【完結】銀魂 銀狼篇 ~白夜叉鎮魂歌~   作:春風駘蕩

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お久しぶりです。
ストックがかなりできたのでようやく投稿していけます。


第二幕 地
第九訓 新メンバーはいつの間にか違和感がなくなっていく


 早朝。

 淡い朝日の光が窓から差し込み、室内を照らす。

 それに当てられ、布団にくるまっていた男は、獣のような唸り声をあげた。

「ん―…」

 また布団を深くかぶりなおし、光を避ける銀時。

 再び微睡(まどろみ)の中に誘われようとした、その時。

 ガラっ、と戸が開けられたかと思うと、銀時の布団がむんずと掴まれ。

 

「起きろコルァァァ!!」

 

 威勢のいい声とともに、思いっきり布団ごと吹っ飛ばされた。

「んごォォ!?」

 奇声を発した銀時は、目を剥きながら飛び、壁に激突した。

「いででで……、何しやがんだテメーコルァ!!」

 打った頭をさすりながら、銀時は犯人を睨みつける。

「アンタがあんまりに起きねーから、強硬手段に出たまでの事よ」

 腰に手を当て、銀時を見下ろしながら、黒羽はそう言った。

 対する銀時は、言葉を失くした。目の前にいるのは、動きやすそうな丈の短い着物をたくし上げ、割烹着と三角巾をつけた戦友の忘れ形見だったからだ。

「てめっ…何でここに!?」

「あーあーだらしねー寝方しやがって。雑誌もまだ捨ててねーのかよ」

 銀時を無視し、黒羽はてきぱきと布団を片付け始めた。妙に手馴れている。

「聞けよオイ! 何しに来たんだっつってんの!!」

「おう、しばらくここに世話になるぜ。よろしく」

「はあ!?」

 せっせと雑誌を束ねて縛る黒羽に、銀時は思わず声をあげる。

「昨日、あの後バーサンに許してもらってな、ここで住み込みで働くことになった」

「何でそこでバーさん!? 普通俺に聞くことじゃないの!?」

「あと、ついでに伝言」

 そう言って、黒羽は一枚の手紙を見せた。

『銀時へ

 せいぜいしっかり面倒見てもらいな。

 アンタよりも遥かに優秀だろうよ。

 PS 黒羽へ

    そのバカの手綱は任せたよ。

                  お登勢』

「ババア何してくれてんだぁぁぁ!?」

 手紙を破り散らして、銀時はシャウトした。

「オーナーガン無視して勝手に話進めてんじゃねーよ!! 何なの!? 俺ってお前らにとって何なの!?」

「朝飯、できてるぞー。早く食え―」

 あくまで自分のペースに持っていく黒羽に、銀時は不機嫌そうに目を向け、嘆息する。面倒くさくなってきた。

「つーか飯っつったってロクなもん残ってな……」

 そう言って、テーブルの上を見ると。

 

 白飯にわかめ味噌汁。その他数種のおかずが並んだ完璧な朝食が用意されていた。

 

「……い?」

 固まった銀時が目を瞬かせる。

 そんな彼をよそに、黒羽は押入れを開けて、某ネコ型ロボットよろしく中で寝ている神楽を揺り起した。

「オイ、神楽。朝飯だぞー」

「ん――…」

 布団の中から、不機嫌そうな声が返ってきた。

 神楽は目をこすりながら、気だるげな半目で黒羽を睨みつけた。

「何アルか銀ちゃん…。今日に限ってこんな早く……」

 と、そこで、違和感を感じて寝ぼけ眼のまま黒羽を見つめた。

「アレ…? 銀ちゃんなんか縮んだアルか?」

「いつまで寝惚けてんだよ。いい加減オレだって気付け」

 黒羽はため息をつくと、ハンカチを取り出して神楽の目やにを取ってやる。神楽は始めは抵抗していたが、そのうちされるがままになった。

「お前も女の子なんだからさ、身だしなみはちゃんとしねーとな」

「う―…」

 そう言って、黒羽が離れると、神楽はぐしぐしと目をこすり、改めて黒羽に気付き、思わず凝視した。

「…………」

 そして、改めて驚いた。

「うぉっ、なんで黒羽がいるネ!?」

「遅いわ!!」

 鈍い神楽に、思わず突っ込む黒羽。

 あきれてため息をつくと、黒羽は濡れたタオルを神楽の頭にのせ、わしゃわしゃと拭き始めた。当然、神楽は抵抗した。

「わぷっ! 何するアルか!! やめろヨ!!」

「我慢しろ。お前寝癖だらけだぞ? オレとは違って、真っ直ぐで綺麗な髪なんだから、大事にしろよ」

 そう言われて、神楽は急にしおらしくなり、大人しく髪を預けた。

 黒羽は微笑みながら髪をまっすぐにさせると、ソファに神楽を座らせて、優しく髪をブラシでといてやった。心なしか、黒羽の目が聖母のように慈愛にあふれている。

「髪は女の命ってな。手入れはちゃんとしないと」

「……ウン」

 そう返す神楽の頬は赤く、手はひざの上で握られていて、明らかに照れていた。普段の彼女からは想像もできない姿だ。

 ―――………何コレ。

 朝のそんな光景を目にし、銀時は固まっていた。

 ―――え、何コレ。ねェ?

    何で普通に馴染んでんのコイツ、ねェ?

