眠りの魔法の使い方~運び屋の魔法使いは催眠魔法で世界を生きる   作:furu6272

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お金のためなら人を殺すか、あるいは復讐のためか 3

「命令されたからお前は自分の父親を殺したのか?」

 

 

 

 アッシュはイスに縛られたグリースに質問した。

 

 

 

「それは、そう。そうだよ。仕方なかったんだ。」

 

 

 

 アッシュの質問に対して、グリースはあくまでも自分に非はなかったと言いたいようだった。

 

 

 

 そして、それだけでは納得できなかったのだろう。アッシュはさらに質問をする。

 

 

 

「仕方ないっていうのはどういうこと?」

 

 

 

「それはもちろん金だよ。」

 

 

 

「金?」

 

 

 

「ああ。あんたも俺達のことには詳しいと思うけど、俺みたいな下っ端は組織に金を納めないといけないんだよ。けどそんな大金もってるわけないし、そしたら親の金をあてにするのはおかしくないだろ?」

 

 

 

 グリースの答えを聞いたアッシュはよくわからないといったように首を傾かせた。

 

 

 

「お前たちのことは知らないけど、そんな大金が必要とは思えないな。」

 

 

 

「いや、それは。」

 

 

 

 アッシュに指摘されてグリースは少し言葉を詰まらせた。

 

 

 

「そりゃあ、下っ端のままでいるならそんな金はいらないかもしれないけど、そうはいってもいつまでも下っ端のままっていうわけにはいかないだろ?上に行くには結局金がいるんだよ。」

 

 

 

 グリースは目を泳がせながら言う。

 

 

 

 それについてアッシュが感じたことは、グリースは命令されてローマンを殺したわけでなく、自らの意志で父親を殺して、その言い訳をアッシュにしているということだった。

 

 

 

「ふ~ん、そうか。けど、ふつうは親を殺すのは難しい事なんじゃないか?」

 

 

 

 アッシュはグリースが組織で上にいくためにお金を欲していたということは理解できたが、そこで親を殺すという選択をした理由はよくわからなかった。

 

 

 

「まぁ難しいよ。そりゃあ俺だって命令されて仕方なかっただけで、親を殺したいなんて思わないからさ。」

 

 

 

「難しいなら他の人を襲った方が楽なんじゃないか?」

 

 

 

「それがなかなか難しいんだよ。街の奴らを襲ったとして、そいつがいくら持ってると思う?街中でそんな大金を持ってるやつなんていないだろ?」

 

 

 

「……」

 

 

 

「それが親とか親戚の場合は家の中に入りやすいからやりやすいんだよ。親なら死んだら遺産が入ってくるし、馬鹿な親戚なら金庫の金とかを盗めるかもしれないからさ。」

 

 

 

「ふ~ん。たしかに、遺産とか大金を手にするのは親とかのほうが都合がよさそうだ。」

 

 

 

 アッシュは顎に手をあてて頷くような素振りをした。

 

 

 

 それを見てグリースは愛想笑いをしながら言った。

 

 

 

「そうだろ?むしろ赤の他人に迷惑をかけてないんだから優しいよな?」

 

 

 

「優しいとは思わないね。」

 

 

 

 グリースの言葉にアッシュが冷たい目で返す。

 

 

 

 グリースは「ひっ。」と小さく声をあげて愛想笑いをやめた。

 

 

 

 そしてグリースは少し沈黙した後、アッシュにおそるおそるきいた。

 

 

 

「な、なぁ。もう聞きたいことは終わったのかな?」

 

 

 

 グリースに質問されて、アッシュは再び顎に手をあてる。

 

 

 

「う~ん。そうだな。もう聞くことはないか。」

 

 

 

 アッシュがそう言ったとき、グリースは、アッシュが手に持ったナイフに力を込めたように感じた。

 

 

 

「ま、まて!待ってくれ。俺はあんたの質問にちゃんと答えてるだろ?それに、そもそもなんで俺の父親のことなんて聞いてるんだ?」

 

 

 

 危険を感じたグリースは慌ててアッシュに尋ねた。少しでも時間を引き延ばそうとして。

 

 

 

 グリースは頭を高速で回転させて何かないか考えを巡らせる。

 

 

 

(なにか助かる道はないのか。そもそも俺の親父はずっと病気で、家から出ないから知り合いもほとんどいない状態だったんだ。それをなんでこいつは気にしているのか。親父とどこかで知り合ってたのか……?)

 

 

 

「ああ!!」

 

 

 

 考えを巡らせていたグリースは突然、大声をあげた。それはグリースがアッシュの正体に気づいたためだった。

 

 

 

「あんた!あれだろ!?親父の病気を見てた人だろ?病気は治せないけど落ち着かせることはできるとかなんとか言ってたよな?」

 

 

 

「……」

 

 

 

 勢いづいて話すグリースに対して、アッシュは無言のままだった。

 

 

 

 グリースはアッシュの様子を無視して話を続ける。

 

 

 

「なぁ。あんたには感謝してるんだよ。病気でうめき声ばっかりあげてた親父があんたが来てからは大人しくなってたし、あんたが親父の面倒を見てくれる分には、俺は親父を殺す必要はなかったんだよ。

 

 

 

「どういうこと?」

 

 

 

 グリースの言い分にアッシュはよくわからないといった様子を見せた。

 

 

 

「あぁ。俺の親父は重い病気だったろ?もう寿命が短いってわかってたんだ。だから、本当は俺が殺さなくたって親父の金はすぐに俺のモノになるはずだったんだよ。」

 

 

 

「俺だって、親父に苦しんで死んでほしいなんて思ってないさ。だから、あんたが親父の面倒を見てくれている分にはよかったんだよ。それで親父の寿命が延びるわけでもなかったからさ。」

 

 

 

 グリースはそれから怒ったような興奮した様子で話を続けた。

 

 

 

「それが、あの女だ!カンパネラとかいう、自分は聖女だとか言ってたふざけた女のせいなんだよ!あの女が親父の病気を治しちまいやがった。信じられるか?ベッドに寝たきりだった親父が一人で歩いてたんだぜ。そんなことになったら、一体いつ親父は死ぬんだよ!?」

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