魔弾戦記リリカルなのは Abend Gewehr   作:星乃 望夢

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Stage:02

 

ミッド式魔導師である俺の魔法の名称がベルカ式なのには、ちょっとした理由がある。

 

広く知れ渡っているミッド式呼称なら、どんな魔法か直ぐに聞いてイメージし易い。

 

その分、ベルカ式呼称なら使っているのは聖王教会や古くからベルカ式を伝える家といったところくらいでしか使われていないからメジャーなものじゃない。

 

だから呼称を聞いてもどんな魔法か瞬時にイメージが湧き難い上、ベルカ式は近接戦闘が主体でミッド式の様に砲戦魔導師というのは稀な存在だ。

 

だからベルカ式呼称でミッド式砲戦魔導師という一瞬の判断をバグらせる狙いもある。

 

あと単純にベルカ式名称はカッコいい。

 

そんな理由から、俺の魔法はベルカ式呼称が混じっている。

 

 

◇◇◇

 

 

元々普通の銃型ストレージデバイスだったアーベント・ゲヴェーア。

 

それをデリンジャー型に改造して暫く使っていた。

 

銃口が増えるのは単純に射撃回数の増加と弾幕形成能力が上がる。

 

俺がもう少し優秀な魔導師だったら多数の魔力スフィアを形成して直射魔法や誘導魔法を駆使出来るんだろうが、そこまで優秀じゃないから単純に物理的手数を増やすしかない。

 

カノーネンフォーゲルモードで合体機構を取り付けるのに銃身を長くした。

 

したら変形機構も追加して、単純に銃剣を生やすみたいにしていたゲヴェーア・シュナイデを、銃身が中折れしてグリップと中折れした銃身から直接魔力刃を出力させる型に変わった。

 

デバイス側で魔力刃を出力させる機能が追加されたから俺自身の演算リソースは減った上で魔力刃を形成する機能によって安定性と刃渡りが単純に伸びた。

 

短距離高速移動のブリッツムーヴ、幻影奇襲魔法のファントムミラージュ、幻影短距離転移魔法のルフトシュピーゲルングを合わせれば、撹乱近接戦闘でそれなりには動ける。

 

……おかしい。

 

俺は一応後方支援砲撃型のスナイパーのはずなんだけどなぁ。

 

なんで前線でガチンコ近接戦闘を出来るくらいまで鍛え上げられているんだ?

 

いや、その方がクロノと前線で突入する時に息を合わせやすい上に、室内とか閉所戦闘で一々射撃戦が出来ない時の対処法になるのは分かってるんだ。

 

「カートリッジロード! シュベルトゲベール!!」

 

ゲヴェーア・シュナイデの次のモード。

 

銃身が中折れしているアーベント・ゲヴェーアをグリップ同士を横並びに合わせるように連結する。

 

すると合体したグリップ下部が延長して柄となり、グリップ上部と外縁の銃身からさらに巨大な魔力刃が形成され、まるで天を切り裂く巨大な剣となる。

 

「行くぞ!!」

 

ブリッツムーヴで急接近したかと思えば、目前で俺の姿がいくつにも分身する。

 

ファントムミラージュによる幻影分身。

 

それに気を取られていれば、ルフトシュピーゲルングの短距離幻影転移で真後ろに周り、巨大な大剣を横薙ぎに振るう。

 

吹き飛ばされた先にさらに短距離転移で跳んで、上段からの振り下ろしでトドメ。

 

ミッド式砲撃型魔導師と侮ったら痛い目見るぜ?

 

……変だなぁ。

 

俺はいつベルカ式に転向したんだ?

 

 

◇◇◇

 

 

俺の唯一の弱点。

 

それは『飛べない』事だ。

 

跳んだり浮いたり、ほんの少しは飛べる空戦C+。

 

ただそれだと空戦AAのクロノとの連携に限界はいずれ訪れる。

 

ならどうするのかと頭を悩ましていた所に、カレドヴルフ・テクニクス社の武装端末テスターの募集を見つけた。

 

第3管理世界ヴァイゼンを中心に活動する総合メーカーで。家庭用から業務用まであらゆる魔導機器を開発し、民間では最大手の一角を占める大きなシェアを誇る一大企業となっている。

 

社外も含めたMM(モーターモービル)事業部を持っており、「公的組織向け乗用機」の開発も行う。

 

そんなCW社が募集しているのは空戦魔導師向けの支援端末のテスターだった。

 

プレリリースを見てみれば、空戦魔導師の空戦能力の向上用端末という触れ込みらしい。

 

これだ、という考えからリンディ艦長に上申。

 

リンディ艦長も俺が飛べないことが唯一勿体ないと言っていた。

 

