【完結】銀魂 銀狼篇 ~白夜叉鎮魂歌~   作:春風駘蕩

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第二十訓 見た目と中身が合わないこともある

 オオオオオオオオ!!

 砂の星を、無数の灰色の怪物の歓声が包む。

 街の中心に一人の男、社長にして総帥たるロズワが立ち、演説を行っているのだ。

[―――時は来た!! 闇に生きてきた我が同胞たちよ!!]

 歓声とともに、スピーカーによる大声が轟く。

 ロズワの傍には、竜と百足の異形、ラッキークローバーの二人が控え、その周囲を例のボディスーツを纏った武装兵たちが守る。

[我らはこの力を恐れられ、これまで歴史より葬られ続けてきた。だが、もうそんな時代は終わりを告げる!! 全てを破壊し、全てを手に入れる準備はできた!! 我らを虐げてきた下等生物共に、牙をむく時が来たのだ!!]

 その瞬間、ロズワの姿が歪み、白い異形へと変貌する。

 その姿は、他のオルフェノクとは一線を画す、悪魔のような姿だった。

 天を仰ぎ、ロズワ―――ローズオルフェノクは吠えた。

[我らこそ至高の種族、オルフェノクだ!!]

 一際大きい歓声が響き渡る。

 それと同時に、動く影の姿があった。

 町の陰を駆け、集っていく影たちに向けて、トラの耳の男は、無線を繋げた。

「…始めろ」

 その瞬間、ビースタルのいたるところで、赤い火が爆ぜた。

 ドゥゥゥン!!

 衝撃と轟音が駆け抜け、大地が揺れた。

「敵襲ぅぅぅぅぅぅ!!」

 誰かが叫ぶ。

 一時混乱した兵士たちは、突貫してきた反乱軍の進撃に出遅れた。

 怒号を上げて、ぶつかり合う両者。力の差はあれど、奇襲により反乱軍に若干軍配があがり、戦況は均衡した。

 人間と進化した人間(オルフェノク)

 決して相容れない二つの存在が、ついに激突した。 

 

 爆ぜる炎、交わる剣戟、轟く怒号。

 カクサは建物の陰から戦況を見やり、新八たちの方を振り向いた。

「……本部に侵入した後、四班に分かれる。その後は言った通りだ」

 カクサがそういうと、クレイと巽が頷き、騏場が「分かった」と答えた。

 すると、巽が緊張した表情の新八に気付いた。

「どーしたよ坊主。戦争は初めてか?」

「……紛い物なら、何度か。でも、内乱に参加したのは初めてですかね」

 言ってはみたものの、そう言った事件の時には基本逃げ回っていた。主に紅桜編とか星海坊主編とか真選組動乱編とか。

 考えてみたら結構死にかけてるな、と思いつつ、新八はゴクリとつばを飲み込む。

 巽はそんな新八の肩を叩く。

「……すまんな、うちの頭が無理言って」

「い、いえ……」

 巽は新八の前に出て、戦況を見やりながら言う。

「野郎も、昔はもっと素直な良い奴だったんだがな……。先生が俺たちを置いていってから、野郎もこの星も変わっちまった」

「先生?」

「伏のことサ」

 新八の疑問の声に、ネズミが答えた。

「…オイラ達はみんな、伏の教え子なんだヨ」

 目を見開く新八に、巽がまた目を口を開く。

「あの人がまだスマートブレインにいた頃、あの人はしょっちゅう抜け出して、孤児だった俺たちに勉学を教えてくれてな……、あいつは、その中でも特になついていた。そのせいか、逃げ出したことにかなりショックを受けてな。その原因かもしれない黒羽ちゃんには、どうしても辛く当たっちまって……」