「いただきますヨー」と神楽は手を合わせ、朝食にかぶりついた。茶碗の中身をかきこみ、焼き魚にかぶりつく。「むほっ」と喜びにむせ返った。

「おかわりアル!!」

「はいはい」

 黒羽は苦笑しながら、突きだされた茶碗にご飯をよそってやる。その手慣れた所帯感は妙に似合っていた。

 銀時も椅子に座り、用意された食事に口をつける。

「…………」

 美味かった。超美味かった。

 銀時は引きつった顔で、黙るしかなかった。

 ―――…ヤバい。何コレ。

    なんであいつこんな家事能力高っけーの?

    なんで当たり前のように万事屋に馴染んでこれんの?

    ぐいぐい入ってこれてんの?

 ピクピク頬を震わせる銀時。そして喜ぶ神楽。

 そんな中、今と廊下をつなぐ戸が開かれ、新八が顔を出した。

「おはようございまーす」

「おう、おはよ。新八」

 明るい声で、黒羽が応じた。

「えっ?」

 新八は瞬きし、次いで驚愕の表情を浮かべた。

「ええええ!? くっ、黒羽ちゃんなんでっ…」

「あ、ちょっと待った」

 黒羽はそう言って立ち上がると、新八の前に駆け寄る。ビクンッと固まる新八の襟に手をかけ、乱れていたそれを直してやった。

「襟、曲がってるよ」

「あっ……、スイマセン」

 新八は硬直から解け、赤くなりながら頭をかいた。

 ニコニコする黒羽を凝視しながら、銀時は顔をひきつらせた。

 ―――俺の意志とか関係なく、受け入れ作業始まってるぅぅぅぅぅ!!

 銀時は冷や汗を流しながら、心の中でシャウトした。

 ―――こっ…このガキ、一部の隙も見せず万事屋の懐に入り込み、

    瞬く間にメンバーの心を掴んでいきやがった!!

    神楽はその要たる胃袋を掌握し、尊敬の意さえも手にし、

    新八は童貞という弱点に付け込み、純情を弄ぶ!!

 目を剥く銀時の目線の先では、定春の排泄に慌てて新聞紙を用意している黒羽の姿がある。

 間に合って定春を撫でるその顔は、笑顔にあふれていた。

 ―――今でこそ無邪気に笑ってやがるが、俺にはもうただの小娘には見えねぇ……!

    ババアですら陥落させたあの笑顔、ただのガキじゃねェ!!

   〝楊貴妃〟……。

    数多の帝の心を奪い、寵愛を勝ち取った悪女!!

 銀時は知らないうちに、ゴクリと唾を飲み込んだ。

 ―――伏のヤツ、トんでもねー奴を忘れ形見に置いていきやがった。 

    ……どうすればいい……。

    このままじゃ万事屋は、この小娘に乗っ取られる……!!

    俺は……、どうすりゃ……!!

 汗を垂らし、思考の渦に陥る銀時。

 その時だった。

「はい、銀さんコレ」

 コトン。

 黒羽が、銀時の前に何かを置いた。

「…………」

 銀時は目を瞬かせ、ソレを見つめた。

 銀のアルミの容器に、プルプルした黄色っぽいものが入っている。横に置かれているのは、同じく銀のスプーンだ。

「……あのー、黒羽ちゃん? なにコレ」

 銀時が聞くと、黒羽は割烹着を外しながら答える。

「プリン。いい感じに腐る直前の卵があったし、ちょうどよかったから作ってみた」

 割烹着をたたみ、黒羽は前かがみになって銀時の顔を覗き込む。

 どこか、悪戯っぽい表情で、黒羽は言う。

「甘いものはオレも好きだからな。欲しくなったら、いつだって作ってやるよ」

 その言葉は、銀時にとって麻薬だった。

 そこに、新八と神楽、定春が近づく。三人と一匹は互いの顔を見合わせ。

 そして、落ちた。

 

「今後ともぜひよろしくお願いします」

 

 全員が見事な土下座で応え、黒羽のメンバー入りが決定したのだった。

 もう、好きにしてくれ、と。




「三年~Z組~」
「銀八先生~!!」

教卓の向こうから、気だるげな声で号令をかけ、銀八が顔をあげた。
「…うーし。今日は転校生を紹介しまーす」
銀八の合図で、銀髪の小柄な少女が礼をした。
「乾 黒羽です。よろしくおねがいします」
その瞬間、Z組から一瞬で音が消え、その直後には銀八に向かって大量にいろんなものが投げつけられた。
「オイぃぃぃ!! おまっ……、いつどこで作ってきたそんなでっけぇガキぃぃぃ!?」
「イヤァァァァ!! 私との関係は遊びだったんですか先生ぇぇ!!」
「イダダダダ違うから!! なんでこのコーナーが始まってすぐ学級崩壊起こるような不祥事カミングアウトすんだよ!!」
銀八は生徒たちをなだめ、席につかせる。
「えー、黒羽さんは俺の昔の友人の娘さんで~。お母さんの仕事の都合でこの学校にやって来ましたー。みんな、仲良くするように。…んじゃ、次にもう一人転校生を紹介しま~す」
銀八が顔を向けると、生徒たちも同じ方向を向いた。するとそこにいたのは。

「転校生のオートバジン君だ」

ジャキィィィン、という擬音がつきそうな様子でたたずむ、制服をピッチピチに着たロボットだった。
「どんな高校生だぁぁぁぁぁぁ!!」
生徒たちの叫びを聞きながら、新八はボソリと呟く。
「……………転校しよう」
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