それが解消されるかもしれない装備とあれば、テスターとしての意義は充分にある。

 

そしてCW社としても最前線で執務補佐官として日夜戦闘の機会があるデータは有意義になる。

 

そんな事から俺はこの武装端末──フリューゲルのテスターをする事となった。

 

 

◇◇◇

 

 

ベルカ語で『翼』という名前であるフリューゲル。

 

両腰のスカートアーマーとリアユニットで浮遊と慣性制御を受け持つこの武装端末。

 

これで俺自身の飛行リソースを単純に『飛ぶ』為に注ぎ込める結果、空戦A相当に飛べる様になった。

 

ただこのフリューゲル、バッテリー駆動で運用されているが、バッテリーの消耗が激しい。

 

その為に大型のバッテリー内蔵の影響でかなりの重量物となっている。

 

その扱いを容易にするため慣性制御が採用されているんだが、その為に使用者がきちんと慣性コントロールさえできれば、ほとんど重さを感じないで振り回せる。

 

つまりそれが出来ないと重量による慣性に振り回されてまともに飛ぶのに苦労するっていうテスト段階の機体だけあって実験的要素が山盛りだった。

 

CW社からは次世代武装端末用のテストベッド装備だから壊しても構わないとのこと。

 

つまり壊す程に実戦で使い潰して構わないから、それ程実戦データが欲しいといった所なんだろうが、もう少しオブラートに包んでも良いだろうにとも思わなくもない。

 

ただこれは元々俺が空も一応飛べる『陸戦魔導師』だから思う事かもしれない。

 

陸戦魔導師でも地形適応能力が上がるから使えるんじゃないか、と。

 

それこそ地上から建屋の中とか屋内、屋上、屋根上に迅速に展開するのにも使えるし、飛ばなくてもホバー移動での高速移動にも使える。

 

ビルとビルの屋上を飛び跳ねてのポジションチェンジに使っても良い。

 

……空戦魔導師用の支援装備に陸戦魔導師視点の意見が要るかどうかは分からないが、一応レポートは出しておくか。

 

 

◇◇◇

 

 

俺は強くなるという事に関してはかなり勤勉な方だと思う。

 

前世はアホな死に方をした上で、今度こそティアナを守ってやるんだという固い決意もある。

 

ただそれ以上に、クロノに勝ちたいと思っている。

 

けれども、いっくら近接戦闘能力を鍛えてもクロノには通用しない。

 

そもそも狙撃に関しては模擬戦だとやってる暇も距離もない。

 

ならどうするのか色々調べ回った結果──ガン=カタというハンドガンを使いながら近接戦闘をする技法があるらしい。

 

本当にそんな技術があるのか疑問だった。

 

ただ、火のないところに煙は立たない。

 

詳細を調べていくと、どうやら管理外世界の地球にその技法があるらしい。

 

……有給貯まってるし、今はクロノも抱えてる案件はないしな。

 

というワケで、有給を使って俺は地球への渡航を決めた。

 

久し振りに俺はお兄ちゃんを遂行するんだ!

 

エイミィの所為で最近ティアナと一緒にお風呂すら入れなかったからな。

 

俺はシスコンだけど、ロリコンじゃねぇ。

 

そして実の妹にそんな邪な思いを抱くような終わってるヤツでもない。

 

そもそも俺はティアナのお兄ちゃんだぞ!

 

兄貴は妹を守る為に居るんだよ!

 

4歳の妹を連れて、俺は地球へと渡った。

 

 

◇◇◇

 

 

おい、誰だよガン=カタなんて技法があるなんて俺を騙しやがったのは。

 

映画の架空技法じゃねぇかクソったれええええ!!!!

 

しかも無駄にカッコいいのが余計にムカつく!!

 

いや出来なかないな。

 

冷静に考えても二丁拳銃で近接戦闘スタイルってのは俺の為にある様なものじゃないか?

 

とりあえず映画は録画してアーベントの記録領域に保存しておく。

 

管理外世界だと基本的に魔法は一般人に見せてはならない決まりになっている。

 

だからおもちゃ屋で適当に買ったエアガンを使ってガン=カタの練習をする。

 

ティアナも銃に興味があるのか、エアガンを買ってと珍しくせがんで来たから全力でお兄ちゃんを遂行する。

 

まだ幼児のティアナには普通のエアガンだとちょっとグリップが大きい。

 

デリンジャータイプならまだ小さいからそれを買ってやった。

 

公園で銃を構えながら滑るような足取りで位置を入れ替え立ち回り、まるで踊っている様に見えただろう。

 

ティアナも俺の見様見真似で遊んでいる。

 

