ヂェーヴィチ協会 西部支部――支部長室
報告は、簡潔に終わった。
椅子に腰掛けたまま、ナイスネイチャは腕を組み、静かに息を吐く。
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ナイスネイチャ「……なるほどね。そういうことがあったんだ」
少し間を置き、視線を二人へ向ける。
ナイスネイチャ「わかった。この件は協会長にも報告しておくよ。二人とも、今日は休んでいい」
タマモクロス「おおきにやで支部長!」
オグリキャップ「ありがとうネイチャ」
二人が立ち上がり、部屋を出ようとしたその時。
ナイスネイチャ「……オグリさん」
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呼び止める。
オグリキャップが振り返る。
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ナイスネイチャ「“赤い視線”は……どんな様子だった?」
ほんの僅かな間。
オグリキャップ「昔より落ち着いていたが……そんなに変わっていなかったな」
少し考えてから、続ける。
オグリキャップ「……今度会う時は、一緒に食事に行きたい」
ナイスネイチャ「……そっか」
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それ以上は何も言わなかった。
二人はそのまま退室する。
扉が閉まる。
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静寂。
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ナイスネイチャ「……はぁ」
椅子に深くもたれかかる。
ナイスネイチャ「これ……報告して大丈夫かな」
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その呟きは、誰にも届かない。
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ヂェーヴィチ協会 本部――協会長室
数分後。
報告書を読み終えた瞬間。
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アイネスフウジン「何してるのオグリちゃぁぁぁぁぁん!!!!!!????」
椅子ごと、ひっくり返った。
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アイネスフウジン「ま、不味いの……!」
床に転がったまま、頭を抱える。
アイネスフウジン「オグリちゃんの自由奔放さと純粋さ、完全に見誤ってたの……!協会との約束は守ってるとはいえ……怪しいお願いも二つ返事で受けちゃうなんて……!」
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普段の明るさは影もない。
完全な“ガチ焦り”だった。
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アイネスフウジン「……いや、落ち着くの」
深呼吸。
無理やり思考を整える。
アイネスフウジン「リンバスカンパニーは怪しいとはいえ、表向きはねじれ対処企業……五本指とかじゃないだけマシなの……!」
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一度、言い聞かせるように頷く。
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アイネスフウジン「……だからこそ」
その目が鋭くなる。
「今後のオグリちゃんの行動は、もっとしっかり見守らないといけないの」
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立ち上がる。
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アイネスフウジン「……ふぅ。そうなの……まずは」
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机に手をつく。
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「オグリちゃんの“実力”を、もう一度正確に把握するの」
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静かに、だが確実に。
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「万が一、どこかの組織に利用されそうになった時――」
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その声は低くなる。
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「止める手段が必要なの」
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そして、決断。
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アイネスフウジン「検診の手配、開始なの!」
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その頃、当の“怪物”は――
