男鹿辰巳君の雄英合格は聖石矢魔の一般の人達内でもかなり話題になりました。無論不正を疑う者(雄英落ちたヤツラ)もいましたが、六騎聖などは男鹿辰巳の病んだ目をした勉強ぶりを知っているので素直に祝福しています(病院の紹介や薬も差し入れてくれた)。
なお男鹿辰巳君の勉強法の一つですが、
返り討ちにした不良の全身に覚えた内容をマジックで書き込む耳なし芳一のようにする書いて覚える方式のものありました。
不良達は「今日は英語だった」「俺は数式」などと話していたそうです。
古市貴之をアランドロンに託し男鹿辰巳は一年A組のドアを開ける。
「はよーっす」
「ダッ!!」
男鹿辰巳の挨拶に合わせ力いっぱい片手を上げるベル坊の姿にクラスメイト達の心が朝からほっこりと癒やされる。
目つきの鋭く初対面ではガラが悪い印象を与えがちな男鹿辰巳だが、ベル坊の存在が見事に中和していた。
(でもなんで赤ちゃん連れ?)
(そしてなぜ裸?)
癒やされた後に当然の疑問が湧き上がるが、入学早々初対面の相手にそんなツッコミをいれる者など、
「君!!なぜ学び舎に赤ん坊を連れてきた!!きちんと家にベビーシッターを雇い家で面倒をみて貰うんだ!!そして服を着せてあげるんだ!!風邪を引いたらどうするんだ!!」
ここに居た。
この見るからに堅物で真面目そうで眼鏡ではっきり物申す性格の青年の名は飯田天哉。
雄英一般入試実技試験の説明の際にもその場で疑問を訊ねられる強心臓の持ち主である。
「あー、ベル坊は俺と離れると泣きだして個性が暴走しちまうんだよ。服を着るのも嫌がって癇癪するしな。学校には許可を得ているから勘弁してくれ」
男鹿はそうざっくりと説明する。
服に関してはすっかり慣れて気にしてなかったがなんとか対策すべきかとも思っているようだが。
「む、そうなのか。
それは事情も知らずに注意してすまなかった。学校から許可されてるなら問題ないな。
そしてボ、俺は私立聡明中学出身の飯田天哉だ」
「俺は石矢魔中学の男鹿辰巳。こっちはベル坊」
「ダ!!」
「よろしくな男鹿辰巳君、ベル坊君!」
((((その説明だけで納得するんだ))))
((((石矢魔の男鹿辰巳ってアノ?))))
((((廊下の件はアレで良いのか?))))
(頭にひっついて疲れねえのか?)
(抱っこ紐を創造して差し上げましょうか?)
そんなやり取りに既に着席しているクラスメイト達がそれぞれの感想や疑問を抱いていた。
ちなみに私立聡明中学はエリート校として、石矢魔中学は中学の形をした無法地帯として有名である。
「朝から騒いでんじゃねえよ辰巳」
「アレは俺が悪いのか?」
入学初日からネクタイも締めずに首元を開けている爆豪勝己が挨拶がてらそう話しかける。男鹿からしたらいつものように返り討ちにしただけで自分が悪いとは思えないようだ。
「・・・・・・まあ、確かに盛大な自爆か」
「爆発はテメエの専売特許なのにな」
爆破個性持ちである爆豪勝己より入学早々社会的に自爆裂四散した男・古市貴之。
男鹿に襲いかからなければまだマシな展開だったろう。
しかし、入学初日の朝にアランドロンにいってらっしゃいとベランダから手を振られた(近所にも広まる)時に、ヒルダ殿も男鹿殿にこうしているのでしょうかと呟かれたら襲いかかりもするだろう。
「んでデクは?」
一緒に来たのに会話に入ってこねえなと爆豪がもう一人の幼馴染のことを訊けば、
「アレ」「ダ!」
男鹿親子の指差した先でクソナードもとい緑谷出久は実技試験で一緒だった素朴で麗らかフェイスの麗日お茶子に話しかけられ照れて真っ赤になった顔を「近い」と両手で包むように隠していた。
緑谷出久は年上の女性ならともかく、同世代の女子に話しかけ慣れていないがゆえにこんな反応になるのだ(中学時代は無個性だからではなく度を越したヒーローオタクだから女子に避けられていた。あのブツブツや市内のグッズ店で販促用のヒーロー等身大パネルを売ってもらえないと交渉する姿が目撃されたらそうなる)。
「男鹿だけじゃくてコイツもかよ」
「処す?処す?」
その傍らで二人の女子と縁なき男子の殺意は上昇待ったなしだ。
「お友達ごっこしたいなら余所へ行け」
教室内の某透明ガールも麗日が緑谷にしているように男鹿に話しかけようかと立ち上がろうとしたところで、その声は響いた。
発声元は廊下。
そこには、寝袋に入り横になったオッサンがいた。
「ここは、ヒーロー科だぞ」
(((((なんか!!いるぅぅ!!)))))
続けてヂュッ!!と食事を済ませるその姿にクラスメイトは驚愕し、ここにもマイペースなの居るなと突然登場する存在に慣れきっている男鹿辰巳はそう思った。
「ハイ、静かになるまで8秒かかりました。時間は有限、君達は合理的に欠くね」
「なるほど、合理を重視するから寝袋とゼリー食か、頭良いな(ウンウン)」
「合理を重視するなら自宅で睡眠も食事も済ませておくべきだろ」
担任の相澤消太の行動に関心し親子揃ってウンウン(ベル坊は真似しるだけ)頷く男鹿に頭良くねえよ馬鹿と爆豪はツッコんだ。
印象に反してきっちりとやるべきことはやるタイプの爆豪勝己からしたら、廊下に寝袋で寝ることも、食事をゼリーで済ませることもマイナス面のほうが目に付くのだろう。
「早速だが・・・・・・・・・・・・」
話を続けようとする相澤消太だが、そこで机の上に座るベル坊と目があってしまい硬直した(赤ん坊と目があったら顔を逸らせなくなる現象)。
しばしベル坊と見つめ合った彼はフッと笑い、寝袋から猫耳カチューシャを取り出しベル坊へと装着。
「机の中に入ってる体操服を着てグラウンドにでろ。更衣室の場所はわかるな」
そして何事もなかったかのように生徒達へ指示をだした。
((((((今のなんだーーー!?))))))
