バンッ。
デジタルの電子画面に張り付き、ロズワは目を瞠った。
「……何だ、何が起こった」
ロズワは頭をかきむしり、画面にかじりつく。
―――あり得ない……!!
オルフェノクとして初めて覚醒した直後であれば、そのエネルギーが
本能を刺激し、理性など残っていないはず……。
全てのオルフェノクに関係なく、自らの怨念に関連した者を手にかけてきた
例は変わらなかった。
なのに……!?
画面の中には、涙をぬぐう少女の姿。
それを見つめる、白髪の侍。
―――己の意志のみで、オルフェノクの本能を抑え込んだというのか……。
あの男の存在が、一度はかき消された理性を呼び覚ましたというのか……!?
そんな、事が……!!
ギリリ、とロズワは歯を食いしばり、憎悪に顔を歪めた。
涙を拭き、銀時を見つめる黒羽。
その時、ズゥゥゥンと低く轟く音が聞こえた。
かと思った次の瞬間、闘技場の天井を破り、何か巨大なものが落下した。
「!!」
黒い二足歩行の
「ぐっ……」
「カクサ!!」
砂煙にむせながら、黒羽と銀時はカクサのもとに駆け寄る。
そこへ、甲高く響く音が近づいてきた。
「…驚いたな」
「!」
バッと顔を上げ、銀時は視線を鋭くした。
青いラインの走る、白い装甲を纏った男が、飛行ユニットを背負って一同を見下ろしていた。男、レオは黒羽を見下ろし、目を細めた。
「よもやオルフェノクの力に侵されながら、自我を保っていられるとはな……。だが、それもここまでだ」
言うが早いか、レオは飛行ユニットに備え付けられた機関銃を向けた。
「貴様らはここで殺す」
「!!」
濃厚な殺気に、銀時は黒羽を抱き寄せて背に庇う。
その時。
「……ナメるなよ、レオォォ!!」
カクサの声とともに、倒れていた
重低音を響かせ、
だが、レオはそれをブースターを小刻みに発射することで躱し、逆に無数の弾丸をカクサと機体にぶつける。
「おおおおおお!!」
カクサは弾丸を受けながら、操作する手を止めない。
しかし、ついに
「ぁぐっ!!」
全身を強く打ち付けられ、カクサは悶絶する。
レオはブースターを吹かせ、カクサに一気に接近し、軽々とその体を抱え上げた。
「ッ……何をっ……!!」
レオは答えず、カクサを抱えたまま、また空中に跳び、急スピードで空へと飛ぶ。そして、天井まで少しというところで、カクサを上へ放り上げた。
[
青い光がケータイからラインを通り、右足に集まっていく。レオは飛行ユニットを操作し、滑空する。その向う先は、成す術無く落下していくカクサがいた。
「…! まさかっ…」
黒羽と銀時はレオの意図に気付き、顔面を蒼白にさせた。
「やっ……やめろォォォォォォォ!!」
響く悲鳴。
レオの右脚に、青い閃光が走り、カクサの腹に炸裂した。
「があああああ!!」
激突と同時に、カクサの腹と背から炎が噴き出す。一瞬のうちに、黄色い電流と火花を散らせて、戦闘スーツが消失した。
カクサは目を剥き、ダラリと手を降ろして落下していく。
そして地面に落下し、ゴキィと嫌な音が聞こえた。
黒羽と銀時は、すぐさま駆け寄った。
「カクサぁぁぁ!!」
頭から血を流すカクサの傍にしゃがみ込み、その身を起こしてやる。
「しっかりしろ! オイ!」
「カクサっ……」
肩を抱き、カクサの顔を見下ろす銀時。その襟が、いきなりカクサに捕まれ、顔を近くまで引き寄せられた。
「!?」
「…………」
カクサは銀時を、憎悪の目で睨みつけていた。そして、震える口を、開く。
