【完結】銀魂 銀狼篇 ~白夜叉鎮魂歌~   作:春風駘蕩

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第十六訓 縁の下のサブキャラ

[―――全宇宙の人民に告ぐ]

 その日、世界はすべての電波をジャックされた。

 テレビも、ラジオも、携帯電話まで、多くの電子機器が乗っ取られ、その画面に白衣の男が映し出された。

[我々はスマートブレイン社改め、独立国家ビースタルの者である。我々は全宇宙に対し、惑星間平和同盟からの脱退を宣言する]

 その宣言は、人々に動揺を与えた。

 平和条約とは、簡単に言えば惑星間における戦争行為を禁止するということ。

 そして、今それを抜けると告げたということは。

[同時に、我々は平和同盟惑星に向け、宣戦布告する]

 全宇宙に、喧嘩を売るということ。

 惑星アニマは、全ての世界を敵に回したのだ。

 放送は、地球上の誰もが目にしていた。浪人も、攘夷志士も、ホストもキャバ嬢も、オカマやヤクザまでも、誰もが画面を見つめていた。

[降伏の意志を示すならば、相応の待遇を検討する。抵抗する者は、武力をもって征圧する。(ふる)き人間が世界を統べる時代は終わった。……これよりは我ら進化した人間、オルフェノクが世界を支配する時代である―――]

 世界が、動く。

 アニマは、自ら世界を変える波紋となったのだ。

 

 *

 

 黒く暗い宇宙(うみ)に浮かぶ、砂の星。

 アニマの姿を眺めながら、ある宇宙船の中で一人の男が口を開いた。

「…連中も、随分思い切ったことをしたのう、まさか全宇宙に喧嘩を売るとは」

「感心しちゅう場合か」

 愉快そうに笑うモジャモジャの髪の男の隣で、編笠をかぶった女が言った。

 男は笑顔のまま、振り返って黒いグラサンに覆われた目を後ろの者に向けた。

兎姫(とき)さん、お前さんの言った通りになってしもうたのう」

「……仕方ありません。起こってしまったことは」

 そこに控えていたのは、番傘を腰に下げ、白いチャイナドレスを着た、頭から長い垂耳が生えた背の高い女だ。肌は透き通るほど白く、切れ長の瞳は黄金のように輝いていた。

「しかし、お前から商談持ち込んでくるとは思わんかったぜよ。どういう風の吹き回しじゃ?」

 グラサンの男は、面白そうな表情で入口にいるもう一人の男の方を向いた。

「……大した理由じゃねーよ」

 ふぅっ、と煙管の煙を吐き、隻眼の男は言った。

「上からの命令と、うちのバカ提督。…そして何より、俺の利害が一致したってだけだ。気に入らねェんだよ、やつらは」

「ガッハハハハハ!! 相変わらずじゃのぅ!! まっこと変わらん!!」

 豪快に笑ってから、グラサンの男は砂の星を再び見つめた。

「さーて……、始めるかのう。一世一代の大商いを」

 

 *

 

 翌日。

 港は、黒服と白服の男たちの姿が多くみられた。

 波に揺られる船に、武器を収納した木箱を積み込んでいく。ただ問題なのは、二つの組織が常に睨みあいながら仕事しているということだった。

「…あの、土方さん。どういう事ですか?」

 荷を運ぶ船とは別の、小型の宇宙船の船倉で、新八が口を開いた。

 土方は煙草をふかし、不機嫌そうに言う。

「件の祭り会場襲撃、あれがアニマの連中の手によるものだと判明した。幕府は他惑星と連携し、殲滅のための先発隊を出すこととなった」

「…で、不本意ながら我々が協力することとなったのです」

 土方の後を、佐々木が引き継ぐ。その隣の信女は、黙ったままだ。

 両者とも、かなりいやそうに見えた。

「…いや、それは分かりましたけど……」

 新八は言ってから、自分の手を見下ろす。隣の神楽も同じだ。

「……なんスか、コレ?」

 その手は、手錠で繋がれていた。

 土方は目を閉じて言う。

「あの黒羽とかいうガキが使っていた武装は、例の戦闘集団のものと酷似していた。奴らとの関係が明らかにできない以上テメーらをしょっ引くのは当然だろが」

「いやふざけんなコラァァァァ!!」

 額に青筋を立てて、神楽は目を剥きながら怒鳴った。

「どんな暴君論!? 冤罪にもほどがあるヨ!!」

「土方さん、あなたも見たでしょう? 黒羽ちゃんはあの集団に襲われていたんですよ? 関係なんて明らかのはずです」

「…………納得しねー連中がいるんだよ」

 険しい表情の土方に、新八は眉を寄せた。

「? どういう事ですか?」

「…アニマの動向は、前々から問題視されていたようでな。奴らに目をつけられた星のテロリストを地球人がかくまっていたとなりゃ、俺たちの地位は一気に落ち、奴らからの支配は免れなくなる」

 奴ら。その言葉で、新八は理解した。全ての状況が、誰にどのような判断を下させることとなるのか。

「……天導衆」

 新八が呟くと、土方と佐々木は無言を返す。肯定の意だった。

「…土方さん。あなたが僕らを拘束し、ここへ連れてきたのは、僕らを守るため……?」

「それだけではありません」

 新八の呟きを佐々木が遮り、

「現在幕府は判断を渋り、直接的な干渉ができない状態です。…そのため、早急に現地へ向かい、彼らの動向を探る必要があるのですよ」

「……それを、僕らが」

 新八は冷や汗を流し、唾を呑みこんだ。

 この二人は、新八たちを密偵として敵地に忍び込めと言っているのだ。行動を探り、情報を味方に送る。監察の山崎も、何度も死にかけているほどの危険な任務。

「お二人には、監視という名目で信女さんをつけましょう。…正直、現時点において地球でもアニマでも動ける人間が見つからないんです」

 佐々木は無表情のまま、そう告げる。

 新八は迷った。確かに、理屈はわかるし、行方の知れない銀時や黒羽の情報もつかめるかもしれない。

 だが、あまりにも危険すぎる。最悪、死ぬかもしれない。

 その時。

「分かったアル」

 一人の少女が、そう答えた。

 四人は驚いて、神楽を凝視した。

「…私、まだ黒羽に言ってないことあるヨ。大事なこと、まだ言えてないヨ。今行かなかったら、死ぬほど後悔すると思うネ」

 神楽は決死の表情で、四人を見つめる。

 新八の、神楽を見つめる目が揺らぐ。そして、振り向いた時には、神楽と同じ表情をしていた。

 土方はフッと鼻で笑い、タバコの火を灰皿で消す。

「…出向は明日の朝二時だ。頼むぞ」

 そう言い残され、新八はハァ、吐息をつく。

 そこへ、信目が目を向けた。

「…一つだけ、言っておくことがある」

「え?」

 話しかけてくるなんて珍しいな、と思っていた新八。すると信女はいきなり刀を抜き、刃を向けてきた。

「……余計なことしたら、斬るから」

「…………」

 黙る新八の背に、嫌なものが流れる。

 震える新八は、ゆっくりと土方と佐々木、神楽の方を向いた。

「…佐々木さん、チェンジお願いします」

 男二人と少女は、黙って目をそらした。

 

 *

 

 時代が、動く。

 いくつもの思いと陰謀を抱き、人々は、砂の星へと向かう。

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