アインズ様と民明書房   作:ギアっちょ

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ゴールデン・ウィークの真の起源
民明書房刊『武闘祭事記』より抜粋
現代において、四月末から五月初頭にかけての連休を「ゴールデン・ウィーク」と呼ぶのが一般的だが、その真の語源は古代中国・唐の時代、武術の聖地として知られた湖北省の**「剛流伝(ごうるでん)」地方に伝わる過酷な修行体系「雨育(ういく)」**にあることは、あまり知られていない。

当時、この地方では春から夏への変わり目(現在の四月末から五月初頭)に、修行僧たちが一週間にわたり不眠不休で拳を突き出し続ける「万拳闘陣(ばんけんとうじん)」という儀式が行われていた。この修行を完遂した者の拳は、摩擦熱と闘気により黄金(こがね)色に輝いたと伝えられ、里の者は畏敬の念を込めてその期間を**「剛流伝・雨育(ごうるでん・ういく)」**と呼んだ。

この過酷な修行が、巡り巡って日本に伝わった際、当時の武芸者たちが「一週間、休まずに(戦い)続ける」という部分を「一週間、仕事が休み」と都合よく解釈し、現在の「大型連休」という形に定着したというのが定説である。

ちなみに、連休明けに多くの日本人が陥る「五月病」も、本来はこの修行による極度の筋肉痛と闘気の枯渇を指す**「誤獲病(ごがつびょう)」**が語源である。


ゴールデンウィーク準備編:剛流伝・雨育と“万拳闘陣”会議

四月の下旬。

 

執務室でアインズは、久々に書類の束を片付けていた。

最近の季節イベントの連打で、机上が常に戦場だったからだ。

 

(……ようやく平穏が――)

 

コン、コン。

 

「アインズ様、失礼いたします」

 

(来た)

 

入ってきたのはデミウルゴス。

そして当然のように紙束を携えている。

 

(紙束はやめろって何回言えば)

 

「アインズ様。

 “ゴールデン・ウィーク”について、ご報告とご提案がございます」

 

「……ゴールデン・ウィーク?」

 

アインズは、嫌な予感を飲み込んで聞き返した。

 

(ゴールデンって響きがもう“儀式”)

 

その日の夕刻。

各階層守護者が集う会合が開かれた。

 

司会はセバス。淡々としている。癒し。

 

「本日は、アインズ様の世界における“連休”

『ゴールデン・ウィーク』について学びます」

 

アインズは咳払いした。

 

「……学ぶ、というほど大げさなものではない。

 いくつか休日が重なって、休める期間ができるだけだ」

 

(休める、って言ったよな?)

 

デミウルゴスが、気持ちよく頷いた。

 

「承知しました。

 “休める期間”――つまり、集中的訓練に最適な期間です」

 

「違う!!」

 

(話聞け!!)

 

デミウルゴスは、民明書房の抜粋を掲げた。

 

『ゴールデン・ウィークの真の起源』

民明書房刊『武闘祭事記』より抜粋

 

「出すな!!」

 

だがデミは朗読を始める。

 

「古代中国・唐。

 湖北省“剛流伝(ごうるでん)”地方に伝わる過酷な修行体系――

 “雨育(ういく)”」

 

(雨育って何だよ)

 

「修行僧たちは一週間、不眠不休で拳を突き出し続ける

 “万拳闘陣(ばんけんとうじん)”の儀式を行った」

 

アウラが素直に言った。

 

「え、休みじゃないじゃん!」

 

マーレが小声で震える。

 

「……こ、こわい……です……」

 

(反応が正しい)

 

コキュートスが深々と一礼した。

 

「不眠不休ノ反復鍛錬……。

闘志ト筋繊維ヲ同時ニ育成スル。

合理的デス」

 

「合理的って言うな!!」

 

シャルティアが、にこやかに口を挟む。

 

「まあまあ……一週間寝ぇへんで拳突き続けるやなんて、

 それ、ほぼ拷問どすえ?」

 

アルベドが微笑む。

 

「拷問ではありません。

 アインズ様のためなら、当然の奉仕です」

 

「奉仕にするな!!」

 

アインズは額を押さえた。

 

