眠りの魔法の使い方~運び屋の魔法使いは催眠魔法で世界を生きる   作:furu6272

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世界を包み、魔物は夢を見る  後

 この世界のどこかで、「何か」は夢を見て魔物を生み出しているのだ。

 

 

 

 だが、俺は誰にもそれを話したことがない。信じる人もいないだろうし、これから話すこともないだろう。

 

 

 

 そして、それはどうでもいいことだ。この話を誰かが知ったとしても、解決のしようもないのだから。

 

 

 

 だから俺が知っておくべきことは、この世界には「何か」がいるということ。「何か」は夢を見ていて、魔物を生み出しているということ。

 

 

 

 そして、俺は「何か」の夢に干渉できるということだ。

 

 

 

 もしも俺が誰かに殺されそうになったなら、俺は間違いなく「何か」の夢に干渉して魔物を生み出すだろう。俺が死ぬなら、相手も道ずれにしないと気が済まない。

 

 

 

 たとえその後に、生み出した魔物がどれほどの被害を生み出すのだとしても。

 

 

 

 

 

 

 

 なぜ突然、そんなことを思ったのだろう。今、俺に敵がいるわけでもないのに。

 

 

 

 けれど、いつの日かその時がくるのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 ボコッ

 

 

 

 夢の深淵で、「何か」がまた泡を出したようだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「感じたか?」

 

 

 

 うす暗い空間で誰かが声を発した。それは、アッシュが「何か」の夢に干渉した日のことだった。

 

 

 

 問われた相手が答える。

 

 

 

「ああ。感じた。だが、誰が「主」に干渉したというのだ。」

 

 

 

「俺にはわからん。細かい感覚はお前の方が優れているだろう。」

 

 

 

「我にもわからん。干渉は小さすぎた。他のモノも追跡することはできないだろう。」

 

 

 

 その答えを聞いて、1人は大きくため息を吐いた。

 

 

 

「はぁ~。なんたることだ。我々が産まれ落ちてどれほどの時が経った?ついに来るべき時がきたかと思ったというのに。」

 

 

 

嘆く相手に対して、もう1人がたしなめるように言った。

 

 

 

「おちつけ、コサージュ。我からすればこれは大海に投げられた小石のようなものだ。気にするようなことではないだろう。」

 

 

 

「なにを言うガーミン。平静を装いおって。お前の方こそ口の端が歪んでいるではないか。」

 

 

 

「!」

 

 

 

 ガーミンと呼ばれたモノは、反論を受けて慌てて手で口を覆うようにした。

 

 

 

 だがすぐに手を外すと、ガーミンの顔には深い笑みが浮かんでいた。

 

 

 

「まったく我を煽るな。我々には宿命がある。その宿命に小石を投げることすらできなかったのが、小石が投げられたのなら笑みも浮かぶだろう。」

 

 

 

「動くかガーミン。だがどうする?」

 

 

 

「我々で無理だったのだ、魔物がやったとは思えん。可能性があるなら人だろう。ならばアスタロトのところに行くべきだろうな。あいつは人間の社会に詳しい。」

 

 

 

「アスタロトか。人間の社会など俺はなんの興味もわかないが。」

 

 

 

「そう言うな。アスタロトは変わり者ではあるが、宿命を負っていることに変わりはない。人間の情報を隠しはしないだろう。」

 

 

 

「ふむ、他にあてもなし。行くか。だが、ムダになったらどうする?」

 

 

 

「ふむ……最後の手段として、一つ考えがある。」

 

 

 

「なんだ?」

 

 

 

「魔物の大群を使って人を襲わせる。それで生き残ったのが主に干渉した人間だ。」

 

 

 

「なぜだ?」

 

 

 

「小石ほどでも主に干渉するほどの人間なら、魔物に襲われた程度で死にはせぬ。」

 

 

 

「なるほど、それは道理だ。」

 

 

 

「何人生き残るかはわからぬが、数が少ない方が選定もやりやすい。」

 

 

 

「それも道理だな。だが、それなら今からやればいいではないか。」

 

 

 

「それはいかん。人間は脆い。大勢を動かせばイレギュラーが起きる可能性はある。こんなことは二度とないかもしれんのだから、慎重に動かねばな。」

 

 

 

「わからんな。ではいつやるのだ?」

 

 

 

「うむ、たとえば20年後だ。その人間が仮に30歳だとして、人間が能力を維持できるのは60歳までとする。ならば50歳の状態なら、魔物に襲わせても生き残れるだろう。」

 

 

 

「人間の状態など俺にはわからん。だが、そのほうが確実というなら従おう。主のためにな。」

 

 

 

「コサージュ、不服そうな顔をするな。我が20年といったのは目安にすぎん。主に干渉するほどの人間なら、人間の中でもさぞ目立つであろうよ。」

 

 

 

「そうか。まあよい。いずれにしろまずはアスタロトだ。そうだろう?」

 

 

 

「そのとおりだ。まずはな。」

 

 

 

 

 

 そして2人は部屋から姿を消した。それは言葉を話していても、人ではない存在だった。

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