「オオオオオオオオオオオオオオオオ!!」
湧き立つ瘴気と共に、灰色の異形の王は吠える。ビリビリと大気が震え、骨の髄まで轟いてくる。
殺される。瞬時にそう体で感じた銀時たちは、本能的に獲物を構えた。
と、思った瞬間、
「!!」
振り向いて刀を構えるより早く、アークの剛腕が銀時に向かって振り抜かれた。
腹に大砲の弾をくらったような、とてつもなく鈍く重い衝撃を受け、人体からは聞こえてはいけない音が鳴る。たまらず銀時は大量のどす黒い血を吐き、吹き飛ばされた。
「親父ィィィ!!」
キッとアークを睨み、黒羽は光剣を拾い上げ、アークに斬りかかった。
だが、アークはそれを片手で受け止め、弾き返す。衝撃で体勢を崩した黒羽に、アークは拳を叩き込んだ。黒羽の腹部に拳が刺さり、その軽い体は簡単に打ち上げられる。天井に向かって真っ直ぐ飛ばされ、黒羽は凄まじい音と共に
「ぁぐっ!?」
「黒羽ちゃん!!」
新八が叫ぶ。
その声に反応したのか、アークがぐりんと首を向けた。手のひらの上に輝くエネルギーを集約し、新八たちに向かって腕を振るう。込められたエネルギーが分散して飛来し、新八たちの周囲で無数の爆発を起こした。一つ一つは小さくとも、殺傷能力の高さは明らかだった。
「うわあああ!!」
「うおお!!」
直撃こそ避けたものの、爆風が全員に襲い掛かる。閃光と爆音が弾け、新八たちを吹き飛ばす。
空中に放り上げられた一同は、高熱に襲われながら地面に打ち付けられ、転がされる。全身をボロボロにされながら、間隙すらなくまた爆発に襲われた。
そこへ、銀の鉄人が飛んだ。
オートバジンは背中のホイールのジェット噴射を全開にし、一直線にアークに殴りかかる。しかし、渾身の一撃は難なく横からはじかれ、お返しだと言わんばかりに顔面を殴られた。たった一撃でバイザーの片側が、内部の構造が見えるほどに破壊され、火花を散らす。
それだけでは終わらず、今度はアークの拳が、オートバジンの腹を捉えた。
ボガァァァ
拳をオートバジンの装甲を突き破り、背中まで貫通させる。その直後、オートバジンは背中から爆炎を噴かせ、ガクリとうなだれた。バチバチと火花を全体から発し、痙攣するように振動する。
アークは動きを止めた鉄人を放り捨て、ゆっくりと歩を進めた。
その体表で、爆発が起きた。
「!」
アークがゆっくりと、銃を構えた兎姫を睨んだ。
「こっちだ、化け物!!」
すかさず発砲し、自身の傘も構える。だが、アークは牽制もものともせず、ゆっくりと近づいて行った。
すると、アークはおもむろに右腕を上げ、先ほどよりも濃くエネルギーを収束し、兎姫に向かって撃ち放った。
殺気を感じた兎姫は、瞬時に飛び退く。その直後、強烈な爆発が、兎姫を吹き飛ばした。
「うあっ!!」
空中に放られながら、兎姫は体勢を無理矢理直し、着地と同時に疾走する。傘を横薙ぎの形で構え、アークの顔面に向かって振り抜く。
ガシン!!
衝撃が周囲にまで走り、地面が放射状に陥没する。
傘を振り抜いた姿勢のまま、兎姫は目を見開く。
傘の一撃を指一本で止めたアークが、兎姫を見下ろした。
「…………こんなものか?」
ぞくっ、と寒気が兎姫の全身に走る。そう感じたとほぼ同時に、アークは膝を兎姫の鳩尾に向かって蹴り上げた。
兎姫の体がくの時に折れ曲がり、衝撃と痛みが駆け巡る。アークは悶絶する兎姫に、そのまま蹴りを放った。
兎姫は軽々と吹っ飛ばされ、ネズミの側の壁に突っ込んだ。
「ヒィッ!?」
ネズミは悲鳴を漏らし、ガタガタと震えながらアークを凝視する。
ネズミの髭は
「あ………あぁ………ア……」
ネズミは、その存在に恐怖した。
―――まさか……、これは……!!
