【完結】銀魂 銀狼篇 ~白夜叉鎮魂歌~   作:春風駘蕩

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第三十訓 ラスボス戦前にはセーブをかかせるな

 ―――人間(ひと)に非ずとも、心は人間(ひと)と共に。

    秘めた想いで滾らせた熱き血が、

    今、輝きを放ち、互いの体に流れ込む。

 

 鮮血を思わせる紅い閃光と、〝最後(Ω)〟を司る黄金の巨大な剣が、眩しい光を放って激突する。

 そして、青い二本の戦刃と、輝きを放つ銀の刀が、ぶつかり合う。

「おおおおおおおおおおおおおおおお!!」

 赤と金、白と青の光がせめぎあい、火花を散らせる。

 バキンッ

 黒羽のエネルギーとぶつかりあう、騏場の剣。その先端が砕け、徐々に破壊されていく。エネルギーが粒子へと還り、黒羽の必殺の一撃が見る間に騏場に迫っていく。

 銀時とレオの刃同士が喰らいあい、激しい火花を散らせる。そして、銀時の刃がレオの刃の上を滑り、レオの胸に到達した。

 次の瞬間、黒羽の強化キックが騏場に炸裂し、銀時の刀がレオを両断した。

 ズバァァァッ!!

 蓄積されていたエネルギーが弾け、閃光が辺りに走る。

 エネルギー波が周囲に飛び散り、オルフェノク達に突き刺さっていき、

 赤い炎が、弾けた。

 

 *

 

 ガシャン、と音を立てて、白い骨のような異形は仰向けに倒れ伏した。

「……まさか、俺が負けるとはな」

 誰にともなく呟き、竜の異形は口元をにやりと歪めた。

「……礼を言うぞ、夜兎のガキ。俺の前で笑っていた奴は、お前だけだった」

「……こいつは俺の流儀さ」

 笑顔のまま、神威は言い、さらさらと灰化していく強敵を見下ろす。

 もうあまり、時間はなさそうだ。

「殺す相手は、笑顔で送りだしてやろうと思ってね」

「……ありが、とう、よ……」

 その直後、竜の異形はボロリと崩れ、息絶えた。

 神威は瓦礫の上に座り、パタパタと足を上げ下げする。そこへ、灰に汚れた刀を担いだ隻眼の男が近づいてきた。煙管を加え、煙を吐く。

 気付いた神威が、振り向いた。

「やぁ、終わったの?」

「……フン」

 高杉が神威の前を通り過ぎ、刀を払って鞘に納める。

 神威も瓦礫の上から降り、高杉の後に続く。

「じゃあもう帰ろうよ。強い奴がいないんならここにいてもしょうがないし」

 高杉は神威の言葉を鼻で笑ってから、その場を後にした。

 

