P-SWAT―ロス市警機械化特殊部隊―   作:福ノ権兵衛

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第3章 過去

パペットの訓練から1カ月半が過ぎた。荒削りではあるもののイーサンのパペットの操縦技術は着々と磨かれていった。最初の訓練での照準のズレはなくなり、射撃スキルも向上した。またブービートラップに引っ掛からないよう常に足元や周りの警戒を怠らないようになった。

ジェシー「ねえ、あれ見た?」

アーサー「今回の射撃訓練だろ?イーサンのやつ、あの訓練以来どんどん上手くなっているよな。」

フランク「ああ、射撃の腕も前より良くなっているしブービートラップに引っかからなくなった。」

ジェシー「腐っても元SWATね、あいつは。」

 休憩室で雑談する突入クルーたち。彼らの話題は生意気な新米、最初こそ「仲間のアーモを半壊させた狂犬」として悪印象を持たれていた彼だが、今では「少し危ないが頼りになりそうな新米」として扱われていた。

 一方その頃、当の本人はコントロールルームにてVR訓練を受けていた。これはミシェルから課された訓練で、数種類の環境とシチュエーションを想定した内容だった。訓練では「任務の遂行能力」「仲間とのチームワーク」「射撃技術」などが試され、それによって技術が大きく向上したのだ。

しかし、どれほど腕が上がっても、彼の中に依然としてSWATへの帰属願望とP-SWATに対する嫌悪感が残っていた。シミュレーションの結果は100点中の95点。高スコアであるにも関わらず、その結果にどこかいら立ちを感じていた。

イーサン「いくら人形を操る技術が上手くなっても、自分自身の能力が上がったわけでもないのに・・・。」

 あれだけ拒絶したパペットの操縦技術が上がる事に、仕事のためとはいえイーサンはその事実を受け入れられなかった。

ミシェル「まだやっているの?」

イーサン「・・・ミシェル。」

ミシェル「今日の分は終わっているのに、熱心なのね。」

イーサン「そういうわけでは・・・。」

ミシェル「その様子だと、まだこの部隊に疑問を持っているようね。」

イーサン「・・・っ。」

 彼女に本心を当てられて彼は気分が悪くなった。

ミシェル「図星のようね。」

イーサン「・・・お前に何が分かる、この屈辱が。現場の警官が必死に戦っているのに、俺たちはクーラーが効いた部屋でロボットゲームをしている。これじゃあ政治家と変わらないじゃないか。」

 彼は自身の胸に秘めたパペットに対する憎悪と嫌悪を吐露する。

 

それは彼がまだSWATに入隊する前、どこにでもいる普通の警察官だった頃の話である。彼は同僚であり幼馴染であるブルックリンと共に街を巡回するいわゆるパトロールの任務に就いていた。地味な役割で派手な事件は滅多に起こらない。車に乗りながらくだらない雑談で時間を過ごす、平凡で退屈だがイーサンにとってはかけがえのない時間だった。しかし、時は残酷だった。

灰色の雲が空を覆い、今にも雨が降り出しそうなある昼間の出来頃だった。彼らがハンバーガーやドーナツを頬張っていると突如無線が入る。

『南カルフォルニア大学でパペットを使用した乱射事件が発生、至急急行せよ。』

イーサン「こちらPC0435。現場に急行する。」

 イーサンたちはマクリントン・アベニューに停車した。防弾チョッキとカービン、ショットガンを装備して現場に向かった。大学内で暴れているのは3体の作業用パペット“アーマイゼ”。全て武装化されていて下手に対処できない。イーサンたちは民間人の避難誘導を開始した。多くの生徒や教師がキャンパスから外へ逃げようとしたとき、銃声が鳴り響いた。アーマイゼが発砲したのだ。2人は壁に隠れて応戦したが、作業用に作られただけあって頑丈である。しかも相手が持っている銃は連射できるように違法改造したショットガン。あちこちに散弾が飛び交い壁やガラスを破壊した。

