第一訓 最終話にはだいたい主人公は大人になっちゃってる
――――銀魂、もう一つの
画面にいくつもの映像が流れていく。
交わされたいくつもの言葉の数々。
刻まれた戦いの記憶。
そして、紡がれてきた物語……。
その全てが、走馬灯のように駆け抜けては、消えていく。
――――連載開始から10年。
すべての因縁に、終止符が打たれる。
銀時と高杉の最期の戦いから15年――。
時代はついに、明治へと移る。
しかし、変革を迎えた世界に、過去の亡霊の魔の手が迫る!
「墨田 官兵衛だと……!?」
――――最凶の軍師、現る。
「俺からすべてを奪ったこの世界を、俺が変えてやる!!」
その世界に、白夜叉はいない。
残された者たちが抱く、それぞれの想い。
「今度はぼくらが、僕らで護る!!」
「私は待ち続けるネ。どんなになっても、あのバカの事だけは」
「何度でも汚すわ、あの人の世界を、護るためなら」
「きっと帰ってくるって、信じてるから」
「死ぬかもしんねェ。だが…、
「俺が俺でなくなんのだけは、ごめんでさぁ」
「このクソ長ぇ人生で、お前に会えてよかったよ」
「俺が護らねェで、誰が護んだよ」
――――そして、受け継がれる
「行くぜ、親父」
銀の髪をなびかせ、若き鬼は戦場へと立つ。
――――誰も知らない〝銀魂〟を、見届けろ。
今、原作のその先へ―――!
劇場版・銀魂 次代編
~
*
暗い、スタジオの隅で、一人の男がモニターを見ていた。
「……よし、来週から銀魂、こんな感じでいってみっか」
「「いけるかァァァァァ!!」」
ドガシャァァァン
と、メガネの青年と赤いチャイナドレスの少女のツッコミが男の後頭部に決まり、男の顔面がモニターにめり込んだ。
「いい加減にしろよ! どんだけ同じ過ち繰り返しゃ気がすむんだよ!! どんだけ映画やるやる詐欺やりゃ気がすむんだよ!!」
青年のツッコミを受けながら、銀時はのっそりと起き上がった。
「しょうがねーだろ。アニメ銀魂も終わっちゃったし、こっから銀魂盛り上げるためにはこんぐらい盛っとかねーと読者釣られねーだろ」
「盛るっていうか、乗っかってるだけだよね!? 明らかにあれNAR●TOだよね!? NAR●TOの劇場版のアレだよね!?」
「この
「僕らどんだけ華の無い漫画ァァァァ!?」
容赦のない現実に打ちのめされ、ツッコミ眼鏡こと新八は天を仰いだ。
「つーかなんだヨ、最後のアレ。次代ってそういう意味か。どこぞの行きずりの女と作ったガキにすべてを押し付けるつもりか」
半目で、チャイナ少女・神楽が銀時を睨む。。
「下ネタという汚れを祓うためには、今あるこの世界をぶっ壊して、次の世代が新しい世界を想像していくしかねーんだよ」
「言ってることただのテロリストじゃねーか!!」
頭を抱えて、新八はシャウトする。
「僕らここ来たのは、お通ちゃん主演の映画の撮影の手伝いでしょうが! なんで銀魂のPV造ろうとしてんの!!」
ぶつくさぼやきながらも、銀時はのっそりと立ち上がってセットに向かった。
「つっても何よこの映画。『カピバラのいうとおり』だっけ『リア獣』だっけ? 完全にどこぞに乗っかったパロディだろーが」
「違いますよ! 『トラサンの偽証』っていう、れっきとしたミステリーですよ!!」
「パクリって意味では同じだろうが!!」
猛然と言い返す新八に突っ込みかえす銀時。
適当な影を見つけて、渡された衣装に着替える。
新八と神楽は学生服。銀時はメガネに白衣と下駄。そして煙を上げているレロレロキャンディだ。
「…つーか見たことあんだけどこのカッコ。明らかに銀八先生じゃね?」
文句を垂らしながら、指示された位置につく。細かいチェックを受けてから、無理矢理詰め込まれたセリフをぼんやりと思いだす。
「本番、よ-い!」
監督が、メガホンを片手に声をふるう。
そのまま「スタート!」と言い切る直前、バキンという嫌な音が聞こえた。
「お……?」
思わず、その場にいた全員が不安気な顔で辺りを見渡した。
銀時も例外なく、眉をひそめた。
「おいおい何? 新手のドッキリか………ん?」
と、呟いた銀時の頭上が、突然影で覆われた。
「ん」
つられて視線を上げると、
巨大なライトが落下してきているのが見えた。
「ぎゃあああああああ!!」
間一髪、銀時は悲鳴を上げて横っ飛びし、最悪の事態を回避した。
落下の衝撃で、ガラスの破片が飛び散り、甲高い音を立てた。
銀時は頬を引くつかせながら起き上がり、惨状を見下ろした。
「オイぃぃ!! ミステリーっつーか、ただの火サス行くとこだったぞおい!!」
「万事屋さん、大丈夫か!?」
「大丈夫じゃねーよ、点検ぐらいちゃんとしやがれバカヤローコノヤロー!!」
駆け寄ってきた監督とスタッフに怒鳴り返し、銀時は伊達眼鏡を投げ捨てた。
「バカヤロー新入りテメー! もう少しで大惨事になるとこだったろーが!!」
「すっ、すんません! …でも、今朝確認した時はちゃんとしてて……」
「じゃあ、誰のせいだってんだ!?」
「か…監督、あれ!!」
怒鳴る監督に、別のスタッフが呼びかけ、頭上を指さした。
天井に張り巡らされたコードと、その操作のための通路。