 粉塵の舞う、廃墟と化した屋内。

 真選組の面々に囲まれ、クレイは荒い息を繰り返し、横になっていた。

「クレイ殿、しっかりしろ!」

「まだ…、まだです! まだ逝ってはダメです!!」

 近藤がクレイの傷口を抑え、呼びかけ続ける。鉄之助をはじめとする隊士たちが見守る中、クレイは弱々しく微笑み、口を開いた。

「……いいんです、もう」

「何言ってんですか!! すぐに治療して……」

「…いいえ、もう私は満足です……」

 クレイの一言に、一同は目を見開く。

「……こんなにたくさんの…、素敵な人たちに囲まれて逝けるんです。悔いなんて、ありません……」

「……クレイ殿」

 近藤にニコリと微笑み、クレイは胸に手を当てる。

「……私ね、最初に人間として死んだとき、独りだったの」

「…………」

「誰にも看取られることなく、悲しまれることもなく、たった一人で息を引き取った。そしてオルフェノクとなって、皆から拒絶されて、孤独になった……」

「…もういい……」

「カクサに同志として拾われてからも、あまり変わらなかった。所詮、私は捨て駒で、代わりの利く存在だったから。誰も、私を見てはいなかった……」

「もういい……!!」

「そんな私が、今はこんなにたくさんの人に見てもらえてる。こんなに嬉しいことはないわ」

「……クレイ殿」

 悲痛な声が、近藤から漏れる。

 クレイは、傍で泣きじゃくる鉄之助の頬に流れる雫を拭い、微笑みかける。

「…ただ、ちょっとだけわがままを言うなら……」

 それは、今にも泣きそうな、辛い微笑みだった。

「……もっと早く、貴方達に、出会い、たかっ……た……」

 クレイの目から、涙がこぼれる。

 雫が落ちるのと同時に、クレイの手は、パタリと地に落ちた。

 近藤はクレイの亡骸の手を持ち上げて手を組み合わせると、静かに手を合わせて目を閉じた。

 全員が重い気持ちで、その場に佇んでいた。

 その時、土方が何かに気付き、振り向いた。

「……おい、あの海老女はどこ行った?」

 真選組が倒したはずの、海老の異形。その姿が、消え失せていたのだ。

 

 ズリ……ズリ……

 足を引きずり、女は一人中枢を目指していた。

 憎悪と怒りに顔を歪め、目的地を目指す。

「おのれ……、下等種族め……」

 呪詛のように呟き、歯を食いしばる。

「畜生ォ……、畜生ォ……!!」

 その足が、広く開いた扉に差し掛かった時。

 金色の光が、女を包み込んだ。

「!?」

 女は目を見開き、目を細めて光を凝視する。

 眩い光の中に、一体の異形のシルエットが映る。ゆっくりと歩を進め、女に近づいてくる。そして手を伸ばし、金色に輝く光の触手を女に絡め始めた。

「お……おぉ……おおお……!!」

 女は触手に包まれながら、恍惚とした表情に落ちていった。

 

 ガラガラと、ヒビの入った瓦礫が小さく崩れる。

 その中心で銀時とレオは、獲物を振りかぶった姿勢で静止していた。

 銀時は姿勢を正し、刀を払って鞘に収める。その瞬間、レオは全身から青い炎を噴き上げると、ダラリと腕を下ろして崩れ落ちた。

 鎧の隙間から灰を零し、砕けた床に撒き散らした。

 銀時は息をつき、横目をレオの亡骸に向け、きびすを返した。

 もう動くことのない、愛した女の教え子を残して。

 騏場もまた、倒れ伏していた。だが、まだ死んではいなかった。

 瓦礫の上に足を投げ出し、ぼんやりと天井を見上げていた。

「……理想を、継ぐか」

 一言呟き、ため息をつく。

「…俺は、急ぎ過ぎていたのか」

 体を起こし、自分と戦った少女を見る。

 黒羽は笑顔で走り出し、光剣を放り出して銀時に突撃すると跳び上がって抱きついていた。結構ボロボロだった銀時は耐え切れず、後ろに倒れこむ。

 新八と神楽がそこへ駆け寄り、二人をからかう。銀時は額に青筋を立たせて叱りつけると、黒羽はそれを見て大笑いした。

 心から、楽しそうに。

 人間とオルフェノクなど、関係ねェと言わんばかりに。

「…人間一人では、辿り着けない理想郷……。だからこそ、仲間を信じ、共に行く……。あの人が言いたかったのは、そういう事か」

 一人暴走していた自分を恥じ、自嘲する。

「…もっと、自分を見つめなおせ、ということか」

 えっこらしょ、と体を起こし、腰に手をやる。

「…俺もまだ、やり直せるか……」

 そう、呟いた時だった。

 ズブッ

 鈍い衝撃が、己の腹に走った。

 目を瞠り、腹から生えた白い異形の腕を凝視する。

「……!! き、貴様は……!!」

 ゴボッ、と血を吐き、騏場はがくりと膝をついた。

「!!」

 異変に気付いた黒羽たちが、振り返って臨戦態勢に入る。

 白い異形―――アークオルフェノクは、騏場をうち捨て、大きく天を仰いだ。

「ゥオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」

 終わるはずだった、決戦。

 それは、王の復活によって、大きく筋書きが狂わされたのだった。

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