眠りの魔法の使い方~運び屋の魔法使いは催眠魔法で世界を生きる   作:furu6272

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お金のためなら人を殺すか、あるいは復讐のためか 4

グリースは興奮した様子で話を続けた。

 

 

 

「それが、あの女だ!カンパネラとかいう、自分は聖女だとか言ってたふざけた女のせいなんだよ!あの女が親父の病気を治しちまいやがった。信じられるか?ベッドに寝たきりだった親父が一人で歩いてたんだぜ。そんなことになったら、一体いつ親父は死ぬんだよ!?」

 

 

 

「もう長いことないってわかってたから、俺は親父が死ぬまでおとなしく待ってたんだぜ?それが、あと何年待つことになるかわからなくなったら、もう殺すしか仕方ないじゃないか。」

 

 

 

「なぁ。だからこれはむしろ、あのカンパネラとかいう女のせいなんだよ。だってそうだろ?俺はあんたが親父を看てる分にはそれでよくて、あんたも親父がもうすぐ死ぬことはわかってただろ?あの女がいなかったら俺はわざわざ親父を殺す必要なんてなかったんだよ。それをあの女がぶち壊したんだ。そう思うだろ?」

 

 

 

「う~ん。一理あるかもしれない。」

 

 

 

 グリースの話を聞き終わり、アッシュはそれだけ言った。

 

 

 

「そう。そうなんだよ。あの女のせいだ。わかってくれるだろ?なぁ、俺にも嫁と子供がいるんだよ。俺が死んだら誰も面倒なんて見れないし、子供が路頭に迷うなんて親父も望んでないと思うんだよ。なぁ助け……」

 

 

 

 グリースの言葉が突然途切れる。

 

 

 

 アッシュがグリースを眠らせたのだ。

 

 

 

 アッシュはグリースから得られる情報はこれ以上なさそうだと感じていた。

 

 

 

 そして、眠ったグリースの前でアッシュは1人で考え始める。

 

 

 

(グリースはお金を欲していた。そして、大金を手にするにはグリースの父親であるローマンを殺すのが簡単で確実な方法だったらしい。それはある程度、合理的な話だと思う。だけど、)

 

 

 

(お金のために自分の親を殺すという選択がとれるものなのだろうか?)

 

 

 

 アッシュには親がいない。そのため、親を殺すという感覚がアッシュには想像できなかった。

 

 

 

 アッシュは親というものを知るために、本を読んだり周りを観察したことがある。

 

 

 

 そして、物語の中ではいつも親と子供は仲が良いように見えたし、外を歩いて家族の様子を見たときも、たいていの家族は仲がよさそうに見えた。

 

 

 

 親と子供には親子の絆というものがあり、他人同士の繋がりよりもずっと強い繋がりを持っているのだという。それは家族愛というものらしく、子供が親を殺すなどとても考えられないようにアッシュには思えた。

 

 

 

 だが、グリースは父親を殺した。グリースにとってはお金の方が親子の絆よりも大切なものだったらしい。

 

 

 

 これはどの家族でも一緒なのだろうか?それともグリースが変わっているのだろうか?アッシュにはわからなかった。

 

 

 

(けれどグリースは、父親が病気で死ぬのは待つ気だったとも言っていた。)

 

 

 

 それを考えるとアッシュは複雑な思いがする。

 

 

 

(結局、ローマンは死ぬ運命が決まっていたのだろうか。それは、どうなればよかったのだろうか。)

 

 

 

 ローマンが病気でも病気でなくても、ローマンが死ぬことはほぼ確実に決まっていたことのように思える。

 

 

 

 その中で、自分がいなかった場合には、ローマンは病気で苦しみ続けて死んでいったのだろう。

 

 

 

 それから比べると、自分がローマンの病気の苦しみを軽くしていたことはよかったことのように思える。

 

 

 

 そして、そのままローマンが病気で亡くなっていれば、グリースはそのまま遺産手に入れることができたのだろう。

 

 

 

 グリースはカンパネラがローマンの病気を治してしまったために、ローマンを殺さざるをえなくなったと言っていた。

 

 

 

 それは実際そのとおりだったのだろう。ローマンが病気で死ぬのなら、グリースがローマンを殺す必要はないのだから。

 

 

 

(とはいえ、カンパネラがローマンの病気を治したことが悪いことだったとは思えない。)

 

 

 

 アッシュはカンパネラに対して苦手意識を感じていたが、それでも病人を治す行為は正しいことだと考えていた。

 

 

 

(結局、巡りあわせというか、タイミングが悪かったということなのかもしれない。)

 

 

 

 アッシュはため息をついた。

 

 

 

(子どもが親を殺すのは、意外あることなのかもしれない。……そういえば、俺が子供のときにもそんなことがあったな。)

 

 

 

 アッシュは子供のときに、父親から暴力を受けていた少女の手助けをしたことがあったことを思い出した。

 

 

 

(けど、あのときは父親をとめないと母親と女の子が危なかったわけだし、正当な理由があったと思える。父親を殺したわけでもないし。)

 

 

 

 ふと、アッシュは昔助けた女の子、アンリは今何をしているだろうかと思ったが、すぐにそんなことを考えても意味がないと考えた。

 

 

 

 アッシュはもう一度ため息をつくと、自分の前で眠るグリースに目を向けた。

 

 

 

(さて、どうしようか。)

 

 

 

 アッシュが街に戻って、ローマンが死んでいたことを知ったとき、アッシュはローマンを殺した犯人に復讐したいと考えていた。

 

 

 

 それから、ローマンを殺した犯人がローマンの子どもであるグリースだと知ったとき、アッシュは復讐ではなく、なぜ子供が親を殺したのかということを知りたいと考えるようになっていた。

 

 

 

 だからアッシュはここまでの事をして、グリースから父親を殺した理由を聞いたのだ。

 

 

 

 そして、理由を聞くことが出来た今、アッシュにとってグリースはどうでもいい存在となっていた。

 

 

 

(まぁ、俺の顔とか声を知りすぎてるから殺すしかないんだけど。)

 

 

 

 アッシュはグリースの所属する暴力団がかなり危険な集団であり、誘拐や殺人をたびたび行っていることを知っていた。

 

 

 

 このため、アッシュは建物の中にいる暴力団員を殺すことにそれほどためらいがなかった。

 

 

 

 それはもちろん、グリースに対しても同様だった。

 

 

 

 アッシュは静かにグリースに近寄っていった。

 

 

 

(こいつを殺したら、ローマンは悲しむのだろうか。それとも自分を殺した相手だし、自分の子供であっても悲しまないだろうか。)

 

 

 

(こいつは自分に子供がいると言っていたけれど、もし、こいつを生かした場合、こいつもいつか自分の子供に殺されるときがくるのだろうか。それとも、お金のためにこいつが自分の子供を殺すときがくるのだろうか。)

 

 

 

(親も子供もいない俺には一生わからないだろうな。そして俺がこの街に戻ることはもうないだろう。)

 

 

 

 そんなとりとめもないことを考えながら、アッシュはグリースにナイフを振り下ろしたのだった。

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