その通路のうちの一つの上から、フードをかぶった何者かが見下ろしていた。
黒い服で身を隠したその人物は、真下の人々が見上げてきたのに気がついて、慌てて逃げ出した。
「あっ! てめっ、待ちやがれ!!」
銀時はすかさず、汚れた白衣を投げ捨ててそいつを追った。
*
不審な影は通路から飛び降りると、恐るべき身軽さでスタジオを飛び出していった。
銀時は必死の形相で、逃げていく犯人に追いすがる。途中にいたスタッフや役者たちに手間取りながら、決して逃がすものかとその背中を睨みつけた。
すると、犯人は急に方向転換すると、そこにあった鉄製の重い扉を開けてその中に侵入した。
銀時も扉が閉まる前に辿りつき、その奥へ急いだ。
バン、としまった扉には、〝ボイラー室〟とあった。
太いパイプがいくつも伸びる、温い空間を、犯人と銀時は駆けまわる。
銀時は怒りと疲労で汗だくになりながら、全力疾走を続ける。
ふと、犯人が首だけをこちらに向けて、にやりとフードの下で笑った。
「!?」
思わず眉をひそめたその時、銀時は微かに、どこかから女の悲鳴を聞いた。
「……ぅぁぁぁああああ!!」
そして次の瞬間、銀時の顔面に何かやわらかくて白いものが覆いかぶさり、そのまま仰向けに押し倒された。
「ぶごを!?」
銀時は後頭部を激しく打ち付け、白目を剥いて悶絶した。
犯人は一度立ち止まり、あざ笑うように口元をゆがめる。すると、入口の方から人の声がする。犯人は慌ててその場から音もなく立ち去った。
ボイラー室に、銀時とそれだけが残された。
ややあってから、騒がしく叫びながら、新八と神楽が合流した。
「銀ちゃんんん!!」
「大丈夫ですか、銀さっ…」
心配そうな声で、オーナーのもとに走る。
そして彼の姿をとらえると、次には彼らの表情が固まった。
仰向けになって倒れる銀時。
その上に、黒と白で彩られた衣服を身にまとった若者が覆いかぶさっている。さらに二人は、69のように上下反対向きに向かい合って重なっていて、なんかこう、ナニしてるようにしか見えないのだった。
「おいィィィィ!! 人が心配してる時に何やっとんじゃああああ!!」
「どこだろうとお構いなしか、このサカリ犬がァァァ!!」
目を剥いた新八と神楽が吠えた。すぐさま銀時は起き上がった。
「んなわけあるかァァァ!! 上から落ちてきたんだよ!! つーかテメーも早くどきやがれクソガキ、重いんだよ!!」
くらぁっ、と吠えかえした銀時は、乗っかっている若者の尻を遠慮なく掴んで押しのけようとした。その時。
「ひゃっ!?」
思いもよらないかわいらしい声が聞こえて、固まる銀時。その顔面に、今度は突然鋭い蹴りが叩き込まれた。
「え……、ぶっ!?」
鼻血を吹き出して倒れる銀時。
すらりとした足を延ばし、若者は後ずさって、倒れた銀時から離れた。
見ると、帽子を深くかぶっていて、表情は見えない。だが唇が震えているのが分かった。
「てっ、てめェ! 乙女の軟尻に気安く触りやがって……!!」
それを聞いて、新八はなるほどと頷いた。そうか、女の子だったのか。
―――これは……、銀さんの自業自得だな。
すると、銀時は鼻を押さえながら起き上がり、娘を睨み返した。
「なにが乙女だクソガキ!! どこぞの螺旋丸みてぇな声しやがって!! 妙木山でグロ料理堪能してろ!!」
今度は娘のこめかみに青筋が立った。
「うるせぇぇ!! どっかの金ピカコウモリみてーなアンタに言われたかないわ!! アンタは一生ベルトにぶら下がってろ!! 笛吹いてろ!!」
「ゴールの前で陣取ってろ!! ゴッドハンド不発しろ!!」
「そのまま果てろ! 極太のバナナに貫かれて果てろ!!」
「あんたら何の話してんの!?」
売り言葉に買い言葉。白熱した二人の口論には、新八のツッコミも届かなかった。
「だいたい乙女の聖域侵しやがったアンタに発言権はねーんだよ!! 口開くな、呼吸すんな、モジャモジャ、天然パーマ!!」
「天パで何が悪いんだ!? つーかおめーも天パだろーが!! はみ出てんの見えてんだよ!!」
その言葉で、娘の怒りが頂点に達した。
「天パじゃねェ、くせっ毛だァァァァァァァァ!!」
勢いのまま、自分の頭から帽子をむしり取る。
その瞬間、彼女の頭部から明らかに毛ではない何かが、立ち上がった。
「……え?」
ボイラーが駆動し、ぬるい風を吹かせる。
弱風にあおられて揺れる銀糸の髪が、銀時たちの目を奪った。
灯りの下に照らされた、整った顔立ち。すっと伸びた鼻と、大きめの金色の目が、絶妙な位置で配分されている。
何よりも目を引くのが、短めで若干丸まった銀の髪。そして、その上に生えた二つの三角形の耳。
美少女と言って良い娘に、銀時たちは凍りついた。…別の理由で。
「……え」
「……ちょ」
ヒクヒクと頬がひきつる。脂汗がしたたり落ちる。
なぜなら、銀髪と天パ。この二つを兼ね備えた二人の人間が、出会ってしまったのだから。
「えっ……え"え"え"え"え"え"え"え"え"え"え"え"え"え"!?」
その叫び声は、江戸中に届きそうなほどだったという。
NARUTOは今が旬、と思って投稿しました。