石矢魔などのヤンキー学校がヒーロー飽和社会なのに健在なのは世間と保護者から需要があるからです。
私有地か、ヒーローになるか、専門職で免許取らないと個性使用ができない社会。
緑谷君達の保護者世代はまだ微妙な個性だらけなので平気でしたが、その下からは戦闘にしか使い道がない個性が増加しました。
なので個性使用欲発散場所としてヤンキー公立学校はかなり重宝されています。
ちなみにヤンキー学校卒業者は意外と真っ当に就職します。
在学中に突き抜けたガチヴィラン候補(ムーンフィッシュやマスキュラーあと神崎さんもそんな扱い、ついでに男鹿)を知り更生してしまうからです。
それとヴィランが親族にいる若者の受け入れ先にもなってます。
「この子の親になってください」
「ダッ!!」
「なんでのっけから人として最低のことを抜かしてんだ辰巳コラァァァッ!!(BOM)」
「再会した幼馴染が赤ん坊を押し付けようとしている件について」
雄英高校ヒーロー科入試当日。
男鹿辰巳、緑谷出久、爆豪勝己。
幼稚園の時から小学生半ばまで付き合いのあった、親友とも幼馴染とも言える関係だった彼らはこれからの人生において重要な岐路である試験日にも関わらず、そんな賑やかに旧交を温めていた。
幸いなことに試験開始までまだ時間はある。
だからとても、大変、知らないと試験に集中できなそうな出来事。男鹿辰巳が赤ん坊を連れて歩いていたことを緑谷出久と爆豪勝己は雄英高校の入り口から離れた場所で問いただしていた。
そして事情を聞こうとした矢先に男鹿辰巳が言った一言が「親になってください」だ。
事情がありやむを得ずに己が子を里子に出す親は現代にも存在する。
しかしそれを再会した幼馴染にやられてしまえば、意外と、比較的に、本人の言動と態度と行動は脇に置いといて、真っ当な常識を持つ爆豪勝己がブチギレて怒鳴るのは当然のことだろう。
「あー、ベル坊は実は預かってるだけで俺の実の子じゃなくてな」
「なん、だと」
「良かった、結婚式に招待されなくてハブかれたのかとショック受けてたから安心したよ」
男鹿辰巳の発言にとある死神漫画のようなリアクションをとる爆豪勝己と、赤ん坊の存在より幼馴染にハブかれていたかもしれないと考えていた緑谷出久。
両者の性格の違いが反応に出ていた。
「えっと、まあざっくり説明するとだな」
男鹿辰巳も以前古市貴之にしたようなベル坊との出会いを語らなかった(その場合はヤンキーの土下座からなので)。
雄英高校への入試にあたり学校側へ説明した、悪魔やら魔界やら魔王やらについて伏せた(姫川が考えた)設定を幼馴染二人へ語りだす。
ある日ヤンキーをシバキ倒して土下座させていたところ、赤ん坊を連れたメイドに声をかけられた。
仕えている主の命令で赤ん坊の世話をしていた彼女は、その赤ん坊が(男鹿辰巳のやらかしを見て)目をキラキラと輝かせて懐いてしまったことを告げた。
とりあえずこんな馬鹿に懐くのはあり得ないと引き剥がそうとメイドは奮闘(男鹿の抹殺を含めて)したが赤ん坊にして既に個性を発現(超雷撃)したベル坊は嫌がり個性制御が出来ずに癇癪のまま雷撃を周囲に放ってしまう。
メイドによると男鹿辰巳が15メートル以上離れるとベルは泣きながら即死レベルの雷撃を放つとのこと。
ゆえに癇癪を起こさないよう、泣かさず、離れずに生活しなければならない。
ちなみに市役所や雄英高校には(姫川グループ傘下の)病院での診断書(偽造)を提出し了承を得ている。
「・・・・・・そらまあ、大変だな」
