ヒロぜバブ   作:規律式足

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 緑谷出久君視点です。



第2話

 

 あの日僕達がオールマイトカードが当たって喜んでいた時、彼はコロッケに夢中だった。

 

 

【雄英】一般入試実技試験当日。

 僕、緑谷出久は長年夢見た憧れの場所を前に震えながら見上げていた。

 ここまで来たんだ。

 その想いが胸から溢れてくる。

 小さい時にネットでオールマイトの救助活動を見た時から彼のようなヒーローになることを夢見ていた。

 自分に個性のない体質【無個性】であると診断され、ヒーローになれないと絶望した。

 幼馴染の片方である【かっちゃん】からはそれをネタで馬鹿にされ、もう片方の幼馴染である【たっくん】からは、だったら強くならないとなと強引に喧嘩の現場にかっちゃん共々引っ張りこまれ乱入する羽目になったりしもした。

 そんな幼少期の日々、山に行ってはたっくんが大岩を殴り割ったり、僕を虐めてたかっちゃんがたっくんのお姉さんである美咲さんにヤキを入れられたり、たっくんがお父さんの仕事の都合で引っ越したりと色々あった。

 たっくんが引っ越したあの日、かっちゃんが「これで折寺は俺の天下だ」とせいせいしたと言わんばかりに笑っていたけど、その目から雫が流れていたことを僕はしっている。

 たっくん、男鹿辰巳。

 凶悪で残忍で傍若無人で人を人と思わぬクソヤロー。無個性だからとうじうじしていた僕をうっとおしいと殴り、ヒーローについて(ブツブツ)考察していた僕をうるせえと殴り黙らせ、自分に突っかかるかっちゃんに喜々としてコブラツイストや電気アンマを行うド外道。

 この世の全ての【暴】という字を濃縮して人型に押し込んだ、そんな人物。(「言い過ぎじゃね?By爆豪」)

 でも彼は僕が夢を見ることを否定しなかった。

 僕が無個性なのにヒーローに成りたいと言っても馬鹿にしなかった。

 一本気で男らしく、真っ直ぐなところはかっちゃんと同じくらい尊敬して、幼馴染として慕っていた。

 そんな彼の影響があったからこそ、今僕はこの試験会場に立つことを、夢を夢だと諦めずに踏み出せたのではないかと思う。

 もちろんあの日の出来事、オールマイトとの出会いも大きな理由だ。

 ヘドロヴィランに襲われて、かっちゃんを助け、オールマイトに認められたことも、僕にとって大きなきっかけになった。

 でも、託されたオールマイトの個性【ワン・フォー・オール】が使いこなせたのは、たっくんがやったように大岩を殴り割ろうと努力し続けてきたからだ。

 その日々があるから、同じように鍛えていたかっちゃんにオールマイトとの件を伝えることが出来た。

 羨ましいとはっきり言われたけど、だったら超えてやると獰猛に闘争心を漲らせていた。

 その強メンタルこそが爆豪勝己なんだと僕は思う。

 

「いつまで呆けてんだデク」

 

「感慨深くてさ」

 

「そういうのは合格してからやれや」

 

 雄英校舎を見上げていた僕にかっちゃんが声をかけてきた。

 デク、というのは緑谷出久をもじった僕の渾名。いわゆる虐めみたいなものだけど、呼びやすいのは事実なので気にしていない(たっくんなんか本名だと勘違いしてる)。

 

「でもさ、かっちゃん」

 

「あん?」

 

「ここにたっくんも居たら、って思っちゃうよね」

 

 二人並んで歩む中、ついそんな事を呟いてしまう。たっくんはヒーローに興味なんてなかったけど、昔のように三人で同じ道を歩めたらと思ってしまうのだ。

 

「・・・・・・・・・ケッ。あの馬鹿に入試は無理だろ」

 

