済ませる辺り、やっぱりこいつも化け物の類なんだよなぁ。
「ジオンは連邦の10年先の技術を持つと言われていたが、誇張ではなかったようだな。だが売却先はアナハイムだけではあるまい。高く売るには、競合相手が必要だ。それは連邦だな? 一企業に軍事技術を牛耳られれば、安全保障政策など崩壊してしまう」
「そうだ。アナハイムと連邦を競わせた。価格はうなぎ登り。しかもジオニックは技術のすべてを吐き出したわけではなかった」
「当然だな。本当に大事なものは抱えておくものだ。なるほどな、読めてきたぞ」
莫大な資金を得たジオンはそれを使い債務を清算、さらに被害が少ないサイドであったため人も集まり、凄まじいスピードで復興を遂げた。
「俺がクランバトルで戦ったゲルググ、知っているか?」
「ああ、見たよ。外見は後期に生産されたゲルググだが、あの動きはかなり
「あからさまな新型を造らないところに奥ゆかしさを感じるな」
おそらく連邦を刺激しないためだろう。なんでクランバトルに出してきたのかはわからないが。
もしかしたら、性能テストだったのかもしれない。だとすれば、悪いことをしたな。バイオセンサー搭載機は、量産には向かない。コストがバカ高いというのもあるが、性能を十全に発揮できるパイロットがいないからだ。
「連邦は面子を守ることにこだわり、ジオンは実利を手に入れた。宇宙世紀は次の段階に進んだ」
「次の段階?」
「企業の重要施設は着々と宇宙へ上がり、各コロニーも遅々とではあるが確実に復興を遂げ、力を付けてきている。経済の中心は宇宙へと移りつつある」
「地球に価値はないと? だが連邦は力を取り戻している」
「そこだ」
「なに?」
青い瞳が鈍い輝きを放つ。
「ギレンは地球に固執し過ぎていた。ルナツーを戦略的価値がないと放置せず、大部隊を率いて早期に制圧するべきだったんだ。宇宙を制すれば、地球など放っておいても干上がる」
「ギレンほどの男が気づかなかったとも思えないが……」
「ずいぶんと買っているんだな」
「能力とカリスマだけはあった」
それだけあれば充分だとも思うが……まあスペースノイドって妙に地球にこだわるところがあるからな。連邦憎しという部分もあるんだろうけど。
というか、ザビ家が性急すぎるのか? ダイクンの計画を遠大すぎると暗殺したくらいだからな。堪え性がないのかもしれない。
「急激な変化は歪みを生む。ジオン・ダイクンの提唱した
「……なるほど。しかし、あなたにそれほどの政治的知見があるとは」
「ほとんどは受け売りだよ」
ゴップ先生のな。とんだ食わせ者だったわ、あの爺さん。
とそこで、壁に設置された通信機が鳴った。相手は格納庫の整備士だった。
「補給が完了したそうだ」
「では、先行させてもらう」
「ああ。こちらもなるべく急ぐ。頼むぞ」
「言われずとも、な」
サムズアップして、シロウズは待機室を出て行った。