「巽……」

 肩をすくめて話していた巽に、凍えるような低い声が届いた。

 ギロリと射殺しそうな目で睨んでくるカクサに、巽は「怖い怖い」と首を振った。

 カクサが前を向くのと同時に、新八が再び口を開く。

「…じゃあ、みなさんが戦うのって……」

「…ああ。俺はともかく、あいつは先生の弔い合戦みてーに考えてんじゃねーのかねェ」

 言ってから、巽は目を細める。

 そこへ、クレイが微笑をたたえながら近づいた。

「……だから、あなたたちが来てくれてすごくうれしい。私たちの味方がいるって、わかったから」

「クレイさん……」

「……あの人に拾ってもらった時から、ずっとこんな日が来るのを待ってた。この命を、あの人のように誰かのために使えるって思えるなら」

 クレイは、そこで笑顔を見せた。

「私、もう何も怖くない」

「…スイマセン、やめてくれませんか。そういうのやめてくれませんか」

 新八が青い顔でそう返した。聞いたことある台詞の上に、クレイの持つ雰囲気が非常に似ているため、縁起が悪いことこの上ない。

 そんな新八の耳元に、巽が口を寄せた。

「……坊主、オレなぁ。この戦いが終わったらアイツに告白すんだ」

「やめてくんない!? そういうのマジでやめてくんない!? シャレにならない気がしてきたんスけど!?」

「もし俺に何かあったら、……先に行け」

「オィィィやめろつってんだろーが!! わざとだよな、わざとやってんだよな!?」

 目を剥いて叫ぶ新八。

「…いい加減士気に関わる冗談はやめロ、巽」

 見かねたネズミが言い、巽は肩をすくめて離れていった。

「…すまんネ。ああいうやつデ」

 ネズミは新八に謝ってから、目を細めて空を仰いだ。

「みんな強がってんのサ。伏の理想を信じて歩んできタこの荊の道に、迷わないようニ。…アイツと違ってナ」

「アイツ?」

 尋ねた新八に、ネズミは表情を険しくした。

「…もう一人いたのサ、伏を信じて、そして裏切った大馬鹿野郎ガ」

 

 *

 

 カクカクと関節を動かし、無数の機械人形が迫る。

 そのうちの一体の胸に、青い光刃を備えたトンファーが突き刺さり、その機械人形は一瞬で爆散する。白い中華軍服に、青いラインの入った白い装甲を纏った男は、青い光刃のトンファーを振るい、機械人形たちを次々と屠っていく。

 刃で体を切り裂き、貫き、叩き潰していく。

 最後の一体を、蹴りで頭部を千切り破壊すると、男は深く息を吸い、構えを降ろす。

 そこへ、一本の通信が入った。

[しゅっ……、主任! 社長の演説中、反乱軍の暴動が!!]

「……少しばかりボリュームを下げろ。見苦しい」

 男はベルトからケータイを外し、光とともにスーツを消す。

 羊の角の生えた藍色の髪の男は、ケータイを手のひらの上でポンポンと弄びながら、不機嫌そうに振り向いた。

「奴らがここで暴れだすのは予想の範囲だ。貴様らで対処しろ。…それに、どうせ表の派手な動きは囮だ。内部の守りを薄めるな」

「りょ…了解!!」

 通信を終えた男は、深いため息をつく。

 その背に、別の声がかけられた。

「相変わらず見事ですね、(コン)くん」

「……タクマか、何の用だ」

 タクマと呼ばれた触角の生えた男は、眼鏡を押さえて笑う。

「社長より集合がかかりました、お急ぎを」

「…ふん、俺が出るまでもないだろうに」

「念には念を。逆らう愚か者は徹底的に潰せとのことです」

「チッ……」

 坤 レオは舌打ちし、ケータイを懐に入れる。

「…あの暴君竜は何してんだ?」

「ご想像の通りです」

「前線か……」

 レオは憎々しげに顔をしかめ、タクマのそばを通り過ぎる。

「…あの女は?」

「ロードにご執心でして…。離れません」

「あそこまでとなると、もはや異常としか言いようがないな」

 言いながら去っていくレオ。

 その背に、タクマはまた笑う。

「…彼女にはもう会わないのですか? 恩師の娘なのでしょう?」

「…………もうあの人には興味はない」

 レオは立ち止まり、また歩き始めた。

 その口元に笑みを浮かべながら、男は道を進んでいく。

「俺はもう、あの人を超えた」

 

 

 広い、そして深く暗い墓地のような空間。

 スマートブレイン社中枢の地下の巨大空間に、奇妙な光が灯っていた。

 黄色に近い光の束が、一点に集まっている。時折脈動し、点滅を繰り返し、ウネウネと生物のように蠢いていた。

 それを見つめる、一人の黒い髪の女がいた。

 心底陶酔した表情で、光の中心を熱のこもった目で見つめている。

「……いよいよ、時が近づいておりますのね………」

[…………力ガ肉体ヲ呼ビ覚マシテイクノヲ感ジル……]

姿の見えぬ声を聞き、女は一人、その時を待つ。

一瞬、光が歪に蠢いた。

[……戻リ任ニ励メ]

「御意に」

頭を垂れ、女は背中を向けて退室していく。

 そこにいたのは、白い異形。

 圧倒的存在を放つ、オルフェノクの王たるもの、人間の進化の頂点。

 名を、アーク。

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