 掛け算の七の段で詰まっていたたっくん。

 知能が暴力に変換されていたような彼は、勉強面で馬鹿だった(勘は鋭いのに)。

 その圧倒的戦闘力からヒーローに成れそうだけど、偏差値の高いこの高校は性格的に受験すら無理だよなあ。

 

「うん、そうだね」

 

 世の中には不可能なことはある。

 無個性だった僕がこの場にいるように、その不可能を超えることも在り得るけど、二足歩行する勉強大嫌いである彼が雄英高校の学力試験を突破するのはよほど切実な、命がかかったような事情がないと無理だろう。

 それはそうだと納得する。

 でも、それでも願わずにはいられない。

 また一緒に並んで歩みたいと。

 

「そもそもヒーローにならなくて、ヴィジランテになりそうなんだよなあの馬鹿」

 

「それはそう」

 

 本人の気性的にそうだよねと僕は思った。

 夢への一歩を踏み出し、競い合うライバルと並び歩き、過去の回想をしていた僕緑谷出久。

 しかし、

 

「は?」

 

「え?」

 

 願っていた再会はあっさりと叶う。

 

「アレは辰巳だよな?」

 

「頭に赤ん坊を装備している?」

 

 高校の入試に赤ん坊を連れている見るからにヤンキーな青年というインパクトある人物。

 見間違うことなんてあり得ない幼馴染の姿。

 周りの受験生もすれ違う時にヒソヒソと呟く中、とんでもない衝撃に硬直していた僕達に彼も気がついた。

 

「おお、お前ら!!やっぱり居たか!!」

 

 かつてのように手を上げながら声をかけてくるたっくんに、僕達は。

 

「たっくん……」「辰巳テメェ……」

 

「「産んだの(かよ)!?」」

 

 全力で叫んでしまったんだ。

 

「違ぇわっ!オレが産んだみてえに言うなっての!!

まぁ、その、いろいろあったんだよ。な、ベル坊」

 

「アィ!ダー!!」

 

 僕達の幼馴染は、中学三年にして1児の父になっていた。

 

「え、中3であの年齢のガキ?いったい何歳の時にやらかしてんだアイツいくらヤンキーでもやらかしすぎだろ女性の方は大丈夫なのか家庭は崩壊してないのか今からババアに連絡した方が」

 

「落ち着いて、かっちゃん」

 

 なお僕よりかっちゃんの方が衝撃を受けて混乱していた。

 実の子じゃない可能性もあるだろうに。

 まあそれはともかく、

 

「ま、とにかく久しぶりだな」

 

 そう笑うたっくんにつられて、

 

「うん、会えて嬉しいよ」

 

 僕も笑ったんだ。

 

 





 補足・説明。
 
 時間が飛んでヒロアカ原作の雄英高校実技試験当日です。
 男鹿辰巳の幼馴染である緑谷出久君視点です。
 彼と爆豪勝己君は原作とはかなり変わっております。
 男鹿辰巳を挟むことでライバル的な間柄に落ち着きました。

 基本的にはヒロアカ原作のまま時間は進みましたが、男鹿辰巳が引っ越した後も緑谷出久は身体を鍛え続けました(流石に不良と喧嘩はしなかった)。
 目標は岩割りです。
 かつて探検した山の岩場で、男鹿辰巳が殴り割ったように岩を割ることを目標に爆豪勝己と鍛錬していました。
 これぐらいできねえとヒーロー無理だろ?と素で言われたことが原動力になりました。
 結果身体は鍛えられ、オールマイトに託されたワン・フォー・オールも自壊せずに使えるだけの身体が出来ています。
 またワン・フォー・オール発動して岩を割った際に、オールマイトに許可を貰ってから爆豪勝己に説明しました。
 なお、男鹿辰巳の姉である美咲さんの蹴りで岩盤に巨大な亀裂が出来ていることを少年三人は必死で見ないようにしているとか。
 
 なお、この作品の緑谷出久は年上のお姉さんが好みだったりします。頑張れ麗日。

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