ディエーチ協会本部・協会長執務室
無数の書架が天井まで届き、古書の匂いと埃が静かに漂う。
壁に掛けられたランプは、まるで時間が止まったように同じ揺らぎを繰り返している。
協会長執務室の扉が、静かに開いた。
「ロブロイさん、じゃなくて協会長……
書庫の整理、終わりました」
小さな体に山のような古文書を抱えた、ディエーチ協会本部長にして特色「黒い刺客」ライスシャワーが、恥ずかしそうに頭を下げる。
協会長ゼンノロブロイは眼鏡を押し上げ、優しく微笑んだ。
「ありがとうございます、ライスさん!
わざわざ本部長にやってもらってごめんなさい。
今ちょうど手が空いている子がいなくて……
今は2人だけですから、ロブロイさんで構いませんよ」
ライスシャワーは少しだけ頬を赤くしながら、小さく首を振る。
「ううん、ライスが役に立てたならそれでいいの……
……あの、ロブロイさん。
ライスたちはシービーさんの案件には関わらなくていいの?」
ゼンノロブロイは首を振った。
「ええ、特に頭やハナ協会から協力の指示は来ていませんよ」
ライスシャワーの肩が、ほっと下がる。
「それなら良かった……
ライスやロブロイさんはともかく、
ディエーチの子たちのほとんどは戦闘には向いてないから……」
「ふふ、そうですね」
ライスシャワーはふと、懐から小さな箱を取り出した。
「あっ、それとロブロイさん。
さっきヂェーヴィチ協会のオグリさんたちが、黄金の枝を届けてくれたよ」
箱を開けると、淡い金色の光が部屋を照らす。
ゼンノロブロイの瞳が、好奇心で輝いた。
「届きましたか!
では早速、ディエーチ協会の方々とともに分析を始めてください!」
「分かった。また何かあったら報告するね」
ライスシャワーが黄金の枝を手に静かに扉を閉めて去っていく。
残されたゼンノロブロイは、ふと呟いた。
「それにしても黄金の枝……
リンバス・カンパニーが集めているそうですけど、
今のところは何も起こっていないのが気になりますね……
シービーさんが目をつけなければいいのですが……」
彼女は書棚から一冊の古びたファイルを引き出す。
表紙には、かすれた文字でこう書かれていた。
『外郭・図書館 最終記録』
「いえ、今はライスさんからの報告を待つことにしましょう。
ひとまず、セブン協会に依頼していた図書館の資料でも読んでおきましょうか」
彼女は眼鏡を直し、ページをめくり始める。
ランプの灯りが、静かに揺れる。
知識は力。
だが、時にそれは呪いにもなる。
ディエーチ協会は今日も、
知るべきことと、知らざるべきことの狭間で、
静かに探求を続けていた。
ゼンノロブロイ
ディエーチ協会協会長
眼鏡をかけている司書っぽいウマ娘でディエーチ協会の協会長らしく知識を集めることをモットーとしており、遺跡や遺物調査にも積極的に赴く現場主義者
ライスシャワー
ディエーチ協会 本部長 特色フィクサー「黒い刺客」
ゼンノロブロイの秘書をしている小柄でどこか引っ込み思案のウマ娘。ただし戦闘となったら血気迫る恐ろしい表情で殲滅するなど見かけによらず特色の中でも結構強いウマ娘。
普段は本部長として遺物や古書の管理をしている。