「ダ?」
「・・・・・・似合ってるぞ」
「お似合いですわ」
入学初日で既に何度目かわからない心の叫びを一年A組生徒達(一部除く)は上げるのであった。
「「「個性把握テストォ!?」」」
雄英のシステムは常軌を逸する。
自由な校風、が売り文句であるがゆえに、担任はやるべきことさえやるならなにをやっても良い、がまかり通るのだ。
入学式、ガイダンス。
通常行われるそれらすら、あらかじめ対処してあるなら(入学式不参加に関しては1ーAの保護者に通達済み)許されるのだ。
「やることは中学時代にもやった体力テスト八種目。その時は個性禁止だっただろうが、今回は個性を使用してやる」
個性は千差万別。
平等を謳う教育機関では生まれ持った力の差異、体力テストに向いてる個性かどうかで不平等と感じないように個性使用を禁止しているのだ(獣に近い異形系ではそれでも差がでてしまうが)。
だがそれは平等で不公平がでないことを求める、今までの環境でのこと。
ヒーロー、という目立つ存在になるならば一般大衆に埋没する必要はない。
「男鹿、中学の時の体力テストはどうだった」
「校舎がぶっ壊れてやってないッス」
((((((何があった石矢魔))))))
石矢魔中学は男鹿が東条との喧嘩で瓦礫の山にしたわけだが、どうやら体力テストは間借りした聖石矢魔でもやってないらしい(トラブルを防ぐため)。
というか石矢魔生徒(不良)を集めると喧嘩祭りになるので最初からやらなかったりする。
「じゃ、爆豪。ソフトボール投げは何メートルだった」
「78メートル」
「じゃあ、投げる時に個性も使え。円から出なきゃ何をしてもいい」
センサーの付いたボールを爆豪に投げ渡しながら相澤は告げる。
このボールは落下地点の距離が手元の端末に表示される便利なもので、わざわざ道具(巨大メジャー?)で距離を量る必要がないのだ。
「なんで爆豪なんだ?」
「爆破っていう、個性を使用した結果の差が一目でわかる個性だからじゃない?」
「なるほど」
男鹿の疑問は緑谷が答えた。
クラスメイトの中にはソフトボール投げでは活かせない個性の者もいるからだ。
「死ねえ!!」
そんなわけで爆豪勝己、球威に爆風を乗せさらに気合の叫びを上げながら投球。
(((((・・・・・・・・・死ね?)))))
(気合入るよな)
(かっちゃんだなあ)
ヒーロー志望者らしかぬ掛け声にクラスメイト一同(石矢魔で慣れてる男鹿、爆豪に慣れてる緑谷を除く)は呆気にとられた。
結果は725.3メートル。
「まず、自分の【最大限】を知る。
それがヒーローの素地を形成する合理的手段」
個性使用の差は、個性を含めた本来の自分自身の力は圧倒的な違いがあった。
「なんだこれ!!すげー面白そう!!」
「個性思いっきり使えるんだ!!
さすがヒーロー科!!」
個性使用した上での結果にクラスメイト達は大はしゃぎとなり盛り上がる。
自分もアレができる。
そんな当たり前の喜びようだ。
「???」
だが男鹿辰巳はそのはしゃぐ理由が理解できずに首を傾げていた。
「・・・・・・面白そう、か」
そして、そんなはしゃぎぶりに反応するのは男鹿辰巳だけではなく理由は違うが担任である相澤消太もである。
命懸けの仕事を目指す第一歩から浮ついている学生達を引き締める為、彼は厳しい一言を、無理やり真剣になるような条件を告げる。
「よし、トータル成績最下位の者は見込み無しと判断し、除籍処分としよう」
その内容と重苦しい圧力秘めた瞳に生徒達は、ただ呑まれた。
生徒達の抗議を一蹴。
理不尽を覆すヒーローになるならば、与えられる苦難程度は越えてみせろと発破をかける。
こうして、個性把握テストは始まった。
果たして除籍となるのは誰なのか。
同時刻、雄英高校新年度入学式。
一般入試総合結果最優秀者である邦枝葵は一年首席として盤上で新入生代表挨拶を行っていた。
一年A組の不在に驚き、想い人に自分の晴れ姿を見てもらえなかったことに内心凹んでいたそうな。
補足・説明。
男鹿辰巳式勉強法。
ボコった不良にひたすら書く。
やらレギュラーなMK5なんかは書かれまくったせいで彼らの成績も上がったらしい。
今話は相澤先生登場からの個性把握テストとなります。まあ原作とは違い緑谷出久君が自力あるので原作とは違う結果ですが。身体能力強化は強い。
相澤先生がベル坊に猫耳カチューシャをつけてますが、赤ん坊がクラスに居ると知っているため他にも寝袋に色々用意しています。
ちなみに不良な男鹿辰巳に関して不満や嫌悪はありません。ある程度調べましたが、強さは申し分なく、性格や気質も問題なく、赤ん坊と一緒の方があらゆる面で良い結果になると判断しました。