「異形タイプ個性も大変らしいけど、発動タイプ個性が赤ん坊の時の世話が一番大変だって聞くよね」
悪魔の事情を伏せた説明だがベル坊の状況は個性発現以降の社会においてまま有ること。
だから二人は(土下座やらメイドやら色々気になることはあったが)そんなこともあるかと納得した。
「しかし雷撃か強個性としてはごくありふれてはいるけど強力な個性ではある電化製品への被害は問題だけどその威力と速さは凄まじいヴィランを殺さずに無力化できる点も魅力的でしかもこの年齢で扱えるなんてもしかしたら親御さんは有名なヒーローかも・・・・・・ブツブツブツブツブツ」
「ダァッ!?」
「緑谷のアレ、まだ治ってねえのか?」
「むしろ悪化が止まんねえんだよ」
説明後に緑谷出久がつい癖である個性の考察をしだし、ベル坊は驚き怯え、久しぶりの男鹿辰巳と見飽きている爆豪勝己はドン引きしだす。
「・・・・・・・・・・・・。あ、それでたっくん、なんでかっちゃんがベル君の親になって欲しいってなるの?」
「急に冷静になるなよ」
「言われてみたらそうだな。なんでだ辰巳?」
考察に耽っていた緑谷出久だがその果てに疑問を抱いたようだ。男鹿辰巳が赤ん坊を引っ付けたまま入試に来た理由は納得した。
だがそれと爆豪勝己にベル坊を渡そうとする理由がわからない。ちなみに緑谷出久に怯えたベル坊は爆豪勝己に近寄りその小さな手でペシペシと爆豪勝己の身体を叩き出していた。
「ベル坊を押し付けようと」
「「最低か君は(テメエは)」」
四六時中赤ん坊から離れられない生活が大変なのは弟妹がおらず幼子の世話をしたことのない二人だって想像はできる。
育児ストレスなんてものは犯罪発生の理由になってしまうくらいありふれていることも知ってはいた。
だからといって、いくら致死レベル電撃を放たれるとはいえ、こうもあっけらかんと今まで世話をしていた赤ん坊を押し付けようと言い出すことにはツッコんでしまう。
ちなみにベル坊はなんか気に入ったのか爆豪勝己の背中にひっつきよじ登りだしていた。
「でな、ベル坊が懐くには理由というか適性が必要でよ」
「「スルーっ!?」」
んなもん言われ慣れてるといわんばかりの態度で男鹿辰巳は話を続ける。
「凶悪で残忍で傍若無人で人を人とも思わぬクソヤローじゃなきゃ無理なんだ」
「まさにテメエのことだな辰巳ィ(ニヤリ)」
「なんでそんなのに懐くのベル君」
顎に手を当てて目を伏せながら(魔王だからとは言えないで)語る男鹿辰巳と、そんな男鹿にまるで勝ち誇るように嘲笑う爆豪勝己(ベル坊が頭上で「ダー!」とポーズ中)、緑谷出久は「(ブーメランだよかっちゃん)」と内心で思いつつすっかり爆豪勝己に懐きだしているベル坊を見ていた。
「だから緑谷はなんかアレだから無理だとしても、爆豪なら懐くだろうなって予想していたんだよ」
緑谷出久は三木よりはマシだろうが懐きそうにはないだろうしと男鹿は呟く。
「誰が凶悪で残忍で傍若無人で人を人とも思わぬクソヤローだコラァァァ!!」
「いやでもベル君かなり懐いているよ?あとかっちゃんはだいたいそんな感じだし」
その発言に自分が凶悪で残忍で傍若無人で人を人とも思わぬクソヤローと言われたも同然な爆豪勝己は憤り、ベル坊の懐き具合いから殆どそうだと証明されていると緑谷出久は言った。
よっしゃいける、と石矢魔及び知り合ったトップヤンキーすら反応しなかったベル坊の東城以来の爆豪勝己への懐き具合いに男鹿は勝利を確信したが、
「ダ?ダー(フゥ)」
と爆豪勝己の頭部に居座りだしたベル坊は突如興味を無くして男鹿辰巳へと戻りだした。
「え、ベル坊どうした!?
