D社4区 裏路地
歪んだ盾の怪物──
ねじれたバンブーメモリーを前に、戦いはすでに長期戦へと突入していた。
砕けない盾。
尽きない再生。
消耗だけが、確実に蓄積していく。
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ヤエノムテキ「──焔龍拳!」
炎を纏った一撃が、盾に叩き込まれる。
だが──
ヒビは入る。
それだけだ。
砕けない。
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ヤエノムテキ「……やはり頑丈の一言に尽きますね」
わずかに息を吐く。
ヤエノムテキ「一枚すら満足に破壊できないとは……」
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フェノーメノ「……協会長……」
剣を構えたまま、低く呟く。
フェノーメノ「どうか……戻ってください」
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その時──
トランセンド「ごめんごめん、ちょっと遅れちゃった」
軽い声が、緊張を切り裂いた。
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フリオーソ「セブン協会、到着しました」
フェノーメノ「トランセンド協会長……!」
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トランセンド「おひさーメノさん」
軽く手を振る。
トランセンド「……で、あれがバンブーさん?」
フリオーソ「完全防御型……厄介ですね」
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トランセンド「フリオ、解析いくよ」
眼鏡をかけ直す。
空気が変わる。
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トランセンド「どこが“壊れる”か──全部見る」
フリオーソ「了解」
一歩踏み出す。
フリオーソ「皆さん、我々が突いた箇所へ集中攻撃を」
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ヤエノムテキ「承知しました」
フェノーメノ「ツヴァイも連携します!」
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トランセンド「……見える?」
フリオーソ「ええ」
トランセンド「行くよ」
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一瞬で距離を詰める。
トランセンド「──対象解体」
フリオーソ「──ムリネ!」
同一点への連続突き。
“絶対防御”に、歪みが走る。
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──バキッ
小さな音。
だがそれは、確かな突破口。
盾に、穴が空いた。
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ヤエノムテキ「今です!総攻撃!」
フェノーメノ「ツヴァイ協会!突撃!」
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炎と刃が、一点へ殺到する。
そして──
一枚目の盾が、崩れ落ちた。
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バンブーメモリー『……やめるっす……!』
歪んだ声。
だが次の瞬間──
新たな盾が再生する。
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トランセンド「うわぁ……無限ループじゃんこれ」
ヤエノムテキ「ですが“壊せる”」
目を細める。
ヤエノムテキ「それで十分です」
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フリオーソ「同じ手順を繰り返します」
トランセンド「根比べだねぇ」
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再び、突く。
壊す。
再生される。
また壊す。
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その繰り返しの中で──
言葉が届き始める。
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トランセンド「バンブーさんさぁ」
軽い口調のまま、鋭く刺す。
トランセンド「ちょっと背負いすぎなんだよ」
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ヤエノムテキ「ええ」
静かに続ける。
ヤエノムテキ「“協会長”といえど、万能ではありません」
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トランセンド「無理なもんは無理でいいの」
ヤエノムテキ「頼ることも、強さです」
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トランセンド「メノさん、優秀じゃん」
ヤエノムテキ「ええ。誇るべき部下です」
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盾が、また一枚崩れる。
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トランセンド「いらないならウチで引き取るけど?」
ヤエノムテキ「リウとしても歓迎しますが?」
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フェノーメノ「……お断りします」
即答だった。
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フェノーメノ「私の上司は──バンブーメモリー協会長だけです」
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トランセンド「……だってさ」
ヤエノムテキ「慕われていますね」
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フェノーメノ「協会長……」
声が、震える。
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フェノーメノ「戻ってきてください……!」
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その時──
盾の数が、明らかに減る。
再生が、追いついていない。
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ヤエノムテキ「……限界が近い」
トランセンド「ラストだね」
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フェノーメノ「総攻撃、準備!」
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三協会が、一斉に動く。
炎、剣、情報による精密打撃。
全てが一点に集中する。
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──バキィッ!!
最後の盾に、大きな亀裂。
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ヤエノムテキ「フェノーメノ支部長」
一歩引く。
ヤエノムテキ「最後は貴女が」
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トランセンド「お膳立て完了。ミスんないでよ?」
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フェノーメノ「……感謝します」
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ゆっくりと、前へ出る。
崩れかけた盾の奥。
そこに──
バンブーメモリーがいる。
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フェノーメノ「……協会長」
剣を構える。
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フェノーメノ「もう一度、やり直しましょう」
一歩。
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フェノーメノ「どこまでも、お供します」
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振り下ろす。
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──ガァァン!!
盾が砕け散る。
檻が、崩壊する。
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光が弾け──
ねじれが、解ける。
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倒れ込む、バンブーメモリー。
同時に、取り込まれていた人々が外へ吐き出される。
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トランセンド「……全員気絶してるだけ」
軽く確認する。
トランセンド「命に別状なし」
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ヤエノムテキ「リウ協会、救護に回りなさい」
「はっ!」
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静寂が戻る。
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フェノーメノは、傷だらけの彼女を背負う。
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フェノーメノ「……帰りましょう」
小さく、しかし確かに。
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フェノーメノ「協会長」
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森の奥へ、歩き出す。
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“盾”は壊れた。
だが──
“誓い”は、まだ折れていない。