「……なぜ、お前なんだ」
「!」
襟をつかむ力を強め、カクサは呪詛のように呟いた。
「なぜあの人は……!! お前を選ぶ!! なぜ俺ではなく、お前を選んだんだ!? 戦いに負け、今もなお亡霊のように生きるお前を……!!」
カクサの体から、青い炎が噴き出し始める。ボロボロと灰化して崩れていきながら、カクサは己の心を言い放つ。
「俺はっ……俺は……!!」
ぼろり、とカクサの手が崩れ、カクサは地に伏す。恨みがましく伸ばされた手も、いずれガクリと落ちた。
「………カクサ」
銀時は手のひらに残る灰を握りしめ、カクサの物言わぬ体を見下ろす。
始めから気に入らない相手だった。それでも、死に際の呪詛のような言葉が、銀時と黒羽の心に突き刺さっていた。
しかし、相手は二人を待ってはくれなかった。
「これで邪魔者は消えた」
レオが機関銃を構え、言い放つ。
銀時は無言で立ち上がり、地に突き立つ刀を抜き、レオに向けた。
そんな銀時の態度に、レオは小さく舌打ちした。
「……刃向うというのか、下等種族が」
レオは不快そうに口元を歪め、見下した目を銀時に向ける。対する銀時は俯いたまま、刀を握る力を強めた。
「同じ女に惚れた男の仇討ちということか。余計なことを……」
「うるせェ」
低く、重い声が銀時の口から漏れる。レオは一瞬頬を引くつかせるも、かまわず続けた。
「……あの男もバカな奴だな。あの女のためについには命まで捨てるとは。己の姿を見ようともしない女に無駄なことをしたものだ」
「うるせェっつってんだよ」
銀時は前髪の下から、凍てつくような冷たいまなざしを向けた。
極寒の氷河のような目に、ゾクリ、とレオの背に震えが走った。
「テメェがコイツを語るんじゃねェ。……俺はコイツとは、腹の立つ記憶しかねェ。俺に何を思いながら生きてきたのか、戦ってきたのか知らねェ。……だがな」
ギロリ、とその視線が強まる。
そこにいたのは、オルフェノクよりも、どんな怪物よりも恐ろしい、化け物の姿。この世で怒らせてはならない、
「コイツの伏への思いだけは、テメーには語らせねェ。……テメーだけは、許さねェ」
ガシャン、と刀を鳴らし、銀時は刀を横向きに構えた。
レオはその顔を怒りに歪め、瞳に炎を燃やし、歯をぎりぎりと食いしばった。
「下等生物が、身の程を知れ」
「甘ェな、お前」
銀時は獰猛な目を向けたまま、にやりと口元を歪めた。
「
ブチ、とレオの中から何かがキレる音がした。
ブースターを全開にし、レオは一気に加速。銀時に襲い掛かった。
「身の程を知れと言ったはずだァァァァァァァ!!」
迫るレオは、その速度を保ったまま、回し蹴りを放とうと右脚を振り上げる。
銀時はそれをしゃがんで避け、追撃の裏拳を刀ではじく。
急上昇していくレオの背中を見やりながら、銀時はニタァ、と憎たらしい笑みを浮かべ、口を開いた。
「だから甘ェつってんだよ、テメーは」
ドフォォォ!!
反転したレオが再び向かおうとした時、闘技場の壁が突如爆ぜた。
「!?」
レオは驚愕するも、咄嗟に飛来してくる瓦礫を避ける。だがそんな中、瓦礫に紛れて接近する銀色の鉄人に気付けなかった。
ヴォォォォォン!!
エンジンを蒸かし、オートバジンはレオに激突した。
「ぬおっ!?」
レオはまともにオートバジンの体当たりを受け、反対側の壁に叩き付けられた。
粉塵が舞う中、「銀さん!」「銀ちゃーん!!」という懐かしい声が聞こえてくる。
銀時は刀を担ぎ、にんまりと笑った。
「