ヒロぜバブ   作:規律式足

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 男鹿辰巳君はヒルダさん(通常時)の料理の腕前を知っているので、アパートでは彼が料理担当です。
 アパート暮らしが確定した時から必死に覚えたのでレシピを見ながら料理をできるようになりました。
 ただやはりメニュー選びに難があるので、ヒルダさんがメニュー決定→材料とレシピ用意→男鹿がレシピ見ながら調理、という流れになっています。
 偶に魔界産食材が混じってますが、それは回収後にアランドロンに提供しています。また邦枝葵さんが頻繁に差し入れしに通っています。
 
 ちなみに古市貴之君の場合は、家事をアランドロンが(フリフリエプロンを付けて)やっています。
 その格好でごみ捨てや買い物をするので近所から噂になっています。




第7話

 

 入学式とガイダンスをせすに個性把握体力テストを実施された雄英高校生活初日の次の日。

 時間は有限と言わんばかりにすぐに授業は始まり、午前は必修科目・英語などの他科と同じ内容を学ぶ。

 一部の授業は教員免許もつプロヒーローが担当するが、特に際立つものがなくその内容は普通。

 昼は、多くの学生がプロヒーローにして凄腕の料理人であるクックヒーロー・ランチラッシュが料理長を務める大食堂で食事をする。

 親元を離れ、一人暮らしになった学生にありがたい安価で量も多く美味い学生食堂だ。

 

「男鹿ちゃんはお弁当なのね」

 

「ベル坊にミルクやらねえといけねえし。あとアパートで過ごすヒルダの分も作ってるからよ」

 

 ベル坊に飲ますミルクを作る為にお湯はいるが、それは近場の給湯室で充分であった。また雄英生の大半が訪れる大食堂の食事時にマッパの赤ん坊を連れていくのは問題だろうと判断もしていた。

 

「自炊してるなんて偉いのね」

 

「しないと死ぬんだよ」

 

「フフ、オーバーなのね」

 

「いやヒルダ(通常時)は料理が駄目でよ、他は完璧なんだが」

 

 あの侍女悪魔は記憶喪失時は料理も完璧なのに通常時は駄目なのかは謎である。

 

「ベルちゃんにミルクを飲ませるの、やらせてもらえないかしら。弟妹が赤ん坊だった時のことを思い出すの」

 

「別にいいけどよ」

 

 数少ない弁当組である男鹿辰巳と蛙吹梅雨は教室にてこんな昼休憩の時間を過ごしていった。

 ただ、赤ん坊自体が珍しくまた赤ん坊にミルクを飲ませる、という行為に興味があるのか1ーAの教室をチラチラ覗き見る生徒がいた。

 そして1ーAの女子生徒と親しくしている男鹿辰巳を気にする邦枝葵と、自分も抱っこされてミルクを飲ませて欲しいと呟く峰田実の姿があったそうな。

 ちなみに緑谷出久は飯田天哉・麗日お茶子と、爆豪勝己は切島鋭児郎・瀬呂範太と大食堂に行った。ヒーローオタクである緑谷出久にとって雄英大食堂の昼メニューはいつか食べてみたい憧れの一品であったのだ。なお爆豪勝己は極辛麻婆豆腐にさらにマイデスソースをぶっかけて食事をともにした二人をドン引きさせた。

 緑谷出久と爆豪勝己は幼馴染であり、よく行動を共にするが食事など別行動することも割とあるのだ。

 

 午後の授業。

 緑谷出久を筆頭とした、ヒーローを志す者達が期待し楽しみにしていた授業【ヒーロー基礎学】。

 

「わーたーしーがー!!」

 

「来っ」

 

「普通にドアから来た!!」

 

 それは平和の象徴・No.1ヒーロー・オールマイトの登場から始まった。

 これを受けるためにヒーロー科のある学校に進学したと言っても過言ではないカリキュラム。

 ヒーローの素地をつくる為、様々な訓練を行うこの課目は、学校の規模・知名度・施設、勤める教師即ちプロヒーローにより天地の差がある。

 ざっくり言うと、野球場や部員寮がある野球部を抱える名門校と、体育倉庫の一部を部室にする一般高校ぐらい差があったりする。

 そんな中、街並みを再現し、生徒にコスチュームを支給し、オールマイトが教師を勤める雄英高校は当然【天】である。

 最上位のヒーロー育成校は伊達ではない。

 

「早速だが、今日はコレ!!

