先生とゲマトリア   作:鈴ノ鳴子

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デッカい姉御肌な女性って良いよね


初春と出逢い月

時刻は午前2時。月も登りきり、世界が暗闇へと包まれる時間帯。

そんな中、シャーレの個人部屋にて飲み会が起きていた。

 

「なぁ、そういやお前って何でキヴォトスに居るの?」

 

「話せば少し長くなりますよ。何分、経歴が複雑なもので」

 

眼前の珍妙男に話しかけながら、コップに注がれた酒を弄る。女性の部屋のくせに、酒や書類だけが置かれた可愛げもない個人部屋で、アタシ達は飲み会をしていた。

...とはいっても、コイツは飲めないらしいからアタシ1人だけど。寂しさを吹っ飛ばすように、手元の酒を一気に仰ぐ。喉を通る不思議な感覚は、何度飲んでも素晴らしいと言い張れる素晴らしいものだ。好調した気分で、アタシは目の前の存在と相対していた。

 

「なげーならいいや。でもまぁ、いつか話せよ?その時はアタシの来歴も話してやるから。」

 

「おや。なら、暫く纏めることを課題に入れさせてもらうとしましょう。にしても、大丈夫ですか?先生。随分と酒の手が早いようですが」

 

「ん〜?大丈夫大丈夫。アタシ酒につえーから」

 

そーいや、どうしてコイツと飲み会してるんだっけな。今日は勤務初日だった気がするんだけど。

 

〜勤務初日〜

奪還作戦の騒動後・・・

 

「ほいじゃま、ちょっくら周辺出歩いてくるわ。緊急の要件も落ち着いたしいいだろ?」

 

妙に長ったるい事件も終わり、快晴の元で話し掛ける。相対する彼女も様子からして色々疲れてそうだし、部外者のアタシが居ても大変だろう。

 

「分かりました。護衛などは付けなくても平気でしょうか?」

 

「ん?大丈夫大丈夫。アタシは腕っぷしだけは強いし、何とかなるよ。じゃあ、緊急の要件があったら呼んでくれな」

 

「分かりました。では、お気をつけて」

 

儀式のようなやり取りを経て、アタシはシャーレ周辺の散歩を始めた。

コンクリートの地面を踏み締め、適度に見つかる街路樹を眺めながら歩く。街並みの様子を見るに、あっちの世界とそう変わりはないらしい。銃弾やら戦車やらが出た時は流石に驚いたが、騒動が終わる頃には割とそんなもんと順応し始めていた。

 

最初は新鮮に見えた景色も、少し経てば新鮮さは消え退屈が浮かんでくる。ふと、路地の方へと足を踏み入れるという発想が湧いた。

 

「んー...なんかねーかな。ちょっくら路地の方に行くか」

 

そうと決まれば善は急げ、人気の無い方向へと足を進めていく。

...思い返せば、この思い付きがアイツとの最初の邂逅だったのだろう。

十分もすれば、出歩いてある人も殆ど見えなくなり、正しく裏の世界が見え隠れし始めていた。

 

そんな折だろう。裏路地に男が居たのだ。

いや、男かも分からない。何せ、そもそも人間の形を成してないのだから。黒い無地のスーツに体を包み、胴の繋がっていない楕円が頭部に存在している。何となくハイローに似ているなとも思ったが、そんな油断した思考を捨ててアタシは構えた。

 

「お前は誰だ。何故そこにいる」

 

我ながらドスの効いた声で、眼前の存在に注意を促す。

そうして初めて存在を認知したのだろう。少しの停止の後、その存在はアタシへと向き合った。

 

「おや、失礼致しました。私はベギダ。ここ、キヴォトスの大人の1人であり、ゲマトリアに所属している者です」

 

 

口がないが、確かに声が聞こえた。渋めな男の声で、相手が話してきたのだ。そして...ゲマトリア。聞いたこともない単語に思わず顔を顰める。厄介者の一員だろうか?面倒事は大嫌いだが、生徒に危険が及ぶ可能性があるなら徹底的にマークする必要がある。

 

「...何が目的だ。アタシの生徒に手を出そうってか?」

 

その言葉を聞き、始めて男がリアクションをした。顎辺りに手を添え、考えるような仕草を取ってきたのだ。

 

「端的に言うのであれば、生命が持つ意識と深層の解明。それらを解明する為に動いています。ああ。先に言っておきますが、貴方含めたキヴォトスの生命に干渉はしませんよ。というより、できないという方が正しいですが」

 

「それを信じろってか?そんなアヤシイ見た目の奴をはいそうですかとスルーできるほど、アタシも馬鹿じゃないんでね」

 

言ってる事や見た目が胡散臭いが、何より相手の出自が分からない。どうとでも言える以上、対して言葉の重みが無いのは向こうも承知だろう。

 

「でしたら、誓約書でもお書きしましょう。私の目的は、ここキヴォトスに居れば必然的に果たされる。ですので、貴方達に干渉する意味など欠片も存在しません」

 

声のトーンは変わらないが、相手の言葉に受容を待つ態度が感じ取れた。

...確かに胡散臭いが、今ここでアタシ1人が勝てるとも思えない。それに、コイツの言っている事が本当であれば、立場を利用して情報を取ることもできる。

 

「そうか。んじゃあ、最後に質問だ。お前、お酒は飲めるか?」

 

今までとは全く趣旨の違うその質問に、静かだった相手も流石に興味を抱いたようだった。確かに、アタシだってこんな質問をされたら意図を探るかもしれない。

 

「いえ。下戸な者ですが、それ以上に飲食が不可能ですので」

 

その答え、アタシは大きく落胆した。正直、目の前の存在に興味があったのだ。ワンチャン酒飲みしてある程度話す事も考えたんだけどな。

そもそも、口を始めとして胴体すら繋がってない生物に尋ねることすら違ってたのかもしれない。

 

「まじかぁ〜...。そりゃあ確かに食えなさそうだけどさ」

 

落胆の色を感じ取ったのだろう。眼前のソイツは少し考えるような動作をした後、アタシの方へと振り向いてきた。

 

「飲むことは無理ですが、ある程度話すことなら可能ですよ。とはいっても、私とアナタの立場上相入れる事はできませんので、深夜に会うことになりそうですが。」

 

その言葉に、心の落胆が消えてくのを感じた。飲み相手...というか話し相手を望んでいたので、相手提案を拒むつもりはなかった。

 

「マジ!?いーじゃんノリ良い!。んじゃ、今日の深夜に早速飲むぞ!」

 

言質を取れた嬉しさと同時に、ふいに手元のタブレットを見る。1時間以上も時間が経っている。散歩してたとはいえ、そろそろ戻らなければやばいだろう。タブレットを片手で持ち、走るように路地を後にする。その後急いでシャーレに戻ったが、少しだけリンに小言を言われた。

 

「ふむ。場所が分からなければどうしようもないのですが。少し面倒ですが、手を使う事にしましょう」




何となく頭に浮かんだオリジナル設定をプロットを作らず即興で出力しました。なので、内容ガバも作品の一部として見てくれたら幸いです
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