「いいか。

 ゴールデン・ウィークは“休む”ためのものだ。

 訓練ではない」

 

デミウルゴスが頷く。

 

「承知しました。

 では“休む”とは何かを定義しましょう」

 

「定義するな!!」

 

セバスが静かに言う。

 

「デミウルゴス殿。

 休養は心身の回復、作業効率の維持に不可欠です」

 

デミウルゴスは爽やかに微笑んだ。

 

「そうですね。

 だからこそ“回復のための計画的負荷”が――」

 

「回復のために負荷かけるな!!」

 

(ブラック企業の理屈だこれ)

 

パンドラズ・アクターが目を輝かせる。

 

「連休! つまり“特別な衣装”の出番ですね!

 黄金週間に相応しい、黄金の――」

 

「黄金にするな!!」

 

(ゴールデンって言葉に引っ張られるな)

 

シャルティアがにこやかに言う。

 

「まあまあ……黄金いうたら、

 “黄金の席”はどなたが?」

 

アルベドが即答する。

 

「当然、アインズ様の隣です」

 

「隣を固定するな!!」

 

(休みの話が席順に着地しそうで怖い)

 

デミウルゴスは次の紙を取り出した。

 

『ゴールデン・ウィーク運用案(暫定)』

 

(運用するな)

 

「第一案:万拳闘陣の再現(拳突き一週間)

 第二案:武具整備週間(全武装の点検)

 第三案:魔導国民への“労働観”啓発行事(休むことの危険性を周知)」

 

「第三案が最悪だ!!」

 

アインズが即座に叫ぶと、デミは首を傾げた。

 

「休むことは危険です」

 

「危険じゃない!」

 

セバスが淡々と補足する。

 

「危険なのは、休ませず疲弊させることです」

 

(セバス、神)

 

コキュートスが一礼した。

 

「武具整備週間ハ有益デス。

刃ハ放置スルト鈍リマス」

 

「それは分かる。

 だが“週間”にする必要はない」

 

コキュートスは真顔で言う。

 

「必要デス。

徹底スル為ニハ期間ガ要リマス」

 

(コキュ、職人気質が過ぎる)

 

アウラが手を挙げた。

 

「じゃあさ、休みなんだから、

 みんなで森で遊ぶとか! 狩りとか!」

 

マーレも小さく頷く。

 

「……おさんぽ……したい……です……」

 

アインズは、その言葉に救われた気がした。

 

「……そうだ。

 そういうのでいい」

 

デミウルゴスが、ふっと笑った。

 

「なるほど。

 “遊び”という名の訓練ですね」

 

「違う!!」

 

(こいつ、言語変換器がバグってる)

 

シャルティアがにこやかに言う。

 

「まあまあ……遊びいうても、

 アインズ様が飲食できひんのに、

 どうやって“連休感”出すんどす?」

 

アインズは少し考えて、言った。

 

「……景色。音。香り。

 それで十分だ。

 休みは“雰囲気”でいい」

 

その瞬間、デミウルゴスの目が光った。

 

「雰囲気……!!

 では“連休の雰囲気”を増強するため、

 一週間、毎日、催しを――」

 

「増強するな!!」

 

(花見で懲りろ!!)

 

アインズは深呼吸し、強引に結論を出した。

 

「よし。決定だ」

 

指を折る。

 

「一、ゴールデン・ウィークは休む。

 二、訓練にするな。

 三、民明書房を持ち込むな。

 四、“週間”にするな。必要最小限だ」

 

デミウルゴスが爽やかに頷く。

 

「承知しました。

 では“必要最小限の週間”を――」

 

「やめろ!!」

 

(言葉遊びやめろ!!)

 

会合が終わり、アインズは執務室に戻った。

椅子に沈み、天井を仰ぐ。

 

(休みとは何だ……)

 

そのとき、廊下から声が聞こえた。

 

「“万拳闘陣”のデモンストレーションは、

 準備運動として本日から開始します!」

 

デミウルゴスの声だ。

 

「開始するな!!」

 

無いはずの胃が痛む思いで、アインズは深くため息をついた。

 

(次の季節イベント……怖い。

 いや、連休が怖い)




ここまで読んでくださってありがとうございます!
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