ネズミの髭は感じ取った。
―――
星の力の流れ。血管のように流れているという星の命の力。
それが、アークの中に流れ込んでいた。
それを相手にするということはすなわち、この星そのものを相手にするということ。
「チックショォォォ!!」
巽が雄叫びを上げ、半ばやけくそのように駆け出す。
双剣を手に立ち向かおうとした、その時。
周囲を大きな影が覆い、巽は目を見開く。その直後、その影が躍った。
「ギャアアアアアアアアア!!」
「!!」
立ち上がった新八たちは、聞こえてきた轟音とそれに負けない悲鳴を耳にし、思わず振り向く。そして、驚愕に目を瞠った。
巨大な、四本足の異形がいた。
壁に頭を突っ込んだ犀のような生物がゆっくりと頭を引き抜いていく。その現れた角の根元に、巽がいた。
体の半分以上が融合した、哀れな姿で。
「巽さん!?」
目を見開いて叫ぶ新八の前で、巽の体はみるみる犀の異形に呑みこまれていく。
「う……うぉ……」
巽はうめき声を漏らし、力なく手を伸ばす。だが、その手は誰にも届かない。
犀の異形は、その姿を嗤うように雄叫びを上げ、ズシンズシンと新八たちに近付きはじめる。地面が陥没するその死の行進は、すぐに突進に変わった。
そして、犀の異形は新八たちの前で大きく両前足を振り上げる。地面に沈むほどの超重量の踏み付けを、新八たちは転がって間一髪避ける。しかし、撒き上げられた粉塵や衝撃で、派手に倒れる羽目になった。
アークは新八たちに目を向け、右腕に光を溜めはじめる。
その背後の白煙の中から、光剣を備えた黒羽が襲い掛かった。
「ウオラァァァ!!」
雄叫びを上げて、斬撃を放つ。
しかしアークは、それを見向きもせずに受け止めた。
「!?」
ギョロリと睨みつけられ、黒羽はわずかにたじろぐ。と、その直後、顎に衝撃が走った。
アークの拳が、黒羽の真下から襲いかかったのだ。
「ゴフッ……!!」
脳を揺らされ、意識が混濁する。血を吐きながら、黒羽の体は宙を舞った。
追撃を咥えようと構えたアーク。だが、突如その脇腹に刃が突き立てられた。
「おおおおおおおおお!!」
銀時が吠え、突きを放ちながら突進し、黒羽からアークを引き離す。
アークは憎々しげに口元を歪め、脇腹に
銀時は舌打ちし、振るわれた剛腕をしゃがんで躱す。
次々と繰り出される拳や蹴りを紙一重で避けながら、銀時は後退していく。
一方倒れていた黒羽は、頭を振って起き上がり、光剣を手に立ち上がる。
「うらァァ!!」
雄叫びを上げ、アークの背中に斬りかかる。案の定傷一つつけられなかったが、銀時から注意はそらせた。
振り向きざまに振るわれた拳を前に転がって躱し、銀時の隣に並び立つ。
銀時と黒羽は左右から、光剣と半ばから折れた刀で斬りかかる。だが、アークはそれらを尽く跳ね返し、振り払う。
と、一瞬の隙を突かれ、二人はアークの手に首を掴まれた。
「ガッ……!!」
「うぐっ!!」
ギリギリと万力のような力で締め上げられ、二人はもがき苦しむ。
灰色の腕を掴み返しながら、歯を食いしばって意識を保つ。しかし、アークの力は強まっていくばかりだ。
オオオオオオオ!!
アークは咆哮を上げ、銀時と黒羽を放り上げ、天井に叩き付けた。
二人は成す術無く落下し、大量に吐血した。
アークは拳を握りしめ、力を蓄えていく。そして、その拳を目前に振り下した。
ズドガァァァン!!
