魔弾戦記リリカルなのは Abend Gewehr   作:星乃 望夢

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Stage:01

 

俺には8歳歳下の妹が居る。

 

ティアナって言うんだけどな。

 

産まれたばかりの妹を抱っこした時だった。

 

激しい頭痛が襲って来て、母さんにティアナを返したあとに俺はぶっ倒れた。

 

目を覚ましたのは3日後だった。

 

俺が思い出したのは、上司の不正を暴こうとしてヘマこいて死んだなんていうなんともしょうもない死に方だった。

 

そんなアホな死に方は二度とゴメンだね。

 

だから俺は次はベッドの上で死ねる様に大人しくしていようと思ったんだ。

 

そしたら俺が10歳の頃に両親が殉職した。

 

まだ2歳で物心も付き始めた妹になんて説明したら良いかなんて悩む暇もなく、親戚をたらい回しにされたあとに施設に入るかどうかとなって、俺は管理局に入る事にした。

 

両親が死んだばかりの組織に入るというのは気が引けるが、ティアナを守る為には子供でも才能さえあれば大人扱いされる組織に入るしかなかった。

 

幸い、俺には魔法の才能があった。

 

典型的な後方支援砲撃型魔導師としての才能だ。

 

同期にクロノ・ハラオウンていう頭でっかちだけどすこぶる優秀なヤツが居るから、何でも出来る天才のアイツと比べたら俺は路傍の石ころだ。

 

それでも唯一自慢できるのは、クロノよりも精密で何でもブチ抜く砲撃が出来るのが細やかな自慢だった。

 

ただ防御力も殆ど紙みたいな俺はひたすら攻撃を避けるか、息を潜ませてスナイパーに専念するしかなかった。

 

「ティーダ!」

 

クロノがバインドを掛けた魔導犯罪者は身動きが封じられている。

 

「ファントムッ、ブレイザー!!」

 

両手の中の、上下に銃口が並ぶデリンジャーを少し大きくした銃型デバイス──アーベント・ゲヴェーアの銃身を横にして銃口が並ぶ様に構える。

 

トリガーを引けば収束されたオレンジ色の精密砲撃魔法が魔導犯罪者のシールドとバリアジャケットを貫通して、魔力ダメージ超過でノックアウト。

 

今月5人目の魔導犯罪者の逮捕だ。

 

最年少執務官としてブイブイ言わしてるクロノ。

 

アイツひとりでどうにかなるだろうに、俺はクロノに執務補佐官とし引っ張り回される毎日を送っていた。

 

 

◇◇◇

 

 

「ゲヴェーア・シュナイデ!」

 

「スティンガーレイ!」

 

俺はクロノの撃ち出す射撃魔法を、アーベントに展開するオレンジ色の魔力刃で打ち払う。

 

近くで見ると目に見えない速さの高速直射魔法だけあって打ち払うタイミングがシビアだ。

 

「ブレイクインパルス!」

 

「ツァウバークーゲル!!」

 

接近して杖型デバイスのS2Uを近接粉砕魔法を纏って振るってくるクロノへ向けて直射魔法を撃って迎撃するものの、牽制弾幕程度じゃ止まらねぇ。

 

普段冷静で理知的なクセしてテンション上がるとバトルジャンキーに片脚突っ込むから相手してて疲れるんだよ!

 

「ストラグルバインド!」

 

「っ、チィッ!」

 

左腕と右脚がバインドに捕まって一瞬身動きを封じられた。

 

そのまま振り降ろされるS2U。

 

だがそれは俺の身体を素通りした。

 

「ッ!?」

 

「ルフトシュピーゲルング」

 

俺の身体はまるで蜃気楼の様に消え失せ、クロノの後ろを取っていた。

 

「ファントムブレイッ、──くっ」

 

トドメを刺そうとした所に設置型バインドが起動して身体がガチガチに拘束された。

 

「今日も僕の勝ちだ」

 

「はぁ。今日は調子良かったんだけどな」

 

これで156戦156敗けだ。

 

模擬戦やる度に詰将棋みたいに最後は設置型バインドに拘束されるのなんとかしたいんだが、毎回毎回てんで違うパターンで捕まるのはどーしろっつの。

 

