青い星の子とヴィクトリーロード   作:彩べぇ

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リハビリ作品です。続くかどうかはわかりません。


第一話

少年はボールを全力で蹴る。

ボールはキーパーごとゴールに撃ち込まれた。

 

「ゴールッ!!これで6-0!!!圧倒的だぁあああ!!!!」

 

実況だけが響いた。

 

「やった!また決まった!これで絶対私たちの勝ちだね!!」

 

きっとみんなも喜んでくれるはずだ。そして、後ろを振り返った。

 

(あーあつまんね、結局才能かよ、やりすぎだろ、もうあいつ1人でよくない?、1人で喜びやがって、もうサッカーやめよ、死ねよ、あいつさえいなければ、ーーーーー)

 

実際に音はないはずなのに聞こえてしまった。

ドス黒いそれらはなだれ込むような私の頭に突き刺さる。

 

「え、あ…なんで…うぷッ」

 

始めたばかりの頃はみんな、私がゴールを決めるたびに、暖かくて、優しい黄金の光を放っていたはずなのに…

 

今、この目に映るのは凍てつく闇の冷たさだけだった。

それは私が相手に与えてきたモノだった。

それが私に牙を剥いてきた。

 

凄まじい頭痛と吐き気に襲われた私は意識を手放した。

その日以降、私は大好きだったサッカーをしていない。

 

ーーーーーーーーーー

 

「本当に1人でよかったのかい?わざわざ長崎でなくても、もっと近い所にすればよかったんじゃないか?」

 

「それじゃ意味がないんだ。大丈夫だよ義父さん、心配しないで。」

 

「そうは言っても、親は子を心配するものだ。ちゃんと勉学は怠らないようにするんだよ。」

 

「わかってるよ、そっちも忙しいのにありがとう…それじゃそろそろ遅刻しちゃうから切るね。」

 

「ああ。くれぐれも体調には気をつけるように。」

 

東北から離れて九州で一人暮らしをしたいという、普通ならありえない我儘を聞いてくれた養父への感謝を忘れずに家を出る。

 

程なくして、転校先についた私は職員室へ向かい、自分が所属する教室へ案内された。

 

香澄崎先生の後をついていく私に好奇の目線が集中する。

 

「今日からこのクラスの新しい仲間です!自己紹介をお願いします!」

 

特に緊張とかはしなかった。黒板に自分の名前を書き、ごく普通で当たり障りのないであろう自己紹介をする。

 

「涼野千頼(ちより)です。よろしくお願いします。」

 

一瞬の沈黙の後、教室が沸き上がった。やれイケメンだのクールだの少々喧しいくらい大騒ぎだ。

 

「ちょり〜っす!俺、木曽路兵太!よろしくな!」

 

挨拶がわりのボケをかましてきた目の前の少年は私に手を差し出してくる。私は彼の外面と中身の歪なギャップ差から思わず目を逸らしながら、求められた握手に応じた。

 

「よろしく、故郷の寒さを思い出したよ。」

 

苦笑いする木曽路は、早く退けと女子達に押し除けられる。それから、休み時間になるたびに女子達から質問攻めにあいながら放課後まで過ごした。

 

そうして放課後…私は木曽路ともう1人のクラスメイト、笹波雲明に呼び出された。

 

「どうしたんだい?」

 

「雲明が呼び出せっていうからさ。」

 

理由を聞いてみると笹波雲明が答えてくれた。

 

「涼野君、サッカー部に入るんだろう?今は選手6人だけどこれから15人を5、いや4人に絞る入部テストを行うから、君も見ていってほしいんだ。」

 

もう既に入るのが確定しているような言い方に違和感を覚える。

 

「まるで僕を知っているような言い方だね?」

 

最悪だ…嫌な予感しかしない。

 

「涼野千頼…東北で最強と言われ、パーフェクトプレイヤーとして名高い存在だった君は2年前、突如サッカー界から姿を消した。サッカー雑誌で名前を見たことあってピンときたんだ。」

 

「そうか…」

 

自分を知るものが誰もいない、そもそもサッカー部だって前情報ではなかったはず…そう思って故郷から果てしなく遠い場所へ来たというのに、どこへ逃げようとサッカーは私を逃がしてくれないそうだ。

 

きっとどこへ行ってもそれは変わらないのだろう…なら、せめてもの抵抗としてプレイを変えるしかない。

 

覚悟を決めて彼に答えた。

 

「一つ条件がある。」

 

「条件?」

 

「シュートはもう撃てない。ディフェンダーとして専念させてくれ。」

 

「もう撃てない…?わかった、今は事情を聞かないでおくよ。君を逃す方が惜しいからね。」

 

「ああ…これからよろしく。」

 

明らかに怪しまれているが関係ない。

私はもうシュートを撃たない。

これなら、きっとサッカーと向き合える。

もうあの光景は沢山だ。

 

「話は決まりだね!それでは新入部員1名、ご案なーい!!」

 

木曽路に引っ張られて部室へと向かう。

 

(確かにディフェンダーが足りていないから助かるけど…涼野君の左足は桜咲先輩に並ぶ、大海を割る黄金の足だ。きっといつか必ず必要になる。

怪我とかではなさそうだけど、一体どんな事情があったんだろう…?