 戦闘訓練!!!」

 

 教室の壁が動き、個性届と要望に沿ってあつらえた戦闘服を配布される。

 これがヒーローへの第一歩。

 夢が形になったことに興奮する少年少女は大きく踏み出すのであった。

 

(とりあえずオールマイトをぶっ倒せばよいのかね)

 

 たった一人を除いて。

 

 

 

 戦闘服、ヒーローコスチューム。

 合理性のみを突き詰めたデザインのモノは希少で、大半は見栄え良く、本人の趣味嗜好・個性に沿ったモノである。

 またヒーローという職業が定着してから長い時が経った今では、憧れのヒーローをリスペクトしたデザインのモノもかなりある。

 そんな中、ヒーローにさほど関心のない男鹿辰巳はというと。

 

「「「「学ランじゃん」」」」

 

 石矢魔中学の制服をベースとした学ラン(というかまんま)である。

 

「なんで学ランなのたっくん」

 

「楽だし」

 

「相変わらず適当だなテメェ」

 

 幼馴染二人がいつもの男鹿辰巳に呆れるのだが、反応する者もいる。

 

「男鹿も烈怒頼雄斗(レッドライオット)をリスペクトしてんのか!?

 あの漢らしさが分かるやつがいてくれて嬉しいぜ」

 

 高校デビューマン、切島鋭児郎。

 硬化の個性持つ少年は同好の士を見つけた興奮から男鹿へと話しかけていた。

 烈怒頼雄斗(レッドライオット)。

 かつて名を馳せた漢気ヒーロー、まるで番長のような風貌の彼は切島鋭児郎にとって憧れの存在なのである。

 

「(誰のこと?)」

 

「(昔のヒーロー)」

 

 しかしそんな意図は一切ない男鹿は聞き覚えのないヒーロー名に、詳しいだろう爆豪勝己に訊ねた。

 

「(つうかデクに聞けよ)」

 

「(またブツブツ語られるだろ)」

 

 そういった知識面は緑谷出久にこそ訊ねるべきなので爆豪勝己もそう言ったが、彼の悪癖を知る男鹿辰巳にその選択はない。

 その流れに気がついた緑谷出久は、幼馴染に頼られないことにしょぼんとなっていた。

 

「始めようか有精卵共!!

 戦闘訓練のお時間だ!!!」

 

「ダ!!」

 

 しょぼんとはしていた緑谷出久だが気になる女の子の麗日お茶子のスタイルが強調されるパツパツスーツを見て、エロブドウ峰田実と共になんか元気になった。

 

「先生!ここは入試の演習場ですが、また市街地演習を行うのでしょうか!?」

 

 カッコイイぜ!!と若きヒーロー候補にコメントしたオールマイトに飯田天哉が尋ねる。

 入試の実技演習試験でもそうだったが、気になったらその場で質問できる物怖じしない性格である。

 

「いいや!もう二歩先に踏み込み!

 屋内での対人戦闘訓練さ!!」

 

 観衆集まるヴィラン退治は主に屋外であるが、実は屋内のほうが凶悪ヴィラン出現率は高い。

 だからこそソレを想定し、【ヴィラン組】と【ヒーロー組】に分かれて2対2(21人だから一組は3対2)の屋内戦を行う。

 

「基礎訓練もなしに?」

 

「その基礎を知る為の実践さ!!」

 

 その後も質問からの説明は続く。

 状況設定は、

「ヴィラン」がアジトに「核兵器」を隠していて、「ヒーロー」はそれを処理しようとしている。

「ヒーロー役」の勝利条件は制限時間内に「ヴィラン役」を捕まえるか、「核兵器」を回収する事(回収しましたボタンを押せば良し)。

「ヴィラン役」の勝利条件は制限時間まで「核兵器」を守るか、「ヒーローを捕まえる事」(捕縛テープを巻き付ければ良し)。

 

「コンビ及び対戦相手は、くじだ!」

 

「適当なのですか!?」

 

「一等を引き当ててやるぜ」

 

「ねえよ馬鹿」

 

 ス・・・・・・と取り出したくじの入った箱を見て反応する生真面目な飯田と馬鹿な男鹿。

 適当ではなく、現場で見知らぬヒーローと組む事を想定してのことなのだろう。

 

「Iか。一等だなコレ」

 

「アイ!!」

 

「よろしくね男鹿君、ベルちゃん」

 

「3人チームか、どっちでも有利だよな」

 