「確かにここ最近近接戦闘能力はかなり伸びて来てる。僕としてもこのまま精進して欲しいところだ」

 

「へいへい。やれるだけの事はするよ」

 

実際問題、単独狙撃するにも万が一敵に別働員が居た場合に自分の身を守れなかったらクロノの負担にも繋がる。

 

俺自身が近接戦闘を出来るようになる意味はかなり有る。

 

一応ミッド式魔導師だから近接戦闘するなんてのは一部の天才か変態か物好きのハズなんだけどなぁ。

 

天才の補佐官という立場は世知辛いぜ。

 

 

◇◇◇

 

 

時空管理局で働く関係上、俺はいつもティアナと一緒に居られるわけじゃない。

 

今は管理局員になって間もないから殆ど地上勤務ではあっても、クロノは艦隊勤務の方に行くつもりだろう。

 

俺も、リンディ・ハラオウン提督、つまりはクロノの母親から声を掛けられているし、クロノ本人からも誘われている。

 

ただ、艦隊勤務となれば今以上に家に帰れない生活になる。

 

それこそひと月は時空航行艦の中で過ごすなんてザラになるらしい。

 

そうなれば今でさえティアナにはハウスキーパーを雇って託児所も合わせて世話を見てもらっているというのに、今以上となればそれも難しいだろう。

 

ただでさえ託児所への迎えは夜遅くで、それもクロノには少し無理を言って早引きしている。

 

艦隊勤務になればそれも出来なくなる。

 

どうするか考えていたら、リンディ提督からいっそのことティアナも艦に乗せるというのはどうだろうかという提案をされた。

 

……言ってしまうとティアナというお荷物を抱えてでも俺を引っこ抜きたいという事なんだろう。

 

地上勤務と比べて、艦隊勤務は空戦魔導師としても優秀でならないと務まらない。

 

現場への急行や、現場が常に地上であるとも限らないからだ。

 

求められるスキルとしては空戦A、最低限度空戦Bのところ、俺は空戦C+だ。

 

跳んだり浮いたり、ちょっとなら飛べても、長距離高速機動なんてのが出来ない。

 

だから後方でがっしり構えて精密狙撃をするんだが。

 

そんなポンコツでも構わないって言うなら、是非もなしってヤツだ。

 

つーか、親子揃ってラブコール受けたんじゃ、それを蹴るのはこう、色々と勿体ないだろ?

 

明らかにエリート街道まっしぐらのクロノの補佐官やってれば俺もそれなりに給料も良いし、ティアナも面倒見てくれるなんて言うなら、こんな好条件くれる部署他にないぜ?

 

 

◇◇◇

 

 

「モードチェンジ、カノーネンフォーゲル!」

 

両手のアーベントを、左手の方を前にして、その銃身に右手の銃口を直列連結させ、左手の方のグリップが横に折れてサイドグリップに切り替わる。

 

二丁拳銃を直列連結させたライフル形態。

 

連射力は犠牲になる代わりに、1発の威力と射程が伸びる長距離高出力用形態だ。

 

足許にオレンジ色のミッドチルダ式魔法陣が足場の様に巨大に拡がって高速回転していく。

 

「ファントムイレイザー! シュートッ!!」

 

カチリとトリガーを引けば、魔法陣で収束させていた魔力が解放される。

 

ファントムブレイザーよりもさらに収束された精密収束砲撃魔法。

 

収束砲撃を精密狙撃に転用するなんていう無茶な魔法だが、その分、射程と威力と貫通力ならちょっとした自信がある。

 

前線のクロノがバインドで取っ捕まえた魔導犯罪者を、1Km後方からブチ抜く。

 

前線のクロノがスポッターもしてくれるから当てられてるだけだ。

 

 

◇◇◇

 

 

僕には同期の少し変わった同僚が居る。

 

ティーダ・ランスター。

 

何処にでも居そうな茶髪の同い年の同僚は、少し変わったスキルを色々と持っている。

 

幻影魔法やそれを応用した短距離転移魔法での奇襲。

 

全く動かなければ僕でさえ見つけるのが困難な程の隠密性。

 

直射魔法を跳弾させての曲芸撃ち。

 