空白の2年が関係していることは間違いなさそうだ。)

 

遅れて向かう笹波雲明は涼野千頼の秘密を探ることに決めた。

 

 

 

私たちは部室に着き、他の部員と対面した。

 

「来たか…ん?木曽路、誰だそいつ」

 

「新入部員の涼野千頼君っす!雲明が直々にスカウトしました!」

 

「ほーう?てことは結構出来るやつってことだ。期待してるぜ、涼野。」

 

明らかにいかつ過ぎる先輩、柳生駿河先輩が肩を組んで来て自分にそう告げた。

 

「よろしくね!」「よろしくな。」「よろしくお願いします…」「よろしく頼む。」

 

忍原来夏先輩、桜咲丈二先輩、古道飼亀雄、四川堂我流先輩か…これからはチームメイトだ。しっかり覚えなくてはね。

 

「それじゃ残り4人の選抜試験に行くとしますか!」

 

木曽路の合図でグラウンドに向かう。

 

「君の意見も参考にさせて貰うよ、涼野君。」

 

どうやら笹波は私にも試験官役をさせるつもりらしい。

 

 

 

 

試験が終わって意見を伝え、最終決定を雲明に任せて私は帰った後久しぶりにボールに触れた。

 

脳内で敵を作り上げて1on1を行う。ブランクがあったにも関わらずそのテクニックはキレを失っていなかった。

 

次にシュートを放つ。コンクリート壁に跡を残しながら明後日の方向へ飛んでいった。

 

私は追いかけることもせず、思わず後ろを振り返ってしまった。

 

一瞬…あの日の光景がフラッシュバックして吐き気を感じて後悔するが、瞬きと同時にその光景は消えて、誰もいないことに安堵する。

 

「やっぱりだめか…」

 

ボールを回収し、自分の部屋に戻る。スマホに着信履歴があったので確認してみると、養父だった。折り返しこちらから電話をかける。

 

「急にかけて悪かったね。新しい生活は順調かい?」

 

「ううん、大丈夫。ありがとう…悪くないよ今の生活。」

 

「ちゃんと食べてるか?」

 

「今から作るとこ。」

 

そうして他愛のない親子の雑談を続け、意を決心して養父に告げた。

 

「義父さん…もう一度…サッカーやることにしたよ…」

 

「そうか…私は嬉しいが…いや、これ以上は言うまい…応援するよ。」

 

「ありがとう。頑張るよ。」

 

「たまに晴矢に様子を見に行かせるから、何か困ったら頼るといい。それじゃまた連絡する。」

 

「ああ。」

 

通話が切れたスマホを放り投げ、今日の残ったやることを全部済ませる。

寝る前に明日の天気を見ようとテレビをつけた。

 

「10年前の隕石が落ちた出来事について…フン…くだらない。」

 

すぐにチャンネルを変えて天気予報を確認し、就寝に入った。

 

 

ーーーーー10年前ーーーーー

 

 

秋田の地に落ちた隕石を調査するために赴いた吉良コーポレーション東北支部長、涼野風介は目の前の物体に驚愕した。

 

「これは隕石なんかではない…小さな宇宙船だ。」

 

俗に言う、1人用のポッドが開く。

そこから現れたのはまだ小さな、人間に換算して2、3歳ほどの赤ん坊だった。

しかし、その肌や髪は青く…決して同じ地球人ではありえない色彩をしていた。

あえて言葉にするならそう…かつて自分たちが名乗っていた、エイリアン。

 

「まだ子供じゃないか…」

 

きっと世間に公表すればろくな人生を歩めないだろう…エイリアンといえどまだ赤ん坊、それにとても愛らしい容姿、まるで天使と言わんばかりの子供を涼野風介は庇護することに決めた。

 

それが、かつてエイリアを名乗って罪を犯したことへの贖罪にもなるだろうと信じて。

 

「今日から私が君の親だ…名前はそうだな…」

 

ポッドの座席付近に何語かわからないがネームタグらしき物があった。そこにはなんとなくだがぱっと見形だけで「ピチョリ」と読めなくもない。

 

「ちより…千頼。それが君の名だ。」

 

それから風介のもとで鬼スパルタでサッカーを教わりながらすくすくと成長し、日光を浴びていたら肌の色も地球人と変わらないくらいになって、現在に至る。

 

これはそんな背景を持つサザナーラ生まれ地球育ちのサッカー少年の物語である。

 

少年の名は涼野千頼。

 

またの名を、トワダピチョリ。




ようやく仕事で新人の面倒見る必要なくなったので時間が取れました。反響よかったら続くかもしれません。

あと、セレクトキャラはいるけど描写するかはわかりません。
ちなみに私は黒原がキャラ濃くて気に入ってます。
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