 男鹿辰巳はベル坊が引きたがったので引かせて見れば、一等と似た感じの【I】チーム。

 他のメンバーは、尻尾の個性で地味フェイスな道着姿の尾白猿夫、透明の個性で手袋ブーツのみの素顔は美少女スタイル宝満な葉隠透である。

 21人のクラスなので、一班だけ3人チームになるのだ。

 

「ヴィランチームは先に行ってセッティングを!5分後にヒーローチームが潜入してスタートする。

 他の皆はモニターで観戦だ!」

 

 初戦は、緑谷出久と麗日お茶子のAコンビがヒーロー役、爆豪勝己と飯田天哉のDコンビがヴィラン役である。

 

「幼馴染対決か、熱いぜ!!」

 

「男鹿も幼馴染なんだろ?

 どっちが勝つと思う?」

 

 まだ雄英生活二日目。

 けれど仲よさげに語り合う男鹿達の姿を知る者達が、そう問いかけた。

 

「あーー、幼馴染つっても小学校低学年までで、再会してからまだケンカしてねえから実力はわかんねえ」

 

「ケンカは駄目よ男鹿ちゃん」

 

 今の幼馴染の実力を男鹿辰巳はまだ知らない。

 だがヤンキーと喧嘩に明け暮れ、さらに悪魔やらハゲやらエリートやら悪魔憑きやら魔王との契約者との決戦を経験した以上、クラスメイトの中でも飛び抜けて強いことは分かる。

 それを踏まえた男鹿の予想は、

 

「会場がぶっ壊れるな」

 

「ダウ(ウンウン)」

 

「「「「そっちかよ!!」」」」

 

 演習会場であるヴィランのアジトのビル。

 

「いやいくらなんでもそれは・・・・・・」

 

「映画撮影用の脆いハリボテじゃねえんだよ」

 

 いくら個性があっても建物の破壊は普通はできない。しかし男鹿辰巳は再利用できないくらい破壊されることを確信していた。

 

「アイツラどんだけやるかなー(ワクワク)」

 

「うわぁ良い笑顔」

 

 その笑顔にクラスメイト達はドン引きした(恐れないだけ良い子達)。

 そして結果だが、

 屋内対人戦闘訓練開始十分。

 ヴィランアジト設定の5階建てビル一棟、一階及び二階がぶち抜かれたことで倒壊。

 原因は緑谷出久の全力パンチの衝撃と発射された爆豪勝己の爆破液を溜めた篭手の激突によるもの。

 両者は放った直後退避し、それぞれのコンビも連絡を受けていたので無事避難しといたので無傷である。

 演習勝敗は引き分け。

 ただ、身体能力を強化した緑谷出久の動きと爆破を応用した爆豪勝己の高速機動のぶつかり合いは圧巻。麗日お茶子と飯田天哉の戦いは飯田天哉の方が優勢であった。

 

「で、講評だけど、うん」

 

 君ら、やり過ぎ。

 ヴィラン確保、人質救助、ヒーロー活動の目的は様々だが、その過程でやり過ぎて周りに被害を出して借金地獄に陥るヒーローは実は結構いる(マウントレディとか)。

 幸いなことに怪我人はでなかったが、強い個性ほどそうなってしまうので、個性制御と判断力を身につけることが課題だと緑谷出久と爆豪勝己は告げられた。

 

 続いて、場所を移し第二戦。

 Bコンビ、轟焦凍・障子目蔵。

 Iコンビ、葉隠透・尾白猿夫・男鹿辰巳。

 Bコンビがヒーロー役でIコンビがヴィラン役である。

 

「尾白くん、男鹿くん、私ちょっと本気だすわ。手袋もブーツも脱ぐわ」

 

「んじゃ、さっさとめり込ませてくる」

 

「葉隠さん、透明人間としては正しい戦略だけど年頃の乙女としてやばいよ。男鹿はめり込ませるって何!?」

 

 2対3。

 数としてはヒーロー役が不利。

 尾白猿夫が核兵器の護衛、葉隠透が物陰に潜み奇襲、男鹿辰巳が真正面から襲撃と役割分担が可能だからだ。

 しかし、その数の利はBコンビには通用しない。障子目蔵、1ーA随一の巨漢である彼の個性は複製腕、触腕の先端に自身の身体を複製でき感知能力に秀でている。

 そして轟焦凍。

 

「向こうは防衛戦のつもりだろうが、俺には関係ない」

 

 推薦入学者にしてNo.2ヒーローエンデヴァーの息子である彼の半冷半燃はビル一棟を造作なく凍りつかせた。

 