轟音が鳴り響き、床が大きく陥没する。その直後、銀時と黒羽の倒れ伏す床が砕け、巨大な穴が開いた。
「!!」
黒羽は目を見開くも、身動き一つとれず、銀時と共に落下を始めた。
「うわあああ!!」
黒羽は悲鳴を上げ、銀時と、傍に倒れていたオートバジンとともに瓦礫の中に埋もれ、落ちていく。
巨大な異形に襲われたままの新八たちも、思わず振り向いて目を瞠る。
「ぎっ…銀さんんん!! 黒羽ちゃんんんん!!」
「銀ちゃんんん!!」
消えていく二人と一体。
その刹那、黒羽の強張った表情が、二人の目に映った。
「黒羽ァァァァァァァァァァァ!!」
神楽の声が、響く。
穴は遥か下、地下まで開いていた。
黒羽は落下しながら、力なく宙に舞う銀時に手を伸ばし、掴もうとする。
銀時は意識を失っているのか、反応が無い。伸ばした手を掴んでくれない。それでも黒羽は諦めず、闇の中で必死に手を差し伸べる。
ようやく、ぐったりとしている銀時の腕を掴むと、引き寄せて我が胸に抱く。
ギュッと目を瞑った黒羽は、銀時だけは離すまいと、強くその頭を抱きしめる。
そのすぐ上を、銀の鉄人が落ちていく。
機関を破壊されたオートバジンは、もう稼働できない。
そのはずだった。
バチッ バチチッ
動くはずのない頭部のセンサーに火花が飛び、ノイズが走る。
それは、〝記憶〟だった。
―――…おーと、ばじん?
「なぁに、それ?」
闇に包まれた視界。そこに唐突に光が灯り、一人の小さな銀髪の女の子が映った。
金色の大きな目で、彼を見上げ、傍にいる誰かに尋ねていた。
「ファイズ専用自立戦闘可変式モーターバイク……と言ってもわからないか」
「ん?」
「要するに……こいつは、護りたいと決めた大切な者を全力で護る、
視界の端に映った銀髪の女は、少女の頭を撫でながらそう言った。
すると少女は、目を丸くして尋ねた。
「お父さんみたいな?」
「……!」
少女の言葉に、女は一瞬言葉を失くし、そして、優しく微笑んだ。
「……ああ、そうだ」
彼の装甲に触れ、女は呟く。
「私の大好きな、もう一人の銀色の侍……」
―――そうあってくれよ?
相棒さん。
視界がスパークし、カメラが再び覚醒する。
動かない、破壊された機構を無理矢理再起動させ、オートバジンは復活する。
その頭脳に浮かぶのは、ただひとつのみ。
護れ。
小さな主を、その父を。
その仲間を、その世界を。
彼女の意志を、その心を、その魂を。
命じる者はいない。
ならば、己の意志で戦え。
だから、護れ。
伏との約束を!!
ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!
