眠りの魔法の使い方~運び屋の魔法使いは催眠魔法で世界を生きる   作:furu6272

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エリーとトルベリについて

「ごほん、エリーくん!君には期待している。よく頑張ってくれたまえ。」

 

 

 

「は、はい。頑張ります。」

 

 

 

 恰幅がよく、指輪やネックレスを過剰に身につけた男性から声を掛けられて、ミシェル・エリーはためらいがちにこたえた。

 

 

 

 男の名前はトルベリ。ビズリーの長であり、同時にビズリーのハンター組織「ビオライン」の長も務めている男だった。

 

 

 

 

 

 

 

 エリーとバルサはアッシュと分かれた後、しばらくしてビズリーに辿り着いていた。

 

 

 

 そして、バルサは新人のエリーを紹介するためにビズリーのハンターが集まっている建物へ連れて来ていたのだった。

 

 

 

 建物の中には何人かのハンターがいたが、バルサを見ると皆がバルサの近くまで来て挨拶をする。バルサは他のハンターから尊敬されているようだった。

 

 

 

「この子、エリーも私達の仲間になったから。あんたもこの子のこと頼んだよ。」

 

 

 

「エリーです。よろしくお願いします。」

 

 

 

 バルサは軽く挨拶を交わしながらエリーの紹介をしていき、エリーもバルサに合わせて会釈をしていく。

 

 

 

 エリーはすでに成人していたが、バルサが大柄な一方でエリーが小柄なためか、バルサの後をついていくエリーの姿はまるで大人について行くこどものアヒルのようだった。

 

 

 

 そんな2人が最後にやって来たのがビズリーのハンター組織ビオラインの長がいる部屋だった。

 

 

 

 バルサは部屋のドアをノックもせずに躊躇なく開けると、部屋に押し入りながら大きな声で「トルベリ、いるかい?」と言い放った。

 

 

 

 その姿を見てエリーは(豪胆な人だなぁ)と感嘆しながらバルサに続いて部屋に入る。

 

 

 

 部屋の中は書斎のような佇まいで、片面の壁には本棚が設置されていた。もう片面の壁には剣などの武器が掛けられているのに加えて、動物や魔物のはく製まで掛けられている。そして正面には幅の広い大きな机があり、その机の革張りのイスに1人の男が座っていた。

 

 

 

 その男は生地の暑そうな服を身にまとい、指のほとんどに指輪をはめて、首から金色のネックレスをかけた恰幅のある男だった。そして、突然の来訪者に驚いたのか、酒ビンを手にした状態で固まっていた。

 

 

 

「お、おいバルサ!突然入って来るな。当然のマナーだろうが。」

 

 

 

 慌てた様子で男がバルサを叱るが、バルサはまるでこたえた様子がない。

 

 

 

 それどころか、「隠れて酒飲んでるやつのマナーなんて知らないよ。」と言い放ち、男は「うぐっ。」と口を詰まらせた。

 

 

 

「息抜きくらい別にいいだろ。今日の仕事は終わったんだよ。」

 

 

 

 そう反論するがその声はぶつぶつと呟くようであり、自分の分が悪いことを自覚しているようだった。

 

 

 

「それでいったい何のようだ?」

 

 

 

 いそいそとお酒を机の引き出しにしまうと、男はあらためてバルサに尋ねた。

 

 

 

「新しい子が入ったから顔合わせに来たんだよ。ほらエリー。こっち来な。」

 

 

 

「は、はい。」

 

 

 

 エリーはバルサの後ろにいたが、バルサに促されてバルサの横に立った。

 

 

 

「ええ!?」

 

 

 

 男はエリーが横に立ったことで初めてエリーがいることを知ったのか、驚きの声を上げた。

 

 

 

「おいおい、他に女の子を連れてきてるなら最初に言ってくれよ。」

 

 

 

 そんなことを言いながら、手で自分の髪を整えるように撫でる。

 

 

 

「かわいい子が来たからって今さら取り繕うとするんじゃないよ。」

 

 

 

 男の様子にバルサが辛辣な言葉を放ち、続けてエリーに男を紹介する。

 

 

 

「エリー、こいつはトルベリ、この町の長をやっててハンターの長もやってる。こいつ自身はハンターじゃないけどね。」

 

 

 

「トルベリさんですね。これからよろしくお願いします。」

 

 

 

 バルサの手短な紹介を受けてエリーはトルベリに頭を下げた。

 

 

 

「私はミシェル・エリーと言います。バルサさんのいるフォートでハンターをやらせてもらいます。今後、ご指導のほどよろしくお願いいたします。」

 

 

 

「あ、ああ。よろしくエリーくん。」

 

 

 

 エリーの挨拶にトルベリは少し以外な顔をした。だが、すぐに笑顔を作ると

 

 

 

「なんだ、バルサと違ってずいぶんいい子じゃないか。」と言って「がはは。」と笑った。

 

 

 

「おいエリー。こいつにいい子なんて呼ばれるようじゃだめだからな。」

 

 

 

 バルサがトルベリの様子を冷たく見ながらエリーに忠告する。それに対してエリーは「は、はい。」とあいまいに相槌を打つことしかできなかった。

 

 

 

 トルベリはそんなバルサに渋い顔をして「まったく。」と呟くように言った。

 

 

 

「まあいい。エリーくん。フォートでハンターをやると言っても、フォートとビズリーのハンターは共同の組織体だ。ぜひとも頑張ってくれたまえ。」

 

 

 

 そう言いながらトルベリは席から立ち上がると、エリーの前まで行き握手の手を差し出した。

 

 

 

「は、はい。頑張ります。」

 

 

 

 エリーは慌てながらもトルベリの手を握る。トルベリの手は本人の脂肪と指輪で分厚い塊のようになっており、エリーの手がそのまま覆われてしまうほどだった。

 

 

 

 エリーはその感触に内心(ひぇぇ。)と悲鳴を上げたが、どうにか張り付けたような笑顔を維持していた。

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