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オグリキャップ「タマ、食堂はどこだ?」
……平常運転だった。
タマモクロス「……今の流れで飯なんか!?」
オグリキャップ「お腹が空いた」
タマモクロス「……はぁ」
頭をかきながら、苦笑する。
タマモクロス「ほんま、お前は変わらんな」
オグリキャップ「そうか?」
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変わらない。
それが、この怪物の本質だった。
二人の足音が、廊下の奥へ消えていく。
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その背中を――
まだ、誰も止められない。
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数日後
ヂェーヴィチ協会 西部支部――支部長室
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タマモクロス「……検診やって?」
ナイスネイチャが頷く。
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ナイスネイチャ「うん。協会長が、オグリさんの実力を改めて把握したいって。万が一に備えて、対策も用意するらしいよ」
タマモクロスがちらりと横を見る。
ナイスネイチャ「だってさ」
少し苦笑する。
「オグリさんって、食事ひとつで怪しい依頼にもついていきそうでしょ?」
タマモクロス「まあ……こいつ、ほとんど幼女やからな……」
オグリキャップ「?タマ、私は大人だぞ」
タマモクロス「年齢の話ちゃうわ!!精神の話や!!」
ナイスネイチャが肩をすくめる。
ナイスネイチャ「まあそういうわけで、二人とも、本部に行ってきてね」
少しだけ視線が柔らかくなる。
「タマモさんは付き添い」
オグリキャップ「分かった。頑張ることにしよう」
迷いのない返答。
タマモクロス「……オグリ」
ほんの一瞬だけ、真剣な顔になる。
タマモクロス「ウチが絶対に守るからな」
オグリキャップ「?ああ」
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その意味を深く考えないまま、頷く。
だが、この“検診”はただの確認ではない。
怪物を測るということは――
怪物を“止める方法”を探すということだ。
ヂェーヴィチ協会本部――協会長室。
室内には緊張と慌ただしさが同時に漂っていた。
アイネスフウジンは資料端末を閉じ、深く息を吐く。
アイネスフウジン「……よし、検診の準備は完了。あとは……」
ノックの音。
ゼンノロブロイ「失礼します」
扉を開けて入ってきたのは、ゼンノロブロイと、トランセンドだった。
トランセンド「お邪魔するよん」
アイネスフウジン「来てくれたの!ロブロイさんにトランセンドさん!」
ロブロイは軽く会釈する。
ゼンノロブロイ「ハナ協会からの正式な依頼です。特色フィクサーの再評価……見過ごすわけにはいきません」
トランセンドは肩の力を抜いたまま笑う。
トランセンド「ま、ウチら情報屋と記録屋のコンビなら適任でしょ。全部丸裸にしてあげるよ」
アイネスフウジン「……丸裸って言い方やめてほしいの」
アイネスは苦笑しながらも頷く。
アイネスフウジン「でも、頼りにしてるの!」
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測定室
無機質な白い空間。
中央に立つのは、オグリキャップ。
きょろり、と周囲を見回す。
オグリキャップ「タマ、ここは少し寒いな」
タマモクロス「今そこ気にするんかい……」
観察室へ移動しながら、タマモクロスが呆れる。
タマモクロス「ええかオグリ。今から実力測定や。協会長の指示にはちゃんと従うんやで」
オグリキャップ「分かった。約束だな」
その返事は、妙にまっすぐだった。
タマモクロスはほんの一瞬だけ視線を逸らす。
(……ほんま、こういうとこやねん)
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アイネスがマイクを入れる。
アイネスフウジン『オグリちゃん、今から仮想敵を出すの!好きなように戦っていいの!』
オグリキャップ「分かった」
間髪入れずの返答。
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重い音を立てて扉が開く。
現れたのは――異形。
肉塊と装甲が混ざったような、大罪の3型。
オグリキャップ「……これを倒せばいいのか」
オグリは一歩、踏み出す。
迷いはない。
躊躇もない。
ただ、目の前に敵がいるから。
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観察室
タマモクロスが腕を組む。
タマモクロス「……あれ、なんや」
ロブロイが静かに説明する。
ゼンノロブロイ「“大罪”。ねじれの未完成体です。ですが、強度は本物と同等……いえ、場合によってはそれ以上」
トランセンドが軽く補足する。
トランセンド「今回は怠惰と憤怒の3型。普通のフィクサーなら部隊案件だね」
アイネスが頷く。
アイネスフウジン「憤怒はともかく怠惰の大罪は一番頑丈なの。特色でも、簡単に倒せる相手じゃ――」
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オグリがハンマーを持ち上げる。
オグリキャップ「ふん」
一歩。
踏み込み。
振り下ろす。
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ドゴォォォォォン!!
