ウマ娘×ProjectMoon   作:桜餅 ステラ

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約束の大切さ


怪物の約束

外郭 図書館

 

かつて都市の“不純物”として切り捨てられた場所。

 

外郭にぽつりと佇むその図書館では、今日も静かな時間が流れていた。

 

無限に続く書架の下で──

 

ローラン

「おーいアンジェラ、本の整理終わったぞー」

 

アンジェラ

「ありがとう、ローラン。少し休憩してもいいわよ」

 

ローラン

「マジ?じゃあネツァクんとこでビールでも──」

 

その時。

 

アンジェラ

「……来客よ。ゲストの気配がするわ」

 

ローラン

「げっ……またかよ……」

 


 

図書館入口

 

タマモクロス

「オグリ帰るで!!無断で図書館とかシャレにならんって!!」

 

オグリキャップ

「タマ、まだだ」

 

タマモクロス

「何が“まだ”やねん!」

 

オグリキャップ

「約束を果たしていない」

 

タマモクロス

「だからなんでそこまで約束にこだわんねん!?異常やぞ!!」

 

オグリキャップ

「? 約束は守るものだろう」

 

迷いがない。

 

ただそれだけ。

 

タマモクロス

「話通じへん!!」

 

---

 

アンジェラ

「歓迎するわ、ゲスト」

 

オグリキャップ

「……君が館長か?」

 

アンジェラ

「ええ。私はアンジェラ」

 

オグリキャップ

「私はオグリキャップ。こちらはタマモクロスだ」

 

タマモクロス

「律儀に名乗んな!!」

 

アンジェラ

「……なるほど。噂の“ヂェーヴィチの特色”ね」

 

一瞬だけ、観察するような視線。

 

アンジェラ

「今日は何の用かしら?」

 

タマモクロス

「いや用なんてないから帰るで!ほんまに!」

 

オグリキャップ

「ローランに会いたい」

 

タマモクロス

「だから待てや!!」

 

アンジェラ

「……いいわ。案内する」

 


 

総記の階

 

ローラン

「……で、俺に何の用?」

 

オグリキャップ

「君がローランか。私はオグリキャップだ」

 

ローラン

「いや律儀かよ……で?」

 

オグリキャップ

「約束を果たしに来た」

 

ローラン

「……は?」

 

次の瞬間。

 

ドゴッ!

 

ローラン

「ぐはぁっ!?」

 

床に叩きつけられる。

 

オグリキャップ

「……よし、終わったな」

 

タマモクロス

「あー……やってもうた……」

 

アンジェラ

「……本当にユニークね、貴女」

 

---

 

ローラン

「いってぇな!?何すんだよ!!」

 

オグリキャップ

「確認だ」

 

ローラン

「何の!?」

 

オグリキャップ

「君は三年前、我を失い都市で暴れたな」

 

ローラン

「……」

 

オグリキャップ

「アンジェリカの頼みだったからな」

 

ローラン

「……アンジェリカ?」

 

空気が変わる。

 

オグリキャップ

「彼女は言っていた」

 

静かに、まっすぐに。

 

オグリキャップ

「“自分がいなくなったあと、お兄ちゃんとローランが暴れたら、代わりに殴ってほしい”と」

 

ローラン

「……は?」

 

オグリキャップ

「だから殴った」

 

ローラン

「いや説明雑すぎるだろ!!」

 

---

 

ローラン

「なんでお前があいつのこと知ってんだよ!」

 

オグリキャップ

「友達だからだ」

 

ローラン

「……友達?」

 

オグリキャップ

「配達が縁でな。よく話をしてくれた」

 

ローラン

「……聞いてねえぞ、そんなの……」

 

オグリキャップ

「君たちの喧嘩の愚痴もな」

 

ローラン

「……うわぁ……」

 

顔を覆う。

 

---

 

オグリキャップ

「そして約束した」

 

ローランを見る。

 

真っ直ぐに。

 

逃がさない目で。

 

オグリキャップ

「君とアルガリアが彼女の想いを踏みにじるなら、私が殴ると」

 

ローラン

「……」

 

オグリキャップ

「だから来た」

 

---

 

ローラン

「……そんなの、あいつ冗談で言ったんだろ」

 

小さく呟く。

 

ローラン

「わざわざ守る必要なんて……」

 

オグリキャップ

「違う」

 

即答。

 

オグリキャップ

「約束は信頼だ。彼女は私を信じて、言葉を残した。だから守る」

 

一切の迷いがない。

 

ローラン

「……」

 

少しだけ笑う。

 

ローラン

「……お前、都市じゃ生きづらいだろ」

 

オグリキャップ

「? 今も生きている」

 

ローラン

「……はは、強いな」

 

アンジェラ

「ええ。ある意味、とても」

 

タマモクロス

「ほんま苦労するんやでこれ……オグリって一度決めると止まらんから……」

 

---

 

オグリキャップ

「ローラン」

 

ローランを見る。

 

オグリキャップ

「アンジェリカは言っていた。君たちは家族だと」

 

ローラン

「……」

 

オグリキャップ

「だから、忘れるな。それだけだ」

 

---

 

オグリキャップ

「タマ、帰るぞ」

 

タマモクロス

「待てや!!ほんま自由すぎるやろお前!!」

 

二人は去っていく。

 

嵐のように。

 


 

静寂

 

アンジェラ

「……騒がしい来客だったわね」

 

ローラン

「……ああ」

 

頬をさすりながら、少しだけ笑う。

 

ローラン

「……あいつ、そんな約束してたんだな」

 

アンジェラ

「どう思う?」

 

ローラン

「……」

 

少し考えて。

 

ローラン

「殴られたのは自業自得だけどさ……嬉しかったよ」

 

静かに。

 

ローラン

「あいつのどうでもいい冗談でも。守ろうとしてくれたやつがいたってのは」

 


 

怪物は、約束を守った。

 

沈黙は、もう答えない。

 

それでも──

 

その言葉は、確かに届いていた。

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