ウマ娘×ProjectMoon   作:桜餅 ステラ

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怪物の交流

ヂェーヴィチ協会 西部支部 支部長室

 

紙の擦れる音だけが静かに響く。

 

---

 

ナイスネイチャ

「いや〜、2人ともありがとね。忙しいのに書類まで手伝ってもらっちゃって」

 

タマモクロス

「かまへんかまへん!これくらいどうってことないわ!」

 

オグリキャップ

「ああ、ネイチャが困っているなら助けるのは当然だ」

 

ナイスネイチャ

「……ほんと、いい部下持ったよ私」

 

少しだけ、力の抜けた笑み。

 

その時。

 

ピロン

 

オグリキャップ

「む?」

 

タマモクロス

「どないしたんや?」

 

オグリキャップ

「連絡だ」

 

タマモクロス

「誰からや?」

 

オグリキャップ

「アーモンドアイからだ」

 

ナイスネイチャ

「……は?ちょっと待って、今なんて?」

 

タマモクロス

「水色の女王の……?」

 

---

 

オグリキャップ

「ああ」

 

ナイスネイチャ

「……なんでそんな大物と連絡取れるの?」

 

オグリキャップ

「前の交流試合の時に交換した」

 

タマモクロス

「軽っ!?」

 

オグリキャップ

「今度の休みに時間があれば会いたいそうだ。飲みの誘いらしい」

 

ナイスネイチャ

「へぇ……」

(……普通に友達やってるんだ、この怪物)

 

オグリキャップ

「予定を確認しておこう」

 

スマホをしまう。

 

何事もなかったかのように。

 

タマモクロス

「……なあオグリ」

 

オグリキャップ

「なんだ?」

 

タマモクロス

「お前、交流関係おかしくないか?」

 

ナイスネイチャ

「うん、それ私も思ってた」

 

---

 

オグリキャップ

「そうか?」

 

タマモクロス

「そうかやないねん!特色同士って基本仕事以外で関わらんやろ!」

 

オグリキャップ

「配達先で話をすると、連絡先を交換してほしいと言われる。断る理由はないから交換しているだけだ」

 

---

 

ナイスネイチャ

「……ちょっとさ、その連絡先見せてくれる?」

 

オグリキャップ

「いいぞ」

 

手渡された携帯。

 

ネイチャが何気なく覗き込んで──

 

ナイスネイチャ

「……え?」

 

指が止まる。

 


 

並んでいる名前。

 

---

 

アルガリア

アンジェリカ

アーモンドアイ

イオリ

ヴェルギリウス

シンボリルドルフ

ハイセイコー

ライスシャワー

朱色の十字

 


 

ナイスネイチャ

「いや何これ!?」

 

タマモクロス

「どないしたんや!?」

 

ナイスネイチャ

「ちょっと見てこれ!!」

 

タマモクロス

「……は?なんやこれ……ほぼ特色やないか……」

 

ナイスネイチャ

「“ほぼ”じゃないよこれ、全部特色だよ!?

ちょっと待って、これ普通に都市の重要人物リストだよ!?」

 

オグリキャップ

「そうなのか?」

 

タマモクロス

「そうなのかちゃうわ!!」

 

ナイスネイチャ

「てかなんでこんなメンツと繋がってんの!?」

 

タマモクロス

「お前どんな生き方したらこうなんねん!!」

 

オグリキャップ

「? ただ話しただけだが」

 

タマモクロス

「雑すぎるやろ理由が!!」

 

ナイスネイチャ

「“ただ”のスケールがおかしいのよ!!」

 

タマモクロス

「てかこれ絶対利用されとるやろ!?」

 

ナイスネイチャ

「それ!!この人たちに何か頼まれたりしてない!?」

 

オグリキャップ

「イオリやアルガリアに手伝いを頼まれたことはある」

 

タマモクロス

「は?」

 

オグリキャップ

「アンジェリカが亡くなる前まではよく呼ばれた。一人では出来ない仕事だからと」

 

ナイスネイチャ

「内容は!?」

 

オグリキャップ

「覚えていないが、どれも大変だった」

 

タマモクロス

「アカンやつやそれ!!」

 

オグリキャップ

「だが終わった後は食事を奢ってくれた」

 

ナイスネイチャ

「……完全に餌付けじゃん……」

 

タマモクロス

「ちょろすぎるやろこの怪物……」

 

オグリキャップ

「?美味しかったぞ」

 

タマモクロス

「味の問題ちゃうわ!!」

 

ナイスネイチャ

「じゃあ他の人たちは?」

 

オグリキャップ

「食事をしたり、話をしたりだな。

ルドルフやハイセイコー、ライスシャワーは今でも時々会う」

 

ナイスネイチャ

「えぇ……」

 

オグリキャップ

「ヴェルギリウスは最近連絡がない。忙しいのだろう」

 

タマモクロス

「いやあの人は多分関わらん方がええタイプやと思うで……」

 

ナイスネイチャ

「……朱色の十字は?」

 

オグリキャップ

「彼も同じだ。よく呼ばれて話をした」

 

タマモクロス

「なんで名前知らんねん」

 

オグリキャップ

「教えてくれなかったからだ」

 

ナイスネイチャ

「いやそこで引かないの!?」

 

オグリキャップ

「十字と呼べば問題ないと言っていた」

 

タマモクロス

「問題大ありやろ普通は!!」

 


 

ナイスネイチャ

「……ねえオグリさん」

 

少しだけ声が落ちる。

 

ナイスネイチャ

「亡くなった人もいるよね、この中」

 

オグリキャップ

「ああ」

 

ナイスネイチャ

「なんで消さないの?」

 

少しの沈黙。

 

オグリキャップ

「友達だったからだ」

 

静かな声。

 

オグリキャップ

「一度関わった過去は消えない。だから消さない」

 

ナイスネイチャ

「……」

 

オグリキャップ

「忘れないために残している」

 

タマモクロス

「……」

 

ナイスネイチャ

「……ほんと、真っ直ぐだね」

 


 

タマモクロス

「なあオグリ」

 

オグリキャップ

「なんだ?」

 

タマモクロス

「青い残響も、友達なんか?」

 

一瞬だけ空気が変わる。

 

オグリキャップ

「……ああ」

 

タマモクロス

「あいつ、都市滅茶苦茶にした奴やぞ」

 

オグリキャップ

「それでもだ」

 

迷いがない。

 

オグリキャップ

「したことは間違っている。だが、友達だった過去は消えない」

 

ナイスネイチャ

「……」

 

オグリキャップ

「私は、忘れたくない」

 

タマモクロスは、何も言わない。

 

タマモクロス

(……多分、あいつらはそんな綺麗な関係やなかった。でも、オグリにとっては、それでも“友達”なんやろな)

 

ナイスネイチャ

「でもさ」

 

少しだけ笑う。

 

ナイスネイチャ

「そういうところ、嫌いじゃないよ」

 

オグリキャップ

「そうか」

 

タマモクロス

「……はぁ、ほんま世話焼かせる怪物やで」

 

オグリキャップ

「?」

 


 

いつも通り、分かっていない顔。

 

だけどその背中は確かに──

 

誰よりも多くの“誰か”を背負っていた。

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