『あなたが付いていながら、なぜそんなことになっているのですっ!?』
でもあなたが付いていながらと言われても、俺は関係ないと思うんだよね。軍を辞めていることはセイラさんも知っているはずなのに。
『でもあなたならパイプや影響力は残しているはずでしょう?』
パイプはあるけど、影響力はどうかな。ゴップ先生が好き勝手使っている可能性はあるけど。
『それで、あなた方はどうするのです?』
「本拠地を探して叩く。だが間に合うかはわからん。サイド3の警備は厳重にしておいてくれ」
『……わかりました。ところで、私からあなたにテレパシーを繋げる方法はないのですか?』
「うーん、そう言われてもね」
一度繋がってしまえば、こうして通話ができる。だがセイラさんから俺に繋げることはできない。電話で例えるなら、セイラさんは俺の番号を知らないし、リダイヤルもできない状態なのだ。
正直なところ、俺もどんな原理で繋がってるかわからんからなぁ。
「普通に連絡をくれてもいいんだけど」
『それができれば苦労はしません』
そりゃまあ、向こうは大統領で、こっちはただのいち市民だからな。高確率で盗聴されるだろうし、暗号通信ってのも怪しまれる。それに大した話もしてないしな。この情報も、もう少しすれば連邦政府から届けられるだろうし。
シャアが一緒にいることは、言わなくてもいいか。シャアはもう死んでるしな。セイラさんは「きっとどこかでのうのうと生きていますよ。ああ見えて生存能力だけは高い男ですから」と生存を確信しているようだが。
なんか、年々口が悪くなっているような気がする。ストレスが溜まっているのかもしれない。
そろそろご結婚を……いや、やめておこう。間違いなく政略結婚になるだろうし、藪をつつく気はない。
『なにか邪気を感じました』
「連中、本気でサイド3に核を撃ち込むつもりかもしれないな」
『……彼らをザビ家の呪いから解放する手段はないのでしょうか』
無理なんじゃないかな。俺は無宗教だからわからんが、改宗させるのは難しいって聞いたことがある。しかもこの状況でもテロを続けてるってことは狂信者だろう。そういうやつらは、死ぬまで止まらないと思う。
確かに元ジオンが差別されてるって話は聞いたことがある。だがそれも連邦の勢力圏内での話だ。サイド3に行けば普通に暮らせるだろうし、仕事も見つかるだろう。
「まあ、こちらも動いてみる。そちらも警戒しておいてくれ」
『わかりました』
テレパシーを切った後、俺はブリッジに向かった。
原作通りならば、茨の園はサイド5の暗礁宙域にある。破壊されたスペースコロニーや、撃沈された戦艦等の残骸を中心に、暗礁宙域に漂う様々なジャンクを曳航して建造された、やつらの本拠地だ。
ジャンクを使用して建造されたため隠密性が高く、連邦軍ですらその存在を認識できていない。
というのも、コロニーの新造や再建は、サイド4とサイド7を中心に行われたからだ。サイド4はコンペイトウが近く、サイド7はルナツーが近いため、物資を届けるのに都合が良いからだ。
だからサイド5はほとんど手つかずのまま残っている。
「……ふむ。少佐はそのようにお考えか」
ココノエ艦長が顎に手を当てて考え始めた。
歴戦の艦長らしい威厳を感じる。
「しかし、やつらは本当にサイド3に核を撃ち込むつもりでしょうか?
「やつらにとっては、裏切り者の集まりに過ぎないのかもしれませんね。テロリストの考えはよくわかりませんが」
実際わからん。だが観艦式という目標がない以上、核を撃ち込む候補としてはルナツー、月に次いで第三候補辺りには挙がりそうだ。
たぶん、本命はコロニー落としだろうが。一応ゴップ先生には伝えてある。
「わかりました。ルウム近傍の調査を申請してみましょう」
◇
当たり前の話だが、宇宙は広い。
ルウム宙域に、本当に茨の園があったとしても、発見するのは簡単ではない。
実は敵が巣穴から出てきてくれるのを期待していた。
何しろこちらは単艦だ。仕留めた方が早いと判断してくれれば、部隊を展開してくれる可能性はある。
残骸と岩塊が浮かぶ海。いまだに反応炉が生きている艦艇もあり、赤外線探査も電探もほぼ意味がない。
遮蔽物の多いこの場所では、不意打ちがそのまま致命傷になりかねない。
探索にはかなりの神経を使う。
しかし、いくら探索しても、敵部隊が出てくる様子はなかった。
そして、そろそろ捜索の打ち切りを考え始めた頃、茨の園は見つかった。
だがそこはもぬけの殻だった。やつらは拠点を廃棄して、次の段階に移っていたのだ。
そうか。考えてみれば、原作のように観艦式の日程に合わせる必要がないんだ。
さらに妙なことがあった。生活の痕跡がかなり古いのだ。数ヵ月か、数年が経っているように思える。
敵は本当に、デラーズ・フリートなのか?