ジェットを全開にし、噴き出した音が怒号のように轟く。
オートバジンはアクセル全開でエンジンを回し、飛行する。落下する黒羽と銀時をかっさらい、ジェットを反転させる。
ドフン、と地下の闘技場に粉塵が巻き上がる。倒れ伏すカクサの体の前で、オートバジンはさらにジェットを噴射、天井の穴を逆走し始めた。
二人の主を大切に抱え、オートバジンは飛んだ。
「ぐっ……」
気が付いた銀時が、下へと流れていく景色に驚く。そして、体を支えられていることにようやく気が付いた。
「……お前」
「オートバジン……何で」
自分たちを守るオートバジンの有様に驚愕しながら、二人は頷きあった。
同時に、オートバジンの速度も上がる。
真下から飛来した鉄人の姿に、アークは目を瞠る。破壊したはずの機械が、忌まわしき人間を抱えて戻ってきたのだ。
「この………死にぞこないが!!」
アークは怒りに目を燃やし、手から無数の光弾を放つ。
オートバジンは空中をただ一直線に飛び、光弾を躱し続ける。
そのさなか、黒羽は光大剣を抱えて飛び降りる。
剣を銃に換装し、キーに「5214
[
黒羽の背中のユニット、フォトン・フィールド・フローターが起動し、ジェット噴射がまるで蝶の羽のように広がる。
光の羽根をはばたかせ、黒羽は
「おおおおおおおおおおお!!」
雄叫びを上げ、銃から無数の光弾を放つ。
アークは顔を覆って攻撃を中断し、黒羽を憎々しげに睨みつける。
宙を滑空する、金色の蝶に向かって光弾を放とうとした時、銀の閃きがその肩に突き刺さった。オートバジンの方に乗った銀時が、折れた刀を持ったまま滑空し、刃を突き立てたのだ。
アークは抜こうとするが、それよりも強い力でオートバジンガジェットを噴かす。
「てェあああ!!」
銀時は刀をめり込ませ、アークを壁に叩き付ける。
ズン、と衝撃が最上階全体に響き渡った。
一方で、新八たちの戦いも熾烈を極めていた。
巨大な犀の異形には、刀も拳も通らない。兎姫の銃も、表皮を少し焦がすだけだ。
犀の異形は、そんなことはお構いなしだと言わんばかりに突進と踏みつけを繰り返し、新八たちに襲い掛かり、追い詰めていく。
「ほあちゃああああ!!」
神楽が、犀の異形の背に踵を落とす。だが軽く跳ね返され、角で弾き飛ばされる。新八が寸前で受け止めるが、強い衝撃で二人とも倒れる羽目になる。
犀の異形が追撃に入る前に、兎姫が銃弾をお見舞いするも、あまり意味がない。
思わず兎姫が唇を噛んだ時だった。
ドスッ
そんな音がすると同時に、びくともしなかった犀の異形が突如、もがき苦しみ始めた。
「!?」
頭を大きく振り暴れる犀の異形の様子に、目を見開く兎姫。その目に。
己の腹に双剣を突き立てる、巽の姿が映った。
「たっ…巽!? 何をしてる!?」
叫びながら、兎姫は気付いた。
巽の体は、半分以上異形に喰われている。だがその部分と
兎姫が凍りついていると、巽が顔を上げて叫んだ。
「何してる……早く俺ごとやれェェェ!!」
「!!」
その言葉に、兎姫だけでなくネズミや、新八と神楽も目を見開いた。
「でっ…できるカ、そんなコト!!」
思わず反論を返すネズミに、巽は鋭い目を向けた。
「いいからっ……早く……!!」
そう言った巽の体が、また犀の異形に呑みこまれていく。
兎姫は歯を食いしばる。もたもたしていれば、巽は完全に呑みこまれる。巽が命を懸けたチャンスが、無駄になる。
兎姫は銃を一旦腰のベルトに戻し、グリップ部分を分離させる。メモリーを腰のビデオカメラにはめ込み、グリップを口元に運ぶ。
「
音声で命じ、再びグリップをビデオカメラと融合させる。
「
ホルスターから銃と化したグリップを抜き、銃口を犀の異形に向ける。
狙うは、巽の眉間だ。
しかしその時、犀の異形が咆哮を上げ、兎姫に向かって突進を始めた。エネルギーを収束し、狙いを定める兎姫は動けない。
「兎姫さん!!」
「トッキ―!!」
駆け出す新八と神楽だったが、明らかに間に合わない。
だが、巨体が兎姫に激突するより早く、白刃が犀の異形の真下を走る。その直後、犀の異形の前足の膝裏から灰塵が噴き出した。
