ウマ娘×ProjectMoon   作:桜餅 ステラ

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稲妻と視線

リンバスカンパニー本社。

 

訓練を終えた後、オグリキャップは静かにヴェルギリウスへと向き直る。

 

オグリキャップ「ヴェルギリウス、これで良かったか?」

 

ヴェルギリウス「ああ、感謝するキャップ」

 

オグリキャップ「そうか、助けになったなら良かった」

 

穏やかな微笑み。

 

そのやり取りを見届けたファウストが一歩前に出る。

 

ファウスト「ではお二人とも、私が見送ります。ポータルを開きましょう」

 

オグリキャップ「ああ、頼む」

 

その時だった。

 

タマモクロス「ちょい待ってくれや」

 

全員の視線が集まる。

 

タマモクロス「赤い視線。帰る前にウチと1戦、交えてくれへんか?」

 

ヴェルギリウス「……理由は?」

 

タマモクロス「オグリ貸した分の“礼”や。あんたにも少しは苦労してもらわんと、気ぃ済まん」

 

一瞬の沈黙。

 

ヴェルギリウス「……分かった」

 

空気が変わる。

 

オグリキャップ「タマも戦うのか?」

 

タマモクロス「せやで。ちょっと痛い目見てもらうわ」

 

外野。

 

ダンテ【……大丈夫なの?】

 

ファウスト「問題ありません。規約上も支障はないでしょう」

 

ロージャ「でもヴェルに勝てるの?あの子」

 

シンクレア「タマモさんってそんなに強いんですか?」

 

オグリキャップ「……速さだけなら、私でも捉えきれない」

 

ヒースクリフ「は?マジかよ……」

 

オグリキャップ「……見れば分かる」

 

隔離室

 

対峙する二人。

 

タマモクロスは電光を纏う短槍。

ヴェルギリウスは赤熱するグラディウス。

 

囚人たちとオグリキャップが外から見守る

ドンキホーテ「と、ととと特色同士の対決が見られる日が来るとは……!」

イサン「……ファウスト嬢、タマモ殿の実力はどう見るなり?」

ファウスト「ヴェルギリウスといえども苦戦はするでしょう。素早い相手というのは往々にして厄介です」

空気が張り詰める。

 

タマモクロス「ほな、行くで」

 

ヴェルギリウス「ああ」

 

 

その言葉が終わるよりも早く。

ドゴォン!!!!

衝撃が走る。

火花と雷光が交錯し、視界が白く弾けた。

ヒースクリフ「なっ……!?」

シンクレア「い、今何が――!?」

既に二人はぶつかっていた。

ヴェルギリウス「……速いな」

タマモクロス「そっちこそや!」

タマモクロスの姿は――消えている。

いや、“動き続けている”。

イシュメール「見えない……!」

オグリキャップが静かに解説する。

オグリキャップ「タマは止まらない、常に加速し続ける」

その言葉通り。

タマモクロスは、ヴェルギリウスの周囲を“円”ではなく、“乱数的な軌道”で駆けていた。

直線、折り返し、フェイント、急停止からの再加速。

常人の脳では予測不能。

ヴェルギリウス(……軌道が読めないな)

「……だが」

ギィン!!

正確に受け止める。

ウーティス「受けた!?今のを!?」

ヴェルギリウスは“動いていない”。

ただ、“来る瞬間”だけに反応している。

ファウスト「予測ではなく、“反射”そして経験による迎撃ですね」

タマモクロス「チッ……!」

再び加速。

今度は背後から。

ヴェルギリウス「……遅い」

振り向きざまの蹴り。

ドゴォッ!!

タマモクロスが弾かれる――が。

タマモクロス「軽い軽い!!」

空中で体勢を立て直し、着地と同時に再加速。

床が焦げ、雷光が尾を引く。

オグリキャップ「……いい動きだ」

ヒースクリフ「おいおい……止まる気配がねぇぞあいつ」

ヴェルギリウスは目を細める。

ヴェルギリウス(……なるほど、速度だけならキャップ以上か)

次の瞬間。

タマモクロス「これでどうや!!」

“直線”。

全てを捨てた、純粋な最速の突撃。

ヴェルギリウス「……!」

グラディウスが赤熱する。

ギャリィィィィン!!!!

激突。

だが――

ヴェルギリウスの腕が、僅かに押し込まれる。

ロージャ「……押した!?」

タマモクロス「まだや!!」

連撃。

神速の突きが、連続で叩き込まれる。

ヴェルギリウス「……くっ」

防ぐ。

だが、防ぐたびに後退する。

イサン「……押されているなり」

ファウスト「速度による手数差です。防御主体の戦法では、いずれ崩されます」

ヴェルギリウスは――踏み止まる。

ヴェルギリウス「……なら」

“目”が、赤く光る。

ダンテ【……来る】

空気が変わる。

タマモクロス「……っ」

本能が告げる。

“危険”。

ヴェルギリウス「……終わらせる」

血が、滲む。

空間に“赤”が広がる。

ファウスト「E.G.O……!」

タマモクロス「上等や!!」

止まらない。

むしろ――さらに加速。

オグリキャップ「……!」

タマモクロスの速度が、もう一段階上がる。

タマモクロス「ウチは止まらへん!!」

雷が爆ぜる。

ヴェルギリウス「……なら」

一歩、踏み出す。

それは今までと違う。

“待ち”ではない。

攻勢。

次の瞬間。

交差。

――ズドンッ!!!!

衝撃。

遅れて、音が来る。

煙が晴れる。

そこにいたのは――

タマモクロス「……はぁ……っ」

ヴェルギリウス「……」

互いに、距離を取って立っている。

沈黙。

ヒースクリフ「……どっちだ……?」

やがて。

タマモクロス「……ははっ」

槍を肩に担ぐ。

タマモクロス「今回は引き分けやな」

ヴェルギリウスも、グラディウスを下ろす。

ヴェルギリウス「……ああ」

ドンキホーテ「ひ、引き分けでありまするか!?」

ファウスト「決定打に欠けましたね、双方ともに、相手を崩しきれなかった」

タマモクロス「ま、今日はこんくらいでええやろ。」

オグリキャップ「……どうだった?」

タマモクロスは笑う。

タマモクロス「強かったで、せやけど――」

ニヤリと。

「次は勝つ」

ヴェルギリウス「……いつでも来い」

その言葉に、ほんのわずかな熱が宿る。

ダンテ【……すごいな】

オグリキャップは静かに頷いた。

オグリキャップ「……これが、“特色”だ」

稲妻と視線。

交わったその瞬間――

確かに、“都市の頂点同士の戦い”がそこにあった。

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