そして、僕を上回る精密長距離狙撃魔法の使い手。

 

射撃や砲撃を得意とするミッドチルダ式魔導師として見てもそのスキルツリーは少し尖っているのは否めない。

 

ただ僕はスナイパーの彼よりも、捜査官としての彼を重宝している。

 

最年少執務官として注目されているけれども、その活躍の半分はティーダが居てこそでもあった。

 

少し優男に感じなくもない口調は不思議と聞き込み調査では相手に不信感を抱かせずにスルスルと会話を交わしてしまう。

 

そして集めた情報を繋ぎ合わせて核心を突くのが誰よりも早い。

 

そんなわけないだろうと思っていた事ですら、終わってみたあとに調査や捜査をしたらドンピシャだったことも少なくない。

 

いったいどんな事を考えたら誰も思いもしなかった真相や核心を当てられるのかと訊いた事がある。

 

本人は出揃ってる情報から有り得そうな可能性をとにかく徹底的に考えて、足りない部分は妄想で補完しているらしい。

 

それを聞いた時は殴ってやろうかと思った程だ。

 

ただそれは本当にバカにならない。

 

予知能力系のレアスキルでも持っているんじゃないかと疑いたくなるくらいだ。

 

その稀有な思考に助けられたのは何度もある。

 

本人はポンコツだとかへっぽこだとか自己評価が著しく低い。

 

そんな人間が執務補佐官をやれるわけがないんだと自覚して欲しい。

 

事務処理に関しては僕の倍早いんだぞ。

 

そんな優秀な副官を推薦したのは僕だけれども、母さんから見てもティーダは充分優秀な魔導師として眼鏡に適った様だ。

 

だからティーダの妹をアースラで預かってでも引き抜くという事までした。

 

僕としては引き続いて優秀な副官が就いてくれているのは色々とやりやすい。

 

そんな優秀な副官は模擬戦で僕に勝ったことがないのを気にしているというか、それも自己評価の低さに繋がっている節もある。

 

ただ、僕はティーダなら絶対にここで仕掛けてくるという信頼をもとに設置型バインドを仕掛けているから捕まえられているだけだ。

 

これが初見の犯罪者とかだったら翻弄されて沈んでいただろうなんてことは両手の指では足りない程だ。

 

だから僕は今日も、君が仕掛けてくるという信頼をもとに罠を張っておく。

 

「クソったれがあああああ!!!!」

 

また敗けて吠えるティーダ。

 

まぁ、今日は妹のティアナも観ていたからその悔しさも一入だろう。

 

と言っても僕だって手は抜かないさ。

 

……手を抜いて勝てる程、君は弱くはないのだから。

 

 

◇◇◇

 

 

前世との違いはそれこそ山程ある。

 

先ず、前世の俺はクロノと同期じゃない。

 

クロノの補佐官としてひーこら言ってる今頃の時に、前世の俺は時空管理局に入った。

 

その時にはもうクロノは最年少執務官として有名だった。

 

だから今の俺は前世よりも少し早く管理局員として働いている。

 

そして戦闘スタイルも結構な違いがある。

 

幻影奇襲戦法は前世そのままだ。

 

あとは全部クロノと仕事をする上で身に付けたスキルになる。

 

平隊員として地上勤務で上司の不正を暴こうとしてヘマこいて死んだ前世。

 

それに比べて今世はクロノのお陰で良い暮らしをしているし、純粋に強さという意味ではやれる事が増えているから強くなっている……筈だ。

 

クロノ以外と模擬戦をしないから自分の強さがいまいち分からない。

 

流石に同期のエイミィより強い自負はある。

 

というか、オペレーターより弱かったらいよいよそれはへっぽことかポンコツ通り越したただのザコだ。

 

同期だから気兼ねなく話せる女子だけれども、エイミィはクロノにホの字だし、クロノもなんやかんや姉弟みたいな気兼ねない接し方をしてる珍しい相手だ。

 

まぁ、リンディ艦長に訊くのはちょっと勇気が要るから、クロノの好みとか訊く相手としてのお鉢がこっちに回ってくるのも解る。

 

ま、同期のよしみだ。

 

恋のキューピットくらいはしてやらんくもないぜ?

 

 

 

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