ウマ娘×ProjectMoon   作:桜餅 ステラ

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夢の盾

ツヴァイ協会本部 協会長室

 

バンブーメモリーが荷物をまとめ、身支度を整えている。

その傍らで、フェノーメノが静かに手を貸していた。

 

フェノーメノ

「バンブーさん、これで全部ですか?」

 

バンブーメモリー

「はいっす。あたしの荷物はこれで全部っす」

 

フェノーメノ

「……分かりました。1年間の役目、必ず真っ当します」

 

バンブーメモリー

「……すまないっすね。仕事……押し付けちゃって……」

 

フェノーメノの目が、わずかに鋭くなる。

 

フェノーメノ

「協会長。そのような言葉は厳禁だと、約束したはずですが?」

 

バンブーメモリー

「あっ……ご、ごめんなさいっす……つい……」

 

フェノーメノは小さく息をつく。

 

---

 

フェノーメノ

「私はあくまで“代行”です。ツヴァイの協会長は今も貴女です。……お帰りを、お待ちしております」

 

バンブーメモリー

「……はいっす」

 

少しだけ笑う。

 

バンブーメモリー

「あたしの留守中、ツヴァイは任せたっすよ」

 

フェノーメノ

「もちろんです。……時間ができたら、必ず会いに行きます。お元気で」

 

バンブーメモリーは鞄を手に取り、ゆっくりと扉へ向かう。

 

一瞬だけ振り返り──

 

そして、出ていった。

 

扉が閉まる。

 

静寂。

 

フェノーメノ

「……さて」

 

机へ向かいながら、小さく呟く。

 

フェノーメノ

「仕事を始めましょう。……協会長。もう二度と、貴女を壊させたりはしません」

 

---

 

バンブーメモリーの自宅

 

バンブーメモリー

「……意図せずして、1年の休養っすか」

 

荷物を置き、部屋を見渡す。

 

バンブーメモリー

「さて……何するっすかね……」

 

少し考えて──

 

バンブーメモリー

「……とりあえず訓練──」

 

その瞬間、脳裏に声が蘇る。

 

フェノーメノの、強い口調。

 

『いいですか協会長、停職中は絶対に仕事のことを考えないでください。

休むことだけ考えて、じっっっっっっっとしていてくださいね?』

 

バンブーメモリー

「……ふふ」

 

思わず笑う。

 

バンブーメモリー

「あたしの悪い癖っすね……危うくまた怒られるところだったっす」

 

その時──

 

\ピンポーン/

 

バンブーメモリー

「……?誰っすかね」

 

扉を開ける。

 

そこに立っていたのは──

 

ヤエノムテキ

「どうも、バンブーさん」

 

トランセンド

「やっほー」

 

バンブーメモリー

「や、ヤエノにトランセンド協会長!?なんでここに!?」

 

ヤエノムテキ

「……貴女を助けた対価を受け取りに来ました」

 

トランセンド

「まーまー、堅いこと言わずにさ」

 

袋を掲げる。中には酒瓶。

 

トランセンド

「どうせ暇でしょ?一杯付き合ってよ」

 

---

 

数分後・リビング

 

簡単なつまみと酒が並ぶ。

 

ヤエノムテキは日本酒。

トランセンドはハイボール。

バンブーメモリーはチューハイ。

 

軽く杯を合わせる。

 

バンブーメモリー

「……その、おふたりとも仕事は……?」

 

ヤエノムテキ

「本日の分はすべて終わらせてきました」

 

トランセンド

「ウチも。部下に手伝ってもらってね」

 

バンブーメモリー

「……そうっすか」

 

ヤエノムテキ

「……バンブーさん」

 

空気が少しだけ引き締まる。

 

ヤエノムテキ

「今回の件で、貴女は私たちに大きな借りを作りました。その返しは、いずれ必ず」

 

トランセンド

「この都市じゃ“タダ”はないからね〜?」

 

バンブーメモリー

「……分かってるっすよ」

 

少し笑う。

 

バンブーメモリー

「今は停職中っすけど……それでも、おふたりの望みなら何でもするっす」

 

トランセンド

「じゃあさ、早速一個いい?」

 

バンブーメモリー

「……なんすか?」

 

---

 

ヤエノムテキ

「貴女が抱えているものを──吐き出してください」

 

バンブーメモリー

「……えっ」

 

トランセンド

「バンブーさんさ、協会長って役職ちょっと勘違いしてるよね」

 

ヤエノムテキ

「協会長とは“全てを背負う者”ではありません。部下を信頼し、任せる者です」

 

トランセンド

「12協会ってさ、役割分担で成り立ってるけど。同時に“補い合う”ための組織でもあるんだよ。ウチもシ協会辺りとはよく仕事したりするし」

 

ヤエノムテキ

「ツヴァイ南部支部の件……貴女は責任を一人で背負い、潰れかけた」

 

トランセンド

「でもさ、頼ればいいじゃん。タダはないけど、逆に言えば対価払えば、いくらでも助けるしね」

 

ヤエノムテキ

「……またねじれられては、困りますからね」

 

バンブーメモリー

「……」

 

ヤエノムテキ

「貴女には、頼れる者がいます。それを、忘れないでください」

 

沈黙。

 

バンブーメモリー

「……なんで……」

 

ぽつりと零れる。

 

バンブーメモリー

「なんでおふたりは……そんな前を向けるんすか……」

 

トランセンド

「まあうちだってさ、死んでるよ。結構な人数」

 

ヤエノムテキ

「リウも同様です。戦争ですから」

 

トランセンド

「でもね、“生きてる人”もいるんだよ」

 

ヤエノムテキ

「死者だけを見るのは、生者への冒涜です」

 

トランセンド

「何人死んだかじゃなくてさ、何人守れたか、でしょ?」

 

ヤエノムテキ

「ええ、ツヴァイは“盾”です」

 

トランセンド

「守ることは得意分野じゃん?」

 

バンブーメモリーの視界が揺れる。

 

トランセンド

「……今だけでいいからさ」

 

ヤエノムテキ

「本音を」

 

沈黙。

 

そして──

 

バンブーメモリー

「……あたし……」

 

震える声。

 

バンブーメモリー

「ずっと……辛くて……」

 

言葉が崩れる。

 

バンブーメモリー

「頑張ってるのに……盾なのに……守れなくて……!」

 

ヤエノムテキ

「……ええ」

 

トランセンド

「知ってるよ」

 

バンブーメモリー

「う……うわああああああん……!!」

 

堰を切ったように泣き崩れる。

 

ヤエノムテキは静かに隣に座り、背を支える。

 

トランセンドは何も言わず、グラスを置いた。

 

ヤエノムテキ

「……今は、吐き出してください」

 

トランセンド

「……バンブーさんはさ」

 

少しだけ柔らかく笑う。

 

トランセンド

「ちゃんと、守れてるよ」

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