犀の異形は、ガクリと膝を折って揺らぐ。
ヒュン、とナイフを振り、目に涙をためたネズミが叫んだ。
「今ダ!!」
「おおおおおおおおおおお!!」
ネズミの合図で、新八と神楽が走り、犀の異形の膝裏に渾身の一撃を叩き込んだ。ニークラッシュをくらった犀の異形は、ぐらりと体を傾かせ、前のめりに崩れ落ちる。
ちょうど、兎姫の狙う目の前に。
自身を狙う銃口を見ながら、巽は笑って口を開いた。
「……ありがとな、兎姫」
小さく紡がれた言葉。
頬を伝う雫の感触に心を痛めながら、兎姫は引き金を引いた。
ドンッ
青い閃光が走り、一直線に犀の異形に飛んでいく。
光が弾け、巽を貫いた直後。
犀の異形は青い炎を噴き上げ、灰をまき散らして、巽もろともに崩れていった。
ドォォォン
アークの拳が、銀時とオートバジンを襲う。
それらを躱しながら、銀時は折れた刃をアークに突き出す。
アークはそれを、笑いながら叩き折る。
しかしその直後、無数の光弾がアークの顔面に炸裂する。ジェットを操る黒羽が、頭上から狙撃したのだ。
「オオオオオ!!」
アークは咆哮と共に、強烈な衝撃波を放って周りの物を吹き飛ばす。
「ぐおっ!?」
「うわっ!?」
銀時と黒羽もそれを受け、地面に転がる。
アークはとどめを刺そうと、右腕にエネルギーを集約させ始める。
しかし、放たれる直前、黄色い刃がアークに胸から生えた。
「!?」
体を起こした銀時と黒羽は、驚愕の表情を浮かべる。
「……まさか、一度死んだ男に斬られるとは思わなかっただろう、オルフェノクの王よ」
黒羽は、その声に耳を疑った。
「……カクサ!?」
光刃をアークに突き立て、全身で拘束しているのは、紛れもないカクサだった。全身からは未だ青い炎が吹き、体からはボロボロと灰が零れる。
カクサは歯を剥き、銀時を睨みつけた。
「白夜叉ァァァァァ!! 何をしている、早くやれェェェェ!!」
「!!」
カクサの言葉に、銀時は表情を変える。
カクサはアークを抑えたまま、ニヤリと笑った。
「お前の手で、救ってみせろ!! 手に入れてみせろ、勝利をををを!!」
銀時は黙って、黒羽とともに歯を食いしばる。
そして、鈍く光る眼光をアークに向けた。
「あああああああああああああああ!!」
「おおおおおおおおおおおおおおお!!」
[
雄叫びと共に、銀時と黒羽は駆けた。黒羽は背に羽根を発現させ、光大剣を伸ばし、風を切る。
アークはもがきながら、目標を銀時に絞っていた。今の奴は丸腰。戦う牙は残されてはいない。
そう思っていた。だが。
銀時は背中から、金色の刃を備えた剣を見せた。
アークの表情が、驚愕に染まる。銀時と、その向こうに倒れ伏す男の姿を見て。
「……何が正しくて、何が間違ってるかは、まだ俺にはわからない」
騏場は剣を投げた手のまま、一人呟く。
「その答えは、お前たちが俺に教えてくれ」
灰に還りながら、騏場は笑う。
―――その、生き様で。
銀時と黒羽。
二人の目が、赤く燃え上がる。
「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
剣を構え、
片割れは、黄金の羽根をはばたかせる、蝶のように。
片割れは、白銀の光を放つ、流星のように。
猛る想いで抜かれた牙が、今、異形の王に喰らいつく。
「ぐおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
刃が、アークオルフェノクの胸に喰らいつく。
閃光を花火のように散らし、刃は、アークの体を斬り裂いた。
刃の軌跡を走らせ、銀時はオートバジンの上から飛び降り、黒羽はザザッ、と地面を滑る。オートバジンが力尽きて倒れ伏す傍で、二人は刃を振り抜いた姿勢のまま佇む。
ふわり、と、風が静かに凪ぐ。
がくり、とⅩ字に胸を斬り裂かれたアークは、膝をつき、静かに、ただ静かに灰へと還り、青い炎とともに風に消えていく。
満足げに笑う騏場と、ざまあ見ろ、と言わんばかりのカクサも、灰へと還っていく。
人間と異形の決戦は、不思議なほど静かに、終結した。