まぁ、ティアナが退屈していないならそれで良い。

 

夕方、日の入り時間が来て暗くなる頃。

 

俺はずっとブランコに座っているひとりの女の子が気になっていた。

 

ティアナよりちょい歳上の女の子だ。

 

親御さんが周りに居る様子も無し。

 

ずっと暗い顔でブランコに座っているなんて絶対に何かあったとしか思えない。

 

それに、俺がティアナに銃の握り方や構え方を教えると、そのティアナをとても羨ましそうに見て来た。

 

「おねーちゃ。おうちかえらないの?」

 

俺が様子を見ようか声を掛けようか悩んでいたら、我が妹が先に声を掛けに行った。

 

「……うん。今は、帰りたくないの…」

 

何やら深刻そうな事情がありそうだ。

 

「家族が心配するだろ? 俺たちが送ってあげるから、一緒に帰ろう?」

 

「……なのは、良い子じゃないから…、心配されないもん……」

 

そんなワケないだろうにと思いつつ、この子にはこの子なりになんかがあるんだろう。

 

かと言ってこのまま放って置くのは良心が痛むし、太陽が沈めば寒くもなる。

 

「じゃあ、とりあえず俺たちが泊まってる宿に来るか?」

 

「…え?」

 

「俺たち旅行でこの街に来たんだ。だからこの街のこと、俺と妹に教えてくれよ。な?」

 

「……うん。うんっ」

 

まぁ、非番だけれどもここらは執務補佐官としての緊急保護が適応されるだろう。

 

虐待なのか家出なのか、まだ全く話は見えてないが、とりあえず俺はティアナとなのはちゃんを連れて、宿泊先のちょっと街から外れた温泉宿へと向かった。

 

 

◇◇◇

 

 

子供を保護した場合に先ずやる事は互いの自己紹介だ。

 

そうする事で互いを知って、警戒心を解きほぐす事が出来る。

 

高町なのはちゃん。

 

6歳という事でティアナの2歳歳上の女の子だ。

 

旅館までは歩きとバスで向かう最中、なのはちゃんはこの街の事を色々と話してくれた。

 

旅館の事も何度か来た事があるみたいで、なにがあるのかを教えてくれた。

 

そしてなのはちゃんの事情も、ぽつりぽつりとだが話してくれた。

 

曰く、なのはちゃんの家はお店を経営しているらしい。

 

ただ父親が大怪我をしてしまったらしく、お店の切り盛りする母に兄と姉が手伝いに入って、まだ小さななのはちゃんは何も出来ないから大人しく家で待つしかない。

 

家族が大変なのに、何も出来ない自分。

 

だからせめて良い子で待っていようとして、でもそれも次第に寂しくなって。

 

それがもう限界で家を出て公園に居たらしい。

 

俺はそのなのはちゃんの独白を聞き終えると、その頭にポンと手を置いて、撫でながら言ってやった。

 

「偉いな、なのはちゃんは。よく頑張った」

 

そう言ったらなのはちゃんはガバッと俺に抱き着いてきて泣き出した。

 

辛い事を全部自分の中に溜め込んで我慢して、家族の事を想って良い子でいようとして。

 

本当に6歳なのかと思ってしまう程にしっかりした子だった。

 

とりあえず落ち着くまで泣かせてあげる。

 

ティアナはどうしたらいいかとおろおろしていたのを、口元に指を当てて、シーッとジェスチャーを送れば、その小さな両手を口に当ててコクコクと頷いた。

 

4歳児ながら賢い妹でお兄さんは鼻が高いぞ。

 

泣き終えたなのはちゃんは涙と鼻水でべしょべしょで凄いことになっていたから、とりあえず温泉に浸かることにした。

 

はじめての温泉にはしゃぎ回るティアナを注意しながら、なのはちゃんにはティアナと洗いっこをして貰った。

 

……本当は俺がティアナの背中を流してやりたかったが、末っ子らしいなのはちゃんのメンタルを癒すにはより自分より小さなティアナの面倒を見させる方が一番手っ取り早いだろう。

 

温泉に浸かってリラックスもした所で、家の電話番号を訊き、電話を掛けた。

 

不安気にするなのはちゃんも付き添いで。

 

電話に出たのは女性の声だった、リンディ艦長と同じくらいの女性の声だから、多分なのはちゃんの母親だ。

 

先ずなのはちゃんが公園でひとりぼっちだった事を伝え、旅行者である自分達の道案内をお願いし、そのお礼として今、温泉宿でひとっ風呂浴びた事を伝えた。

 

その話を聞いてくれた電話向こうの母の気が安堵で和らいだのが伝わって来た。

 

