【完結】銀魂 銀狼篇 ~白夜叉鎮魂歌~   作:春風駘蕩

27 / 34
第二十六訓 黄虎の叫び

 バンッ。

 デジタルの電子画面に張り付き、ロズワは目を瞠った。

「……何だ、何が起こった」

 ロズワは頭をかきむしり、画面にかじりつく。

 ―――あり得ない……!!

    オルフェノクとして初めて覚醒した直後であれば、そのエネルギーが

    本能を刺激し、理性など残っていないはず……。

    全てのオルフェノクに関係なく、自らの怨念に関連した者を手にかけてきた

    例は変わらなかった。

    なのに……!?

 画面の中には、涙をぬぐう少女の姿。

 それを見つめる、白髪の侍。

 ―――己の意志のみで、オルフェノクの本能を抑え込んだというのか……。

    あの男の存在が、一度はかき消された理性を呼び覚ましたというのか……!?

    そんな、事が……!!

 ギリリ、とロズワは歯を食いしばり、憎悪に顔を歪めた。

 

 涙を拭き、銀時を見つめる黒羽。

 その時、ズゥゥゥンと低く轟く音が聞こえた。

 かと思った次の瞬間、闘技場の天井を破り、何か巨大なものが落下した。

「!!」

 黒い二足歩行の機械(からくり)が、仰向けになって背を打ち付ける。その上に乗っていたのは、装甲をボロボロにされたカクサだった。

「ぐっ……」

「カクサ!!」

 砂煙にむせながら、黒羽と銀時はカクサのもとに駆け寄る。

 そこへ、甲高く響く音が近づいてきた。

「…驚いたな」

「!」

 バッと顔を上げ、銀時は視線を鋭くした。

 青いラインの走る、白い装甲を纏った男が、飛行ユニットを背負って一同を見下ろしていた。男、レオは黒羽を見下ろし、目を細めた。

「よもやオルフェノクの力に侵されながら、自我を保っていられるとはな……。だが、それもここまでだ」

 言うが早いか、レオは飛行ユニットに備え付けられた機関銃を向けた。

「貴様らはここで殺す」

「!!」

 濃厚な殺気に、銀時は黒羽を抱き寄せて背に庇う。

 その時。

「……ナメるなよ、レオォォ!!」

 カクサの声とともに、倒れていた機械(からくり)がゆっくりと立ち上がった。

 重低音を響かせ、機械(からくり)は両腕の数門の大砲をレオに向け、大量の弾頭を撃ち放った。弾頭は白煙を吹かせながら、無数のミサイルに分かれ、レオを八方から取り囲む。

 だが、レオはそれをブースターを小刻みに発射することで躱し、逆に無数の弾丸をカクサと機体にぶつける。

「おおおおおお!!」

 カクサは弾丸を受けながら、操作する手を止めない。

 しかし、ついに機械(からくり)は機関部に被弾し、炎を噴き上げて転倒する。その上に乗っていたカクサも高く放り出された。

「ぁぐっ!!」

 全身を強く打ち付けられ、カクサは悶絶する。

 レオはブースターを吹かせ、カクサに一気に接近し、軽々とその体を抱え上げた。

「ッ……何をっ……!!」

 レオは答えず、カクサを抱えたまま、また空中に跳び、急スピードで空へと飛ぶ。そして、天井まで少しというところで、カクサを上へ放り上げた。

Exceed Charge(エクシード・チャージ)