イーサン「くそ!このままじゃ・・・。」

10分後、ようやくP-SWATが到着した。トレーラーからはロールアウトされたばかりの警察用パペット・アーモが降車し壁となるように2人の前に出た。

アーモ・オペレーター「あとは我々が、あなた方は民間人の避難を。」

ブルックリン「分かった。」

 アーモが壁になっている間、2人は民間人の避難を急いだ。その時、アーモのオペレーターが叫んだ。

アーモ・オペレーター「手榴弾だ!」

 ポンと軽い音が響き、空から黒いパイナップル状の物体が落ちてきた。それは非正規ルートで手に入れたであろう軍隊用の手榴弾だった。アーマイゼの一体が持っていたであろう擲弾発射機によって放たれたそれは不幸なことにブルックリンの目の前に落ちた。

アーモ・オペレーター「危ない!」

 咄嗟に手榴弾に覆いかぶさるアーモ。刹那、耳をつんざく爆発音と煙が舞い上がる。爆発を軽減させることはできたが、地面と胸部の隙間から飛び散った破片はブルックリンの内臓に食い込み、ズタボロにした。

イーサン「ブルックリン!」

 イーサンは銃撃が飛び交う中、命の灯が消えかけている友人の元に駆け寄った。

イーサン「しっかりしろ、ブルックリン。眠るなよ、馬鹿。ブルックリン、ブルックリーンっ!」

 その後、犯人は逮捕され事件は解決したがブルックリンは死んだ。再生医療技術がまだ発展していなかった当時、彼を救う手段はなかったのだ。霊安室にてイーサンは己の無力さとP-SWATに対する憎悪を募らせた。自分の友人がこうも無残な死に方をしたというのに奴らはパペットが壊れただけでけがを受けていない。あまりにも不公平だ。元来あったパペットに対する怒りと嫌悪は友人の死によって大きくなった。そして彼はパペットに頼らず、自らの知識と力で街を守る決心をし、SWATに入隊した。

イーサン「俺は変えたかった。ブルックリンのような犠牲者を出さないためにも、人形に頼らず自分の知識と力で守ろうと・・・。それでSWATに入ったというのに・・・このざまか!」

ミシェル「確かにあの時の事故は悲惨だったわ。でもだからと言ってこの部隊は不必要なものではないのよ。」

イーサン「じゃあ、なぜブルックリンは死んだ!壁になるって言っていたあの人形は、破片を受け止め切れていなかったじゃないか!」

ミシェル「確かにアーモがロールアウトされた当時はパペットによる短期決戦がメインだったし、爆発による衝撃を軽減させる追加装甲がなかった。それに今と比べて隊員の練度も不足していた。だけど、その事件を教訓にして、機体設計の見直しや他部隊との連携を重視した演習の追加、さらに短期決戦から人質や仲間を守る防御戦法へ切り替わったのよ。」

イーサン「・・・っ。だから何だっていうのだ。今更改善されたってプライドやブルックリンは帰ってこない。」

ミシェル「貴方の気持ちは分かる。でも、過去に縛られていては前に進めない。今、犯罪は技術の発展に伴ってより凶悪で、残酷で、無秩序になってきている。貴方もあの事件で分かっているはずよ。」

イーサン「・・・。」

ミシェル「だからこそアーモが、P-SWAT(私たち)が必要なのよ。お願い、私たちと一緒に戦って。この街に生きる人々のために、そしてお父様とブルックリンのために。」

イーサン「ミシェル・・・。」

彼女の説得に彼の心は少し揺れ動いた。正直、パペットに対する思いは完全に払しょくはできない。それでも彼女の言うことは一理あると感じた。

 突如として鳴り響くアラート。

『ロサンゼルスの銀行で立てこもり事件が発生。P-SWATチームはブリーフィングルームに集合せよ。繰り返す、P-SWATチームはブリーフィングルームに集合せよ。』

 ならば、やってみよう。信じてみよう、イーサンは彼女と共に部屋を後にした。

                                      続く

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