そこでなのはちゃんに電話を代わった。

 

とても言い難そうにして、ごめんなさいと謝ったなのはちゃんの頭を撫でてやって電話を代わった。

 

なのはちゃんの母親、桃子さんが迎えに来るという事だったが、なのはちゃんの分の宿泊枠も取ってしまったので、迎えは明日でも構わないと告げると、そこまでお世話になるわけにはと言われた。

 

まぁ、そりゃそうだ。

 

というより見ず知らずの人間の手元に幼い我が子を置いておく心配の方が電話越しにも伝わって来る。

 

俺はなのはちゃんから聞いた高町家の事情と、今のなのはちゃんの様子を伝えると、短い沈黙のあと、電話越しに頭を下げる雰囲気と共に、娘をよろしくお願いしますと桃子さんから返事が返ってきた。

 

管理局員であることは明かせないが、責任を持ってお預かりしますと返事を返した。

 

電話を終えてちょっとナイーブになっているなのはちゃんの気分を紛らわす為に、卓球を始めたんだが。

 

この娘、普通に強かった。

 

というか、とても6歳児の動きには思えない。

 

何かしらの武術をやっているのか、足運びが軽やかで反射神経も並みの魔導師より上ってどうなってるんだ?

 

「なのは!!」

 

そうこうしていると、なのはちゃんの名前を呼んだ少年と、付き添いの女の子が現れた。

 

少し息が荒くて汗を掻いている事から、なのはちゃんを捜し回っていたのだろうというのが容易に想像出来る。

 

「お兄ちゃん、お姉ちゃん……」

 

そう言うなのはちゃんは、何故か俺の後ろに隠れてしまった。

 

お兄ちゃんと呼ばれた少年の視線が俺に向く。

 

俺やクロノよりもちょっと歳上の、その視線は俺と同類のものを感じた。

 

こやつ、俺と同レベルのシスコンと見た。

 

なのはちゃんが俺の影に隠れたら警戒心どころか殺気を飛ばしてくるな!

 

何か知らんがそこらの魔導犯罪者よりも鋭い殺気ってなんなんだよ。

 

と思いつつその手をチラッとみたら、何かしらの得物を手にしている手だと一目で分かった。

 

一触即発の空気の中──。

 

「あー、とりあえず、卓球でもやるか?」

 

という提案をするしかなかった。

 

そして始まった卓球。

 

なのはちゃんの兄は物凄い形相──クロノみたいにそんなに表情に現れるワケじゃない鉄面皮の系譜らしいが、自然とか雰囲気で分かる。

 

伊達に執務補佐官として四六時中クロノと一緒に居るわけじゃないからな!

 

なんでかその辺、エイミィにちょっとツッコまれてエイミィが拗ねるけど、俺とクロノは至って普通の仕事上の同僚だから心配すんなって。

 

話が逸れた。

 

ともかくそんな冷静沈着野郎の顔の変化くらい見極めるのはお茶の子さいさいだ。

 

卓球だってのに相手のコートにワンバウンドしない直接玉と玉を打ち合って打ち返す変な卓球に代わり、あまりの速さに俺がラケットを二刀流にしたら、向こうも二刀流にして、目にも止まらない速さで玉の応酬が続いたのは最早意地の勝負だった。

 

その決着は卓球の玉が破裂した事で引き分け、という事になった。

 

せっかく温泉に入って汗を流したのに、卓球で汗だくになってしまった。

 

という事で温泉に入り直しなんだが、なのはちゃんの兄ちゃん、脱いだらスゲかった。

 

完全に鍛え上げてる身体だった。

 

そりゃラケットを握る手も動きも足運びも素人じゃない筈だ。

 

向こうも俺の身体を見て同じ様な視線を向けて来た。

 

ただ互いに多くを語らず、汗をサッと流して温泉に浸かる。

 

……休暇のはずなのに全力戦闘したみたいな疲労をさせられるとは思わなかったぜ。

 

温泉から出ると夕食だ。

 

追加料金を支払ってなのはちゃんの兄ちゃんと姉ちゃん。

 

恭也と美由希の分も作って貰った。

 

2人はそこまでしてもらうわけにはと言ったが、どうせなら泊まっちまえと俺が強引に進めた。

 

その方がなのはちゃんも安心だろうし。

 

金はひたっすら働いてて給料が良いのに中々使う機会がないから貯まりに貯まってるから心配は要らない。

 

それこそ高級車をポンッと現金一括で買えるどころか、ちょっとやりくりすれば一軒家が建つ程度には貯まってるから遠慮は要らないさ。

 

と言った感じで、地球に来て1日目にして奇妙な関係が出来上がったのだった。

 

 

 

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