爆豪は凶悪で残忍で傍若無人で人を人とも思わぬクソヤローだろうがっ!!何が駄目なんだ気に入らないっ!?」
「はっ、どうやら真の凶悪で残忍で傍若無人で人を人とも思わぬクソヤローはテメエみてえだなあ辰巳ィ」
「かつてここまで、凶悪で残忍で傍若無人で人を人とも思わぬクソヤローって言葉が繰り返されたことはあったかな」
期待していた爆豪勝己からベル坊が離れたことに驚愕し、爆豪勝己はザマァと見下し嗤い、蚊帳の外気味な緑谷出久は現実逃避しだしていた。
「なんで爆豪が駄目なんだ?イケルと思ったんだが・・・・・・・・・ああ、妙なとこみみっちい性格だからか。あと弱いし」
「誰が弱いだコラァァァッ!!」
「みみっちい性格だって自覚はあるんだ」
かっちゃんはたっくんと会話するといつもよりさらに怒鳴るよなあと緑谷出久は思った。
男鹿辰巳の当てが空振りに終わったところで時間も時間の為三人(プラスベル坊)は移動を開始しだす。
幼馴染との再会と対話。
色々衝撃的ではあったが、再び同じ学校に通えるかもしれないとやる気を漲らせていた。
だが緑谷出久がどうしても気になっていたことを男鹿辰巳へと訊ねる。
「学力試験は大丈夫なの?偏差値高いよ雄英」
いくら実技試験で結果を出そうが学力試験で落ちてしまえば終わり。
実のところ、後に受けるヒーロー仮免許取得試験で【雄英潰し】をやらかす輩の大半は、腕っぷしに自信はあったが学力で他科にすら受からなかった者達だったりする。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・思い出させないでくれ。あの勉強地獄の日々を」
「その様子だと合格圏内みてえだな」
試験結果ではなく勉強の日々を思い出すなら大丈夫だと爆豪は安心した。
「雄英以外にヒーロー科の学校知らねえから(あと緑谷爆豪が受けるから)適当に言ったら、その日からヒルダの奴に古市共々(巻き添え)24時間勉強漬けにされた。なんだあの大魔王監修の強制勉強マッシーンは」
「「(大魔王監修?)」」
「知ってるかテメエら?
合格しなきゃ死ぬ状況なら、人は奇跡を起こせるのさ」
「スパルタか」
「奇跡の強制発動だね」
爽やかに笑う男鹿辰巳に、そこまで学力試験が大変ではなかった二人はドン引きした。
「っで、その古市は?」
「そういえば居ないね」
「アイツは経営科志望。なんでも美人ヒーローを俺は補佐する!!とか叫んでた」
「下心満載かよ」
「実際需要はあるらしいよ」
戦闘員、救助員、を兼ね揃えたヒーローは多忙。ゆえにヒーロー事務所を運営し、書類を捌く事務職員は雇える余裕があるなら雇いたい存在なのだ(零細ヒーローには厳しいが)。
そうして三人はようやく試験会場まで向かった。途中緑谷出久がこけかけたが麗らかなフェイスな少女に救われ(年上ヤンキー系女子が好みなのに)キュンとしていた。
「女子と喋っちゃった」
「喋ってたか?」
「女慣れしてねえキモい反応しただけだろ」
「ダ!!」
「(うん、男鹿は大丈夫そうね)」
そんな幼馴染達のやり取りを一人の恋する乙女(邦枝葵)が理解ある正妻のような態度で見守っていたそうな。
雄英一般入試実技試験終了後。
合否判定の教員達の場。
「実技総合成績でました」
雄英高校サポート科担当にして整備、警備、救助ロボットの管理を行う教員にしてヒーローであるパワーローダーがあまりのショックで白く冷たく静かに倒れ伏す中で雑談に近い教員達の判定は続く。
