前回から時間が空いたとかいう次元じゃなさすぎるけど...殆ど見てる人居ないし問題は無いでしょう。もし見てる人が居たら、その時は本当に申し訳ない。今後は多分ちょくちょく投稿すると思います。多分。
時刻は昼、正確に言えば13時20分。
アビドス郊外、少し離れた半ば砂に埋もれたマンション。
そこに入り...階段を使って更に下へ。数字の書かれたキーパネルに、憶えは無いが手に馴染むそれを打つ。
ガキン。ギギギッ
機械的な扉は既に錆び付いており、動くたびに嫌な金属音が辺りに響く。
暫くして半開きとなったその場所へ足を踏み入れると...懐かしい様相が私を迎えた。
空の薬品棚、黒ずんだ数多の研究レポート。砕けたフラスコ...目に入る全てが懐かしい。私が人間であった頃に使っていた研究室。
今や室内は荒れており、月日を表すように常に電球が点滅している。
人間...つまり不純物であった頃の私は、常に静かな疎外感に苛まれていた。故に世界に見られることがないよう、常に隠れて物事を進めていた...と。今となっては隠れる必要もないが。
このままでは時間が勿体無い。不必要な感慨に囚われないよう、足早に目的の物へ...研究室の奥を目指す。少し地面を歩けば、硝子の破片を踏んだ音が耳に聞こえた。懐かしいはずだが、浮かぶ感情はまた普通と違う。今浮かぶそれは、他人の人生を俯瞰し、その感情を味わっているようなもの。”自分の”という感覚が希薄と言えば分かりやすいだろうか。
今やキヴォトスで過ごすのに不便は無い。私の目的も果たされつつある以上、正しく絶好調だと言えるだろう。しかし...心に浮かぶ虚無感だけが、嫌に頭へこびりついている。
“先生”と呼ばれるあの存在に会ってからだろう。ここまで私の自我が揺らいでいるのは。面倒だ...と前なら一蹴していたが、今の私には少々興味深かった。
思案しながら進めば、思ったより早く目的地...書籍棚には着いた。足を止め、その中の本を適当に取れば...空いた棚の奥にはメモのような紙が残っている。少しだけだが憶えている。人間であった...いや、私が”私”となってすぐの頃に書いた、過去について記したメモ。
それを覗けば...相変わらず、そのメモは文字化けしていた。
『「9☆504%>,04%604%・(5$5^.82(・<44%・51^243→7「♪%5♪4(9♪,357→+.<4*4(€7$・$〜52%・1$,7(♪2.04%57$・¥6<4〜4°€|24+1|4☆♪24〜,』
頭が痛くなるそれに少しばかりの落胆を覚えながら、振り向こうとしたその時。
「お久しぶりです、ベギダーさん。」
不釣り合いな程冷徹な声が、私の耳を貫いた。
「...お久しぶりです、黒服。色々聞きたくはありますが...まず一つ。何故ここが?」
「大した事ではありませんよ。ただ、最近の貴方の動向が少し気になりましてね。幾ら特例的に貴方の存在を容認してるとは言え、過度な秘密主義は組織の問題に繋がりかねません」
「なるほど。それは申し訳ありませんでした。貴方達の知ってる通り、今の私は”先生”へと接触している身です。下手に問題を起こさない為に、なるべく世間側へと身を寄せる必要がありました」
「ええ、存じています。なので...今回の私はその為に来ているわけではありません。それに今の私は、”ゲマトリアの黒服”ではなく”私個人”としてこの場に立っています」
「それはそれは。では...どのような理由で?」
「貴方との会話は進みが早く助かります。...ベギダーさん。貴方が人間であった頃の記憶を、覗いてみたくはありませんか?」