 青い光がケータイからラインを通り、右足に集まっていく。レオは飛行ユニットを操作し、滑空する。その向う先は、成す術無く落下していくカクサがいた。

「…! まさかっ…」

 黒羽と銀時はレオの意図に気付き、顔面を蒼白にさせた。

「やっ……やめろォォォォォォォ!!」

 響く悲鳴。

 レオの右脚に、青い閃光が走り、カクサの腹に炸裂した。

「があああああ!!」

 激突と同時に、カクサの腹と背から炎が噴き出す。一瞬のうちに、黄色い電流と火花を散らせて、戦闘スーツが消失した。

 カクサは目を剥き、ダラリと手を降ろして落下していく。

 そして地面に落下し、ゴキィと嫌な音が聞こえた。

 黒羽と銀時は、すぐさま駆け寄った。

「カクサぁぁぁ!!」

 頭から血を流すカクサの傍にしゃがみ込み、その身を起こしてやる。

「しっかりしろ! オイ!」

「カクサっ……」

 肩を抱き、カクサの顔を見下ろす銀時。その襟が、いきなりカクサに捕まれ、顔を近くまで引き寄せられた。

「!?」

「…………」

 カクサは銀時を、憎悪の目で睨みつけていた。そして、震える口を、開く。

「……なぜ、お前なんだ」

「!」

 襟をつかむ力を強め、カクサは呪詛のように呟いた。

「なぜあの人は……!! お前を選ぶ!! なぜ俺ではなく、お前を選んだんだ!? 戦いに負け、今もなお亡霊のように生きるお前を……!!」

 カクサの体から、青い炎が噴き出し始める。ボロボロと灰化して崩れていきながら、カクサは己の心を言い放つ。

「俺はっ……俺は……!!」

 ぼろり、とカクサの手が崩れ、カクサは地に伏す。恨みがましく伸ばされた手も、いずれガクリと落ちた。

「………カクサ」

 銀時は手のひらに残る灰を握りしめ、カクサの物言わぬ体を見下ろす。

 始めから気に入らない相手だった。それでも、死に際の呪詛のような言葉が、銀時と黒羽の心に突き刺さっていた。

 しかし、相手は二人を待ってはくれなかった。

「これで邪魔者は消えた」

 レオが機関銃を構え、言い放つ。

 銀時は無言で立ち上がり、地に突き立つ刀を抜き、レオに向けた。

 そんな銀時の態度に、レオは小さく舌打ちした。

「……刃向うというのか、下等種族が」

 レオは不快そうに口元を歪め、見下した目を銀時に向ける。対する銀時は俯いたまま、刀を握る力を強めた。

「同じ女に惚れた男の仇討ちということか。余計なことを……」

「うるせェ」

 低く、重い声が銀時の口から漏れる。レオは一瞬頬を引くつかせるも、かまわず続けた。

「……あの男もバカな奴だな。あの女のためについには命まで捨てるとは。己の姿を見ようともしない女に無駄なことをしたものだ」

「うるせェっつってんだよ」

 銀時は前髪の下から、凍てつくような冷たいまなざしを向けた。

 極寒の氷河のような目に、ゾクリ、とレオの背に震えが走った。

「テメェがコイツを語るんじゃねェ。……俺はコイツとは、腹の立つ記憶しかねェ。俺に何を思いながら生きてきたのか、戦ってきたのか知らねェ。……だがな」

 ギロリ、とその視線が強まる。

 そこにいたのは、オルフェノクよりも、どんな怪物よりも恐ろしい、化け物の姿。この世で怒らせてはならない、夜叉(おに)の姿があった。

「コイツの伏への思いだけは、テメーには語らせねェ。……テメーだけは、許さねェ」

 ガシャン、と刀を鳴らし、銀時は刀を横向きに構えた。

 レオはその顔を怒りに歪め、瞳に炎を燃やし、歯をぎりぎりと食いしばった。

「下等生物が、身の程を知れ」

「甘ェな、お前」

 銀時は獰猛な目を向けたまま、にやりと口元を歪めた。

機械(からくり)に頼ってるテメーと、自分(テメー)の足で立ってる俺。……どっちが下等に見えるよ?」

 ブチ、とレオの中から何かがキレる音がした。

 ブースターを全開にし、レオは一気に加速。銀時に襲い掛かった。

「身の程を知れと言ったはずだァァァァァァァ!!」

 迫るレオは、その速度を保ったまま、回し蹴りを放とうと右脚を振り上げる。

 銀時はそれをしゃがんで避け、追撃の裏拳を刀ではじく。

 急上昇していくレオの背中を見やりながら、銀時はニタァ、と憎たらしい笑みを浮かべ、口を開いた。

「だから甘ェつってんだよ、テメーは」

 ドフォォォ!!

 反転したレオが再び向かおうとした時、闘技場の壁が突如爆ぜた。

「!?」

 レオは驚愕するも、咄嗟に飛来してくる瓦礫を避ける。だがそんな中、瓦礫に紛れて接近する銀色の鉄人に気付けなかった。

 ヴォォォォォン!!

 エンジンを蒸かし、オートバジンはレオに激突した。

「ぬおっ!?」

 レオはまともにオートバジンの体当たりを受け、反対側の壁に叩き付けられた。

 粉塵が舞う中、「銀さん!」「銀ちゃーん!!」という懐かしい声が聞こえてくる。

 銀時は刀を担ぎ、にんまりと笑った。

仲間(あいつら)のこと忘れてんじゃねーよ。俺達ゃ一人で戦ってんじゃねぇんだ」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。