「救助ポイント0でこの三位とはなあ。他の二人がいなければ1位だったろ。派手な個性とタフネスの賜物だ」
「4位である彼も凄い。アレ(0ポイント巨大ロボ)を吹っ飛ばした時に腕を自身の衝撃で負傷したけど、救助ポイントも稼ぎつつこの結果は凄い」
「凄いのは2位のこの女の子の方よ。木刀で仮想敵を切り裂いてアレ(0ポイント巨大ロボ)も周りの受験生を避難誘導しながら解体したもの。あら烈怒帝瑠の元総長なのね、だから人を率いるのに慣れてるのかしら」
「あ、彼女一年のトガちゃんの後輩なんですね。ならその強さも納得です」
「元レディースなのに学力高くね?」
「元二代目総長さんは21だけど現在も高1らしいですよ」
「詳しいな13号」
「僕はトガちゃんと仲良しなんで」
「・・・・・・・・・だが一番はコイツだよな」
赤ん坊を肩車した青年の姿がスクリーンに浮かびあがる。
「男鹿辰巳。出現した仮想敵全てをめり込ませ、0ポイント巨大ロボも紋章を纏った一撃で完全粉砕。キレたパワーローダーが追加投入するも続けて2機オシャカに」
「へへへへへへ、今日だけで巨大ロボが5機ぶっ壊れた。予算が、修理が、フヘヘへへへへ。」
「3位である彼と似たタイプみたいだけど、意外と救助ポイントも稼いでいるな、意外と」
「よく見ろ、赤ん坊が先導してるぞ」
「あ、透明の個性の娘も助けてるわ。よくわかったわね」
「赤ん坊が反応する度に助けてるからこその救助ポイントか」
「事情が事情だから特別に許可したが、良いコンビだな」
雄英高校一般入試実技試験結果。
1位、男鹿辰巳。
2位、邦枝葵。
3位、爆豪勝己。
4位、緑谷出久。
学力試験でも問題のなかった彼ら彼女らは無事雄英高校を合格する。
ただ、男鹿辰巳は合格はしたものの学力試験ではギリギリの成績だった為、一般入試首席は邦枝葵となった。
補足・説明。
この話は、男鹿辰巳が幼馴染二人に事情説明し、ベル坊をかっちゃんに押し付けようとする話と、実技試験の結果となります。
実技試験そのものは説明込みでカットしました。
緑谷出久君がワン・フォー・オールフルカウルを使用できるので普通にクリアできました。ただ0ポイント巨大ロボから麗日さんを助ける為に無理をして腕を壊しました。
男鹿辰巳。
爆豪勝己に押し付けようとして失敗。
爆豪勝己。
ベル坊に8割懐かれた、でも男鹿辰巳ほどではない。割と悪魔に好かれやすい気質。後にスカウトされそう。
緑谷出久。
三木のように生理的に受け付けないわけではないが懐くほどではない、古市と同じくらいの反応。でもブツブツが怖いから避ける。
邦枝葵。
負けヒロ、ゲフンゲフン。男鹿が雄英受験するので頑張った恋する乙女。一緒に勉強したりと青春イベントもこなしたが、ヒルダが意外と献身的で項垂れていた。
渡我被身子。
当作では烈怒帝瑠の三代目総長。男鹿辰巳の姉である美咲さんに救われ、彼女のようになるため雄英に。男鹿辰巳の事情を悪魔含めて知っているが気にしていない。現在は邦枝葵を恋バナでイジる。
試験結果。
0ポイント巨大ロボ複数破壊かつ仮想敵大量破壊プラス救助ポイントで男鹿辰巳が1位。
0ポイント巨大ロボ破壊かつ仮想敵大量破壊プラス救助ポイントで邦枝葵が2位。
仮想敵最多破壊で爆豪勝己が3位。
0ポイント巨大ロボ破壊と仮想敵破壊と救助ポイントで緑谷出久が4位。
爆豪勝己が3位なのは機動力と仮想敵の惹きつけが理由。
パワーローダー。
瀕死。