「悪かったな、レベルが違い過ぎた」

 

 ビルごと冷凍し拘束。

 圧倒的な実力に余裕の態度で踏み込む轟。

 だが、

 

「フレイザードだああああ!!」

 

 ここには最強の馬鹿がいた。

 

「「あちゃあ」」

 

 モニタールームで幼馴染二人が頭を抱える中、目をキラキラさせた男鹿辰巳は寒さを忘れて轟に叫ぶ。

 

「フレイザード?誰だ?」

 

「凄えなオイ!!アレだ、フィンガーフレアボムズをやってくれよ!!」

 

「? いや炎を攻撃では使わねえ」

 

「ええ〜〜」

 

「なあ、男鹿?状況わかってるのか?」

 

「寒いよ、足の裏張り付いて痛いよ」

 

 コンビの抗議と呟きに男鹿はハッとなり、

 

「そんじゃ、この邪魔な氷をなんとかしないとな。ベル坊も寒がってるし」

 

「ダ〜〜(ブルブル)」

 

「この状況で何ができる」

 

 男鹿に馬鹿を見る目を向けた轟に対し、

 

「なんでもできるだろ」

 

 男鹿辰巳はいつも通りにニヤリと笑い、その握り締めた拳を思い切り床へと叩きつけた。

 衝撃。

 一拍遅れて、その一撃はビル全体を揺らし霜ごと冷気を吹き飛ばした。

 

「「「「「「「ハァッ???」」」」」」」

 

 拳一発でビルを覆う氷は砕け散りダイヤモンドダストとなりキラキラと光を反射し降り注ぐ。

 

「なっ!?」

 

 桁外れのパワーで状況を一変させる。

 それはまるでパンチ一つで雲すら掻き消すオールマイトのようであった。

 

「さあ、ケンカしようぜフレイザード」

 

 俺のアバンストラッシュを見せてやる。

 魔王の親。

 最強の契約者。

 子連れオーガ。

 石矢魔のデーモン。

 男鹿辰巳はそう言って獰猛に笑った。

 まさしく魔王のように。

 

 が、

 

『ヒーローチームWIN!!』

 

 勝敗は決した。

 

「え?」

 

 なんでやねんと男鹿が後ろを振り向けば、そこには凍りつき固定されパンチの衝撃をモロに受けた核兵器(のハリボテ)がぶっ壊れていた。

 

「あっ」

 

「「「「「「「「アホーーーー!!」」」」」」」」

 

 ヴィラン役は核兵器を守らないといけない。

 自分で壊すアホがここに居た。

 

「・・・・・・・・・・・・さ、とにかくケンカだ」

 

「駄目だから」

 

「これヒーロー側もアウトじゃない?」

 

「回収できてねえしな」

 

 なんともスッキリしない決着に誰もがげんなりとするのであった。

 

(男鹿辰巳か。

 大したことないと思ったが、実際にやり合ったら勝てるか?)

 

 轟焦凍。

 幼少期からの英才教育により突き抜けた実力をもつヒーロー候補。

 それゆえ同級生など眼中に無かったが、男鹿辰巳という桁違いの存在に興味を持つのであった。

 

 

 

「お疲れさん!!」

 

 その後授業は終わり、解散。

 ヒーロー基礎学初日は無事終了したのであった。

 皆が真摯に取り組んだ授業。

 その中で飛び抜けた実力ある者達がその存在を目立たせて。

 

「次は俺とやんぞ辰巳ィ!!」

 

「いいや僕とだよたっくん!!」

 

「ケンカしようぜ」

 

「だからケンカじゃねえから」

 

「魂まで不良だよな男鹿」

 

 そうして雄英高校の日々はまた一日過ぎてゆく。

 

 

 





 補足・説明。
 
 今話はヒーロー基礎学の話です。
 少し詰め込み過ぎましたが、だいたい原作のままかなと。
 ただ、強化緑谷出久君と軟かっちゃんにより原作のような喧嘩にはならずライバルとして戦い、ビルを倒壊させました。
 この二人、現時点でかなり強めです。
 男鹿辰巳ですが、葉隠ちゃん達と同じコンビで轟君を驚かせ、負けました。
 彼は現段階で本気だしたらギガントマキアを撃退できます。
 轟君には興味を持たれました、まあ最初から「赤ん坊を肩車してる父親」の時点で気にしてはいましたが。
 ちなみにベル坊は葉隠透ちゃんを全裸認識です。
 
 
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