空気が爆ぜる。
床が揺れる。
視界が白くなる。
そして――
オグリキャップ「よし、倒したな」
それだけだった。
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アイネスフウジン「……は?」
アイネスの声が完全に抜ける。
タマモクロスがぽつりと呟く。
タマモクロス「……ワンパンや」
トランセンドが端末を覗き込み、目を細める。
トランセンド「……ちょっと待って。今の数値……おかしい」
ロブロイも画面を見る。
ゼンノロブロイ「最低威力……27。一応特色の平均ではありますが……」
アイネスが震える声で続ける。
アイネスフウジン「最大予測値……100……?」
数秒の沈黙。
トランセンドが笑う。
トランセンド「はは、なるほどね。完全に“当たれば終わり”の設計だ」
タマモクロスが低く言う。
タマモクロス「……オグリ、お前……」
アイネスフウジン「……ねえ、協会所属の特色でオグリちゃん以上の威力出せる技持ちの子っているの?」
トランセンド「ちょい待ち〜。」
トランセンドがデータベースで調べる。
トランセンド「……ダメだね、1番高くてもせいぜい総威力60前後で100越えはいないよん」
アイネスフウジン「……そ、そんな……」
ゼンノロブロイ「……ひとまず計測を続けましょう。オグリさんの弱点が分かるかもしれません」
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次々と投入される大罪。
色欲。
憂鬱。
暴食。
傲慢。
その全てが――
粉砕。
消滅。
消し飛ぶ。
観察室に、言葉はほとんどなかった。
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トランセンド「……嫉妬以外、全部終わり」
ゼンノロブロイ「正面戦闘では……成立しませんね」
ロブロイの声は冷静だったが、その目は僅かに見開かれていた。
トランセンドが肩をすくめる。
トランセンド「弱点も見えたよ。“外せば普通”。でも――」
画面に映るオグリを見る。
トランセンド「この人、ほとんど外さない」
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タマモクロス「……方法ならある」
タマモクロスが口を開く。
タマモクロス「デバフで威力を最低に固定する。それで耐えるんや」
アイネスが食いつく。
アイネスフウジン「それでいけるの!?」
タマモクロス「リンバスの連中はそれでやっとった」
トランセンドが頷く。
トランセンド「じゃ、やってみよっか」
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現れたのは――
ウマ娘の姿をした“何か”。
タマモクロス「……あれは?」
ゼンノロブロイ「嫉妬はコピー。能力も戦い方も、そのまま再現するという特殊な大罪です」
ロブロイが説明する。
ゼンノロブロイ「今回は絡め手特化の個体を選択しました」
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オグリが踏み込む。
オグリキャップ「ふん!」
――外れる。
直後、反撃。
オグリキャップ「む……」
身体が揺れる。
オグリキャップ「痺れるな……」
再び振るう。
しかし。
オグリキャップ「……力が出ない」
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トランセンド「効いてるね」
ゼンノロブロイ「完全に威力が封じられています」
アイネスが前のめりになる。
アイネスフウジン「これなら……!」
タマモクロスが小さく呟く。
タマモクロス「……見えたな」
---
しかし
オグリが首を軽く回す。
オグリキャップ「……よし」
一歩。
オグリキャップ「痺れが取れたな」
次の瞬間。
オグリキャップ「ふん!」
――衝撃。
嫉妬大罪、消滅。
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観察室
アイネスフウジン「……え」
トランセンドが苦笑する。
トランセンド「デバフ切れた瞬間ゲームオーバーか」
ロブロイが静かに結論づける。
ゼンノロブロイ「……やはり、特色は単純な対策では止まりません」
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アイネスフウジンはしばらく黙り込んだ後、ゆっくりと息を吐いた。
アイネスフウジン「……でも、分かったの」
顔を上げる。
アイネスフウジン「オグリちゃんは“倒せない存在”じゃない」
その目は真剣だった。
アイネスフウジン「対策はある。だから――まだ、管理できるの」
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オグリキャップはきょろりと周囲を見回す。
「……もう終わりか?」
返事は、すぐには返ってこなかった。
オグリキャップ
キーワード ヂェーヴィチ協会 フィクサー 特色
レベル88
スキル1 配達の誇り 攻撃レベル89 加重値3
打撃 傲慢
基本威力27 コイン威力+7×2
スキル2 止まらない 攻撃レベル90 加重値5
打撃 傲慢
基本威力30 コイン威力+15×1
スキル3-1 怪物の鉄槌 攻撃レベル93 加重値7
打撃 暴食
基本威力35 コイン威力+20×1
スキル3-2 怪物の鼓動 攻撃レベル97 加重値12
打撃 暴食
基本威力40 コイン威力+60×1
使用時、相手の生き残るパッシブを無効化させる
精神力が0以上なら、マン(望)を3つ生成する
-基本威力+3,ダメージ量+30%
パッシブ
灰色の怪物
ステージ開始時、灰色の怪物(ターン開始時、呼吸8と呼吸回数10を得る)を得る
止まらない怪物
混乱した場合、混乱を解除し、スキル3を変化させる。
シン(心) - 灰色の怪物
精神力が45の時シン(心) - 灰色の怪物(暴食属性の与ダメージ量+70%)を使える