後方支援者面で行けない0084   作:乾燥海藻類

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第02話 「クランバトル」

軍を辞め、コロニー公社で勤務を始めて4年ほどが経った。

RX-78-02ガンダム。俺が初めて乗ったガンダムは今も俺の愛機だ。一応、偽装のためにバイザーをかけてガンダムっぽさは隠している。

しかし、高性能機であるガンダムとて4年も経てば型落ちは否めない。最近出始めたジムの近代改修型はガンダムに比肩する性能らしい。

 

そろそろお役御免かな、と思っていたらゴップ先生から指令が来た。彼は軍人を辞め、政治家になった。とはいえ、その影響力はまだ軍部に残っているようで、どうやら新型MSの開発に協力してほしいそうだ。

 

「これが新型のガンダムです」

 

そして届いた新型のガンダムが、俺の目の前に立っていた。その解説を始めたのは、パリッとしたアナハイムの制服に身を包んだ妙齢の美女だ。

アッシュグレイの髪に、切れ長の瞳。名前はルセット・オデビー。確か原作ではGP03の開発に関わっていたはずだ。

 

テストパイロットの話をふられた時に冗談めかして、どうせなら美人の技師をお願いしますよ、と言ったからかもしれない。

どうも、この世界では「ガンダム開発計画」は「ゾディアック計画」に変更されたようだ。要するに連邦軍は、新型のガンダムを12機造るつもりらしいのだ。

財政が苦しいってのは嘘だったのかな?

その影響か、0083年にデラーズ紛争は起きなかった。たぶん「ガンダム開発計画」が色々と変更になったせいだろう。

ちなみに俺はレオン・ミュラーではなく、ウィリー・ケンプとして応対している。

 

「開発コードは"ルミナス"です」

「……ふむ」

 

このガンダムはその雛型らしい。実験機らしく、まだ実用段階ではないシステムを搭載している。

手元の仕様書のページをひとつめくる。

 

「バイオセンサーか」

「はい。搭乗者の意志を駆動システムに反映させ、機体の反応速度やコントロール精度を向上させるシステムです」

「それでジャック少尉ではなく、俺というわけか」

 

バイオセンサーは簡易型のサイコミュシステムだ。当然ニュータイプにしか扱うことはできない。

連邦軍にいるニュータイプ兵士は、表向きいないことになっている。アムロはパイロットにならず技術者になったし、ミライさんはたぶんニュータイプだろうが、MSの操縦はできない。というか、結婚を機に軍を辞めている。

まあ、裏でニュータイプを造っている可能性はあるが。

 

「しかし、最近はテロリストもおとなしい。十分なデータが取れるとは思えませんが?」

「はい。ですので、クランバトルを利用しようと思っています」

「クランバトルねぇ」

 

前回(まえ)と同じように、サイド6ではクランバトルが行われていた。とはいえ、前回とはルールがかなり違っている。

一番大きな違いは、非合法の賭け試合ではなく、政府公認の興行として行われているところだ。

試合形式も3対3のチームバトルで、頭部を破壊されれば敗北というのは同じだが、3機とも撃墜しないと勝利にはならない。しかし降参が認められているので、大抵は2機やられると降参してしまう。

 

安全性は向上しているが、コクピットへの攻撃は禁止されていないので、事故が起こることはある。ペイント弾を使うとか、ビームの出力を落とすとか、そういう甘いゲームではないのだ。

しかし相手を死亡させてしまった場合ペナルティが科されるので、故意に殺害する人間はいない。

まあ最近の装甲素材はよくできているので、マシンガン程度では貫通できないし、確実に死ぬのはビーム兵器が直撃した時くらいだろう。

そして、財政的な理由からか、ビーム兵器を使うチームはあまりいない。

しかしクランバトルなんておおやけの場で新型のガンダムを披露してもいいのかね。まあ俺が口出すことでもないが。

 

改めて、目の前の機体を見上げる。

すべての(もと)となる機体だけあって、機体そのものはシンプルだ。

見た目は"ファーストガンダム(RX-78-02)"とほとんど差異はない。

しかし、俺がクランバトルに出ることになるとはな。これは本当にコロニー公社の仕事なのだろうか?

いや違った、今の俺はウィリー・ケンプだった。

まあ給料をもらっている以上、命令には従わなければならない。

……俺はいつウィリー・ケンプを辞められるのだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんなわけで俺たちはサイド6のイズマコロニーにやってきたのだ。

 

「ところで、チームメンバーはいつ来るんですかね。試合はもう明日なんでしょう? 連携の訓練もなしにぶっつけ本番というのは……」

「あら? 言ってませんでしたか? 少佐は単機ですよ」

「……なに?」

 

いや、確かにクランバトルは最大出撃数が3機というだけで、単機で出撃してもレギュレーション違反ではないが、そんなチームはひとつとしてない。デメリットしかないからだ。

 

「大丈夫ですよ。クランバトルに出てくるMSは大半がザク、ドム、ジムです。たまにゲルググが出てくることもありますが、ルミナスの敵ではありませんよ」

「ですがこちらの武装は、サーベルとマシンガンだけなのでしょう?」

 

ビームライフルは使わないらしい。まあ主目的が機体性能のテストだからな。それはわかるが、マシンガンはけん制程度にしかならないだろうし、こちらの勝ち筋はサーベルで頭部を斬り飛ばすしかないことになる。

 

「少佐なら余裕でしょう?」

「どうも、過大評価されているようだ」

「ア・バオア・クーの戦闘データを再現した映像(ムービー)は語り草でしてよ?」

 

そう言って、ルセット女史はクスクスと笑った。

あれもなあ、かなり脚色されてるんだよな。確かにジオング、ビグロ、タコザクと大物を仕留めたのは事実だが、あれをシャアが見たら憤慨するんじゃなかろうか。それにジオン兵が見たら気を悪くするだろう。幸いなのは、一般公開されてないことくらいか。

 

「まあ、やるしかないんだろうけどな」

「機体は万全に仕上げておきますわ」

 

ルセット女史が笑みを浮かべながら、俺の胸を叩いた。

 

 

 

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